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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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235/240

ある日の入学式① 高3(挿絵あり)

優しい日差しに、散歩するにはもってこいの気温。

そして穏やかな風に吹かれる新緑の木の葉が、私の目や心を癒してくれる。

四季の季節の中で、私の最も好きな季節である春。

そんな春の本日4月8日、とうとうやって来た。

それは雪ちゃんの小学校入学式です。


突然の妊娠で悩み決断し、そこから出産をして。

そこからまた悩んだり、とまどったりしながらの子育てをする中でスクスクと大きくなっていった雪ちゃん。

あっという間に月日も経って幼稚園に入園する日を迎えて、その容姿から友達付き合いとかも心配したけれど、幸いな事に良い友達に恵まれてあっという間に卒園を迎えたんだよね。

そして短い春休みを経て本日の日を迎えた。


こういう節目の日を迎えると毎回の事ながら、あっという間だったなって思うよね。

運動会やお遊戯会、遠足や季節の催し物。

お弁当を作ったりちょっとした小物を用意したり作ったりと色んな事をしてきたけど、その全てが懐かしい思い出になってる。


そして今度は大きな真新しいランドセルを背負った雪ちゃんが私の隣を歩いてる。

今日は保護者と一緒に学校だからヘルメットは被ってないけれど、その後ろ姿を見ると本当にランドセルに背負われてるなって思うんだよね。

昔から良く耳にする言葉で、小さい身体に対してランドセルの占める割合が大きいからそう見えるのだろうけど、まさにそんな感じだよね。

私の時もそう見えたのかな?なんて思うと、微笑ましく見えちゃった。



「ねぇ、ママ?」


「なーに?雪ちゃん??」


駐車場から学校内の受付場所までの道のりを、すっかり葉桜になっちゃったなぁと思いつつ歩いてると、隣を歩く雪ちゃんが私に何かを尋ねてきた。


挿絵(By みてみん)


「つむぎちゃんとかさくらちゃんとかと、同じクラスになれるかなぁ?」


「同じクラスか〜···どうだろうね·····。でも、同じクラスになれるといいよね。」


「うん!」


幾つになっても誰もが学生の内は必ず通る、期待と不安のイベントのクラス替え。

仲の良い友達と、または好きな相手と同じクラスになれるかな?といった想いを寄せて、その結果にドキドキする。

その結果次第で1年間の良し悪しが決まると、本気で思ってる子もいるくらいのイベント。

勿論私もそうだったし、今もそう。


今、この時間では私の高校では始業式をやってる筈だから、当然結果というのはもう既に出ているけれど、私はそれを知らないんだ。

茜ちゃんや友達の皆が結果を送ってくれそうな気がしたから、茜ちゃんに結果は送らないでねってお願いしたんだよね。

こっちの用事が終わって落ち着いたら連絡するからってお願いして。


たから私もワクワクドキドキはしてるけど、今はそれよりも雪ちゃんのクラス分けにドキドキしてる。

紬ちゃんと桜ちゃん。

この2人の女の子は雪ちゃんと同じ幼稚園で、尚且つ1番の仲良しさんなんだよね。

たから雪ちゃんの気持ちも痛いほどよく分かるし、私もそうなって欲しいなって思いがあるんだ。



「あ、雪ちゃん。前のあの子···桜ちゃんじゃない?隣のお母さんがそうだから、多分間違いないと思うけど?」


「ほんと!? 雪いってくるー! さくらちゃ〜〜ん!!」


私達の少し前の方にピンク色のランドセルを背負った女の子がいたんたけど、その子の隣を歩く女性が桜ちゃんママに見えたんだよね。

それなんで教えたら喜んで突撃して行っちゃった。

それを可笑しく見ていると、雪ちゃんの声に振り返った女の子は間違いなく桜ちゃんだった。

そしてちょっと一安心。だってもし間違えてたら恥ずかしかったからね···。


「さくらちゃ〜ん!おはよー。」

「あー♪雪ちゃん!おはよう〜。」


おめかしをして新しいランドセルを背負った雪ちゃんと桜ちゃん。

手を取り合って仲良くご挨拶。


「おはようございます、高峰さん。」

「「おはようございます、鈴宮さん。」いい天気になって良かったですね♪」

「ほんとそうですね···。お陰で昨日は冷や冷やしてましたよ···。」


高峰さんの言うように昨日まで天気が悪かったんだよね。

この前、葵達とお風呂に行った日は天気が良かったんたけど、その翌日から天気が崩れて昨日は雨だったんだ。

で、予報では今日は曇りだったんだけど長引いたりしてずれれば、この時間までもしかすると雨という可能性もあった。

たから昨日は結構冷や冷やしてたんだよね。

結果的には予報も少しずれて曇りではあるけど時り通り日差しも差し込む、そんな天気になったんだ。



「高峰さん、早坂さんは見かけましたか?」

「いや···まだ見てないですね。そうするともう向こうに着いている可能性もあるかもしれませんし、まだこれからかも??」

「ん〜〜···どっちだろう?出来れば受け付けまでに会えればいいんですけど······。」


早坂さんとは雪ちゃんの仲良しの紬ちゃん一家なんだよね。

そして今日の流れとしては受付場所にクラス表が張り出されているので、それを確認後に各クラスへと移動するんだ。

そして先生が来たら保護者は一足先に体育館へと移動して、着席しつつ入学式開始まで待つという流れなんだ。

だからクラス分けがどうなるか分からない以上、受付開始までにご挨拶を出来ればなって考えていたんだけど······。


「クラスは一緒になれますかね?」


「う〜ん······どうでしょう?さっき雪ちゃんにもそれを聞かれましたけど、2分の1ですからね······。ご一緒出来ればそれが1番嬉しいんですけど。」


「ですよね~···。うちの桜もそればっかり心配してて···別々になったらそれはそれで泣きそうで···困りました······。」


本当に困った感で言う高峰さんだけど、あながち本当にそうなるかもと思ってるのかもしれない···。

仲が良いのは良い事なんだけど、幼いが故に感情の制御が出来なかったりするからね。

笑顔で式に参加して欲しいけど泣き顔じゃあなって·····。


「こればかりは私達ではどうにもなりませんからね····。ただ聞いた話ですと、同じ保育園や幼稚園出身の子は比較的に同じクラスになる事が多いって聞きましたよ?」


「そうなんですか??」


「はい。全く新しい環境で知らない子供達と勉強···ストレスが掛かる場所でいち早く慣れるには、知ってる子が少しでもいた方が馴染みやすいからって言う理由なんですけどね·····。そういう観点でいくと、私達は可能性としては高いんじゃないかと·····。」


雪ちゃんの幼稚園からこの小学校への入学人数、及びその男女数を考えると私達は一緒に慣れる可能性は高いんじゃないかな?と考えるんだよね。

女の子同士で考えた場合に◯対1って変な分け方はしないだろうって思うし、やったとしても全員一緒か均等分けかなと。


因みにこの話の出どころは高橋先生です。

いつだったか先生と雑談をしてる時にふと聞いて見たら、高橋先生の個人の意見としてその様な話を聞いたんだよね。

ただクラス分けの仕方は学校によって違うから、そうとも言い切れないぞと念を押されたけどね。



「一緒になれればいいですね。」


「そうですね。それが1番なんですけど····あ、あそこですね。」


少しの希望を抱き続きつつ歩いて行った先で目的の場所を見つけたんだ。

受付場所とクラス分け表は昇降口の前となっていたから分かり易いと言えばそうだし、何よりも人集りが出来ていたからなんだけどね。


「早坂さんは······いないですね。」

「そう···ですね。となると、これから来るっていった所ですか·····。先に見ちゃいます?」

「見ちゃいましょう。時間的なものもありますし、何より気になって仕方ないです。」


人集りをパッと見た感じではお目当てのご一家は居ないご様子だった。

それなので私達は気持ちを切り替えて、クラス分けを見ることにしたんだよね。

子供達は元より私達も気になって仕方なかったから。

果たして3人は一緒のクラスになれるのか?ドキドキです。


人集りに後ろからそっと近づくと、色んな話し声が聞こえてきた。

主に子供達とそのお母さんなんだけど、「1組だって〜」「◯◯ちゃんと一緒だよ。良かったね!」「やったー♪」等など喜ぶ声がある一方で、別れちゃった事を残念がる声も聞こえるんだよね。

今年の入学人数は60人いるかいないかくらいと聞いてはいたから、クラスは2組。

だから数少ないお友達と別々になる可能性も少なからずある訳で······。


さて、雪ちゃんはどうなのかな?

1年1組から順に見ることにした私。

最初には担任の先生のお名前が書いてあって『まちだ じゅんや』先生······男性の先生だね、きっと。

それから『いいの たつや』『うちだ きょうこ』·····等など、あいうえお順で名前が続いていくの。

そしてそのどれもが平仮名で書かれているんだよね。

これはまだ漢字が分からない子供達への配慮なんだと思う。

私も雪ちゃんに平仮名とかを教えてはいるんだけど、漢字までは教えてないからね。例えそれが自分の名前だとしても···。


さて、肝心の名前だけども雪ちゃんの名前は無かった。

『すずみや』だから比較的最初の方に来るんだけど、どうやら1組ではない様子···。

となると、残る2組という事になるのだけど確認すると担任の先生は女性の先生っぽいです。

そして雪ちゃんが·····


「ママぁ!雪のあったよ!」


「本当?見つけるの早かったね、雪ちゃん。」


「あとね、あとね、つむぎちゃんと、さくらちゃんもあったの♪一緒〜♪♪」


「そこまで見つけたんだ···凄いね、雪ちゃん。」


「うん!」


満面の笑顔で嬉しそうに教えてくる雪ちゃんを撫でながら私も改めて確認してみたら、先ず雪ちゃんの名前を発見したんだ。

そこから少し進んだ所に桜ちゃんの名前があり、その少し先に紬ちゃんの名前があったんだ。


「良かったね〜雪ちゃん。皆と一緒のクラスだよ。」


「うん!さくらちゃ〜ん、一緒だよー♪」

「ゆきちゃーん!やったねー♪」


再び手を取り合って喜ぶ雪ちゃんと桜ちゃん。

そんな嬉しそうな2人を見ると、一緒になれて良かったねって心から思うの。

そして同時に心の負荷が1つ軽くなったのも感じる。


「一安心ですね。鈴宮さん。」


「本当にそうですね。また1年改めて宜しくお願いします。」


ホッとしたのは高峰さんも同じみたいで、安堵の表情を浮かべてたんだけどまさにその通りなんだよね。

私も違ったら···って不安もあったし、今ここに来てクラスが違ったって残念がる声も聞こえてたからさ。


「じゃぁ···確認も終わったので受付して教室に向かいましょうか。雪ちゃん、桜ちゃん。行くよ。」


「「はーい。」」


まだ喜んでる2人に声を掛けて、今度は受付です。

隣の昇降口前にテーブルが出してあり、そこに学校の事務員さん?が2人、座ってらっしゃったんだよね。


「1年2組の鈴宮 雪です。宜しくお願いします。」


「この度はご入学おめでとうございます。2組の鈴宮 雪さんですね······。はい、確認出来ました。こちらが今日の入学式の案内と諸々の書類になります。後ほどご確認ください。」


「はい。ありがとうございます。」


先ずは先程確認したクラスと名前を告げて書類を出し受付をして、その後に幾つかの書類を頂いたの。


「下駄箱はこの奥に1組と2組で分かれてますので、2組の所を何処でもよいので本日はお使い下さい。その後は教室で待機ですが、下駄箱を出た廊下を左側になります。」


「はい。わかりました。」


下駄箱と教室の位置を聞いて、以前と変わっていない事にちょっとした安心感と懐かしさを感じた。

私の時もその位置の下駄箱を使い、そこの教室を使ったなってね。


高峰さん一家の受付を待ち、その後に皆で教室まで移動した。

昇降口を出ると先ず横に長い廊下があるの。

正面には2階へ上がる階段があり、変わってなければ3年生と4年生の教室がある筈なんだよね。あと図工室も。

変わって3階は音楽室と調理室と視聴覚室だったかな···?音楽室以外はあまり使わなかった教室だからうろ覚えだけど·····。

そして雪ちゃん達の教室はこの廊下、階段を前にして左側にあるんだよね。因みに右側は2年生の教室です。


綺麗に掃除されてる廊下。手洗い場。何も飾られてない廊下の壁。

これが次に来る事になる授業参観では、子供達の作品で一杯になるんだろうなって思う。

ちょっと寂しい廊下を少しだけ歩き、目的の教室に着いた。

手前が2組の教室で、奥の教室が1組。うん、これも変わらないね。


「ここですね。」


前後にある教室の扉は開かれた状態にあり、中の様子が廊下側でも分かる様になってる。だから意外にも賑わってる様子が伝わってくるんだよね。

私も結構早くに着いたつもりだったんたけどなぁって思いつつ、雪ちゃんの手を引いて教室の入り口をくくった。


その瞬間、教室の空気が一変した。

子供達の賑やかな声、親御さん達の雑談などガヤガヤとしてた声がピタっと止まり静寂が教室を支配した。

そして注がれる視線。

その次に子供達から「外国人さんだ〜」と声が出て、それを嗜める親御さんの声。

「ほう···」「綺麗ねー」「うわっ···凄い美人さん···」べしっ!!等など、保護者側からも控えめなボリュームで声が上がり、叩かれる音もした·····。


「注目されてますね、鈴宮さん達。予想はしてましたけど······。」

「そうですね···。まぁいつもの事なんで·····えーと、席は·····あ、早坂さんがいましたよ。もう来てたんですね。」

「え?本当ですか??······あ、いらっしゃいましたね。」


席は何処かな?と教室内を見渡してると、教室の真ん中やや奥側に早坂さん親子がいるのに気が付いたんだよね。

そして私達が気が付いた様に向こうも気が付いてくれて、軽く手を振ってくれてるの。

それを雪ちゃんにも教えてあげたら向こうに行こうとしたので、それを留めて取り敢えず席を探すことにしたんだ。


案内によると席は名前の順で廊下側から始まるとの事。

うん、定番だね。

そしてよく見ると机の右上隅に名前が平仮名で書かれた紙が貼ってあったんだ。

これもきっと間違えない様にする為の配慮の1つなんだと私は思う。

そんな風に感じながら探すと、廊下側から2列目の後ろの席に雪ちゃんの席を見つけたんだ。


この席、個人的には悪くない席だとは思う。

目立つ容姿をしてるからどうしても注目されるけど、後ろという事で授業中においては周りからの視線が限定されるからね。

それに桜ちゃんが近いのもポイント。

『す』と『た』は近いから名簿次第では近い席になるかな?と思ったんだけど、その通りになったんだ。

雪ちゃんの左斜め前に桜ちゃん。

紬ちゃんは桜ちゃんの隣1列を挟んだ向う側と少し遠いけど、同じクラスという事で大満足だからね。


雪ちゃんを席に座らせて、私はその隣で屈んで待機というスタイルで先生を待ちます。

その後に体育館にて入学式。

雪ちゃんの晴れ舞台です。





  ーーーーーーーー



「こんにちは、早坂さん。ご一緒になれて良かったです。また宜しくお願いしますね。」


「こちらこそ、宜しくお願いします。鈴宮さん、高峰さん。私、正直言ってホッとしてますよ。」

「ですよねー。私もですよ。別のクラスだったらどうしよかと·····。」


あの後、時間になった頃に担任の先生がやって来て、この後の流れを改めて説明してくれたんだよね。

先ず保護者は一足先に体育館に行って待機し、その後に入学式を執り行う。

式が終わり次第、記念写真を撮ってからまた教室に戻るとの事で、私達は体育館に向かっている所なんだ。


向かう道中で挨拶の出来なかった早坂さん夫婦にご挨拶をしたんたけど、やっぱりと言うか出てくる言葉は皆同じだったよね。

「一緒になれて良かったです」と「安心しました」で、どなたも想う事は同じなんだなって感じたよ。



「あの···道、大丈夫ですか?私、全然分からなくて、旦那も新しい体育館は初めてだと言うので·····。」

「うちもです·····。」


「ええ、大丈夫ですよ。私、知ってますから。」


体育館に行ってくださいと言われても道案内があるわけではないので、初めての方にはどう行くんだろう?と悩むこの移動。

外からは体育館の位置が分かるから直接行けるけど、校舎内からは見えない為、上に兄姉がいない初めての方は困るんだよね。

それで高峰さんも早坂さんも説明会の時は行けたけど、今回は上に子が居ないので分からないご様子。

まぁ、聞いた話だと旧体育館だったならわかるという話なんだけど···。


「······もしかして、鈴宮さんはこの学校の卒業生だったりします?」


「えぇ、そうですよ。ほんの8年程前ですけどね·····。」


「マジですか!?」「おおっ!」


早坂さんの旦那さんに聞かれてそう答えた私。

そう、私がわかる理由はここの小学校の卒業生だからなんだよね。それもほんの8年前。

卒業して8年後に子供を連れて入学式って、あの時はそんな事1%も考えもしなかったよねって思い出したよ。

おまけに人生って何があるか分からない、不思議だよねとも。


「じゃあ、あれ···旧校舎とかって知ってます?」


「旧校舎······南校舎の前にあったっていう、木造平屋の校舎ですか?」


「そうです。私らの時はまだ存在してたんですけど、今はもうないでしょ。」

「そういえば、その旧校舎の傍にくみちゃん便所もありましたね〜····。」


私がこの小学校の出身だと聞いて嬉しくなったのか、当時の事を聞いてくる両家の旦那さん。

幼稚園時代は大きな行事以外では会うこともなく、話も挨拶程度にしかした事がなかったので、こう話してくれると新鮮だったりするだよね。


「いや、私が入学した時点で旧校舎はもう無かったですね·····。なので、あったという話だけは聞いてるんです。」


「そうでしたか·····。まぁ、これだけ歳が違うと変わりますよね·····。」


1年でもいいから同じ時代に在籍してればあれかもそれないけど、私と両家の旦那さんとでは15歳近くの差があるの。

だからそれだけ間があけば変わるものも変わるよね。


「ねぇ貴方···。その『くみちゃん』って可愛い名前のトイレは何?」


「えっ? 可愛いって···くみちゃんが?? ププッ···。違う違う。言い方は可愛いけど、これは汲み取り式便所の略称なんだよ。だから『くみちゃん』ね。俺らの時は男女共にこの略称で呼んでたんだよ。」


「そうそうそう。懐かしいですねぇ〜。外の体育や休み時間の緊急時にしか使わなかったですけど·····。」


「汲み取りって·····そんな紛らわしい言い方止めてよね!」

 

高峰さんが顔を赤くしながら旦那さんに八つ当たりしてるのを横で見てるんだけど、気持ちは分かります。

恥ずかしいよね、これは。

確かに可愛い感じの名前だったけど、その正体があれだとは思わないもの。



「着きましたよ。」


そうこうしてる間に体育館に到着したの。


「あ、結構シンプルな道なんですね。」

「確かに······。」


「そうですね·····。南校舎からしか行けないのはネックですけど、校舎の構図はシンプルなんで簡単と言えばそうですね。ただ5、6年生は少し手間ですよ。階段を降りて渡り廊下を渡ってそこから、という道なんで。」


「「なるほど······。」」


昔の旧体育館は北と南にある両校舎から直接行けたんだけど、この新体育館は南校舎からしか行けないんだよね。

だから5、6年生はすこ〜しだけ手間がかかるの。


「と、言う事は···今も5、6年生は北校舎で?」


「そうですね···変わってなければ恐らく······。少なくとも私の時はそうでした。」


どうやらこの辺りは変わってない模様みたいです。

まぁ、教室の場所を変えるとなると黒板とかも移動又は新設しないといけないから、そうそう出来る物でもないとは思うんだけどね。


「あ、あの辺りに座りましょうか?いい感じに席が空いてますよ。」


「そうですね、そうしましょうか。」


体育館に着くと先ず花道が目に入った。

体育館中央に入り口からステージに向かうように作ってあり、これは私達が学校で卒業式の準備をしたのと同じ構図だね。

そしてその花道の左右に椅子が並べてあり、ステージに向かって右側か゚1組で反対側か゚2組らしく、私達保護者も子供達が座る席の後ろに用意された席にクラスに別れて座る形式の様です。


「鈴宮さんはそこの席でよいですか?」


「えぇ。構いませんよ。」


高峰さんに空いていた列の真ん中辺りを勧められてそこに腰掛けた。


「では隣は私と早坂さんで座りましょうか。」

「そうですね。あんたは私の隣よ。くれぐれも鈴宮さんの後ろとかにいかないようにね!」「お、おう···。」

「貴方もよ。いいわね?」「はい···。」


有無を言わさずに旦那さんに指示をだす、高峰さんと早坂さんママ。

妙に迫力がある様に感じるのはきっと気の所為じゃないよね······。

そんな風に感じながら、私は受付で頂いた案内に目を通してみたんだ。

そこには各クラスの生徒名簿と入学式のプログラムが書いてあったの。

改めてゆっくりともう一度見てみると、1組に下関さん他数名の同じ幼稚園組のご家庭があり、一緒になれなかった残念さも感じたよね。


他には人数的な所では全体で58人で、男女比だとやや男の子の方が多いみたい。

この辺りは私の時と比べるとやっぱり減ったな〜って感じだった。

それでもまだこれだけいるのなら、楽しく賑やかでいけるからいいのかなとも思う。運動会とかで人数が少ないと寂しく感じる物もあるからね。


そしてプログラム。

これ自体は当たり障りのないごく普通の内容だね。

校長先生やPTA会長さんの祝辞、来賓紹介や校歌斉唱。

校歌······これまた懐かしいななんて思ったけど、誰が歌うんだろう?って疑問に感じたんだよね。

私は歌えるけどこういう場では歌わないし、となると先生?ってなるけど人数的になんか無理がありそう······。

そんな時に後ろの方がザワザワとしてきたんだ。



「あれ?在校生ですかね···。沢山やって来ましたよ。」

「ですね·····。大きさ的には6年生や2、3年生·····全学年?」


見た感じ2年生から6年生までの在校生がやって来たみたい。

そして先生の指示により整列して着席して。


「あぁ、あれじゃないですか?入学式に参加して校歌を歌ってくれるとか?」

「あぁ!なるほど!」

「そっかそっか·····。そうですよね。在校生がいないと校歌も歌えないですもんね。」


「俺は歌えるぞ。多分·····。」

「······絶対に止めてよね。恥ずかしいから····。」



数年ほど前に感染症が流行って人を抑制した結果、催し物が出来なくなったり人気のなく寂しい催し物となったりとネガティブな話を聞いたけど、こうしてまた人を入れた従来通りの事が出来る様になったのは喜ばしい事だよねと、思える光景だった。

今後にあるであろう運動会や音楽会、又はそれ以外行事でも人が沢山いてそこ賑やかで楽しい物だからね。


そう思いながら隣をチラッと見る。


高峰さんの旦那さん······結構面白い人なんだなって、今日初めて知ったんだ(笑)

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