ある日の出来事②-1 高1(挿絵有り)
「う〜〜、寒い寒い。」
3学期に入ったある日の朝の事。
私はいつもの様に自転車に乗り学校へ通学中です。
もうこの時期になると非常に寒いよね。
温暖化の影響で昔より暖かいよ、と言うことも聞くけれどやっぱり寒い物は寒い。
私は寒さには強い方だと思ってはいるけれど、それでもね。ちなみに私は暑さの方が苦手です。
寒いのは着込んだりと対策をすればどうにでもなるけれど、暑いのはどうにもならないし······。
私も雪ちゃんにも、熱中症にはかなりの気を使ってるの。
それだけでも疲れちゃうけどね。
さてさて、無事に学校に無事に着きました。
自転車を漕いでると最初は寒いけど、段々と身体は温まってきたよね。足以外は。
自転車を駐輪場に停めてロックして、昇降口へと向かいます。
私は登校時間が遅い方ではあるけれど、それでもまだちらほら登校してくる生徒がいるんだよね。
見てると私と同じ自転車の子が中心だけども。
まぁ、バス利用は時間が決まってるからこの時間には来ないし、電車も似たようなもの。
それにこの後に来る電車組は遅刻確定かもしれないけれど······。
そんな生徒達を見つつ昇降口へ向かう私。
この時間クラスメイトには合わないからサクサクと歩いて進むの。
で、着いた昇降口。そこの下駄箱。
この高校の下駄箱はロッカータイプで扉がついてるタイプなんだ。鍵は付いてないけどね。
小中学校の時は扉のない、いわゆる靴や上履きが外から見えてるタイプだったんだけどね。
扉にはそれぞれにクラスと出席番号が書いてあるの。
《1−3 ①》こんな感じに。
まぁ、これもみんなで使い回していくものだから、それの対策なんだと思うんだけどね。
それと、ここは昇降口(下駄箱)が2箇所あるんだよ。
人数が多いとの校舎が横に長く作ってあるから、それに合わせて東と西側に昇降口があって全学年5組までは西側、6組以降は東側っていう感じ。
それに合わせて階段も東と西にあるから、そこまで混んだりもしないんだ。
さて、上履きを出して教室へ行こう。
昇降口といえ中だから外よりはいくらか暖かいけど、教室はもっと暖かいからね。
早く教室に行ってぬくぬくしたいかな。茜ちゃんが温かくてギューっとするといいんだよね♪
そんな事を考えながら扉を開けて上履きを取り出して靴を中に······あれ?
······何か入ってる?何だろ??
取り出してみるとそれは紙だった。白色で長方形で封がしてあって。
······これって、もしかしてアレ?アレだよね?
うわ〜〜、まだこういうのあったんだ···。初めて見たよ。
漫画の中でしか見たことのなかったシチュエーションがまさか起きるとは······。
どうしようかな?捨てちゃダメだよね?と、手に持ったソレを見つめながら悩む私でした······。
ーーー茜ちゃん 視点ーーー
朝の始業時間前のクラス内は賑やかです。
お昼休みの時と違って、この時間は皆がそれぞれの仲の良い子と小グループで話をしてたり読書や宿題をやってたりと様々。
私も友人と仲良くお話しをしてるけどね。
そしてそろそろ、みんなの···いや、私の大好きなこのはちゃんがやって来る時間。
みんなも何気なくチラッチラッと時計を確認してるし、私も確認しつつそわそわしてる。
まだかな?まだかな?って、誕生日プレゼントを待つ子供のように······。
ガラガラガラ
「おはよー」
って、扉が開いて何時ものようにこのはちゃんが入ってくるんだけど、今日は何か様子が違う気がする?
「おはよー」には違いないんだけど、何となく元気がない?
毎日よく見てる私だから気付いたこと。
······体調悪いのかな?もしかして生理とか??
「このはちゃん、おはよう。どうしたの?なんか元気ない??」
気になったので聞いてみることにしました。
「あぁ、茜ちゃん。おはよー。分かっちゃった?」
と聞いてきたこのはちゃん。
「うん······何となくいつもと違うかなって感じたよ?」
このはちゃんにはそうは言ったものの、かなりの確率でいつもと違うと教室に入って来た時に気がついた。
声の感じもいつもは元気!って感じたけど、今日は少し沈んだ感じだった。
それに表情もいつもより陰りがあったからね。
このはちゃんは普通に装ってたつもりなんだろうけどさ。
「んーと···元気がないって訳じゃなくて、悩み事?」
「悩み?」
私は頭に?マークを出しながら、はて、なんだろ?と考える。
それは会話を聞いていたクラスの皆も同じな様で······。
「これなんだけどね。どうしようかな?って思っててさ。」
そう言いながらこのはちゃんが鞄から取り出したのは、白くて長方形で一見するとハガキにも見えるそれ。
このはちゃんから渡されてマジマジと眺める私。
そしてそれは、私も初めて見る物だった!
「ラブレタぁーー!!?」
「「「「「ラブレター!!??」」」」」
私が驚きのあまり大きな声で叫んでしまった。
そしてそれを聞いたみんなの声が綺麗にハモったそれは、紛れもなくラブレターと呼ばれる物でした。
「ねぇ、このはちゃん。それどうするの?」
「中身もう詠んだ??」
「何で書いてあったのかな?差出人は??」
みんながそれはもう、水を得た魚の様に目をキラッキラにしてこのはちゃんに聞いてる。
もちろん私も凄く気になっている······というか、胸中は物凄く不安でいっぱい。
まだ中身は読んでないみたいだけど、仮にラブレターだとして呼び出し場所?に行くのが行かないのか。
はたまた申し出を受けるのか断るのか。
このはちゃんは以前に「誰かと付き合うとかそういうのはないよ」って言ってたけど、それでも凄く不安だよ。
私の大好きなこのはちゃんが何処の誰だがも分からない人に取られちゃう······。
誰が誰をどう思おうが自由だけど、それでもやっぱり辛い。
「で、内容なんだけどね、ラブレターって感じでもなくて名前も書いてないからどうしようかなー?って思っててさ。見てみる?」
そう言ってこのはちゃんがラブレター?らしき物をみんなに差し出してくれた。
早速皆で見てみることにしたよ。
えーと······何々??
『1年3組、鈴宮このはさんへ。 突然のお手紙申し訳ございません。だた直接話せる機会がないので手紙を書かせて貰いました。お伝えしたいことがあるので、もしよろしければ本日の放課後に第2体育館裏へ来ていただけないでしょうか?』
「「「キャ〜〜〜!!」」」
「これってやっぱりあれだよ!」
「そうだよね!」
「告白だよ。こ·く·は·く♡」
「「「キャ〜〜!」」」
「しかも、体育館裏というド·定番!漫画やドラマみたい!」
「「「ねー♪」」」
もうみんな大盛上がり。
でも仕方ないよね。こんな告白イベントなんてそうそうないし、女の子はこういう恋愛事は好きだからね。
でも私の心の中は穏やかじゃない。
このはちゃんまさか、行くの?行く気なの!?ヤダ!行かないで!!
先程からずっとそう心の中で叫んでる。
あの手紙を破いて無かった事にしたいけど、そんな事をしたら嫌われちゃう。
それはもっとイヤだ!
「で、このはちゃんはどうするつもり?行くだけ行ってみるの?」
必死に心の声を抑えて聞いてみた。
なるべく出来る限り平静を装って、バレないように······。
「どうしようかなって悩んでる。イタズラって線はないのかな?」
そっか······。
このはちゃんが元気なさげだったのはコレの扱いの悩みだったかのか。
確かに差出人名はなく、体育館裏へ来て下さいしか書いてないけど、皆が言うようにその後に告白って感じがするよ。
どこの誰だか知らないけど、このはちゃんの素敵な笑顔を奪いやがって······。
「手紙を貰ったのが男子ならイタズラの線もなくはないだろうけど、このはちゃんの所に来た物だから、流石にそれはないんじゃないかな?とは思うよ。みんなはどう思う?」
「そうだねー。女子の所にこんなイタズラをするバカは流石にいないと思うな。」
「うん。私もそう思うよ。」
皆にも聞いてみたけど、概ね同じ様な意見みたいです。
あーあ······イタズラだったならまだ良かったのになって内心は思ってる。それはそれで許せないけどさ。
あとビビって放課後に来ないパターンもありそうたけど、手紙を出した時点でそれはないかな?
「じゃあ、行ってみようかな·····。」
「「おお!」」
あぁ······残念。
あんまり乗り気じゃないみたいだけど、取り敢えず行くことにした、このはちゃんみたいです。
私としては行って欲しくなかったけど、優しいこのはちゃんの事だから相手の事を考えてるんだろうな······。
「ねぇねぇ、このはちゃん。もし告白だったら受けるの??」
誰かが一番気になる事を聞いてくれた。
行くと決めたなら残る問題はコレだよね。受けるか断るか。
「え?まさかそれはないよ。私は雪ちゃん第一だからね。子供を置いといて自分の恋愛をするとかはないよ。それに子供を産んじゃったせいなのかは分からないけど、今更恋愛したいとか男性を好きになるとか、そういう気持ちが湧かないんだよね······。そんな訳だから付き合うつもりはないよ。これも断ってくる。」
良かった······。
どこの誰かは謎だけど、やっぱり答えは最初から決まってるみたい。
私はこのはちゃんが好き。とっても大好き。
クラスメイトの誰より人一倍抱きついてくる私を理由も聞かず、いつも受け入れてくれてるこのはちゃん。
そのお陰で心が癒やされてる私がいる。
赤の他人なのに、このはちゃんをお母さんみたいと思ってしまってる私。
だからか、ラブレターの話を聞いてる内にこのはちゃんがこの話を受けたらどうしよう?
知らない男にこのはちゃんが取られちゃうって考えてる私がいた。
顔も名前も分からないラブレターの差出人にヤキモチを焼いたんだと思う······。
本当に子供みたいだよね······。
選ぶのはこのはちゃんだから、私にどうこう言う権利はないけれど、でも出来たら何処にも行ってほしくない······。
私の側にいて欲しい。そう思う。
我儘な私だね······。




