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ある日の授業③ 高1(挿絵有り)

キーンコーンカーンコーン···


聴き慣れたチャイムの音が鳴り、授業の終了時間を告げました。

その途端に声には出ないざわつきが、教室の中に生まれたような気がした。

きっと早く授業を終わらせて休み時間にして欲しいって、そうみんなが思ってるんだろうなと思うとちょっと笑っちゃうね。


「では、今日はこれで終わりにする。あと、今からプリントを配るから確認するように。」


そんなみんなの無言の圧力か又は雰囲気を察したのか、先生がいそいそと授業の終わりを告げたよね。

まぁ、うまくキリの良いところで終わりにしようとは思ってるんだと思うけど、中々うまくいかないみたいだよね。


そして授業終了の合図と共に、先生は何かプリントを配るらしいです。

この先生にしては珍しいな?なんだろう??と思う私。

プリントを預かり自分のを取って後ろへ回します。そして確認。

······テスト問題?

中身を確認して「あぁ、なるほど」と、先生の意図を察しました。

意外と優しいですね。先生。


「もう明後日からは学年末テストだ。で、名前からも分かるように3学期のテストは1年間の総まとめテストになる。故にそのプリントだ。そういう感じで問題を作るから各自復習を兼ねてやってもいいぞ。」


そう伝えて先生は教室を出て行き、職員室に戻って行きました。

その瞬間から賑やかになる教室。 

教材をしまってお手洗いに行く子やお話をする子、中にはスマホでゲームをしたりとか色々だよね。


「こ〜のはちゃん♪」


「ん?どうしたの?」


そんな中、私は後ろの席の瑞穂ちゃんに呼びかけられました。

ちなみにこの後ろの席や右隣の席も含めて、私の周りは嫌われ物の席の筈だったのに、今は凄く人気らしいです。

1学期の席替えの時なんて「あぁぁ〜〜···」と明らかな絶望と落胆の声がしてたのに、今回なんて「やったー!!」って喜びの声があがるくらいだからね。

何がどうなるかなんて、ホント分かんないよね。



挿絵(By みてみん)


話は戻って呼びかけられたのでどうしたのかな?と思ったら、今配られたプリントはどう?難しいかな?だった。

答えにくい問いかけだけど、難しいかどうかは人によりけりだからなぁ······と思う。

出来る子には然程でもないだろうけど、わからない子には難しく感じるだろうし。



「まだざっくりと見ただけだから、はっきとは言えないけど、そんなには難しくはないんじゃないかな?」


「そう···かな?」


「うん。このプリントは先生なりの優しさでさ、さっき言ってた様に1年間で習った総まとめ問題の例題になってるの。だから一通りやってみて間違えた箇所や出来なかった所をチェックすれば、どの辺りが出来ないとか忘れてるとかが分かると思うよ。例えばだけど、最近やった箇所は出来るけど1学期で習った範囲を忘れてるなとか、そういう感じでね。」


「···なるほど、そういう風に活用すればいいんだね?」


「そうそう。1年間のまとめだから習った箇所しか出ないし、ノートを見返して忘れてる所を重点的にやればいいんじゃないかな?そうすればテストも点数が取れると思うよ。」


「·········」


「どうしたの?」


「いや〜。相変わらずこのはちゃんって、教え方とかそういうのが上手だなーって思ってさ。」


「そう?」


「うん。数学もこのはちゃんに教えてもらって、上達してるって実感があるからさ。だからこのはちゃんって、教師に向いてるんじゃないかなーって思うよ?」



う〜ん···私が教師ねぇ······。考えた事もなかったなぁ。

今、こうしてみんなに教えてるのも、元々お願いされたからって言うのが始まりだしね。

それに教えるついでに私の復習にもなって丁度いいかな?って思いもあったんだよね。

それが教えて行く内に、瑞穂ちゃんはそう感じたみたいだね。

あ、でも、将来雪ちゃんに教えてあげられるのは、いいかもしれないな······。



  ーーーーーーーー



『ママー。』

『な~に??雪ちゃん?』

『勉強が分からなくて···教えてくれないかな〜?』


雪ちゃんに勉強を教えてとお願いされて、雪ちゃんの部屋に向かうんだ。

それで机に向かって座る雪ちゃんの背後から覗き込むようにして、教えていって。


『ここはね?こうして、ああして···で、こうなるの。分かる?』

『···あ!本当だ!さすがだね、ママ!』


そして雪ちゃんに喜んで貰えて、私も尊敬の眼差しで見てもらえて······。



  ーーーーーーーー



······いいね♪

別に教員免許を取らなくても、普通に家で教えることは出来るけどさ。

でも折角教えるならただ勉強が出来るだけではなくて、何をどう分かりやすく伝えて教えるか?とか、そういう工程とかも工夫して考えないといけないよね。


改めて勉強の大事さを知る私でした。






 ―――英検を受けると決めた翌日の話―――



英語の授業が終わった直後、私は英語担当の蛭川先生に声をかけられたんだ。

それで今、廊下でお話をしてます。


「昨日、高橋先生から聞いたよ。検定を受けてくれるんだってね。ありがとう。」


「いえ···こちらこそ、ありがとうございます。私も検定とかには興味があったんで、お言葉に甘えました。」


「そこは気にしないでいいよ。こっちとしても興味本意で鈴宮にお願いしてしまった事だから気にしないでくれな? それと私としては、やれる範囲で頑張ってくれればいいからさ。」


「はい。分かりました。」


昨日、話を受けた時も思ったけど、元々興味があったから全然嫌じゃない。

寧ろありがたいくらいだから、先生には感謝してます。

だから、やれるだけ頑張ります!!


 

「それでな本題なんだけど······。鈴宮はぶっちゃけ授業内容は理解しちゃってるだろ?」


「······えぇ。まぁ···。」


正直に言うと、授業でやってることは分かるんだよね。

文法とか長文読解とか、そういうのは問題なく出来るから。

後はまだ知らない言葉が沢山あるから、それを覚える事くらいかな?



「だから3学期の残りの授業と、あと来年度も私が英語を受け持つ場合は、授業は聴いてなくていいよ。指したりもしないし、黒板も写さなくてもいい。その変わりテストだけはいい点をとってくれな?その代わりに授業中は英検の勉強をしててくれて構わないから。テスト後のノート提出は、その勉強したノートを出してくれればキチンと評価するからさ。」


「大丈夫なんですか?そんな事しちゃって·····?」


「まぁそこは私立だからな。ある程度は教師の自由にも出来るし、生徒がテストで結果を出せば問題ない。鈴宮は他の先生からも高評価だからテストの点を今と変わらず出してれば、誰も文句は言わないよ。」


なら安心は出来るけど······。

でも考えようによっては、週5時間ある授業をこちらに回せるのはありがたいね。

これなら大分進められそうだよ。


「それにさ、分かってる事、理解してることをそれでも聴いてるのは、辛いだろうし時間が勿体ないだろ?ほら、あれだよ。頭脳が大人な子供が小学生をやってるのと一緒さ。」



······それって、もしかして···あの名探偵くん?

私の数少ない好きな作品だけど······まさか、蛭川先生の口からその作品が出るとは思わなかったよ。

思わず笑ってしまって、キョトンとしてた蛭川先生だった。


 



 ――それから数日後の授業中―― 



先日、鈴宮に「私の授業は聴いてなくていいよ」と伝えたのだが、今日の鈴宮は何をしてるんだ?? 

授業をしながらチラッチラッと見てはいるんだが、何か紙を見ながら一心不乱に書き写しているんだよな。

それにさ、その書き写しがまあ早いこと早いこと。

あそこまで早く書ける様になるにはかなりの努力がいると思うが、それでも凄いわ。

私達が使ってる日本語だって、早く書き写すのは大変なのに······。



「残りの時間はプリントを配るからそれをやるように。テストを見据えた内容にしてあるから、これが出来る出来ないで点がとれるか分るからな。」


そう伝えて最前列の生徒に用意したプリントを渡して行く。当然鈴宮にも。

アイコンタクトをしながら渡したら頷いてくれたので、伝わったのだろう。

授業時間もあと25分ほど。

テストがもう直ぐというのと学年末というので、授業としてもそんなにやることはない。

新しい箇所をやり始めると中途半端になるから、残りは予習、復習がメインになるのかな?

そう考えながら教室の隅から椅子を取り出し腰掛けつつ生徒の取り組みを眺める。

主に鈴宮を。



·······早ぇぇ〜!! 手がスラスラと動いてるよ······。

他の生徒は手が動いてる子もいれば、止まってる子もいる中で···いや、それが普通か。

やはり授業内容を理解してるのは間違いないな。

あっさりと終わって、また書き写しに戻る鈴宮。

う〜〜ん······。

やはり理解してる授業を受けさせるのは勿体ないよな〜と、思ってしまう。




座ってるだけと言うわけにも行かないので、時通り歩いて取り組みの様子を見て回る。

悩んでる子もいるがテストを意識して作ってあるので、敢えてアドバイス等はしない。

自分がどこを出来ないのか?そこを把握してもらうのも大事だから。



鈴宮の席に来た。

終わってたプリントを回収して、ついでにボソッと聞いて見る。


「なぁ···それ、何を写してるんだ?」


ずっと気になってた事を尋ねてみた。

見た感じでは、小さく折り畳まれた紙っぽいが···?

それに当然ながら、その内容は英文だったけどな。



書いてた手を止めて、見上げてくる鈴宮。


······美しい。


高校生離れした整った顔立ちに、あの赤く輝く瞳···って、何を考えてるんだ!?私は!!

思わず変な事を思ってしまった事を忘れようと、頭をブンブンと振ってしまった······。



挿絵(By みてみん)


「これはニューヨーク・タイムズ紙ですよ。色んなジャンルの事が出るとあったので、手っ取り早く色んな事に触れられる新聞を元に勉強することにしました。」


俺の変な行動を気にもせず、素直に答えてくれた鈴宮。

やっぱ良い子だわ···。


「おぉ。それは···いいんじゃないか?頑張れな。」


「はい。ありがとうございます。」




椅子に座り直し、先程鈴宮から預かったプリントを採点してみる。

······うん。正解。満点。文句なし!!

ペンを置き、はぁ〜っと小さなため息をつきながら鈴宮を見る。


何を書いてるんだろう?とは思ってたが、まさかニューヨーク・タイムズ紙を写してるとは思わなかったよ······。

本当に鈴宮には色んな意味で驚かされるな。


というか、タイムズ紙って日本でも購読出来たのか···知らんかった。

それにさっき見た所、あのスピードで写してる割には綺麗な文字で書いてあった。

あれはあれで凄いなと思う。

俺でもあれは真似は出来ないからな。


日本語でもそうだけど写す元となる文章を見て、次はノートを見て書く。

それを交互に繰り返して書くのが普通にだけど、彼女はノートを一切見てない。

写す文章をだけを見て、右手はひたすらに動いてるんだよな。

それで改行のタイミング辺りで一度チラッと確認して、また視線は写す文章へ戻ってる。


そんなやり方で尚且つあのスピードなのに、書いた文字は綺麗ときた···。

本当にあんな事が可能なのだろうか?と、思ってしまう。

俺だったら、グチャグチャの文字になる自信があるからな。



しかも、あれで内容も理解してたら凄いよな。

スピードも理解力も必要になるから、それはそれでいいんだけどさ。


それと、俺はニューヨーク・タイムズ紙は読んだことは無いが、恐らくスラスラと読むのは苦労するだろうなと思う。

新聞なだけあって、知らない言葉なんかも沢山あるだろうし。

日本語は知らない言葉でも、なんとなく読めたりはする。その意味や内容は分からなくても。

それが英語だと、まず読めないからな。

読み方が分からない、何を表す言葉なのかも分からない。そして調べて覚える。

その繰り返し。



やることは大変。

だけど、やったことは無駄にはならない。

進学にしろ就職にしろ、今の世の中で英語がスラスラと出来るというのはかなりのアドバンテージになるから。

会社の中でも外国人の起用はどんどん増えているし、来日する外国人も日に日に増して来てる世の中。

そんな中で通訳などを含めて英語が出来る人材を、企業側もお店も様々な所で出来る人を沢山欲しがっているしな。




頑張れ!鈴宮。

応援してるぞ。

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