ある日の出来事①-3 (挿絵有り)
ーー 彩ちゃん 視点 ーー
『事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!』
昔の映画でそんなセリフを聞いた覚えがある。
刑事ものの映画だった気がするけど、内容は面白かった。
そんな映画のセリフみたいな事件が私達の教室で起きた。
事の始まりは今朝の点呼の時。
先生が出席を取り終わったあとに、このはちゃんに用事があるからと呼び出したこと。
朝から?と思ったのは私だけではないハズ。
現にこのはちゃんも不思議そうに思ってた様な感じだったから。
それに休み時間とかならまだ分かるけど、朝からってのが意味不明。
おまけに「1時間ほど時間を貰うよ」と先生が言ってたことも。
「じゃ、行ってくるね〜。」
と、先生とこのはちゃんが教室を出て行ってから私達は集まりました。
緊急会議です。
「朝から呼び出すってどうしたんだろ?」
「本当だよね。休み時間なら分かるけど···。」
「私さ、このはちゃんの後ろだけど、このはちゃんも不思議そうにしてたよ?」
みんなで、う~~ん···と悩みます。
結局いくら考えても分かるはずもなく、先生が来たのでお開きです。
1時間目の休み時間。
このはちゃんがまだ帰ってこない。
またもや緊急会議パート2です。
「帰って来ないね···」
誰かがポツリと言えばみんなして「うん···」と。
「高橋先生、1時間くらいって言ってたよねー?」と、確認として言ってみれば、
「言ってた言ってた。」「本当になんだろう···」
みんなして悩みます。暫くして、
「あ!もしかして···」「「「なになになに!!?」」」
みんなが一斉に食いつきました。
「もしかしてだけど···雪ちゃんの存在が学校にバレた!とか? 偶に聞いたことない?在学中に妊娠したら退学処分になるとかなんとか?」
「あ〜、聞いたことあるね、それ。」
「その延長で子供がいるのがバレて揉めてるとか??」
うぬぬぬ···ないと言い切れないのが怖い。
担任の高橋先生すら文化祭まで知らなかったくらいだから、学校側も知らなかった可能性は大きいよね。
ガラガラガラ···
「あ、このはちゃん帰ってきた!?」
みんなで一斉に振り返ると、次の授業の先生でした···。
2時間目授業中。
凄く変な雰囲気。それは多分、先生も察してるハズ。
だってまだ、このはちゃん帰ってきてないんだもの。
30分経過。50分授業の半分が過ぎたけどまだ来ない。
40分経過。まだ来ない···。
45、46、47、48、49分···とうとうこのはちゃんは2時間目授業中も帰ってこなかった。
緊急会議パート3。
「これってまじヤバくない?」
「そうだよね?2時間も帰ってこないって普通じゃないよ!?」
みんなで話しながら、次まで帰ってこなかったら先生に問い詰めに行こうか?と話してた時に、
ガラガラガラ···
「ただいまー」
「「「「おかえり〜〜♪」」」」
このはちゃんが帰ってきました。よかったよー。
でも、なんだか疲れてる様な感じがしなくもない??
「ねぇ、このはちゃん。2時間も帰って来なかったから心配したんだけど、どうしたの?」
みんなが気になってた事を聞いてみます。
「ごめんね。みんな。内容についてはちょっと言えないんだ···。心配掛けたのに、本当にごめんね。」
このはちゃんが本当に申し訳なさそうに謝ってます。
「ううん、言えない事なら仕方ないよ。」
「そうだよ。ただ私達、てっきり雪ちゃんの事がバレて、学校を退学とかにされちゃうんじゃないかと心配したんだけど、そういうのじゃない??」
一番気になってた事を聞いてみます。
「雪ちゃん?あぁ、そういうのじゃないから、退学とかは心配ないよ。」
「そっか。それなら良かった。」
みんなも一安心だよ。
もうこのはちゃんは、男女みんなを含めて大事なクラスメイトで友達で、癒やしの存在なんだよ。
そんなこのはちゃんが急に居なくなったら、纏まってたクラスがバラバラになるようなそんな感じがする。
そのくらいに、このはちゃんは私達にとってなくてはならない存在なんだよ。
3時間目の授業からは、さっきまでの変な雰囲気が一切なくなってた。
やっぱりみんな、心配してたんだね。
良かった良かった♪
でも、そんな良い雰囲気は長くは続かなかった。
お昼休みになるといつもはみんなで囲んで食べてるのに、
「ごめん!お昼も先生に呼ばれてるんだ。一緒に食べられなくてごめんね!」
そう言うなり、お弁当を持って行ってしまったこのはちゃん。
また暗くなる私達。
「本当にどうしちゃったんだろうね?このはちゃん···。」
誰かが呟いたその一言はみんなの心境を表してる様でした。
楽しいはずのお昼休みが···このはちゃんはどちらかというと、聞き手側の方なんだけど、居ないだけでこうも変わってしまうものなんだねと感じてしまうのでした。
このはちゃんが出て行ってから暫くして。
ピンポンパンポーン♪
『緊急放送です。』
そんな声がスピーカーから流れてきました。




