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あるの休日⑥ 高1(挿絵有り)

冬真っ只中のある日の休日の事。



「お母さん、そろそろ行ってくるね。雪ちゃんをお願いします。」


「はい。行ってらっしゃい。時間は2時間くらいだっけ?」


「うん。そうだね。順調にいけばそのくらいで終わるって言ってたから、そんなものなのかな?」


「分かったわ。こっちも多分出掛けてると思うから、終わったら連絡頂戴な。」


「はーい。じゃあ雪ちゃん、ママちょっと出掛けてくるからお婆ちゃんと一緒にいてね。」


「うん!ばばといる〜。まま、いってらーしゃい。」


雪ちゃんをギュッとしてなでなでしてからの、行ってきますです。

これもいつもの、私が学校や何が予定があってお母さんに雪ちゃんを預けて出掛けるときのルーティンの一つ。


で、今日は土曜日。学校はお休みです。

そんな休日に、雪ちゃんをお母さんに預けてまで何の用があるのかと言えば、以前に頼まれた学校の来年度用の掲示用ポスターとか諸々用の写真撮影があるんだよね。

それで学校へ出掛けるという訳です。


車庫へ行って鍵を開けて、車に乗り込みます。

そう、今回というか今日は車で学校へ行っちゃいます。

ダメじゃない?って思うかもしれないけど、運転免許は持ってるし今日は休日で休みだから問題ないと思うんだよね。

それに18歳になれば、大抵の子は在籍中に運転免許を取りに教習所に通ったりもするしね。



エンジンをかけて出発です。

やっぱり車は早いね〜&寒くない。

あ、厳密にはまだ暖房が出ないから室内は寒いか。でも、直接風に当たらなくて済む分、その意味では寒くないよね。

時間も自転車で10分ちょいかかるのが、たった数分で着くのだからやっぱり車は早いねって思っちゃった。

いい感じ♪



車を駐車場に停めて、職員玄関から校舎内に入ります。

そこからまずは、指示されてた事務室へ行きます。

扉をノックして中から返事があったのを確認してから室内に入ります。


「ポスター撮影で来た、鈴宮このはなんですが······。」


「ああ、鈴宮さん。わざわざ休みの所に来てくれて本当にありがとうね。」


そう言って出迎えてくれたのは、以前話を聞いた時にいた事務方の先生でした。


「まずは今日のカメラマンさんに紹介するから、付いて来てくれるかな?場所は大会議室だよ。」


「はい。分かりました。」


そう返事をして、先生の後をついて行きます。

大会議室か······懐かしいね。

かくれんぼ番組の撮影でスタッフさんの待機場所だったり、モニターでみんなの様子を見てたりとか大変お世話になって、もう2ヶ月経ったんだもんね。早い早い。

そしてそれ以降は相変わらず使う事も入る事ない、スルーされてる部屋。先生方は使ってるのかもしれないねどね。

早いと言えば大会議室に着くのも早いです(笑)

まあ、直ぐそこだから。


先生が先に中に入り続けて中に入ると、まぁ凄かった。

白いスクリーンとか、照明がセットしてあって即席の写真スタジオみたくなってたんだよね。

照明はどことなくテレビ撮影の時みたいな雰囲気を感じる所もあったけどね。



「栗田さん。こちらが今年のモデルをお願いした、鈴宮このはさんです。宜しくお願いします。鈴宮さん、こちらがカメラマンの栗田さんです。」


「初めまして。鈴宮このはと申します。どうぞ宜しくお願いします。」


先生が紹介してくれた本日の担当カメラマンさん。

栗田さんというらしいです。

その方に頭を下げて深々と丁寧に挨拶をします。


「あら!あらあらあら······。綺麗なお嬢さんねー。これなら凄くいい写真ができそうよ!! あ······ごめんなさい。私が今回担当するカメラマンの栗田です。よろしくね。」


「はい! 色々とご迷惑をお掛けするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。」


お互いに挨拶を交わして握手をしました。

最初、カメラマンって聞いて男性ってイメージがあったけど、女性で良かったって思ったよ。

別に変な衣装を着るだとかポーズをするわけじゃないけどさ、それでも男性の方に撮られると緊張しちゃいそうな感じがするから。

その点、同棲の方ならまだ多少はリラックスして出来そうな感じがするんだよね。


それに栗田さんってカメラマンさん。なんだか楽しそうな方の様な気がする······。


雪ちゃんのお食い初めとか七五三とかの記念撮影でア◯スってスタジオに行った時も、スタッフさんは皆女性で尚且つ明かるい楽しい人達だったんだよね。

多分これも緊張とか慣れない衣装着て泣いたり落ち着かない子がいて、その子達を楽しませたりして笑顔を引き出さないといけないから、そういう人達が選ばれるんだと思う。

だからきっと、栗田さんもそんな人なんだろうな。


私も迷惑をかけないようにしなくちゃだね。





  ーーーーーーーーーー



「ではまず、今回の流れでなんですが······。」


と、栗田さんが説明してくれた撮影の手順。

手順といっても簡単に纏めると、ここで写真屋さんに行ったみたいにポーズをとってあとはひたすら撮影するというだけらしいです。

どんな仕上がりになるのかイメージしやすい様に、以前に撮ったというポスターを持ってきて見せてくれたんだ。


うん。

こらなら非常に分かりやすくて、尚且つイメージしやすくていいね。

で、ポスターには背景に校舎とか写ってるのもあるんだけど、これは後で合成して仕上げるらしいです。

実際に外で撮ってもいいみたいなんだけど、天気の関係とかで駄目な時もあるらしいから、最初から室内で撮影なんだって。

確かに今日はいい天気だけど、いつもいい天気とは限らないもんね。

それにこの地域の冬は北風が強く吹くから、髪も服も風になびいちゃって撮影どころじゃなくなっちゃうか。



一通りの説明を聞いた後は、また事務室に戻り撮影用の新しい制服をお借りして着替えです。

着替えってことで先程までは?というと、なんと私服でした。

なのでさっきまで、変な感じがしてたんだよね。


休日といいつつも、部活動をやってる所もあるから。

外でも運動部が練習をしてるし、校舎内でも吹奏楽の音が聞こえてたりもして。

玄関から更衣室に入るまでの間にも、文系の部の生徒さんにもチラッとすれ違いもしたし。

向こうは制服。こちらは私服。

私服で学校にいるという現実に変な違和感を感じてたって訳ね。



さてさて、着替えた新しい制服だけどもサイズは問題なし。

それもそうか。

以前にサイズは教えたけど、結局は採寸し直したからね。

それで違ったてたら目も当てられないよ。



「あら良かった!サイズは問題ないみたいね。それに私服も素敵だったけど、やっぱり制服姿も似合ってるわよ〜♪ 綺麗だしスタイルも良いし、なによりその髪が素敵よね。私も欲しくらいよ。······じゃ、行きましょうか。」


「あ、ありがとうごさいます。」


制服を用意してくれた女性の先生にそんな風に言われて。

つい照れちゃったけど仕方ないよね。

それにこの髪を褒めてもらえるのは正直いって嬉しいんだ。

小さい時はそれこそ色々とあったけど、今はとても気に入ってる。

似たような髪の人は世界にも少しいらっしゃるけど、この髪色的なものは私と雪ちゃん、2人だけの物だからね。

だから余計に···ね。



「では栗田さん、後は宜しくお願いします。」


「はい。お任せ下さい。」


そう言い事務の先生は戻って行かれました。

さて、いよいよ撮影だね。

ちょっとドキドキしてきたよ。


「よろしくお願いします、栗田さん。」


「はい。こちらこそ、鈴宮さん。こちら私のアシスタントで働いてくれてる新井さんね。」


「アシスタントの新井と申します。よろしくお願いします。」


お互いに改めて挨拶をして、先程不在だったアシスタントさんも紹介して頂き撮影が始まりました。




最初は立ち姿で撮影です。


挿絵(By みてみん)


緊張しないようにって思ってたけど、やっぱり駄目だった。

撮影されてて自分でも表情が引きつってるなぁ〜って、分かるくらいだもの。

そのせいなのか、栗田さんにも伝わってしまったんだよね。


「う〜ん······緊張してるね。初めてだから仕方ないと言えば仕方ないんだけどね。」


「すみません。緊張しないようにって思ってはいるんですけど······。」


私は正直に謝ります。

初めてとはいいつつも、足を引っ張ってるから。


「大丈夫、大丈夫よ。どんなトップモデルでも緊張はするんだし、そもそもこういう撮影は初めてでしょ?なら仕方ないわよ。······それより鈴宮さん? 何が楽しかった事とか面白かった事とか、そういうのを何か思い浮かべて見て。あとは好きな物でもなんでもいいから、とにかく自分が笑顔になれる物、それを使ってる所とかをイメージすると笑顔が出やすいよ?」


フォローしてくれた栗田さん。

ついでに笑顔の出し方というか、そういうアドバイスもくれた。

そして私は、なるほどな〜って感心しちゃったよ。

さすがプロのカメラマンさん。引き出し方が上手だよねって。


私の好きなもの、笑顔になれるもの。

それは1つしかないよね。

そう、雪ちゃん。私の可愛い可愛い愛しの愛娘。

雪ちゃんの事を想えば笑顔なんて······。



!!!???



バシャバシャバシャバシャ!!!


「いいよいいよ!!鈴宮さん!! その笑顔!その笑顔がいいよ!!」


先程と打って変わって、もの凄い勢いでシャッターが切られてる。

テレビとかでたまに見る、報道陣に囲まれてカメラをバシャバシャ切られるシーン。

まさしくそれだね、今行われてるのは。


栗田さんが教えてくれた笑顔の出し方。

それを実践してみたら、一気に流れが変わったので一安心です。

それと凄いなとも。

私にとっての雪ちゃんパワーはやっぱり偉大で凄い。

よし。このままの感じで引き続きやってみようかな。



「じゃあ、次はちょっとポーズ変えてみましょうか?」


そう言う栗田さん。

その後ろでアシスタントさんがポーズをしてたの。

コレを真似してって事なのかな??

こんなポーズあったっけ?とは疑問に思ったけど、取り敢えずは撮影に集中しなくちゃね!

 



  ーーーーーーーーー



その後も引き続き、これでもかってくらい沢山撮ったよ。

立ち姿から始まって次は座り姿。 

用意されてた腰掛け台に腰掛けてパシャパシャ!

笑顔は雪ちゃんの事を考えれば自然と出ちゃうからOKだったんだけど、何故か照れ顔とか困惑顔?なんかも要求されたよ?

こんなの絶対に使わないよね?なんて思ったけど、でも取り敢えずは撮影しないとだからね。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)




「いいわー♪すっごく良いわよ!このはちゃん!最っ高よ!!!!」


「そんなに······ですか??」


撮影の合間の休憩タイム。

椅子に座りながら頂いたお茶をちびちびと飲みながら、声高々にそう豪語する栗田さんに聞いてみたんだよね。

だって栗田さん。撮影の途中から凄いテンションだったんだもん。


「もちろんだよ!! まずこのはちゃんのその容姿。とっても綺麗で美人で可愛い。肌も白くて綺麗だからメイクも最小限で時間もかからない。身長もモデルとしては申し分ないし、スタイルも抜群。

同じ女性として羨ましいわ〜。」


「あ、ありがとうございます?」


迫力に押されて思わず疑問形で返しちゃったよ。

栗田さんのとなりでアシスタントさんもうんうんと頷いてるしさ。


「それにね、今のモデルって結構細めなのよ。私としてはそれはちょっとどうかなー?って思ってるのだけど、その点このはちゃんは理想そのものね。今回で言うとその足ね。スカートから覗くその健康的な太腿は魅力的過ぎるわ! 男の子なんて大変なんじゃないかしら······?

ねぇ、このはちゃん?このはちゃんは何か運動とかしてるでしょ??」


「あ、分かります?」


「それはね。伊達にプロカメラマンとしてやってないわよ。」


なるほどーと感心する私です。

一応、体型維持目的で自己流ではあるけど、やってることは伝えました。


「なるほどね〜。でも、それはそれでいいと私は思うわよ。実際に結果にも現れてるからね。

それに最後はやっぱりその髪と瞳ね。白なのか銀?なのかは分からないけど、幻想的で綺麗だわ♪白色っていうだけでも世界レベルで希少なのに、そこまでの髪の長さで癖もないとなると奇跡レベル?いや、もっと上か?そこにその輝く瞳······」


そこまでべた褒めされると嬉しいけど、やり辛くなるんだけどなぁ······。


「ねぇ、このはちゃん。モデルやってみない?初めはアルバイト感覚でいいんだけどさ。」


「モデル、ですか······?」


そういえば、以前にも声をかけてもらったなって思い出しました。

その時は断ったけどね。


「うん。私の所だと服は新作物とか売り出したい物とかが来るんだけど、掲載先は折込チラシかネットショップの方ね。

まあ、今は時代的にネットショップの掲載の方が多いけど。

あとは季節的な物で水着とか浴衣、振り袖とか着物。

ああ······、水着とかは抵抗あるなら断わってくれても大丈夫よ?

他のモデルさんもいるから、そちらにお願いしたりも出来るし。

給金も初めは安いけど、物がうんと売れたりするとグッとアップしたりするわね。」


「そうなんですね〜······。」


「それとね、給金と関係なしに撮影した洋服なんかも貰えることもあるから、あながち悪くないかもよ?」


ふむふむ。偶にでも貰えたりするなら、私のとしては有り難いかも。

私は太りさえしなければ、サイズ変更なんてもうしないからね。

それに長期の休みになると昼間は空く日もあるんだよね。

雪ちゃんも基本は休みたけど、特別保育とかでお願いしてる日も多々あるからさ。


「このはちゃんなら、きっと売れるわよ!そこまでのレベルの女の子はそうそういないもの。」


まー、まずいないもんね。この髪色自体がさ。

症例写真では見たけど、実際は何人いるのやら······。

それに目も。

先程の写真で見た人も私みたいな目はしてなかったから、これもかなり珍しい部類みたいなんだよね。



「まぁ······、あと1人はいますけどね。」


あと1人はいる。私の雪ちゃんがね。


「そうなの??」


凄く不思議そうというか、半信半疑風な感じで聞き返してくる栗田さん。

そう思うのもまぁ、当然か。

そして私はこちらに持ってきてたバッグからスマホを取り出して。

「はい」っと、スマホから雪ちゃんの写真を見せます。



「「·········」」


画面を食い入るように見つめる栗田さんとアシスタントの新井さん。

そして長い沈黙。



「······何?この子? このはちゃんそっくりだけど、このはちゃんの小さい時??」


「いえ、私の娘です。5歳。」


ガシッ!と手を掴まれた。


「ねえ!このはちゃん!!やろう!いや、お願いします!是非お願いします!! 娘さんとセットで!! 娘さんは子供服から段々と少女向けに着ていってもいいわね!しかも、これなら親子でお揃いコーデなんてのもいけるわ!!!」



熱く語りだした栗田さん。

う〜〜ん······言わなければ良かったかな??



「ねぇ、栗田さん?」


「······なに?」


「話は変わるんですけど、栗田さんの所で成人式の前撮りとかって出来たりします?」


「成人式?もちろん出来るわよ。振り袖も貸し出しから撮影まで、私も新井さんも着付けも出来るからね。任せなさい!って、もしかして·····?」


「はい。実は······。」




そんなこんなで盛り上がる休憩タイム。

そしてその後、無事撮影も終わる事が出来て楽しく良い撮影が出来ました。

なかなか良い話や楽しい話も聞けたり出来たりで、色んな意味で良かったです。



ただモデルの件はちょっと保留中です。

魅力的ではあったけど、考える時間も欲しかったから。

まぁ、雪ちゃんについては答えは出てるというか、始めから決めてはいるけれど。




さてさて、どうなるのかな······。

このはちゃんの写真撮影の様子をお送りしました。



このはちゃんの笑顔は年上の方にも効果的面です。

そして本人も気づかない適応能力&学習能力の高さ。

そんなこのはちゃんです。

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