表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/230

ある日の修了式①-2 高1(挿絵有り)

佐藤君が私を見てる。

なんだろう?と思って声をかけてみれば、ブンブンと頭を振りつつ私の隣の方を指さして。

で、そちらを振り返って見てみれば、そこにいたのは隣のクラスの名前も知らない男の子だったのだけど、一瞬目があったらそっぽを向かれちゃった。


一体なんだったんだろうね?

そんなよく分からない状況の中で修了式は滞りなく終わり、あとは教室へ戻って高橋先生と諸々のやりとりをするだけです。


「このはちゃん、行こっ!」


と、立ち上がった瞬間に今度は私の前後にいた子に腕を取られました。

この子達は先程体育館に向かって来る時に、私の手を取って並んで歩けなかったんだよね。

だからか今度は手を取れて、凄く嬉しそうにしてる。


にこにこ♪

るんるん♪


そんな2人に引っ張られるようにして歩き出します。

そして私の後ろには来た時と同じ様にみんながぞろぞろといて。

まぁ、さすがに今度は制服の裾を引っ張られるという事はなかったけどね。



「ねぇねぇ、佐藤君。さっきのあれはなんだったの?」


「あ、鈴宮さん····。さっきのって···?」


「ほら、終了式の時のだよ。私の事見てたでしょ?」


「······あぁ!あれね···。」


私の前方を歩いてた佐藤君を見つけたので声をかけつつ近寄って、終了式の時に気になってた事を尋ねてみました。

最初はきょとんとしてたけど、終了式って言ったら思い出したみたい。


「何なに!?佐藤、このはちゃんの事、見つめてたの?」


「あぁ!私、このはちゃんの後ろにいたから分かってたけど、確かに佐藤くんってこのはちゃんを見てたねー」


「「「きゃ~~~!」」」


「ちげぇーよ。そんなんじゃねぇって······。」


私としては早く答えを知りたかったんだけど、こういったネタ?を他の女の子達が放って置くはずもなく、やっぱりというか案の定捕まってしまったよね。

男子にも女子にも揶揄われて、必死な佐藤君。

ちょっと悪い事をしちゃっかな······。

後でこっそり聞けば良かったと、みんなから突っつかれてる佐藤君を見ながら申し訳なく思う私でした。



「えっとな···鈴宮さんの隣りにいた4組の奴がずーっと鈴宮さんの事を見てたのに気が付いたから、目で牽制してたんだよ。そうしてたら鈴宮さんが俺に気が付いたって訳なんだけど······。まー、あんまし効果が無かったけどさ······。」


「ああ、あの子か〜······。」


「このはちゃん、分かってたの?」


「いや、最初は全然。途中で佐藤君が教えてくれたから気付いたけどね···。」


そうなんだよね。

基本的に私は前を見てるから横までは気にしてなかったし、それもたまたま佐藤君を見たから気付いたってだけで。


「なんだ〜。いいトコあんじゃん!」


「さっすが委員長!良く見てるぅ〜。」


バシバシと背中を叩かれて、今度は称賛されてる。

弄られたり称賛されたりと、忙しい佐藤君。

でも女の子達からそうされるのは嬉しいのか、その表情は満更でもなかった。


「それにさ、うちらの鈴宮さんを変な目で視られるの嫌じゃん。」


「「「「おぉ〜〜!!」」」」


「言い切ったよ!委員長!」 


「やるぅ〜〜!」「格好いいー」


「最後に株を上げたね、佐藤。 でも、このはちゃんはあげないからね!」


色々言われてたけど、最後のアレは何よ??

「あげないからね」ってさ。

私は誰の物にもなるつもりはないけどね。

強いて言えば、私は雪ちゃんの物。

雪ちゃんが求めてくれれば、私のできる範囲で叶えてあげるつもりだし。

それ以外は·····次点で茜ちゃんかな?こっちはまた別の意味があってだけどね。


それでも···


「気にしてくれてありがとうね。佐藤君。嬉しかったよ♪」


「お、おう···」


お礼は伝えます。

気にしてくれたことは嬉しかったから。

「ヒュ〜ヒュ〜」とか「やったな、佐藤ー」なんて、向こうはワイワイ。


やっぱり最後まで楽しくていいクラスだね。




「でも···鈴宮さんも気を付けてくれよな?」


「私?」


「このはちゃんが何かあるの?」


「何かしたっけ?このはちゃん···?」


この話も終わりかなって時に、ぼそりと佐藤君が呟いた。

私に注意してねって事らしいけど、はて···?

それは勿論周りにいたみんなにも聞こえはしてたけど、同じく???って感じではいるよね。


「あいつさ···その···目線が鈴宮さんのスカートを凝視してたんだよ。体操着姿ではあっても制服姿で集まるって、今まで殆どなかったろ?だから余計に鈴宮さんに惹かれたのもあるだろうけど、そこに加えてそのスカートの短さもあるし······。座るとその···あれが見えそうになるんだよ······。だからアイツ、そこを見てたみたいでさ······。」


「「「「「「!!!!??」」」」」」


「だから、まぁ、なんだ····。鈴宮さんを含めて女子の皆はスカートが短いから気を付けてくれよな?」


「「「「「「············」」」」」」



沈黙が流れる。

歩いてた歩みがいつの間にか止まってて、話を聞いてた女の子も佐藤君の側にいた男の子もみんなが止まった。


そして考えさせられた。

確かにスカートが短いのは自覚している。 

それは周りにある程度合わせるとか理由はいくつかあるけれど、その結果がこのスカート。

勿論私はわざわざ見せようとはしてないから注意はしてるつもりだし、あの時だって手で抑えてたから見えてはない筈なんだけど······。

それでも男の子は気になっちゃうものなんだね······。



「ありがとね、佐藤君。気を付けてはいたけれど、男の子から見るとそれでもあれなんだね。次はもうちょっと考えるよ。」


「おう···そうしてくれ。」


顔を赤くして照れながら、そう一言二言返してくれた佐藤君だった。

約1年間通して見てきた佐藤君は、何だかんだ言いつつも良くやってくれてるし、結構いい子だよなーって思ったよ。


「佐藤く〜〜ん?私達の事も気にしてくれてありがとうね〜♡」


「ほんとほんと!委員ちょー、本当格好いいね〜!」


「また来年も一緒になったら宜しく頼むよー?期待してるよ!」


「あはははは······。善処します···。」


またまた女の子達から背中をバシバシと叩かれてる佐藤君。

でも今度のはからかい半分とかそういうのではなく、心配してくれたっていう感謝的な気持ちが籠もってる、そんな感じのコミュニケーションだった。




「ただまぁ、私達も短いのは自覚してるから変に向こうを責められないのもあるよねぇ?」


「そうだね。だからって長くしてもダサいしね···。」


先程の佐藤君の話からスカートの話にはなったけど、お年頃の女の子には難しい問題だね。

どこまで改善するかにもよるけど、見た目の事も含めると実際はそなに変わらないと思うんだよね。


「来年度の始業式も含めて、寒い時期はひざ掛けでも持ってこようかな?それならまず大丈夫だろうからさ。」


「そうだね〜。そうなるかな?」


「そうしよう!それがいいよ。」


結局、そんな事で纏まった今回の騒動?的な事。

何かを穿いてきてもいいんだけど、それをすると体育の着替えが時間的に少し厄介になるんだよね。

それに夏は暑いからそういった物をとてもじゃないけど穿けないし。


それと高橋先生は今日みたく体育館に全生徒が集まるのは広さの関係でって言ってたから、来年度も集まったとしても1学期の始業式と3学期の終了式くらいだと思うんだよね。

その時の対策ならひざ掛けとかそういう小さい物でカバーすればいいんじゃない?って感じて落ち着いたよ。




  ーーーーーーーーーー




「じゃあ、成績表を配るぞ。呼ばれたら取りに来るように。相澤〜。」


何だかんだあって、いよいよ終わりが近づいてきた。

先生が成績表を配り始めて、名前を呼ばれたら前まで取りに行って一言二言貰っておしまい。

これもいつもの事。1学期も2学期もそうだったからね。

それでも学年末だから、他にも何か言われそうな気がしないでもないけど。

成績表を受け取った子は喜んだり沈んだり色々だね。

周りと見せあいっこしたりする子もいるし。



「鈴宮〜」


「はーい。」


私の番が来て、眼の前だけど立ち上がって受け取りに行きます。


「今年1年間、クラスの皆を面倒みてくれてありがとうな。感謝してるよ。本当にありがとう。2年生になってもみんなを宜しくな。はい、成績表。」


挿絵(By みてみん)


「はい。ありがとうございます。」


受け取って席に戻ります。

······あれ?

普通にお礼を言いつつ受け取って来たけど、よく考えたら高橋先生さらっと来年度の事言ってたよね?

聞き間違えたかな??


「どうしたの?このはちゃん??」


「なんか神妙そうな顔してるよ?何か言われた??」


「まさかー?私達なら兎も角、このはちゃんにそれはないっしょ。」


「だよねー。あははは······。」


みんなが私を心配しつつ笑ってる。


「いやね、さっき先生に2年になっても宜しく頼むなって言われてさ。私、もしかして来年度も高橋先生かなー?って考えてたの。」


「マジで!?」


「うん。」


私個人としは高橋先生を気に入ってるから、それはそれで嬉しい限りなんだけどね。

実際はどうなるか分からないけど、『2年になってもみんなを宜しくな』って言うくらいだから、多分そうなのかな?と思いたい。

まぁそれよりも、茜ちゃんと一緒になれるのか?

それが1番重要なんだけどさ。


「でもさ、真意は分からないけど仮に高橋先生だったら当たりだよ。」


「あぁ、そうかもね〜。」


「だね!」


「私そういう情報に疎いから全然分からないんだけど、そういうもんなの?」 


「うん。えっとね···、他のクラスの授業でもそうなんだけど、高橋先生って男だけど私達を変な目で見たりしないでしょ?それに男女平等で扱ってくれるから男子からも好かれてるし、気さくで面白くて楽しいし。まー、たまに突拍子もなく何か始めたりして困る時もあるけどね。でも、私達の事を大切にしてくれる。だから、担任の先生の中では人気NO.1なんだよ。」


「あ〜〜確かにそうかも。私も高橋先生のクラスっていいよね〜、なんて言われたことあるよ。」


「そうなんだ···全然知らなかったよ······。でも言われてみれば確かにその通りだよね。」



まさかそんなに高橋先生が人気だったとは思わなかった。

でも確かに言ってた通り、楽しいとか面白いとかって言うのもあるし、平等に扱ってくれるとか大切にしてくれるとか、そういうのもある。

私も身を以て体験してるからそれがよく分かるし、みんなもそれを知ってる。


そしてそれは他のクラスの生徒も授業を通してある程度、先生の人となりを知ってて人気があると。

私はクラス内だけでコミニケーションが完結しちゃってるから、他の情報とかを知らないんだよね。

帰宅部というのもあるから繋がりもないのが、さらに拍車をかけてるし。



「私さ、仮にこのはちゃんと一緒になれなくても高橋先生のクラスにはなりたいなーって思ってるんだ!」


「あー、私も!」

「うちもうちも!」



「次、宮原〜。」


「あ、私だ。行ってくるね。」


そう言って受け取りに行ってくる、みっちゃん。

やっぱり高橋先生は人気者らしいです。


「せんせー。私、来年も高橋先生がいいです!なれますか?」


おぉ〜。

早速みっちゃんが先生にストレートに聞いてるよ。

すごいな、みっちゃん。


「え!? 気持ちは嬉しいがクラス分けを作るのは俺の仕事じゃないから分からんぞ?始業式を楽しみにしてろ。ほい。」



成績表を渡されて、トボトボと帰ってきたみっちゃん。

でも行って早々に聞いてたから、成績とかそういうのについて特に何も言われてはなかったよね。

それにも気づいてないみたいだけど······。


「残念······。はぐらかされちゃった。」


「ドンマイ!」


「でもさ、『楽しみにしてろ』って事は、高橋先生のクラスになれるんじゃないの?そうじゃなければ、みっちゃんの質問に対して『楽しみにしてろ』なんて言わないでしょ?」


「えっ!?マジ!!?」


「うん···。そう考えるのが普通だと思えるんだけどね···。」


意外な所から出てきた名推理。

でも私もその話を聞いてて、そんな感じはしてたんだよね。

高橋先生の話し方を考えると、そう捉えるのが正しく思えるし。

という事は······。


「あーー!!じゃあ、さっきのこのはちゃんの事と合わせると、私って2年生でもこのはちゃんと一緒のクラスって事!!? マジ!?」


「「「うっそー!?」」」


「「いいなーー···」」


一気にテンション爆上がりのみっちゃんに対し、羨ましがるみんな。

私も同様の事を考えたけどね。


「ねぇねぇ、高橋先生ーー?私は〜?」


「うちも気になりますー!教えてくださーい!」


「「「せんせ〜♡」」」


私とみっちゃんに口を滑らせて、そこから推理された来年度のクラス替えについての事。

確定でないにせよ、おそらく同じクラスであるであろうと推測され、「じゃあ、私は??」と高橋先生にわっと群がるみんな。

終いには色っぽく先生にねだったりもして、何とか情報を引き出そうとしてるしね。


そんな感じのみんなに詰め寄られて、タジタジになってる高橋先生。

もうクラス分けは出来てるんだろうけど、まだ話す訳にもいかないらしく、どう収めようと四苦八苦してるよ。


どう解決するんだろうね??

時たま『助けてくれ〜』的な視線が来るけど、私にはどうする事も出来ないですよ?

私もクラス替えについては何も知らないし、そもそも先生の発言からそう考えただけですから······。



そうしてドタバタしながら、残りの成績表の受け渡しは進んで行くのでした······。





  ーーーーーーーーー




成績表を皆が受け取った後。


「みんな、受け取ったな〜?」


「「「「はーい」」」」


「では今回を総じると、みんなは数学をよく頑張ったな!鈴宮のお陰もあるだろうが、それでも何より皆が頑張った成果がこれだ!だから自信を持ってまた来年度も頑張ってくれ。勿論、他の教科もな。それに2年生になれば進路もある程度決めていかないといけない。面談なんかもやるし、そういった点も考えながら勉強することだ。」



進路か······。

そういのも考えないとだよね。

進学か、就職か。

進学だって大学もあるし専門学校もある。それも色んな分野の学校が。それは就職も同じで。

自分は何がしたいのか、学びたいのか。

答えが見つかればいいけれど······。



高橋先生の話は進んでいって。


「始業式の日はそのプリントに書いてあるように、成績表と春休みの宿題及び筆記用具を持ってくるように。午後からは入学式があるから部活もないし、弁当は要らんからな。」


「せんせー!クラス分けと教室はどうなるんですか〜?」


「クラス分け表は昇降口の脇の教室に大きく紙に書いて張り出してるから、それを見て確認をするように。ちなみに外から確認出来る様になってるからな。そこに出席番号も一緒に書いてあるから、各自確認して2年の各教室の下駄箱に入れるようにな。そんで教室ははこの上、最上階だ。おめでとう!」


「「「「えーーー?!」」」」


「上がるのダルいんですけどー!?」


皆から非難が出る出る。

高橋先生も「だよなー」って感じ。

まー、私達が上って事は授業に来る先生方も毎時間ごとに昇り降りしないと行けないから、私達以上に大変だもんね。


「まぁまぁ、そう言うなって。毎年だけど2年生は最上階だし、代わりにと言ってはなんだけど、3年になれば1階だから楽だぞ?」


つまり、1年生は真ん中で2年生は最上階、3年生は1階という構図らしいです。

そういう風に決まってるなら従うしかないから、みんなも納得みたいたけど。


「他に何が質問あるかー?なければこれで終わりにするぞ。······じゃあ、最後に。2年生になっても皆を担当出来るか分からないが、元気な顔を見せてくれな。そして、くれぐれも交通事故等には気をつける様に!以上、終り。」


「起立!令!」


「「「「「有難うございました!」」」」」


最後は何時ものように、起立からの令で挨拶をしておしまいです。

色んな事があった1年間。本当に早かったな。


挿絵(By みてみん)


「このはちゃん。行くよー?」


「はーい。」


最後はみんなと軽くお昼を食べに行くそうです。

最後の1年3組。

あと少しだけ楽しもっと!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ