ある日の朝の出来事③ 高3(挿絵あり)
ーーこれは時を少し戻り、4月9日の朝の雪ちゃんの初登校を見送った後のお話であるーー
ピンポーン♪
「はーい。今行くから待っててね〜。」
雪ちゃんの徒歩による初登校を無事に見送った後、自宅にて私自身の身支度を整え終わった頃にリビングにインターホンが押された音が鳴り響いた。
この時間のこのタイミングで鳴らす人は1人しかいないからチェックしなくとも分かるんだけど、チェックをしないと何時までもチカチカと赤ランプが付いてしまうので確認だけはするようにしてるの。
そしてボタンを押せば、その液晶画面に映し出された人は私の思った通りの人、茜ちゃんだった。
綺麗な黒髪に小さなお顔でとっても可愛い女の子なんだけど、それは何も見た目だけではなくて内面もとても素敵な子なんだよね。
そんな可愛い大切な子を待たせるのも悪いので、もう既に準備が整っていた私は鞄を手にとって家の外へと向かったんだ。
「おはよー茜ちゃん。おまた「このはちゃーーん!!」おおっと······。」
外に出て待っていてくれた茜ちゃんに声を掛けたら、その途中で抱きつかれたんだよね。
そして不意をつかれてのコレに思わずバランスを崩しそうになったけど、なんとか持ち堪えた私。
そんな私の状態を知ってか知らずが、当の茜ちゃんは私の胸に顔を埋めてご満悦そうにしてるんだよね。
ま、これは私に抱きついてくる大半の子がそういう感じになるのだけど、茜ちゃんについては身長差が特に大きいのでピンポイントでそういう位置になってしまうんだよね。
だからって私もそれを気にしてる訳でもないから、好きにさせてるんだけど。
「で、珍しくいきなり抱きついて来たけど、どうしたのかな?」
別に怒ったりしてる訳ではないから、ごく普通の口調で話しかけたの。
1年ほど前はいきなり抱きつきっていうのも頻繁にあったりしたけど、ここ最近はなかったから私としても驚いてるけど嫌ではないなかね。
寧ろ久しぶりで、ちょっと嬉しいくらいだったりするし···。
「···日中にこのはちゃんと会ったりはしてたけど、こうして朝に会うのは久しぶりでしょ。それに昨日はお休みでもあったから今朝を楽しみにしてたんだけど······いざ顔を見たらつい身体が動いちゃって······。ごめんね。」
「そういう事なのね···。でもいいよ。私も嫌じゃないから。」
私に抱きつきながら上目遣いで伝えてくる茜ちゃん。
その仕草は無意識なんだろうけど、反則だよねって思ってしまったんだよね。
身長差で私を見上げるのは仕方がないのだけど、最後の申し訳なさそうに言葉を言った時の表情は保護欲を掻き立てられる可愛さがあったんだ。
だからこんな顔を男の子が見たらきっと黙ってないだろうな〜なんて風に思えるし、今はまだ他の子に見せない様に気を付けないといけないなとも思ったんだ。
そんな複雑な気持ちを抱きつつも茜ちゃんの頭を撫でてあげたの。
朝っぱらから家の間で何をやってるの?と思わるだろうけど、今の時間帯は会社員の方ならとっくに家を出てる時間だから交通量としてはほぼ無い。
そしてもし居るとするならばゴミ出しに家を出た方とか、ちょっとした用事でご近所を歩く方くらいで、その姿も見えないから問題ないんだよね。
それでも油断は出来ないわけだけども···。
「この髪の毛もすっかり伸びたね〜。」
「うん。最後に切ったのが確か···夏休み前くらいだったかな?そうするともう9ヶ月とかそのくらいになるよね。」
「そうだね。そのくらいの期間になるよね。」
綺麗な黒髪を撫でながら伸びたなぁって思えば、伸ばし始めてもうそんな期間になるんだって、改めて思い知らされるんだよね。
あの時は肩にかかるくらいにあった髪の毛が、今は背中に届くくらいまであるから。
「まだ伸ばすの?」
「うん、そのつもりだよ。だってこのはちゃんが『似合うよ』って言ってくれたから、このはちゃんと同じくらいまでは伸ばしたいもん。」
「そっか〜。じゃあ、私もそこまで伸びた茜ちゃんを見るのを楽しみに待ってるね。一緒にがんばろっか。」
「うん♪」
茜ちゃんの決意は固いらしい。
でも私もその決意を応援するし、支えてあげるつもりでいるよ。
切っ掛けが私という理由もあるけれど、それよりも何より似合うんだよね、髪の長い茜ちゃんが。
だから見てみたい気持ちが強いんだ。
あの当時は短かったから長くした姿を想像して『きっと似合う』って思ったの。
元々癖のない綺麗な髪の毛をしていたから伸ばしてもカールしないだろうって思ったし、背も小さくて可愛い顔立ちなのもあったからね。
で、実際に途中ではあるけど伸ばした姿を見たら『やっぱり似合う!』って感じた。
だから私も最後まで伸ばしきった茜ちゃんを、絶対に見てみたいんだ。
それともう一つ。
茜ちゃんは覚えてるか分からないけど、あの約束も実行しないといけないね。
どんな風にしようかなーって考えながら、私は茜ちゃんの髪を撫で続けていた···。
ーーーーーーーーー
「「おはよー!」」
「「おはよ〜!このはちゃん!茜ちゃん!!」」
「久しぶりのこのはちゃんだ〜♪おっはよー!!」
「皆、久しぶりだね。元気そうでよかったよ♪」
茜ちゃんと2人で新しい教室に入ると、終業式以来約2週間ぶりの皆の顔を見ることが出来たの。
その顔ぶれは前の時と変わらず明るく元気で、私もホッとしたんだ。
「このはちゃん、このはちゃん! 皆クラス一緒だよ!!」
「そうなのそうなの!!誰一人として欠けないで進級なんて奇跡だよね!!」
「ほんとほんと!」
「しかも、男子まで同じ顔ぶれなんだよ!?どーなってんの!?って感じだよ!!」
「あははは···。確かにそれは凄いよね。私も聞いた時は驚いちゃったよ···。」
挨拶の後に続く皆の言葉は、1にも2にもクラス替えの事だった。
女の子達皆がまた同じクラスになれて凄いと言う事と、嬉しい!って事。
そして男の子まで変わらないって事もあって、どうなってんの?って言う不思議と驚きと。
私も昨日、茜ちゃんから聞いた時は本当に驚いたんだけどね。
まず茜ちゃんとまた一緒になれたと聞いた時は、喜んだのと同時にホッとしたのもあったの。
最後の1年ってやっぱり特別な気持ちや思い出を持ったりもするから、出来るなら一緒になりたいって気持ちが強かったからね。
それに···茜ちゃんと離れるのは寂しいという気持ちもあったし······。
そして次に2年生の時の皆とも同じだと聞いて、これには本当に驚いたんだよ。
クラス替えはどうしちゃったの?って言うのがあるにはあるけど、誰一人と欠けることもなく同じクラスになれたって言うのは、逆に考えると分れて寂しい想いをする子が出ない事にもなるので、私としては全然オッケーなんだよね。
「でも···私も皆と同じになれたのはとっても嬉しいよ♪だからさ、最後の1年もとっても楽しいものにしようね。」
「「「うん!」」」「だね!!」
「勿論だよ♪」
私の言葉に嬉しそうに応えてくれる皆で、なかにはうるっとしてる子までいるんだよね。
それだけ皆も一緒になれた事が嬉しいって事なんだと思う。
2年生の時でも『また一緒になりたいね。』って口にしてたくらいだから。
「こ〜のはちゃ〜〜ん♪···あぁ···落ち着くよ····。それにいい香り···。やっぱりこのはちゃんだ♡」
「ちょっと···どうしたの?咲夜ちゃん??」
「んとね〜···久しぶりのこのはちゃんだったから、嬉しくなっちゃって···。駄目だった??」
皆に取り囲まれてた私と茜ちゃんだったけど、その隙間をぬって咲夜ちゃんが私にくっついて来たんだよね。
理由を尋ねればまた可愛い事を言ってくれてさ···。駄目と言うつもりは全くないのだけど。
「駄目な理由はないに決まってるでしょ。もう仕方ない子···。」
「このはちゃん···。」
この子も私を好いてくれてるこの1人だから、つい甘やかしちゃうんだよね。
勿論他の皆も私を好いてくれてるのは知ってるけど、その中でも茜ちゃんに次いで気持ちを直接伝えてくれた子だから余計にさ···。
「いいなぁ〜···咲夜ちゃん。」
「うん···。ねね、このはちゃん。次、私もお願いしてもいい?」
「あー!?ずるい!じゃ、私もお願いしたいです!!」
「それなりうちも!!」「私もお願い〜〜!」
「はいはい···何も慌てなくても皆にやってあげるよ。幸いに時間もまだあるしね。」
「いぇーい♪」
「やった〜〜♪さっすがこのはちゃん!優しい〜♪」
不安げに懇願してきた顔とは打って変わっり笑顔全開の皆を見て、つい笑ってしまったんだ。
身体は大人になってもこういう面ではまだまだ子供なんだなぁ〜って、そのギャップが可笑しくて、でもそういう所があるのが皆らしくていいんだけどね。
「笑っちゃってどうしたの?このはちゃん??」
「いや〜···皆のこういう所がまだまだ子供っぽくて可愛いなって思ってね。身体は大人なのにさ。」
朝やってあげたからか満足してるっぽい茜ちゃんが不思議そうに聞いてきて、それに応えた私。
「それは仕方ないよ。ジャンルは何でも自分の嬉しい事があれば喜んじゃうのは皆共通だもん。私だってそうだし、このはちゃんもでしょ?」
「そうだね。」
私は雪ちゃん絡みになるとテンションが上がるからね。
そうなると顔に出ちゃったりする事もあって、皆に指摘された事もあるからね。
「身体は大人だってよ······。」
「あぁ···そう聞こえた。鈴宮さんがそう言うんだから、そうなんだろうな···。」
「大っきいもんな···。」
「ちょっと男子!? 何言ってんのかなぁ!?」
「そーよ! このはちゃんの発言で変な事を想像しないでもらえる?!」
私の声が聞こえてたらしい男の子達からの会話に反応を示した女の子達。
そしてわーわー始まるのだけど、こういうのがあっても仲良くやってるんだから不思議な物だよねって思うんだよね。
「ねぇねぇ······。」
「何?」「何々?このはちゃん。」
「どっしたの??」
皆が盛り上がってる最中に私は声を掛けた。
「取り敢えず······私の席ってどこ??」
「「「「「あっ······。」」」」」
教室に足を踏み入れて直ぐに囲まれた私と茜ちゃん。
そして昨日の始業式を休んだ私は、自分の席を知らないんだよね。
クラスは茜ちゃんから聞いたけど、座席まではね···。
ーーーーーーーーー
「さて···この時間は恒例の各委員会決めとか諸々をやっていくぞ。」
「「「「はぁ〜い。」」」」
高橋先生がやって来て、今年度最初の1時間目が始まったの。
とは言っても通常の授業とかをやるのとかではなくて、新学年恒例の係りや委員会決めとかになるんだけどね。
そしてこういうのは小学校時代からあったから、皆も最早慣れた感じなんだ。
「鈴宮、悪いんだが良かったらサポートしてくれないか?これを黒板に書いてくれると助かる。」
「はい、分かりました。」
先生が私にサポートを頼むなんて珍しいなとは思ったけど、これも経験だと思えば逆にありがたいからすんなりと受けたんだ。
ま、そうでなくても先生の頼み事なら出来る範囲で普通に受けるつもりではいるけれどね。
受け取ったプリントを見て『なるほど···』と思うのと同時に、この先の展開を考えてどう書こうかと思案する。
そして決めた私は高橋先生の話を聞きながら、黒板にそれを書き写していったんだ。
「さて···係りや委員会は基本的には去年と同じで、男女が指定されてない物に関しては同性同士で組んでも構わないぞ。最低でも1人1つは受け持って貰い、数の関係で2つを受け持つ子も出るだろうが、それはそれで受け入れてくれ。」
「「「はーい」」」
「了解っす!」
「分かりましたー。」
先生の説明のこの辺りの事は去年もそうだったから、皆も理解が早いの。
この委員会絡みは基本的ペアで人を擁立するんだよね。
で、少し特殊なものとかになると3人や4人といった人数を必要とするものもあるにはあるけれど、そういうのは少数だったりするんだ。
まぁそういうのは季節のイベント系の役員だったりするんだけどね。
そして私が黒板に書いていくのを見ながら「何やる?」「あれ一緒にやらない??」なんて声も聞こえてくる。
そしてそんな声が途中から変わってきて、「おお?」「何あれ?」「面白そう」なんて言う感じに変わって来たんだ。
「皆も気が付いたみたいだから、説明をしていくぞ〜。まず今までと同じのは省略するな。で、今回新しく加わったのは卒業アルバム制作委員だな。これは皆も小・中学校のアルバムを持ってるから分かると思うが、各クラス毎のページをどういう内容にして作るか?というのを担当してもらう。中学時代みたいに思い出みたいな文章を其々が書いて載せてもいいし、逆に全部のページをフリーで使ってもいいし。そういうのを皆と話し合って決めて、纏めていくのが仕事だ。」
「「「おおぉ~〜!!」」」
「いいねー、それ!面白そう!!」
「でもさぁ···皆の意見を纏めるって、難しくね?っか、纏まるのか??」
3年生らしいお仕事に興味津々の皆ではあるけれど、よくよく考えるとクラスのページ内容を自由に決めるというのは中々難しい事だと私も思う。
私の小・中時代のアルバムは、学校の思い出や将来の夢みたいなのを作文で書いてそれを記載してたんだ。
そして残り数ページを自由に決めて書いてたけど、その辺りも先生が決めてたんだろうと思うんだよね。
だから全部のページをどうするか?という事に関して、意見を纏めるのは結構大変だと私は思う。
「ま、そういう大変な役目もあるから立候補する時はよーーく考えてからにしろよ?それから···。」
先生の言葉に賑やかだった教室が、幾分か静かになったよね。
そして先生の説明が続いていった。
「······以上だか、何か質問はあるか?」
「はい!先生、ありまーす!」
「なんだ?宮野??」
「去年は林間の実行委員がありましたけど、今年は修学旅行が控えるのに修学旅行絡みの委員はないんですか?」
「あぁ!そう言えばあったねー、林間実行委員。」
「会ったあった。」
「あれはあれで大変だったけど、結構楽しかったぞ。」
志保ちゃんが質問した修学旅行の役員、私もプリントを見た時にないなとは思ったんだ。
去年は林間学校があってその委員会もあったし、全学年共通として体育祭実行委員や文化祭実行委員というのはあるんだけどね。
「それはまた後で説明はするんだが、簡単に言うとレクリエーションがないからだな。修学旅行は基本的にクラスないし班別行動で観光や散策をする事になるし、ホテルも食事とお風呂でそれ以外はやらないからないんだ。只、変わりに班長会議とかは夜にやるぞ。その日の反省を報告したり、次の日の日程等の確認をしたりするとかな。そういう理由で修学旅行委員はないんだ。分かったかな?」
「はい、大丈夫です。」
先生の説明に志保ちゃんを含めて皆が理解して納得した。
林間の時は実行委員がレクを企画して行う時間があったけど、そういうのがない修学旅行に於いては必要ないよね。
そして修学旅行時の班長さんやクラス委員の責任や重要性が増すと。
「質問もこれと言ってもうないみたいだから、係を決めていくぞ。鈴宮が分かりやすく書いてくれたから、皆も大丈夫だな?」
「「「「はーい」」」」
「「大丈夫でーす」」
「さすがこのはちゃんだよね!分かり易い♪」
「あははは···ありがとね。」
私が書いたのは先ずは委員会及び係名。そして人数。
『クラス委員長 2名』って感じかな。
そして名前を書くスペースを設けて、次の委員名とかを書いていったの。
基本は男女ペアじゃなくてもいいのであれなんだけど、男女でそれぞれ欲しい委員会とかは『男( ) ( ) 女 ( ) ( )』みたいな感じで分かる様にした。
「去年と同じ様に立候補で決めていくぞ。やりたいのがあったら挙手をするように···。」
再びざわつき始める教室。
誰と何をするのか、やりたいのかっていうのは、結構需要度が高いからね。
活動時間そのものはそんなにあるわけでもないけど、1年を通してやるという意味では大きいものね。
男の子なら気になる女の子と一緒に出来たら···とか、女の子なら仲の良い女子と一緒とか、気になる男の子っていう線もあるとは思う。
「じゃあ、先ずはクラス委員からだな。」
皆の葛藤を知ってか知らずか、高橋先生が事を進めていく。
まぁ···先生の事だから分かったうえで進めてる感じが伝わってくるんだけどね。
もしかして楽しんでるのかな??
「クラス委員長なんだが···さっき立候補制とは言ったが実は先生から推薦をしたいんだ。鈴宮と宮野。この2人にまた引き続きやってもらいたいと思ってる。鈴宮は2年、宮野に至っては3年連続となってしまうが、どうだろうか??」
皆から「おおっ!」っと声が上がる中、先生が私と志保ちゃんを交互に見ながらお願いをしてきたんだ。
「私は元々立候補するつもりでしたから、構わないですよ。寧ろ宜しくお願いします。」
ペコリと先生に頭を下げ、改めてこちらからお願いをした。
先生からお願いされたのは意外だったけど、クラス委員には立候補するつもりでいたから何ら問題はないんだ。
だから逆に後押しをしてくれて、ありがとうございますって気持ちが強いの。
問題は志保ちゃんかな······。
「志保ちゃんはどうする?先生はそう言ってくれたけど、私的には志保ちゃんの気持ちを優先するよ。皆を纏めたり、時には決めたりと責任も伴うからさ···。」
「私は······。」
私は志保ちゃんの気持ちを最優先にしたい。それがたとえ断ったとしても。
『クラス委員』
それは普段の日常だとこれと言った仕事はないの。精々が高橋先生の手伝いをしたりする事があるくらいでね。
でもそれが特定の行事とかが行われると変わってくるんだ。
分かり易い例が体育祭や文化祭で、其々専門の委員がいるけど彼・彼女達は委員として全体的な部分での準備や運営を行うんだよね。
体育祭委員ならグラウンドの準備から始まり、当日の運営(各競技毎の小物の設置や片付け)をやり、最後はまた片付けで終わる。
文化祭委員はステージ発表の運営もや地元の方達との調整、校内の安全パトロールやトラブルへの対応や報告等など、かなり多岐に渡る事をするらしいんだよね。
それをかなり前の時期から先生方や生徒会と一緒になって打ち合わせをしたりとかするらしいの。
そういう活動だからクラスの方に関しては、クラス委員が中心になって纏めていかないといけないの。
体育祭なら皆も分かってはいるけど、念の為に出場時間をチェックして教えて上げたり盛り上げたり。
文化祭はクラスの催し物を決めてその準備をする。そして当日の運営。
ここが上手く纏まらないと時間が足りなくなって、最終的にガタガタの催し物になってしまうんだよね。そしてそういう風になってしまうと皆の士気も下がるし、楽しい文化祭も残念な気持ちになってしまう。
他にも何かあればその都度意見を纏めたり、皆を引っ張っていったりするなど責任は受ける役職だと思うんだ。
まぁそれはどの委員でも大小はあれ同じなんだけど、だからこそ志保ちゃんの意思で私は選んで欲しいなと思うの。
ましてや最後の1年だから、尚更ね。
「私は···私はやりたいです!去年、一昨年とこのはちゃんに助けて貰ってばかりだったけど、だけどやり甲斐も感じてて楽しかったから、皆が良ければ私はまたやりたいです!」
パチパチパチパチ!!
「うん!私は志保ちゃんでいいよ!」
「私も!志保ちゃんとこのはちゃんはいいペアだし、クラスを良く纏めてくれてたからいいと思います!」
「意義なーし!」
「俺もいいぜー!宮野はクラスの為にうんと頑張ってくれてたもんな。また宜しく頼むな!」
「志保〜頑張って!応戦するよ!」
「みんな···ありがとう♪」
沢山の拍手と賛成の声を受けて、志保ちゃんのクラス委員への任命が決まった瞬間だった。
志保ちゃんはああ言ってたけど、2年間の頑張りをクラスの皆はきちんと見ていてくれた証拠でもあるんだよね。
だからあんなにも拍手が響いて、全員がまた宜しく!って言ってくれた。
「良かったね、志保ちゃん。また1年宜しくね♪」
「うん!こちらそこ、宜しくね。このはちゃん♪」
志保ちゃんの席まで歩いていって、その手を握って言葉を交わしたんだ。
握り返された手は力強く、その目も決意が溢れる様に輝いてて、私も気合いを入れて頑張らなくちゃって改めて決意したんだ。
皆で最高の1年にしよう!ってね♪
黒板に書いたクラス委員の所へ、私と志保ちゃんの名前を書いていく。
これで1つは決定だけど、まだまだ決める物はあるんだよね。
「クラス委員も決まった事で次の委員に行くんだが···」
「高橋先生、ちょっといいですか?」
私としては珍しく、先生の話しの途中で声を掛けた。
「珍しいな···どうした??」
「クラス委員絡みで1つお願いというか、提案がありまして···。」
「···おう。」
「私って、修学旅行は欠席と伝えてるじゃないですか。そうすると班を纏めるのは班長ですけど、クラス全体としては志保ちゃん1人になってしまうのでそれだと申し訳なくて、修学旅行限定で良いので誰かを志保ちゃんのサポートに付けてもらったりは出来ないでしょうか?」
「ああ···なるほどな〜·····。」
これは先程の高橋先生の話を聞いてて考えてた事なんだ。
私はクラス委員に立候補するつもりでいたから、そうすると相手が誰になっても修学旅行の時は1人になってしまうの。
そうすると2人でやるべき負担を1人に背負わせてしまうから申し訳なくて、なら修学旅行限定で誰かがサポートをしてくれないかな?なんて考えていたんだ。
だからって私から誰かにお願いなんてものは出来ないし、やってもいいよって自ら申し出てくれる子がいないと始まらないんたけどね。
「そらなら、私がやります!」
「おっ!?」
「あ······」
「茜ちゃん!?」
やってくれる子なんてそうそう出ないだろうなって思ってた矢先に声が出たものだから、驚きの声を上げてしまった私達。
因みに上から先生、志保ちゃんに私です。
「···いいの?茜ちゃん?」
「うん! 私さ、このはちゃんに助けられてばかりだから、いつも何か恩返ししたいと思ってたの···。で、このはちゃんが困ってるなら私が変わりに助けてあげたいから······このはちゃんみたいに上手く出来る自信はないけど、でも少しでも力になりたくて···いいかな?志保ちゃん??」
「勿論だよ!お願いね、茜ちゃん!!」
「はい♪」
「ありがとう、茜ちゃん。」
茜ちゃんのまさかの立候補に驚いたけど、その決意は本物だった。
私に恩返しをとか困ってたら助けたいとかって言ってくれたけど、私だって茜ちゃんからいっぱい貰ってる物があるんだから、そんな事は全然気にしなくてもいいのに···って、思うんだけどね。
でも、その想いに志保ちゃんも了解してくれたし、それになにより高橋先生がうんうんと頷いてくれてるからOKという事なんでしょう。
私は高橋先生にもう一度お礼をして、今度こそクラス委員決めは終わったの。
「では、引き続き委員を決めていくよ~。次は保健委員会です。これは男女で各1名ずつになります。立候補したい人はいますか?」
「「「はーーい!」」」
「やりたいでーす!」
勢いよく上がる挙手。
定員に対して多いので、これはじゃんけんによる決定だねと話して進めて、決まる保健委員。
決まった子は喜び、落ちた子は落ち込むけど、まだまだ委員会は沢山あるからサクサクと進めていく私です。
生活向上委員、図書委員、園芸委員に放送委員。
他にもあって行事系のものでは、先生の話にも出た体育祭実行委員や文化祭実行委員などもあるの。
この辺りは選出人数も多くて挙手だけでは足りなかったりもしたから、上手く調整したりして決めていきました。
ただ、どうしても上手くいかない委員会が1つだけあったんだよね。
それは卒業アルバム制作委員。
先生の話によると自分達のクラスのページをどういう風な内容にするのか決めたり、そして作ったり編集したりする活動らしいんだよね。
そしてこれは紛失したりしない限りはずっと残る物だから、女の子は私と茜ちゃんを除いた皆が挙手をしたんだ。
因みに男の子は数人だった。
さて···これは困ったんだよね。
他の委員会等はなれなくても諦めがつけられた皆だったけど、これはどうしてもやりたいってなってね。中々譲れないらしいんだ。
先生も私に任せるわ的なスタイルになっちゃったので考えた結果、皆で作ろうって事で落ち着かせたんだ。
でもそんな状態でいざ作れるのか?って意見も出そうだけど、そこは私が中心になって皆の意見を纏めて進めて行くつもりです。
皆もそれならいいよ、お願いって納得もしてくれたしね。
そういう訳でリスト上は私が担当委員として名前を出して無事決着致しました。
何とか1時間以内に全部決められて、ホッとしたんだ。
皆の協力に本当に感謝だよね。
「皆のお陰で無事に全ての委員会及び係りが決まりました。皆様、ご協力ありがとうございました。」
パチパチパチパチ····。
私の言葉に皆が拍手して決まった事を喜んでくれた。
「去年もそうでしたが、委員活動には大変な事もあれば、責任の重い物もあったりします。ですが決して1人で抱え込まず、周りの皆に相談し協力して最後の楽しい1年で終われる様に頑張りましょう!」
「「「「おーーー!」」」」
「「「はぁ〜〜い♪」」」
キーンコーンカーンコーン···♪
「あ、丁度チャイムも鳴ったね。では、これで終わりにしましょう。」
「「「「はーい」」」」
「きりーつ!」 ガタガタガタ···
「礼!」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
タイミングよくチャイムが鳴り、1時間目の終わりを告げてくれたの。
そして日直さんの号令により挨拶をして終わりです。
バタバタと賑やかになる教室。
お手洗いに行く子、スマホを触りだす子、会話を楽しむ子等いろいろだけど、私はお仕事としてプリントに決定役員の名前を書かないといけないんだ。
でも私は進行をしながら書いていったから、最後の項目の卒アル委員の所へ私の名前を書けば終わりなんだけどね。
ササッと記入して高橋先生へと渡します。
「先生、今年度の役員はこの通りになりました。宜しくお願いします。」
「お···おう。ありがとう···。」
何だか変な感じの先生だったけど、特にこれと言った事も言われなかったのでOKみたいです。
「このはちゃ〜ん。お手洗い行こ?」
「いいよ〜。」
私は大丈夫なんだけど誘われちゃたので、入り口まで付き合う事にしました。
皆も私といるのを望んでるみたいだから、いいかなーってね。
早速腕を組まれて···これも久々なので、日常が戻って来たんだなーって嬉しく感じた瞬間でした。
ーー高橋先生視点ーー
「先生、今年度の役員はこの通りになりました。宜しくお願いします。」
「お···おう。ありがとう···。」
鈴宮が俺の前に決まったばかりの委員会の人選表を持って来てくれた。
綺麗な字で丁寧に書かれた生徒の名前を一通りチェックをして、問題がないのを確認しため息を吐いた。
どうしてこうなった···?
最初は問題なかった。
説明をして先ずはクラス委員からという事で、俺は鈴宮と宮野を推薦した。
本来は生徒の自主性で決めて欲しいのもあったが、この2人は去年非常によくやってくれて、お陰でクラスが1つに纏っていいクラスになったんだ。
それは他のクラスを担当する先生方からも声が上がるくらいだから、相当に素晴らしかったんだろう。
その源は当然鈴宮の力によるものが大きいのだが、そこに宮野のサポートがいい感じに決まったという、好循環もある。
それなんで今年もと、この2人を俺は押した。
結果的に2人は受けてくれた。
また、鈴宮から意外な提案もあったがそれも諸貫の立候補によって解決。
まぁ確かにこの後に控える修学旅行において、鈴宮なしで宮野だけというのは普段も大きいか?と思うから、この提案も悪くないなと思うしな。
そこまであの短い時間で考えた鈴宮の凄さに驚かされたけど、可怪しくなったのはそこからだった。
何故か鈴宮がそのまま委員会決めを進行していったんだよな···。
サポートを頼んではいたが、それは黒板記入だった筈なんだけどなぁ···と思いつつも、あれよあれよと決まっていく委員会。
最後の卒業アルバムは女子で絶対に揉めるだろうと予想してたが、案の定揉めた。
俺の進行なら多数決ならじゃんけんで決めるつもりだったのだか、ここでも鈴宮が上手く皆を纏めて納得させてしまった。
そしてそのやり方も普通なら無理だと思うのだが、鈴宮なら絶対に上手くやるという未来が見えるのだから不思議だ···。
きっと鈴宮の人柄や人格、人を惹きつけるカリスマ性に皆が惹かれてるからこそのものなんだと、改めて実感させれた。
結局最後まで鈴宮の進行によって終わりを告げた1時間目。
挨拶も俺ではなくて鈴宮に向かって『ありがとうございました!』だったもんなぁ〜······。
担任は俺なんだけど···と、喉まで出てきたけど言えなかった······。
楽は出来たけど、何か複雑な気分。
でもまぁ···教員を目指すという鈴宮の経験値になるならば、こういうホームルールなら任せてしまってもいいのかもしれないと、そう思った俺だった······。
長くなってしまいましたが、お読み頂き誠にありがとうございました。




