ある日の授業①-1 高1(挿絵有り)
2学期の始まった9月のある日の事。
カリカリカリカリ
しんと静まり返った教室に、先生が黒板に文字を書く音だけが響いています。
そして深緑色の黒板に白いチョークで文字や数字が並んでる。
この光景もよく観察してみると、意外と面白いよね。
先生によって凄く個性が出てるの。
まず、文字や数字が読みやすかったり読み難くかったり。
読み難いのは苦労するよね···。なんて書いたのか分からない先生もいるしさ。
チョークはペンと違って上手に書きづらいのは分かるんだけど、でも先生なんだからもう少し上手に書いてって思う時もある。
次はチョークの使いわけっていうのかな?
白色チョークのみって先生もいれば、赤や青といった色を上手く使ってくれる先生もいる。
普通は重要な箇所などを色を変えて書いたり線を引いたり囲ったりしてくれるけど、白色のみの先生はそれがないの。
口頭では、「ここ重要だぞ。」とか「テストに出るからな。」なんて言ってくれるけど、単色のみだから聞き逃すと何も分からないんだよね。
ちなみに、今やってるこの数学の先生は白色のみ。
私は内容が理解できてるからいいんだけど、そうじゃない子にはちょっと分かりづらいんじゃないかな?と思ってしまう。
だからって、先生に何か言えるわけじゃないからなぁ···。
後は、生徒の授業態度に対しての反応、対応かな。
特に午後の授業になると、ウトウトしてたり寝てる生徒も出てくるじゃない?昼食の後って眠くなるからさ。
それに対して注意するか、スルーするか。
そこが先生によって違うよね。
ただ、スルーする先生でも内申にはチェック入れてそうだから怖い気はする。
私?
私は大丈夫だよ?
伊達に教卓の前に自ら志願して座ってる訳じゃないから。
《時間は有限》
家に帰ったあとの事も考えると、学校での学習時間を大切にしないといけないからね。
カリカリカリと先生が黒板に問題を書いた後、 この問題の解説をしてくれて、その後に教科書の例題をやります。
さくさくと解いていく私なんだけど、高校の基本科目だと数学はやっぱり難しくなるよねと思う。
もちろん学校そのもののレベルや選択してる学科でも授業内容が違うから一概にとは言えないけどね。
まぁ、それでも数学と英語はその基礎的な部分が分からないと、次の応用とかのステップが難しくなるからね。
例題の取り組み時間が終わった後、この先生は回答に生徒をランダム指しするんだよね。
間違ったからって叱るわけじゃないんだけど、そういうのをやるのがみんな分かってるから真剣そのもの。
真剣にやるとこは良いことだと思うけどね。
そんな風に思ってると、やっぱり指されたよ。
「はい。」
返事をして黒板へ。
この先生の特徴その3。
生徒を指して黒板に自分の解いた式を書かせるんだよね。
古風というのかよく分からないけど、それで答え合わせをするんだ。
カリカリカリとチョークで回答を書いて終了です。
正解だったので何もなかったけど、違う場合は説明が入るけどね。
そーゆー感じの授業なので、みんなの緊張感的なのは結構あるかな。
それ故に嫌いな授業のトップ3に堂々入ってるっぽいです。
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「ねぇ、このはちゃん。よかったらちょっと数学教えてくれないかな?」
お昼休みにご飯を食べてると、志保ちゃんにそんなお願いをされました。
珍しいなと思いつつも、お願いを受けることに。
「うん、いいよ。じゃあ、こっちでやろっか?」
みんなより少し離れた場所の机と椅子をお借りします。
「えっと、どの辺りが分からない?」
お互いに机を挟んで向き合って、一先ず聞いて確認してみます。
「今日の授業のとこなんだけどさ。先生の説明がよく分からなくて······。」
そう言って今日のノートを見せてくれたんだけど、···黒板のそのままだね。
もちろんそれでもいいんだけど、あの先生チョーク単色だから分かりづらいんだよね。
「ちょっと待っててね。」
そう伝えると私は自分の机からノートを引っ張り出してきて、開きます。
「今日の問題はここをこうして、次はこれを掛けて計算していくと出来るよ。」
「なるほどー。ちょっとやってみるね」
私のノートを見ながら解いていく志保ちゃん。暫くして、
「やった!出きた!」
出きたようです。どれどれ?と確認してみると、うん、大丈夫。出来てるね。
「じゃあ、次はノート見ないでやってみようか?」
「はい。」
今度はノートを見ないでやってみて貰います。
やり方は変わらず数字が違うだけだから、大丈夫だと思うんだけどね。
暫くして、「出来たよー。」と声が上がったので、確認してみると出来てます。
「うん、大丈夫。出来てるよ。頑張ったね!志保ちゃん。」
「えへへ。このはちゃんのおかげだよ。ありがとう。」
「そんなことないよ。それでね、今ノート見ないで解けたから、これを家で解き方を見ないで何回もやってみて。数字を変えてもやり方は一緒だから、覚えちゃえばもう大丈夫!」
「わかったよ。家でもやってみるね。……ねぇこのはちゃん。このはちゃんのノート見てもいいかな?」
「うん、いいよ。」
私のノートを見たいらしいので、見せてあげることにしました。
すると志保ちゃんは、「わ~すごい!」とか、「分かりやすいね。」なんて言ってパラパラ捲って見てます。
すると気になってたのか他のみんなも来て、「何なに〜?」なんて言いながら一緒にノートを見てて、志保ちゃんが頑張って説明してる。
「ねぇ、このはちゃん。明日新しいノート持ってくるから、このはちゃんの解き方の所だけ写させて貰ってもいいかな?先生のより凄く分かりやすいんだよね。」
「私のなんかでいいのなら、構わないけど……いいの??」
「うん!」
うん!って…、そんないい笑顔でうなづく志保ちゃん。
そんなにいいんだろうか?と思う私。
でも、本人がいいならそれでも良いかな。
次の日のお昼休みの後半。
机を挟んで向かい合わせに座って、解き方を教えながら一生懸命にノートにとる志保ちゃん。
「ふむふむ」とか「う〜〜ん…」なんて、頷いたり悩んだりしながらも頑張ってる。
その様子を見てた数学の苦手な子や分らない子が、翌日から参加してくるという現象が起きてきて、その輪が広がってくるのは私はまだ知らない。




