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〜13の決断と14の涙〜 -中編-(挿絵有り)

2024.04.08  加筆修正しました。

  話したい事があるんたけど、部屋に来てくれるかな?>>


私は目をギュッとして、送信ボタンを押した。

だってそうしないと······直視して送信ボタンを押す勇気がなかったから。

そして目を開けば直ぐに既読マークがでた。


>>今いくね


と返信がきて暫くすると、お母さんが階段を登ってくる足音がした。

ほんの数十秒なのにやけに長く感じる。一歩一歩足音が近づいてくるたびに、不安や怖さが溢れてくる······。

何をどう話そうか一生懸命考えてはいたけれど、それもお母さんが近づいてくる度に怒られるのではないか?泣かれるのではないか?と思ってしまい、結局纏まらなかった。



コンコン♪


「入るわよ?」


ドアがノックされて一言ことわりを入れてから、お母さんが部屋に入ってきた。

部屋の中は暗いからこちらからはお母さんの顔は見えない。だから多分向こうも私の顔は分からないはず。


「わっ······。真っ暗じゃない?? 電気も付けないで·····どうしたの?話ってなーに?」


お母さんの普段と変わらないその声を聞い瞬間、涙がブワッと出てきた。

何でたろ?どうして??

止めなくちゃと思っても一度出てきた涙は止まらず、ヒックヒックと声に鳴らない嗚咽が出るだけ。

お母さんが電気を付けるのも忘れて慌てて来てくれた。

そして私をギュッと抱きしめてくれた。


「大丈夫、大丈夫よ、このは。落ち着いて?ね??」


声をかけながら私の背中を擦ってくれたんだ。

何度も何度も······。

それが嬉しくて、心の中の恐怖や不安を吐き出すように私は泣いてた。



どのくらい泣いてたのだろう······。

正直分からない。

短かったかもしれないけど、長かったかもしれない······。

ただ随分と泣いたのは間違いのない様で、その証拠に私の顔が当たってた位置のパジャマは湿っぽさを通り越して、涙で濡れてしまっている。

でもそのお陰で、私はお母さんの腕の中で何とか落ち着いた。


「もう大丈夫?電気つけるよ?」


頷いて了承を示し、電気をつけた。

パッと明るくなる室内。

そこそこの間、暗い部屋の中に居たから思わぬ明るさに目を細めた。

次第に慣れてきてきちんと目を開ければ、眼の前にお母さんが心配そうな顔をして立っていたんだ。


「このはがあんなにも泣いたから、お母さんビックリしちゃったわ。」


「そうだね······。こんなに泣くなんていついらいだろう?ごめんね、お母さん。パジャマ濡らしちゃった······。」


「構わないわよ、そんな事。そこまでビッショリって訳でもないし、一晩くらいなら平気だから。」


何でも無さげに、いつも道理の口調でそう話すお母さん。

その何気ない心遣いが、また嬉しく感じる。


「それで、どうしたの急に?どこか痛いの?話せるの??」


(······うん、もう大丈夫。不思議とスッキリしたから話せるよ。)


と、心の中で呟き覚悟を決めたんだ。


「あのね、お母さん。実は······。」


話を始めました。




  ーーーーーーーー



「あのね、お母さん。実は私······生理が······その······遅れてるの······。」


決意を決めて、やっと最初の一言を何とか伝える事が出来た。

でもやっぱりというか、お母さんの顔が見れなくて結局は下を向きながら手をもじもじとしながら話をしたんだけどね。

そしてやはりというか、ちっょとの時間の沈黙が続いた。

その間、私の内心はハラハラドキドキだった。

沈黙が続けば続くほど、お母さんの次の言葉が怖くて······そして、お母さんが口を開いた。


「このは。それはいつ頃から?」


「多分だけど8月か9月辺りから来てないと思う。秋頃に一度気にしたんだけど、その時は深く考えずにスルーしちゃってね······。まだ、その周期が安定してないのもあったりしたからさ······。」


お母さんの問いかけに対して答える私。

ただ意外なことに、一度話してしまったら今度はスラスラと言葉が出てきたんだよね。

まぁ、この辺りは言い辛い事でないのもあったのかもしれないけれど。


そしてお母さんはというと、手を顎に当てて何やら考えてるみたい。

何を考えてるのかは分からないけど、普通に考えれば生理不順かな?

ただ周期がしっかりと安定してくる年頃って訳でもないから、ただの乱れ?って思ってるのかもしれないかな?

さすがに妊娠って線は考えないと思うし······。

それは私の事をよく知ってるお母さんからは、想像も出来ないだろうし、私自身もそれは同じだから。


でも後はコレを見て貰わないと、その先には進めないんだ。


「お母さん、ちょっとコレ見てくれる?」


「······何?」


ベットを降りてお母さんの正面に立ち、パジャマのズボンを膝まで下げる。そして今度はそのまま上着をめくり上げ、お腹を見せます。

おへその下辺りが不自然に膨らんでる。まだ極端に目立つほど大きくはないけれど、だけども太って脂肪がついたって言うには無理がある膨らみ方。


そもそもが私、太ったって言うほど身体が太ってないからね。

寧ろ普通だよ。

出る所はあるし、凹んでる所もある。

太ってお腹が出るには、もっと腕とか足に脂肪がついてそれからだから。


そんな私のお腹周りを見て、お母さんが息をのむほど驚いた感じが伝わった。

口に手を当てて必死に声を抑えつつ、でもその視線は私のお腹周りから決して外れない······。


「お母さん、私······赤ちゃんが出来たのかもしれない······。」




もの凄く長く感じる沈黙が続いてた感じがする。

どのくらいの時間かは分からないけど、やや落ち着いた(?)みたいなお母さんからの質問に答えていきました。

とは言っても私の話の再確認みたいな物がまずメインで。

で、そのあと新しい話としては特定の、例えば私がそういう子供の出来る特定の行為を許すような好きな男の子がいるの?とか、もしくは無理やり誰かに抱かれた?とか、そういのを聞かれた。

その時の辛そうな、聞きたくない、信じたくないって感じのお母さんの表情を、私も見ているのが辛かった。


で、その質問にも勿論きちんと答えたよ。包み隠さず正直に。

今の私にそんな好きな男の子がいるわけでもない事。

無理やりされた記憶もなく全然心当たりがないから、余計に困惑してるし不安なのって説明しました。



「大丈夫よ。このははお母さんの大事な娘で自慢の娘。いつも良い子で信頼してるから、何も心配しなくていいから。」


お母さんだって混乱してるだろうに、そんな中でも私を気遣ってくれる。

その気持ちが嬉しいのと同時に、心の不安を吐き出せた事に安堵してまた泣き出してしまった私。 


「ほらほら。そんな泣かないの。可愛い顔が台無しでしょ?」


ちょっとジョークも交えつつ、また抱きしめてくれたお母さん。

そんなお母さんの温もりに包まれて、次第に落ち着いていく私。

そして、最後にお願いを伝える事にした。


「それでね、お母さん。今度、病院に連れて行って欲しいんだけど、いいかな?」


「そうね······。事は急いだほうが良いし、明日行きましょうか。休みならなんとかなるから!」


そうして明日、病院に行くことになりました。

明日の予定が決まったあと、下の部屋に戻ろうとしたお母さんが不意に変なことを言ってきたんだ。


「今夜は一緒に寝てあげようか?ほら、葵もいるし?」


「えっ!? だっ···大丈夫だよー、もぅ······。そこまで子供扱いしないでー·······。」


もぅ、お母さんったら!

茶目っ気たっぷりにそんな事を言ってくるんだから。

13歳で親と一緒に寝るなんて、恥ずかし過ぎるよ。

そうは思うものの、これもお母さんなりの気遣いなんだよね。きっと。

ありがとう、お母さん。

お陰で心もスッキリしたし、元気もでたよ。



 

  ーーーーーーーー



翌朝。

今日も学校はお休みしてお母さんと車で病院、産婦人科へ行きます。

産婦人科なんて当たり前と言えばそうなんだけど、来た事ないからある意味では新鮮。そして緊張感。

そしてやはりというか、内科なんかと違って女性の方しかいない。

だから同じ女とはいえ、子供の私がいると凄く目立つ。

おまけにこの容姿だから、尚更ね。


挿絵(By みてみん)


なるべく目立たないようにと隅の方で座って待つこと、かなりの時間が経ったころに漸く呼ばれました。

意外と時間がかかるんだね〜、婦人科って。

まぁ予約とかを取ってないっていうのも、理由としてはあるんだろうけど······。

 

名前を呼ばれてお母さんと一緒に診察室へ入ります。

先生がこちらを振り向いた時、ちょっと驚ろいた仕草をしたんだよね。

それも私の見た目のせい?なんて思ったけど。



「お久しぶりです、先生。」


「あぁ、鈴宮さんでしたか。じゃあ、こちらの娘さんはもしかして、このはちゃんですか?」


えっ? えぇ······!?

どっ···どういう事?

なんでこの先生は私の事を知ってるの?

というからお母さん、この先生と知り合い??

ちょっと混乱しつつも、お母さんに尋ねようとした矢先にお母さんが先に口を開いた。


「お母さんはここで貴女と葵を産んだのよ。それでこちらの橘先生がその時の担当だったの」


「初めまして。このはちゃん。改めて私が以前に鈴宮さんを担当した産科医の橘です。こうして大きくなってから会うのは初めてだけど、このはちゃんと葵ちゃんを取り上げたのは私がそうなんですよ。尤も私も沢山の赤ちゃんを取り上げて来ましたが、このはちゃんの様な容姿の子は最初で最後でしたから、大変良く覚えていました。まぁ······あの時はかなり驚きましたが······今となってはいい思い出ですよ。お元気そうでなによりです。」


先生は昔を思い出して、懐かしがるように話します。

お母さんもお母さんで、そんな先生とちょっと談笑をしてるけど、私としてはそんな話聞いてないよーって感じ。

まぁ確かにどこの病院で産んだとかって聞いたことはなかったけどさー、でもせめてその位のことは話してくれてもいいじゃないのかな〜?お母さん?

ビックリしたじゃん!



「本日は······このはちゃんですか······。生理が遅れていると書かれてはいますが、どうなさいましたか?」


懐かしがる挨拶も終わり、先生が問診票を元に尋ねてきた。

問診票には生理が遅れてるとは書いたけど、妊娠をしているかも?とは書かなかったんだよね。

話すには違いないから書いても良かったんだけど、受付の看護師さんに見られるのが恥ずかしくて躊躇ってしまったんだよ。

で、先生に聞かれ昨夜お母さんに説明した事と同じことをお話した。

とはいっても内容は難しくはなく夏頃から来てない事、最近少しお腹周り(臍の下)が膨らんできた風に見える事。

でも、そういう経験はない事。


「そうですか······。ではまずは診察しましょう。」



諸々の診察をしてから看護師さんに案内されて隣の部屋に行った。

そこには不思議な台があって、これは何だろ?って不思議がって見てたんだ。


「鈴宮さん。こちらで下着を脱いでいただいて、こちらのカゴに下着を入れて下さい。脱ぎ終わったらそのままこの台に乗って頂きます。分からないことがあったら、声をおかけ下さい。」


って、看護師さん。

な、なるほど······。下を脱いでこの台に乗るのね?

事前にズボンじゃなくて、スカートとかワンピースとか下が楽なのがいいわよってお母さんが言ってたのが、こういう事だったんだなってようやく理解しました。。



その後の診察は思い出すのも恥ずかしかった。

服を脱ぐ前に問診から始まって基本的な身体検査、採血や尿検査などをやったんだけど最後は例の台へ。

下着を脱いで乗った台で足が開かれるのに驚き、カーテンがあるといえ先生にあそこを見られたり······。

必要な事とはいえ、めっちゃ恥ずかしかった!!

まさか婦人科の検査がこういうのだとは思わなかったし······。

触診、超音波、あぁ······あとがん検診もやったよね。

先生も私の年齢というか状況で慎重(?)に診てくれた感じは伝わってきたけど······。

うん。痛かった······。


診察そのものはそんなにかからず終わり、身支度を整えてからお母さんの所へと戻り先生を待ちます。

まだ違和感はあるけれど、取り敢えずそれは置いといて。

ドキドキする。どうだったんだろう?


先生が戻ってきて、椅子に座り開口一番にこう言った。


「結論から申し上げます。このはさんは妊娠しています。」




あり得ないと思っていたことが確定した瞬間だった。

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