ある日の春休み①-1 高1(挿絵有り)
ピンコン♪
春休みに入ったある日の夜、自室で勉強をしていた私のスマホにLI◯Eの通知のお知らせ音がした。
夜といっても時間は21時半過ぎくらいだから、そんなに遅い時間って訳でもないんだけどね。
勉強してる手を止めて、確認をしてみる事にしたよ。
何かは分からないけど、友達から来たって可能性が高いからね。
スマホのスイッチを入れると、待ち受け画面に出てくるのは当然雪ちゃんの写真。
みんなそれぞれ好きな写真や画像を設定してるけど、私は例に洩れずに娘の雪ちゃんです。
親になると子供の写真を設定するってよく聞いてたけど、やはり私もそうなったよね。
まー、それもいざなってみれば分かるというもので、可愛いんだから仕方ないんだよ。
画面をつければ雪ちゃんを見れてほっこりするし、アルバムを開けば保存してある写真や動画なりが何時でも好きな時に見れるから。
便利でいいよね〜って、ニマニマしながら毎日どこかで見てはいる。
そして今の私のスマホの待受。
雪ちゃんがお昼寝をしてる時の写真で、時期としては幼稚園に入園して少し過ぎた頃のだったかな。
子供あるあるの、いつの間にか寝てたってやつなんだよね。
暖かい日だったから大丈夫とは思ってたけど、念の為お腹だけは冷やさないようにって、タオルケットをかけてあげてから撮った写真なんだ。
うん!可愛い♪これだけでも癒やされるよ♡
もっと可愛い本物の雪ちゃんは、ピンク色のパジャマを着て隣のベットで寝てるけどね。
さてさて。
雪ちゃんの事は一旦置いといて、肝心の通知の確認をしないとだね。
そうしないといつまでたっても先に進まないからさ。
誰かなー?と思いながらスマホを操作して確認してみると、相手はなんと栗田さんだった。
栗田さんは、3学期の時に学校側からポスター撮影を頼まれた時に知り合った女性のカメラマンさんなんだ。
初めはやっぱり緊張とかしちゃったけど、その後は栗田さんのお陰で楽しく撮影出来たし「良い物が撮れたよ。」って言ってくれたんだよね。
撮影の合間とか終わった後にも話をしたりして、それはそれで楽しかった。
で、LI◯Eの交換もその時にしたの。
えーと······何々?
>>今、電話大丈夫かしら?
文章でなくて、わざわざ通話とはなんだろうか?
一応ある程度の検討はついてはいるんだけど、それはモデルのお話。
以前の撮影の時にそんな話をされたんだよね。
その関連のお話かなー?とは思っているんだけどさ。
小さな声にはなりますけど、大丈夫ですよ<<
そう返した。
だって雪ちゃんが側で寝てるから、起こしちゃう訳にはいかないからね。
場所を移して話したいのもあるけれど、その場所もないし。
ベランダはさすがにまだ寒いから無理だし、かといって家の別の場所っていうのもね······。
理由は、家族にこの話をしてないってのがある。
だから変に話を聞かれるとややこしくなってしまう可能性があるんだよね。
で、暫くしたらスマホがブルブルと震えて、電話がかかってきた。
スマホの画面には『栗田さん』と表情されてる。
「もしもし?このはちゃん?急でごめんなさいね。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それよりどうかしましたか?今度の撮影で何かあったとかですか?」
「そうなの。実は·····撮影の衣装が変更になっちゃって、その連絡と承諾をこのはちゃんに欲しくてね······。」
その会話でも分かるように、私は栗田さんの所で撮影のモデルさんを始める事にしたんだ。
まぁ、始めるに当たっていくつかお願いというか、条件みたいなのは出したんだけどね。
仕事を貰う私がこういう事をするのは駄目な事なのかもしれないけど、もしそれで撮影依頼が来なくなっても私的には別に構わないとは思ってる。
理由は将来、本格的にモデルとしてやりたいと思ってる訳じゃないから。
だからそれで来なければ来ないで、縁がなかったと思うだけ。
それと栗田さんに誘われた時に雪ちゃんもどう?と言われたけど、さすがにそちらは断ったよ。
ただでさえ目立つのに、そこに小さい雪ちゃんを入れてさらにってのは避けたいから······。
私がまだ小さい頃、この容姿で好奇の視線に晒されて来てそれなりに辛い思いをした事もあった。
それを雪ちゃんには、味わってほしくないって言う思いがある。
もちろん今後通う予定の小学校や中学といった学校生活において、それを完全に防ぐのは無理だというのは理解してる。
人というのは自分とは違うのを、突いたり仲間外れにしたりする傾向があるから。
それが物事の善悪がまだよく理解できてない小学校だと、特に躊躇だと思ってる。
だから、モデルという全国的に目立つ事はまださせたくないんだよね。
将来雪ちゃんが大きくなって、自分の意思でやりたいって言えばまた別だけども·····。
話は戻って、栗田さんの話が続く。
「でね。今回話が来た時に新しい新人の子がいるんですって、クライアントにこのはちゃんの写真を見せたの。制服の撮影のあれね。そーしたら、偉く気に入ってくれてさ、『洋服じゃ勿体ない!これにしよう!!』って変更されちゃったって経緯なの。」
「それは嬉しいですけど······で、変更先とは?一応聞きますけど、下着ではないですよね?」
撮影の条件の1つとして、下着撮影はしませんって伝えてあるの。
それは雪ちゃんという、1人の女の子の親っていうのが1番の理由なんだけどね。
雪ちゃんが大きくなった時に「雪ちゃんのお母さんって下着のモデルをやってた事があるんだね」って言われて、傷ついたり嫌な思いをしたりするのが嫌なんだ。
だから、下着はお断りした。
水着は保留してるけど、それも同じ理由で断るつもりではいるよ。
「それは大丈夫よ、心配しないでね。それで、その変更された衣装なんだけど、実は········なの。」
「········本当ですか?ドッキリじゃないですよね??」
「うん、マジ。まさか初っ端からそれかーと私も思ったけど、それだけこのはちゃんを気に入ったって事ね。まー、撮影して編集·印刷してってなると、雑誌の発売時期的にはアレに近くなるでしょ?そういう意図もあるのかもしれないけど······。それでどうかしら?私は悪くないと思うけど?」
「そうですね·····。」
目を瞑りながら考えてみる。
栗田さんの言う通り、確かに悪くはないとは思う。
そもそも私にそれを着用するという機会は訪れない予定だったらね。
それは雪ちゃんを産むと決断した時に、自身で決めた事だからさ。
なので今回仮にこれを着たとして、将来マジでこれを着た時に感動が減るなんていった事も起きないから、モデルとして着るのには抵抗はない。
でもまさか、こんな形で着る機会が来るなんて思わなかったな······。
写真を見せれば、お父さんやお母さんは喜んでくれるだろうか??
雪ちゃんも大きくなった時に見たら、喜んでくれるかな?
分からない······。
けど、折角の機会だから受けてみようかな?
そう思ってしまった。
「栗田さん。そのお話、お受けしたいと思います。」
「!!? ありがとう!じゃあ、その様に伝えとくからね。あと日程等は変更ないからそのままでよろしくね。」
「はい、分かりました。」
声のテンションが1段上がって、嬉しそうな栗田さん。
電話の向こうで飛び跳ねて喜んでる、そんな姿が浮かぶよね。
そして、もう終わりかな?と思った時に、もう1つあったみたいです。
「このはちゃんは紐なしブラとか持ってる?」
「いえ?持ってないですけど······?」
そんな事を聞かれた。
一体なんだったんだろう?と思う。
でも、聞くって事は必要だって事だよね?
でも私のサイズだとちょっとなー······と、少しもやもやしながら電話は終わりました。
ーーーーーーーーーー
撮影当日。
車で指定されたスタジオに向かいます。
ちなみに栗田さんの店舗は、隣町の駅の近くにあるの。
撮影スタジオも兼ねてるからとても広い店内で、子供向けの各行事用の衣装も沢山あったりして、様々なシーンの撮影も対応してるんだよ。
写真カタログを見せてもらったり話をしたりして着付けとかも対応してくれるらしいので、こちらで成人式の前撮りとかをお願いするつもりなんだけどね。
まー、まだお母さんには話してはないから、早めに話をしないととは思ってはいるんだけど。
車で運転すること数十分、本日の撮影スタジオに到着しました。
知らない場所でも、ナビがあるから楽だよね。
一応ナビの前に地図で場所と大まかなルートの確認をすることは忘れないけど。
なんでもナビ頼りってのは駄目だと思ってるからね。
私の出した条件その2。
撮影場所は出来たら近場。遠くても県内。
東京までは行けないです、と伝えたの。
栗田さんのスタジオで出来ればそれが1番いいのだけど、さすがに全部それって訳にもいかないだろうしね。
到着して車を停めてから、栗田さんに連絡を取ります。
それっぽい入口はあるんだけど、とごに行けばいいのかは聞いてないし、「着いたら連絡して」って言われてたから連絡を入れたんだよね。
暫くして、新井さんが建物から出てきてくれた。
手を振りながら歩いてくる新井さん。
思ってた入口とは違う、一人用の小さい扉から出て来たよ。
······良かった。あっちの大きい入口に入らなくて。
「新井さーん、おはようございます!」
「おはよーこのはちゃん。今日はよろしくね!」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
お互いにペコペコとお辞儀をしつつ、朝の挨拶をして。
挨拶もそこそこに早速、建物に入ります。
「それにしても、やっぱりこのはちゃん奇麗ねー。羨ましいわぁ〜。」
私の少し前を歩く新井さんは、時通り私の方を振り返りながらそんな事を言ってくる。
「褒めてくれるのは嬉しいですけど、普段と特に変わりませんよ?それより新井さん。今日はスタッフさん何人くらい、いらっしゃるんですか?」
気にはなってたので、尋ねてみました。
前回は学校のっていうので栗田さんと新井さんだけだったけど、今回は衣装替えもあるし雑誌の撮影だから、結構な人数はいるとはおもってるんだよね。
それがどのくらいの規模かは、全く想像が出来ないんだけどさ。
「う〜んと······。スタッフ自体は私達を含めて数人かな。ただ今回はクライアントさんも見に来るからしいら少し増えるわね。」
「そうなんですね。」
「メイクは私が担当するけど、着付けはもう少々増えるわ。衣装が衣装なだけに1人じゃ無理だし······。あぁでも、それも女性だから心配しないでね。」
そこは大丈夫、心配してないよ。
色々と叫ばれてる今の世の中で、女性の着付けに対して男性を入れるとかあるわけないしね。
その前に男性をそんな所に配置しちゃったら、セクハラとかで訴えられちゃうしね。
あと人数。
新井さんは数人とは言ったけど、多いのか少ないのか分かりません。
動画を撮るわけじゃないから、それよりは少ないんだろうけどね。
「本日のモデルさん、鈴宮このはさんをお連れしました〜。」
「鈴宮このはです。本日は宜しくお願い致します。」
まず最初に、撮影スタジオに案内されました。
スタジオに到着早々、新井さんがスタッフの皆さんに声をかけてくれて、みなさんが集まってきてくれた所で挨拶をしました。
「うわっ!きれいな子やねー!」
「何!?この子!!すっごく素敵なんだけど!?」
何時ものように驚きの反応を頂いた。
「うわぁぁ······こんなきれいな子、初めて見たよ···。まさか私が担当出来るなんて神様に感謝だわ!!あ、遅れてごめんね。私、新井さんと一緒に担当するスタイリストの田中です。宜しくね。」
「こちらこそ宜しくお願いします。」
私の衣装を担当してくれる、もう一人のスタッフさんの田中さんにもお会い出来て挨拶をして。
そんな和やかに談笑すること暫く。
「こらこらこら、何を皆で盛り上がってるのよ!?」
「あ、栗田さん。おはようございます。本日はよろしくお願いします。」
「おはよう、このはちゃん。今日は来てくれてありがとうね。助かるわ。」
遅れて現れた栗田さんと挨拶をして、今日の撮影についての説明を受けます。
聞き終わって控室へって時に、先程からウズウズしてたスタッフさんがいて······。
「ねぇねぇ、栗田さん?こんな素敵な子をどちらで見つけてきたんですか??鈴宮さんみたいな子なんて、日本どころか世界だって居ないですよ!?」
思わずアハハハって苦笑いしちゃったよ······。
まぁ確かに、このアルビノっていう症状事態が珍しいからね。
私も症例写真くらいしか見たことないし。
「このはちゃんとはね、ちょっと前に受けた学校関係の仕事でモデルとして知り合ったんだよ。それが切っ掛けよ。」
「学校って···もしかして大学生ですか?」
「ざんね~ん!このはちゃんは実は高校生です。女子高生!······今度2年生になるんだっけ?」
「はい。そうです。」
「うっそーー!?本当に女子高生!!?」
「超ビックリなんだけど······。その、まさかの女子高生があの衣装を着るのか······。」
「そうよ。まぁ、それは私も驚いたけどさ、クライアントがどうしてもこのはちゃんに着て欲しいみたいでね。そういう訳で今日は気合入れていくわよ!!世界に2人としていない、魅力的なこのはちゃんのあの姿をカメラに収めるんだからね!」
「うっす!」
「「はい!」」
「私達は生姿!他の人達は写真とかでしか見れないんだからね!あー···、この間のポスター撮影、受けて本当に良かったわ♪」
栗田さんのテンションがまた上がってきた。
この人はテンションが上がると面白くなるから見てて楽しくはなるんだけどね。
そして、否が応でもプレッシャーがかかってくる······。
でも今回の衣装、私は一生着ないつもりだっただけにワクワクドキドキしてる自分がいるの。
そんな貴重な機会をくれた、栗田さんやクライアント様に感謝だよ。
その皆様の期待に答えられるように頑張らないとね!!




