ちょっと先の未来の出来事② (挿絵有り)
今、私は小学校に来てます。
予定よりもちょっと早めに家を出て、駐車場に車を停めて。
車が停められて良かったと一安心する。だって遅く来ると停めるのに苦労するんだよね。
バッグを持って鍵を締めて、受付へと向かいます。
正門から入って校庭脇を歩きながら、懐かしいなぁと昔を思い出します。
そう、ここは私がかつて通っていた小学校なんです。
校舎の外見や体育館が再塗装や改修で綺麗になってるものの、雰囲気までは変わりません。
あそにプールがあってとか、あの校舎の3階のあそこは音楽室だとか図書室はあそこだったなとか、まだまだ直ぐに思い出せるね。
ここまであっという間に来ちゃった感じがして寂しくもあるけれど、こうして学校の雰囲気を味わうとその当時の楽しかった事や大変だった事とか色々思い出せます。
そんな懐かしの小学校に何しに来てるのかというと、今日は雪ちゃんの授業参観日なんです。
入学式とか最初の参観日などは、この容姿でやっぱり驚かれたけど慣れちゃば皆さんどってことないですね。
まぁ、男性の方はまだチラチラと見られてはいますけど。
校舎内に入り職員室前で受付。
それから渡り廊下を渡って隣の校舎の雪ちゃんのクラスへと向かいます。
この小学校の校舎は2棟でカタカナの《エ》と同じ形をしてます。
1階と2階に渡り廊下があって、上の北校舎と下の南校舎を繋いでます。高さ自体は3階建てなんだけど、敷地が凄く広いので校舎自体が横に長い構造をしてます。
地方あるある?
でも、のどかな場所の小学校だから、私は結構好き。
自然も多いからね。
《3-1》
ここだ、と中を覗き込むと私に気づいた雪ちゃんが向かってきました。
「ママー♪」
いつものように抱きついてくる雪ちゃん。
大きくなってきたけれど、まだまだこういう仕草は昔と変わらずです。
もっと大きくなれば、いずれしなくなっちゃうのかな?とそれはそれで寂しくなるなとは思うけども。
「来てくれたんだね、ママ。」
「もちろんだよ。雪ちゃん。所で今日は何するの?」
気になってたので聞いて見ました。
「今日は作文だって。」
「作文か〜なんだろう?楽しみに見てるね。」
「うん!」
そう言ってまた友達の所へ戻る雪ちゃん。
作文かぁ〜。内容は何だろう?
授業参観って、その時の時間割表の授業じゃなくて違うのをやる時もあるんだよね。もちろん時間割表と同じ教科をやることもあるから、結局行ってみないと分からないんだけど。
廊下に貼ってある作品を見たりしながら待つこと、ようやく始まるみたいです。
「今日の授業参観は作文発表で内容は《私の家族》です。子供達にはお父さんやお母さん、お爺ちゃんやお婆ちゃんといった家族へ思っている事、伝えたい事などを好きに書いて貰いました。それを今日は読んで発表したいと思います。尚、この作文は子供達が持って帰りますので、大事に保管なさってあげてください。よろしくお願いします。」
パチパチパチと小さめな拍手が鳴る中、私はこれまた懐かしいなぁと思ってしまいました。
だって、私もコレやったから。
何を書いたかは忘れたけど、あー、でも···妹が生れて嬉しかったとか書いたかな??
しばらく進んで、雪ちゃんの番がきました。
立ち上がって教卓の前へ。
「私の家族。 鈴宮 雪。
私にはパパがいません。
前になんでって聞いたら、ママは「ママが小さい時にとっても不思議な事が起きて、パパなしで雪ちゃんを妊娠したの。だから雪ちゃんにはパパはいなくてママにそっくりで産まれたんだよ」って教えてくれました。
その時はそうなんだぐらいにしか思わなかったけど、もっと嬉しかったのは、おばあちゃんが教えてくれたことです。
ママは中学1年生って時に突然私が出来たので、怖くて不安で凄く泣いたって言ってました。直ぐに決断を迫れて、うんと悩んだ末に学校とか望んでた将来っていうのを犠牲にしてまで私を産む事を選んでくれたそうです。
だから···ママを突然辛い目に合わせてしまってごめんなさい。でも、私を産んでくれてありがとう。今の元気な私が居るのは、あの時ママが私を産むって選んでくれたから。
それに、私は知ってます。ママがとても頑張り屋さんだってこと。
おばあちゃんが言ってました。
私を妊娠してから学校の勉強以外にも家事全般や子育てに関する事、色んな事を勉強してたって。何でそこまで頑張るの?って聞いたら、パパのいない私の為に恥ずかしくないママでいたいからって言ってたって。
そんな素敵なママがいるから、パパがいなくてもちっとも寂しくないし、辛くもないよ。
ありがとう、ママ。ありがとう、私を産んでくれて。
そんなママそっくりに生まれる事が出来てとても嬉しいし、ママが大好きです。
最後に、今度私に料理を教えてください。頑張って覚えて私の手料理をお母さんに食べて欲しいです。」
拍手を頂いて雪ちゃんの発表が終わりました。
私は涙が止まらなくて、目から溢れています。
隣で見ていた保護者の方が「よかったですね、鈴宮さん。」と声をかけてくれたけど、うんうんと頷くのが精一杯でした。




