ある日の修了式①-1 高1(挿絵有り)
「よし!今日は全員出席だな。まぁ、最終日だから休む奴はいないか···。」
そんな高橋先生の言葉と共に朝の点呼が終りました。
先生の言葉にもあった通り、欠席をする子もいなくて全員出席です。
そして最終日という言葉。
そう、今日は高校1年生の最後の日なんだよね。
「じゃ、これから修了式があるから皆、体育館へ行って整列するようにな。」
修了式か······。
私の中の知識だと校歌を歌って校長先生の長い話を聞いて終わるイメージがあるのだけど、ここもそんな感じなのかな?
というか······体育館??
「せんせー!体育館って、修了式はリモートでやらないんですか?」
「そうですよ〜。今までモニターだったのに〜」
うん、私もそう思ったよ。
同じ事を思った男の子が先生に聞いてくれたけどね。
だって今まで始業式とか終業式、あと朝礼的な物とかは教室の隅に置いてある大型モニターで写してやってたから。
それを今回わざわざ体育館で集まってやるとなると、当然そう思う訳で、それは皆も同じ思いだったみたい。
ちなみに全生徒で集まるそういった催し物をリモートでやってるから、全生徒で集まるっていうのは殆どないんだよね。
文化祭は集まるっていうのとはちょっと違う感じがするから、それを除くと体育祭くらいかな?
その位しか、みんなが集まる機会はないね。
「あ〜〜···それなー。先ずは3年生が卒業したから広さに対して余裕が出来たことな。あとは学年末の節目として全生徒集合で行いたいと言う事だな。ま、夏場と違って暑くはないし座って聞いてればいいだけだから、そう文句言うな。じゃ行くぞー。あ、今回は上履きだけでいいぞ。床にシートが敷いてあるから、体育館シューズに履き替える必要はないからな。」
疑問に対して、そう説明してくれた高橋先生。
で、その内容だけど、そう言われるとわかる気はするよ。
先生の言う通り、人数的な所が1番の難点だったんだろうから。
私達の学年だけでも相当数の人数がいるのに、それと同等数の人数が2年生と3年生にもいるんだもんね。
それだけいれば、さすがに体育館の容量的にも無理ってもんだよね。
「ほらほら。ゆっくりしてないで体育館に向かうぞ。第1体育館だから間違えるなよ?」
先生が念を押した後に教室を後にしました。
その後を追うように私達も席を立ち、体育館へ向う事にしました。
遅れる訳にもいかないからね。
「こーのはちゃん♪」 ギュッ!
「あ!私こっち取った!」 ガシッ!
「あぁ〜〜、取られちゃった······。」
「もう、最後なのに〜······。」
立ち上がって直後に両腕を取られました···。
分かってはいたんだけどね。
私の右腕を取ったのは言うまでもなく茜ちゃん。そして左腕は瑞穂ちゃん。
なにか知らないけど、最近移動する時に私の腕を取って歩くスタイルが女の子達の間で流行ってるらしいんだよね。
子によって腕を絡めるか手を握るとか色々なんだけどさ。
ちなみに茜ちゃんは腕を絡める派で嬉しそうにくっついてくる。
瑞穂ちゃんや彩ちゃん、志保ちゃんなんかは手を握る派。それでも指を絡めるとか普通に握るとか別れるけど。
私の腕を取れた茜ちゃんは、とっても嬉しそうだ。
甘えられる、甘えさせてくれる私という相手が出来たから、今までの想いが溢れてるんだろうけどね。
「茜ちゃん、幸せ?」
小さい声でボソッと聞いてみる。
「うん!幸せだよ。こういうのもしたかったんだ。ありがとうね、このはちゃん。」
いい笑顔で言われちゃった。
こんな顔されちゃったらダメって言えないよ。···まぁ、言うつもりもないんだけどね。
「じゃあ、体育館へ行くよ?」
「「はーい」」
返事を確認して、体育館へと向かいます。
第1体育館へは隣の校舎、こちらの校舎は職員室や会議室、特別教室とかがメインなんだけどね、そちらに移動した後にそこの1階から野外連絡通路を経て体育館となります。
ちなみに第2体育館へは、もうちょっと複雑で少し手間なんだけどね。
···テクテク···
クイッ
···テクテク···
クイッ。クイッ。
「······ねぇ?さすがにブレザーの裾は止めない??」
「「え!?」」
先程から私の手を取れなかった子が、せめてもとブレザーの裾を握ってるんだよね。
引っ張ってるわけじゃないから伸びはしないけど、気になって仕方がないよ。
おまけに歩きづらいのもあるし······。
「何もそこまでして、掴まなくてもいいじゃない?」
「だって、だってぇ〜···」
「今日が最後かもしれないじゃん!」
あららら······。
気にはなってはいたから伝えるだけ言ってみたけど、まさかの駄々をこねられてしまった。
この間の時も話題には出たけど、別々のクラスになる可能性が高いから寂しいのかな?
逆に考えると、そこまで慕ってくれてるという事でもあるから嬉しくも感じるけど。
はぁ···でも、仕方ないか。
クラスが別になる可能性があって、不安とか寂しいとかそういう気持ちは理解できるからさ。
「ねえ?茜ちゃん、瑞穂ちゃん。あと少したけど良かったら替わってあげてくれないかな?ちょっとだけど、みんなにもしてあげたいからさ。」
両隣にいる2人にお願いしてみたの。
「少しだけど、このはちゃん成分吸収出来たから満足だよ。」
「2人の気持ちも分かるからね〜。いいよー。」
そしたら2人は少し考えてたけど、快く替わってくるみたいで一安心です。
そして茜ちゃんと瑞穂ちゃんの口から出たセリフ。
······茜ちゃん。『このはちゃん成分吸収』って何よ?
私、何か出してるかしら??
まー、茜ちゃんなりの表現なんだろうけど思うけど。
「このはちゃんを後ろから見てるとさー、まるでカルガモの親子の行進みたいだね?」
「「「ブブッ!」」」
「それ、言っちゃ駄目じゃない!?」
そして誰かが呟いた「鴨の親子の行進だね」発言。
私が親ガモでみんなが子ガモって事?
まぁ、たしかに私が先頭で後ろにぞろぞろと並んで歩いてるから、そう見えなくもないけどさ······。
皆で笑いながら体育館に行ったよ(笑)
体育館に行くだけでも、このやり取りだからね。
楽しいクラスだよ、ほんとに。
ーーーーーーーーーー
さて、着いた体育館。
あとは整列して修了式をやるだけなんだけど、入ってみたら体育館の中は紅白の幕が壁につけてあって、卒業式の名残が残ってました。
パイプ椅子は流石に片付けてあったけど、この後、春休み中とかにまた入学式の準備をするんだろうなと思う。
だって私達も去年、ここで入学式をしたからね。
早いもんだよね〜と思っちゃうよ。
高橋先生が体育館のステージ前にいて、そこに整列です。
こういう時は男女別の2列で名前の順。決して背の順ではないの。
確か小·中学時代は背の順だった様な気がしなくもないけど······。
今は朝礼もリモートでやってて、皆でこうやって集まるのはほぼ無いから忘れちゃうよね。
私は『鈴宮』だから、真ん中辺り。
そしてちょっと窮屈にも感じる······。
前後左右に生徒がいるからね。もうちょっと間を開けられたらな?とは思うけどね。
まぁ、それでも座って聞けるだけでもありがたいけどさ。
さて、こういう行事の時の定番と言えばなんだろうか?
それはやはりというか、校長先生のお話だよね。
それはうちの校長先生もそうだったみたいで、先生の長〜いお話が終わって終わりかな?と思ったら、今度は生徒会長の話しだったよ。
しかも校長先生以上に、みんなが聞いてないような感じでさ。
可哀想にね······。
それはそれで思う所はあるけれど、それ以上に話が長いせいでお尻が冷えるんだよね。
式典で床にシートが敷いてはあるけれど、これは別に防寒シートって訳ではないから冷たいんだ。
パイプ椅子を並べる関係で床のキズ防止対策で敷いてあるだけだから。
そんな冷たさとも戦いながらの終了式。
ふと隣を見れば佐藤くんもそんな感じ···というか、私を見てる。
なんだろう??
「なーに?どうかした?佐藤君??」
本人だけに聞こえるようにボソッと問いかけて。
それでも周りには聞こえてるから、後ろの子に突っつかれて顔をブンブン振ってる。
何だろ??全然分かんないや。
ん?指差し···隣??
佐藤君が小さく指をつんつんと私の隣の方を指さしてるんだよね。
振り返って隣を見れば、隣は4組の名前も知らない男の子。
目が合ったと思ったら、顔を赤くして正面向いちゃった。
一体何だったんだろうね??




