ある日の始業式①-1 高2(挿絵有り)
新学期叉は新年度。
別れと出会いの季節。
それは変わる人もいれば変わらない人もいる。
新しい環境に飛び込み、希望や夢を抱き期待に胸を膨らませる新社会人や新入生といった人。
又は別れ。
転勤や異動により慣れた場所を去らなければ行けない人もいれば、学校を卒業で友達との別れ、又は進学により実家から巣立つ人もいるかもしれない。
ここ桜ヶ丘高校でもそれは同じ。
今はまだ朝の為、在校生即ち新2年生と新3年生のみしかいないが変わる変わらないで言えば後者が多いい。
3年生は受験や就活が控えているが、それはまだ少し先の為今は至って普通。
それは2年生も同じはずである。いや、3年生よりは余裕か?
ある程度自分の進路というものを決めないといけない時期ではあるが、受験等は来年であるが故に。
なのに本来は和気あいあいとしてる光景が見れた筈だったのに、一部が違った。
主に新2年生の5クラスある進学コースの生徒のみだったが······。
その理由と原因は今日が新年度名物『クラス替え』の発表であり、『鈴宮このは』の存在であった。
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『クラス替え』
それは学生にとって自身の1年間をある意味で決定づけると言ってもいい大事な出来事である。
好きな異性と同じクラスになりたい!
憧れのあの子と同じクラスになって、少しでもお近づきになりたい。
仲の良い友達とまた一緒のクラスになりたい!
あの担任の先生がいい。あの先生は嫌だ等など。
人によって理由は様々であるが、この5クラスに限るとまず『鈴宮このは』と同じクラスになりたい!というのがある。
ちなみに残りの他のクラスはコースが違うため、同じクラスになるという事がない。
クラス替えのないクラスもある為、そちらの生徒は始めから諦めてはいる······。
『鈴宮このはと同じクラスになりたい!』そう思わせる最近の出来事としては、元クラスメイトが名付けた『このはちゃん塾』の存在。
お昼休みを利用してクラスメイトに授業の分からない所を教えてあげてるという事。
これは廊下から教室の中を覗けば分かることであり、参加したいなと思ってもクラスメイトが作ったルールにより参加は出来ないでいる。
また、噂レベルではあるけれど教わってる教科の点が上がったというのがまた大きい。
故に教えて欲しいけど参加出来ない。
なら同じクラスになれば···ということで。
あともう2つ。
その1つは3学期になってから良く見かけるようなった、移動の時の彼女とそのクラスメイトの女子達。
女子がこのはと腕を組んだり手を繋いだりして嬉しそうに幸せそうな顔をして歩いているのを目撃する。
時には抱きつく子もあり、そんな子を自愛に満ちた表情で優しく対応するこのは。
そんな様子を目撃して「あぁ〜〜、私もされてみたい、手を繋ぎたい」と思ってしまうのは仕方がない。
でも、接点が無い為それも叶わない······。
悲惨なのは男子である。
元クラスメイトの男子は知っている為に割り切っているが、他の男子はそうもいかない。
元々容姿で惹かれていた処に、女子達と仲良くする姿や表情を見てしまって更に好意を抱いてしまう。
思春期故にあれやこれやと想像し好きになり、告白する勇気も持てず、だけどそれが決して実る事のない恋だと気づかないまま······。
ちなみに最後の1つは、ただ単に容姿端麗であるから。
美しい子、可愛い子と同じクラスになりたいと思うのは男として当然の気持ちである。
女子に関しては逆に妬まれたりしそうな物ではあるけれど、このはの性格的な物や一緒にいる女子たちの様子から、その様に思う女子は少ない。
まぁ、一部そうではない女子もいるみたいだけども······。
様々な想いが交差する『クラス替え』である。
因みにクラス替えに当たり、人気の担任の先生としては高橋教諭がNO.1らしい。
ーー ある男子生徒 視点 ーー
「·········。」
外した。それも両方も······。
俺は何が悪い事でもしたのだろうか?いや、至って普通にしてたはず······。
授業態度だって悪くはないと思うし、成績だって平均して60点くらいは取ってた。
普通のモブキャラその①だった筈なのに······。
ずうぅぅぅん···と身体の力が落ちていくのが分かる。
周りに誰もいなければ1人膝をついて泣いている可能性があるな······。
不意にポンポンと肩を叩かれた。
「よお!どうした?そんなに凹んで······って、外したのか。」
「そうだよ!それも両方な······。」
肩を叩いて来たのは俺の仲の良かった友人。よく一緒にグループを組んで活動してた。
昼飯や体育の時のグループ分けの時とかに。
「そう言うお前は?」
「俺か?俺は···当たりだ!!」
「あぁー···いいな!ちくしょうー!俺もまた鈴宮さんと一緒が良かった······。」
そうさ。俺は鈴宮さんとまた同じクラスになるという事を外したのさ!
だからもう同じ教室には居られないし、交流も極端に減る。
姿や声を聞くことも極端に減るだろうし、特にあの『このはちゃん塾』が名残惜しい······。
とてもわかり易く丁寧に、「どこが分からない?」「ここはね、こうしてああすればいいんだよ?」と、直ぐそばに来て教えてくれるから彼女から漂う香りが、息遣いが、優しさがダイレクトに分かって。
付き合えないというのは理解してるけど、好きになるのはまた別だよな?
それと俺も勿論だが皆の成績も上がったみたいで、すごーーく好評だったんだ。あれは。
それが今年1年に限っては、もう受けれないんだよなー。
これは皆で決めたルールだから、勿論従うつもりだしさ。
「なぁ······。」
「なんだ??」
友人にお願いをする。
そうでもして頼んどかないと後で困るかもしれないから。
「数学、分からなくなったら教えてくれ。」
ーー 彩ちゃん 視点 ーー
今日は始業式。
そして私の今年一年間のモチベーションを決める大事な日。
そう、『クラス替え』があるんです!
クラス替えと言えば、好きな人と一緒のクラスになりたいとか、嫌いな人とは別になりたいとか色々な思惑があるけど、私は前者。
好きな人と一緒になりたい!コレに尽きる。
そしてそれは男子ではない。女子である。
そう、このはちゃんです。
とっても綺麗で美しくて優しくて頭も良くて、みんなのアイドル的な存在。
まぁ子供がいるってのにはビックリもしたけど、それは些細な事。
いやそれがあっても、このはちゃんに対しての評価はマイナスにはならない。
寧ろプラスに作用してるね。
私達と少しだけ歳が違うとはいえ、子供を育てながらあの高成績を取る努力。
家事も万能だっていうし、雪ちゃんの事を大事にする優しさ。
凄く大変な事だと思うのに、それをやってのけるこのはちゃん。
そんなこのはちゃんが、みんな大好きでもちろん私も大好き!
そんなこのはちゃんと同じクラスになれるのか、なれないのか。
それ次第で私の今年度のモチベーションが決まる。
だから昨日からずっとソワソワしてたんだ。
お陰で昨夜も全然寝れなくて······、なんて事はなく爆睡したよ(笑)
でも、今朝は抑えきれなくて何時もより早く家を出ちゃったんだけどね。
そして、運命の瞬間が来た······。
昇降口の側にある特別教室のベランダ側に、大きく書かれたクラス分けの表が表情にされてる。
ちなにみ3年生は私の背中側、反対側の壁に同じく貼り付けされてます。
1組から順に見ていきます。あー···ドキドキする。
1組なし、2組もなし。
3組······あ!このはちゃんいた!!
名前の順で『すずみや』だから比較的前の方に名前があつたよね。
私は?『なかもと』だからあと少し下の方······。
「あ···あった!やったー!!」
思わず叫んでピョンピョン飛び 跳ねちゃったよ。
だってしょうがないよ。それくらい嬉しかったんだもん!!!!
これで私の1年間のモチベーションは保たれたよ♪
しかも良く見てみると、担任は前と同じ高橋先生じゃん!
これもこれでナイスな組み合わせだよね!!
「彩〜〜!」
「あ、志保!」
「彩はどうだった?ちなみに私はこのはちゃんと一緒だよ!」
「マジで!? 私も一緒だよ♪」
「······」
「······」
「「イェ~イ!!」」
二人でハイタッチ!
お互いにこのはちゃんと一緒になれたらいいねって言ってたから、良かった良かった。
「ねえ、彩。気づいた?」
「何が?」
志保が何かに気が付いたみたいです。なんだろ??
担任が高橋先生なのはもう確認したけど、それ以外は何かあったかな?
「私達旧3組の女子全員、このはちゃんと一緒なの!!」
「······うっそー!!? そんな事あるの!?」
志保がこんな所で嘘を付くとは思えなかったけど、私は慌てて掲示を改めて確認する事にした。
さっきは自分とこのはちゃんの事しか頭になかったから、他を気にしてる余裕なんてなかったからね。
なので、今度は冷静に今一度確認をしてみると······。
「マジだ······。本当に女子は皆、一緒じゃん!!」
「でしょ!? 本当に凄いよね、この組わせさ!私も信じられないよ!!」
志保が超テンション上がってる。
そういう私もこの事実に歓喜してるけどね。
だってあれだけ仲の良かった皆んなだもん。嬉しいのに決まってる。
多少のバラバラは覚悟はしてたけど、誰一人として欠ける事なく一緒になれたのは言うまでもなく最高の結果だよ!!
「ちなみに、男子は少しだけ変わってるよ?」
「あ、それはどうでもいいや。」
まさかまさかのクラス替えの結果だった······。
ーー このは 視点 ーー
今朝もいつものように、雪ちゃんを抱きしめてから家を出ました。
ただいつもと違うのは、家を出た時間が普段よりも早いという事。
理由としてはクラス替えの確認をしないといけないのが1つ。
あとは教室が最上階になるって先生が終了式の時に言ってたから、その移動時間も考慮してね。
あまりギリでも怖いしさ。
ワクワクと少しのドキドキを感じながら、自転車で学校へ行きます。
自転車を止めて昇降口に向かえば掲示ポスターが貼ってあるって言ってたね。
テクテクと歩いて向かいます。
「このはちゃーーん!」
昇降口の方に向かって歩いていると、前方から久しぶりの生声が聞こえた。
春休み中、LI◯Eや電話なんかは偶にしてたけど、こう生声になると本当に久しぶりだよ。
「茜ちゃん!」
「このはちゃん!」
タタタタって駆けて来たと思ったら、ガシッっと茜ちゃんが抱きついてきた。
うん。懐かしいな、このやり取り。
春休み、ほんの1〜2週間会わなかった位で懐かしく感じてるんたから、私もすっかりこれに馴染んでしまったよね。
「あのね、あのね、このはちゃん······。」
私に抱きつきながら、ポロポロと泣き出してきちゃったよ·····。
どうしちゃったんだろう?
このタイミングでこれってことはもしかして、クラスが別になっちゃったかな?
高橋先生にお願いしてみたけど、やはり無理だったんだろうか······?
泣き出した茜ちゃんの背中をポンポンと慰めつつ、聞いてみます。
「もしかして······クラス別になっちゃったとか??」
「ううん···違うの。一緒のクラスだよ!だから私嬉しくって!!」
「あ、ほんと!!? あー······よかったーーー。」
どうやら勘違いだったみたいです。
さっきまで駄目だったのを考えてたから、いい知らせを聞いて一気に身体から力が抜けてくのを感じる。
その位今回のクラス替えは、特に茜ちゃんと一緒になれるかは私の中でとても重要な事だった。
それと、高橋先生。お願い聞いてくれたみたいで、本当にありがとうございます。
後でキチンとお礼に行かないといけないよね。
「このはちゃん。」
「ん?なーに?」
嬉し泣きから落ちついた茜ちゃんが、私から少し離れてこう伝えてきた。
「まだまだ、このはちゃんに甘えちゃうかもしれないけど、私なりに色々と頑張るね。だからまた1年間よろしくお願いします!」
ペコッと頭を下げて、茜ちゃんなりの決意の言葉を貰った。
上げた顔にはまだ嬉し涙が残ってるけど、可愛い素敵な笑顔だよ。
「はい。私の方こそよろしくね、茜ちゃん。それにまだまだ遠慮しなくて甘えて来ていいからね。」
「うん!ありがとー♡」
また抱きついて来た茜ちゃんを撫でつつ、クラス替えを確認して一緒に教室へ向かいます。
私は1年生の時と変わらず3組で、担任は高橋先生だった。
これも何か意図があるのかな?と思ったりもしたけど、私としては嬉しかった。
それは先生として信頼してるとかそういうのもあるけど、それ以前に面白くて楽しいんだよね。
たまに突拍子もないことをやったりして困る時もあるけどさ。
さてさて、2年生生活もどんな事が待ってるのかな??
今から楽しみいっぱいです♪




