ある日の文化祭①-12 高1 (挿絵有り)
文化祭も無事終わった翌日の日曜日。
今日は文化祭の片付け日です。
予定では正午までとなってる為、それまでには片付けないといけないし、終わってもそこまでは学校にいないといけないんだ。
理由は、今日のこれも出席にカウントされてるから。
でも準備と違って片付けは早いです。
まず、準備はあれこれ考えながら作ったり飾ったりするけど、片付けはただ外すだけだからね。
次に人数かな。クラブの方へ行く子はいるんだけども、準備の時にいなかったステージ発表組の子達が片付けの時にこちらにいてくれたのが大きいみたい。
おかげで様でサクサク進みます。
サクサク進みながら、なんだかみんなソワソワ。
どうしたんだろ?早く帰りたいのかな?日曜日だもんね。
「終わったー!」と叫ぶ男子生徒君。
「イエーイ!」なんてやってるよ。面白いねぇ。
私も内心で喜びつつ、後は時間まで待つだけだなって思ってたんだ。
そしたら暫くして先生がやって来て、
「みんな、お疲れ様!初めての文化祭はどうだった?楽しかったか?初めてでクラスの方もクラブでも大変だったと思うが、委員長と鈴宮を中心にみんなよく頑張ったなと思うぞ。」
先生が労ってくれてます。
「そんなみんなに俺から差し入れだ。1人1個で悪いが食べてくれ。あと、うまい棒も余ってるなら食べていいぞ。但し教室の中でな。」
「おお!先生太っ腹!!」「やるーー!」
ヒャッホー!なんてみんな大喜びです。
高橋先生が持ってきてくれたのは、某ハンバーガーチェーン店のポテト。
Sサイズだけどもこの人数分だといい金額じゃない?
高橋先生ってクラスメイトにも私の事に対しても、凄く良くしてくれるし楽しくもしてくれるよね。
ほんと、いい担任の先生に巡り会えたなって思うよ。
ありがとう、先生。
「「「「いっただっきまーーーす!」」」」
みんなで挨拶をしてから、ポテトやうまい棒を食べ始めます。
飲み物は各自水筒なりペットボトル飲料なりあるので問題なし。
私もみんなと一緒に食べ始めるていると、
「ねぇねぇ、このはちゃん?」
「ん?な~に?」
昨日、ステージ発表の方をしてた子に聞かれました。
「このはちゃんに、子供がいるって噂を聞いたんだけど······本当??」
ブブーーッ!!!
あ···、男子生徒が何人か吹いた。大丈夫かな?
「あ!それ、私も聞いたよ!」「「「私も!」」」
「私、このはちゃんがこのはちゃんそっくりな女の子と歩いてるの見かけたの!」「妹さんなの?」
みんなが一斉にそれぞれ聞いてきます。
まぁ、広いとはいえ校舎内だから目撃もするよねぇ。
「みんな、落ち着いて聞いてね?簡潔に言うと、あの女の子は私の子供なんだよ。」
「「「「………ぇえええええ!!!???」」」」
「「うっそーー?!」」「「マジ!?」」
「このはちゃん、子供いんのーー?!」
教室は超ビックリパニック中。
よく学生の時とかって誰と誰が付き合ってるとか発覚したりすると、驚いたりするけど私の場合、それを通り越してるもんね。
先の先の終着点。子供がいる発言だもん。
少し落ち着いた頃を見計らって、
「私の子供、娘なんだけど、『雪』っていう名前なの。可愛いでしょ?」
ヤバい。親バカ出ちゃいそう···。雪ちゃん思い出すとつい頬が緩んじゃうんだよね。
「うん、可愛いかったな〜。このはちゃんそっくりで、「ママ」なんて呼ばれててさ。」
「まさか、同級生がお母さんだったとは驚きだよ···。」
「ほんとほんと。まさかの子供有りだもんねー。」
みんなが思い思いに感想を教えてくれます。
「あれ?そういえば、先生は知ってたんですか?」
1人の子が先生に訪ねます。
「いや、俺も知らなかったぞ。昨日のたまたま会った時に知ってな、さすがに驚いたがな。」
てっきり知ってるものだと思ってたから、それは悪いことしちゃったね。
「ねえねえ、このはちゃん。写真とかあったら見せてくれる?私見てなくてさ。」
「あ、私もー。見てみたい!」
「「私もー!」」
昨日見かけなかった女の子達が、雪ちゃんを見たいというのでスマホにある写真を見せることにしました。みなにみ、女子全員が見る見たいです。
見れるかなぁ?
「最近のから古い順でいくね」
画像を全画面表示にしてスライドさせていきます。
「うわぁ〜〜、可愛い〜〜♡」「何これ!?超天使じゃん!」
「このはちゃんそっくりー」
「このはちゃんが、超若いんですけどー。可愛いいよ〜〜」
もうみんなが、キャーキャー言ってます。可愛いとかそっくりとかそんな感じで。
男の子達も見てみたいなーって感じを出してるんだけど、さすがにこの女の子達の輪を超えて見に来ることは出来ないみたい。
「このはちゃん、雪ちゃん産んだ頃って髪短かったんだね?」
「うん、そう。産んでから伸ばしたの。美容室行く時間が勿体なくてね」
「そうなんだ〜。あれ、この頃っていくつぐらいの時?」
「産んだのは14歳の時だよ。だから今は19歳なんです。」
「「「「えぇーー?!」」」」
「「うっそー?!」」
「このはちゃん、大人びてるとは思ってたけど、お姉さんだったとは···」
「このはお姉様···いいね♡」
みんなまた驚いてたり、一部変な発言もあったけど、これももう慣れたかな。
まあ、元々驚かれたりするのは昔からだったしね。
「じゃあ、中学生で子供う「ねぇ!見てみて!!」ん?」
どうしたのかな?
「おっぱい吸ってる〜〜♡」
ブブッーー!!!
ゴホッ!ゲホッ!ゴホッ!!
ああ、また吹いてる·····。
「きゃ~可愛い〜♪」「このはちゃん、幸せそうな顔してるよ〜」
「男子は見るなよー!」
私の授乳写真で、またキャッキャッ始まっちゃった。
あれ、お母さんが撮ったやつなんだよね。恥ずかしいから止めてよって言ったものの、結局消すに消せなくて残しておいたやつだ。
今となっては消さなくて良かったと思ってるけどね。
大事な思い出の1ページだから…。
暫くして、彩ちゃんが神妙な顔をして、
「このはちゃんは、結婚とかしてるの?その···旦那さんとかいるんでしょ?」
ああ、それも気になるー!とみんな。
これも伝えた方が楽だから正直に答えます。
「私は結婚してないよ。それにこの子、雪ちゃんにお父さんは存在しないの。理由は病院の先生も分からないんたけど、私は雪ちゃんを男の人の遺伝子を必要としないで妊娠して産まれたの。
こんなの世界初だってさ。だからね、親は私1人だし、だからといって今後誰かと結婚しようとか、付き合おうとかって気持ちは今の所ないかな。
自分の恋愛より子供の事を第一にしたいからね。」
皆がそういう事があるんだね、とか、大変だったんだねとかって気を使ってくれてます。
ありがとう、みんな。
まぁ、なかには「このはちゃん、誰かと付き合う気ないってよ。残念だったな男子!」とか言ってる子もいたけど。
「よかった···。私てっきり中学生のこのはちゃんが男の人に乱暴でもされたんじゃないかって考えちゃってさ。心配だったんだ···」
「それは心配かけちゃってゴメンね。それとありがとう。今私は幸せだから大丈夫だよ。」
「うん」
彩ちゃんに心配をかけてしまったみたいです。
でも心配事が消えてスッキリした顔をしてるから、もう大丈夫かな。
「ねぇねぇ、このはちゃん。出産ってどんな感じだった?あと、妊娠生活とか?」
あ〜···こういうのも気になるよね。女の子だし。
「そうだね······。もう余り覚えてないけど、出産は苦しくて辛かったよ。陣痛ってのが短くなってから病院に行くんだけど、そこから10時間位はひたすら耐えてたからね。」
「「うわぁぁ······」」
みんなの顔がちょっと引き攣ってるけど、まあ事実だからね。
「分娩室入ってからの事は殆んど記憶にないけど、苦しい、痛い痛い!って事だけ。それでも、もうすぐ子供の顔を見れるんだって思うと不思議と頑張れたけどね。」
「それに、いくら子供を産める身体になったといってもさ、14歳に成りたての小さい身体じゃ出産も大変だよ。大人だって大変なんだからさ。」
記憶の薄れてきたあの当時を思い出しながら皆に語ります。
みんなもさっきまでのキャーキャー言ってた雰囲気はなくなり、真剣に聞いててくれました。
いつかは自分達も経験するかもしれない事だから、尚更なのかな?
それに意外とこういう話って聞くことないんだよね。
それこそ、ごく身近とかに妊婦さんとか経験者がいないとさ。
そんなこんなで、色々と聞かれつつ賑やかで楽しいひとときは過ぎていきました。
またクラスのみんなが、この特殊な私を受け入れてくれて、とても嬉しかったです。
最後にみんなが
「私もこのはちゃんみたいな子供が欲しいなー」
「私も〜」
などと言ってたら、先生が、
「お前等、子供が可愛いのは認めるが学生の内は止めておけよ。妊娠なんてしたら、今の生活スタイルもままならなくなるんだからな。きちんと卒業して安定して収入を貰えるようになったら産んだ方がいいぞ。
勿論それは男子もだぞ。特に男子なんてやりたい盛りなんだし。よーく考えて行動しろ。好きだから、愛があればでは、ご飯は食べていけないぞ。パートナーと子供、両方を養い生活するのには沢山のお金を必要とするから、それが無ければ皆を不幸にするだけだからな。」
と、釘を指すどころかしっかりと語ってくれました。
みんなも私の話の流れから真剣に聞いてくれて、このクラスの子たちなら在学中は大丈夫かな?と、感じたりもしました。




