ある日の休み時間④ 高1(挿絵有り)
「ねぇ、このはちゃん!見て見て!!」
休み時間に入って早々に声をかけてきたのは、私の後ろの席に座る瑞穂ちゃんでした。
「ん?」
と、振り返るとバサッと眼の前にプリントが現れたんだよね。
何だろ?って思ってよく見てみると、それは先程の授業で返された数学のテストの解答用紙だったんだ。
「見て!81点。やったよ!」
「おー!頑張ったね〜。おめでとう!」
「ありがと!このはちゃんのおかげだよ!」
パチパチと拍手をしながら瑞穂ちゃんに『おめでとう』と声をかけてあげます。
そう伝えると、頬を染めて嬉しそうに喜ぶ瑞穂ちゃんです。
そんな姿を見ると私も凄く嬉しくなるのと同時に、よく頑張ったよねって思う。
だって瑞穂ちゃんは、2学期の期末テストはもうちょい点が下だったからさ。
それを1年間のまとめに当たる今回のテストで、前回を上回ったからね。
それだけ頑張ったって証でもあり、更に結果も伴えばそれは嬉しいってもんだよね。
「じゃ、おいで?頑張ったご褒美だよ。」
「うん!」
そう言って腕を広げる私。
そこへ席を立ち上がり、座ってる私の腕の中へと入ってくる瑞穂ちゃんです。
「んふふふふ···。幸せだよ〜♪あ〜···頑張って良かったー。」
私が座ってるせいで、何とも変な体勢でくっついているけれど本人は至って満足気です。
頭をぽんぽんしながら、「ほんと、良く頑張ったね。」って労ってあげる。
そんな状態の瑞穂ちゃんを皮切りに、他のみんなが見せに来たの。
「このはちゃ〜ん!」
「鈴宮さーん。」
次から次へと、解答用紙を見せてくれるみんな。
女の子も男の子も隔たりなく、それはそれは嬉しそうな表情で。
その顔を見れば、結果を聞かなくても分かるってものだよね。
でも、一応聞いてみます。
だってみんな、話したくてウズウズしてるから。
「みんなは、どうだった??」
「見て!このはちゃん!うち、こんなに点が取れたよ♪」
「俺なんて今まで分からなくて教えてもらってた所がさ、今回解けたぜ!」
「私も出来たんだよー!」
「「俺も俺も!!」」
皆が口々にそれは嬉しそうに教えてくれて、私としても教えた甲斐があったってもんだよね。
みんなが少し落ち着いた頃、それぞれの答案用紙を確認してみると、概ね教えた箇所は出来てる模様だった。
うんうん、良かった良かった。
これならこのまま継続しつつ復習も忘れないでやってくれれば、2年生になってもそんなには躓かないかな?とは思う。
「じゃあ、女の子から順番に来ていいよ。男の子は······次の休み時間かな?」
「ほんと!?」
「やった〜〜♪」
「「「イェーイ!」」」
瑞穂ちゃんを私から離して、今回頑張った女の子達···まあ、点数云々は今回は関係なしに全員なんだけどね。
点数が上がった下がったは兎も角、頑張ったのは間違いないんだから。
そんなみんなを代わり番こに、ハグをしていく私です。
ギュッ。
ポンポン。
まぁ···相変わらず何とも幸せそうな顔をするみんななんだよね。
私はしてる側だからみんなの気持ちはよく分からないけれど、喜んでくれてるから、それもそれで良しかな。
今回のハグ。
これも勉強会の延長、頑張ったって事でみんなにしてあげてる。
男の子は希望者に頭を撫でくらいだけど······。
さすがにそれ以上は私もしたくはないし。
だからって女の子みんなにハグをするかって言われれば、別にそのつもりもない。
やっぱりそれなりの関係性があって、人となりを知った上でのこれがあるんだと私は思っている。
そんな感じで休み時間を利用して、みんなにハグをしていった。
とはいっても、まだ終わらないけど。
「やっぱりこのはちゃんは、教えるのが上手いよねー。」
「本当だね!」
「うんうん」
「マジ、それなー。」
「あ〜···幸せ♪頑張ってよかった···。」
代わる代わるハグをしていって、今は私の腕の中で幸せを満喫してる彩ちゃん。
そんな状況の中で話をしてる私達。
傍から見ると何とも変な光景ではあるけれど、これもこのクラスではすっかり普通になってしまったし······。
慣れというのは恐ろしいね。
そんな最中の中、みんなが私を褒めてくれるけど、それはちょっと違うと思うなと思う。
「皆が褒めてくれるのは嬉しいけど、それはちょっと違うよ。結果が出たのはみんながそれぞれ頑張ったからだよ。お昼休みも遊ばず勉強して、自習の時も頑張ったし。もちろん自宅でも勉強したでしょ?その頑張った成果が出たんだよ。私は切っ掛けで、コツを教えただけだからね。だから褒めるべきは私じゃなくて自分自身だと思うな。みんなもっと誇り持っていいと思うよ。自分の力だってね。」
私はみんなに伝える。
どんなに教え方が上手かろうが、最終的には本人が頑張って取り組まないと覚えられないし身につかないと私は思ってると。
そして私のした事はキッカケに過ぎない。
だから褒めるべきは私ではなくて、自分自身だよと。
「このはちゃん······。」
「な〜に?茜ちゃん?」
「いつもありがとうね。このはちゃんだって自分の勉強があるのに、2学期から私達の勉強をみて教えてくれて······。本当にありがとうございました。」
「「「「ありがとうございました。」」」」
茜ちゃんの言葉に釣られるように、みんなが律儀に揃ってお礼をしてくれた。
別にお礼なんてしなくてもいいのになって思う。
キッカケは教えてとお願いされて始めた事ではあるけれど、後半は私も楽しんで教えてたから。
それに色々と学べることも出来たから、私としても感謝してる。
「そんなお礼なんていいのに·····。でも、私こそありがとうね。付き合ってくれて。それに私もみんなに教えてるの楽しかったから良かったよ。」
「本当···?」
「うん。本当だよ。」
茜ちゃんにそう伝えたけど、本当に楽しかった。そして意外だった。
私自身、教えてるのがこんなに楽しいとは思わなかったんだよね。
雪ちゃんには本を読んであげたりとか歌を歌ってあげたりとかはしてるけど、あれはちょっと違うしね。
······そういえば葵はどうなんだろ?と、ふと思った。
家だと勉強の話はしないからよく分からないけど、やってる内容はそんなに違いは無いはずだと思う···。
帰ったら聞いてみようかな?
分からないとかあれば、教えてあげてもいいしね。
そんな事を考えてたら、不意に茜ちゃんが。
「ねぇ、このはちゃん。2年生になって一緒のクラスになれたら、また教えてくれるかな?」
髪をくりくりといじりながら聞いてくる茜ちゃん。
も〜、何この子!? ホントに可愛いなぁ······。
私の方が背が高いから、茜ちゃんからすると見上げる様になるんだよね。
約20センチくらいはあるから、頭1つ分くらいかな?
だから漫画なんかである上目遣いに必然となんるだけど、これがまぁ可愛いのなんのって。
それに保健室の件から甘える様な仕草とか、嬉しいって時の表情の現れ方?みたいなのが増えたんだよね。
たから、余計に魅力が増した様にみえる。
逆に寂しいとか甘えたいとか、そういった時の感情·態度の変化なんも私のみだけど見せるようにはなったよね。
そんな茜ちゃん。
クラスの女の子達からは小ささもあってか、妹やマスコットみないな感じで扱われてるんだ。
勿論いい意味でね。
それで私に抱きついてくる率が1番多いんだけど、そんな時もほのぼのとした視線でみんなが見てるんだよね。
お姉ちゃんに甘える妹みたいな感じでさ。
男の子も基本的には女の子と同じ様な感じで見てる感じなんだけど、でもそこはやはり異性なせいか、他の感情もチラホラと入ってるよね。
鈍い私でも、さすがに分かるくらいだからさ。
そういうのを考えると、茜ちゃんを好きになってる子は多いと思う。
間違いなくね。
特に3学期になってらから、魅力が増したから余計にね。
いつかは告白とかされるんじゃないのかな〜?と、思ってはいるけど茜ちゃん本人はまだそういうのは興味ないというのかそんな感じ。
······どちらかと言うと私に夢中で、その魅力も主に私に向けられてる様な気がするけれどね。
まぁ、みんなは茜ちゃんの事情を知らないから、そういう風に見えてるんだけなんだけど。
たけど今はそれでいいと思う。
結構プライベートな事だし、こうしてくっついて来るのに別の理由がありました。なんて言うのも、恥ずかしいだろうからね。
事情がありで仕方なく高橋先生には話したけど、それ以外は話すつもりもない。
私と茜ちゃんだけの秘密······。
話は戻って、茜ちゃんの問いかけには勿論OKしたよ。
さっき皆に言った様に楽しかったし、断る理由がないからね。
それを聞いて、茜ちゃんをはじめとした皆が喜んでくれたんだ。
ただ1つ懸念があって、それが問題なんだけど······。
「来年も、同じクラスになれるのかな??」
そう呟いたその一言が、1番の懸念で問題なんだよね。
私達にはどうすることも出来ないから······。
「一緒になれるといいんだけど······。」
「いいクラスだったのに勿体ないよね〜」
「このはちゃんと別れる事になったら、超辛いんですけど······」
「「「うんうん」」」
みんなが名残惜しんでくれるけど、本当にあと少しなんだよね。
この1年3組というクラスも生活も。
「うちらのコースって5クラスあるから、5分の1だろ?···無理かも知れん······。」
「だよね〜···。高確率でバラバラになりそうだよ······。」
先程まではテスト結果で喜んでたけど、今度はし~んと静まり返る教室。
みんなが凹んでるくらいに、私も残念に感じている。
クラスのみんなが1つに纏まっていいクラスだったから、余計に残念で寂しく感じるんだよね。
願わくば、また皆が同じクラスになれますように。




