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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ある日の春休み③-1 高2(挿絵あり)

「お姉ちゃん。そろそろいい時間なんだけど、車出してもらってもいいかな?」


「お···もうそんな時間? うん、勿論大丈夫だよ。雪ちゃん、そろそろ行くよ〜?」


「はぁーい♪」


暖かな陽気の中、春休みも残すところあと数日となったある日。

私は雪ちゃんといつもの様にリビングで寛いでいたんだけど、そこへ妹の葵がやって来て車を出して欲しいとお願いしてきたんだよね。

それを断ることなく了承して、雪ちゃんにもお出掛けする事を伝えたの。

まぁこれは事前に頼まれていたから、いつでも動ける様にスタンバイはしていたんだけどね。


バックを持って3人で玄関へ向かい、玄関を出たのを確認後鍵を閉めた。

私達は春休み中だけどお父さんやお母さんは普通にお仕事に行ってるから、家には私達3人しかいないからね。

だからきちんと戸締まりはしないといけないんだ。

そして車庫に行きワゴン車に乗り込んだんだ。



「行き先は葵の学校の近くの駅でいいんだっけ?」


「うん、そうだよ。南口のロータリーで待ち合わせだから···っと、家を出たって送っとくね。目安の時間はえ〜と······。」


車を出発させながら事前に聞いてはいたけれど、これも念の為の確認してみたの。

もし途中で変更とかがあると大変だからね。


「よし、送ったよ。···まだ既読にはならないけど、まぁ大丈夫でしょ!···それにしてもお姉ちゃん、手間掛けてごめんね。」


「いいって、気にしないの。それに我が家の地区は交通の便が悪いんだから、こうゆう時は素直に頼ればいいんだよ。」


「うん。」


葵が申し訳なさそうにしてるけど、我が家のある地域は交通の便が悪いんだよね。

駅もないしバスもない。まぁ、市が運営してるコミニティーバスがあるにはあるけど、私達の住むこの地域は人口も少ないから事前予約みたいな形をとってるんだよね。

だからどうしても定期便より使い勝手が悪くなってしまうんだ。

残る手段としてはタクシーがあるけど、お金はかかるから高校生の出費としては痛いし······。

だから私がお迎えに買って出たんだ。


運転出来る私がいて断る理由もないし、それに可愛い妹のお願いだからね。

それにこんな交通の便の悪い我が家に遊びに来てくれるくらい仲の良い友達がいるんだもん。

遊びに来るのが長期の休み限定とはいえ、そういうお友達とはこれからもずっと仲良くしていって欲しいと、お姉ちゃんとして思うわけですよ。


「それにしても、この辺りってほんと何にもないよねー·····。全然変わらないや。」


「確かにねぇ···。まあ人口的にも多くないエリアだし、道も生活道路と通勤メインって感じの道だから仕方ないんじゃないの?」


私の後ろ、ワゴン車の真ん中の席に座っわている葵がスマホを弄りながら外の景色について愚痴る。


「まぁ、確かにそうなんだけどさー···。でもそういう意味だと新潟のお婆ちゃん家の方は凄いよね。行く度に新しいお店が出来てる感じがするもん。」


「それは確かにあるね·····。こちらとしてはあれだけ纏って出来てくれると結構助かるけどね。」


葵の語るそれは、お母さんの実家がある新潟のある都市の事なんだけど、そこが数年前にかなり大きな商業地区みたいなのが出来た事なんだよね。

元々は田んぼだったであろう場所にかなり広いバイパス道路を作って、その周囲にいろんなお店が出来たの。

車関連のお店、スーパーやホームセンター、雑貨や洋服関連のお店、それから飲食店。


沢山の新しいお店が出来て賑わってるのに、このバイパス道路と接続する元々あった商業エリアのお店の事もあって更に賑わいが凄いんだよね。

シッピングモールじゃないから移動する手間はあるんだけど、それでもこのエリアだけでほぼ全てのお買い物を済ませる事が出来る魅力は大きいんだよね。


「ねぇママ?今度はお婆ちゃんのお家に行けるの?」


「うん、行けるよ。お正月は行けなかったけど、G.W(ゴールデンウィーク)は問題ないからね。いっぱい遊べるよ。」


「わぁ〜〜い♪やったー! 雪、今度ねー、風花ちゃんと公園でいっぱい遊びたいんだよね〜。」


「へぇ〜。いいじゃん、雪ちゃん。楽しみだね。」


「うん!」


新潟の話になったら雪ちゃんが入ってきて、5月の連休に新潟に行ける事を楽しみにしてるご様子だったんだ。

今年のお正月は雪が酷かった為に安全をとって行かなかったから、余計になんだろうけどね。

まぁ···冬は冬でこっちでは中々出来ない遊びが出来るから楽しいのだけど、度が過ぎると危ないからね·····。それに私達は雪に慣れてないからさ、事故とか怪我とか危険も多いの。


その代わりに、この季節は気候もいいから外で沢山遊べるんだよね。

向こうにもこっちと同じ国営の丘陵公園があって、滑り台やトランポリン、ターザンロープ、ふわふわのトランポリン等大型の遊具があるんだよね。

雪ちゃんも大きくなって力もついてきたから、遊べる遊具が多くなった。特にターザンロープ系の遊具はそのいい例なんだよね。

そういう公園だから小さい子供に大人気で、G.W(ゴールデンウィーク)はいつも大賑わいしてるんだ。

またその時期はイベントもやってるから特殊な遊び体験もできて、チューリップも沢山植えてあって見頃を迎えてるから、花祭りとして大人にも人気だしね。



そんなこんな話をしつつ運転をしていけば、あっという間に駅に着いたの。

自宅から距離はあっても信号の少ない場所だからあまり止まる事なく、比較的早くに着いちゃったんだ。

これが市街地とかだとそうもいかないんだけどね。


「南口だったよね?」


「そうそう。階段から降りてきたロータリーの所で待ってる筈なんだ······。」


「おっけー。もし居なかったら少しそこで停めて待ってよっか。」


駅に着いて待ち合わせ箇所である南口ロータリーにくるっと迂回して回り込む。

そこから歩行者やタクシー等自動車に気をつけつつ、車を停める場所を探すの。

今日は平日なのが幸いしてかそれ程混み合ってもなくて、あっさりと車を停められるスペースを見つける事が出来たんだ。

通勤時間帯を外れてるというのも大きいのかもしれないけどね。



「あ、あそこに居たよ! おねーちゃん、ちょっと行ってくるね!」


「はい。気をつけてね。」

「うん!」


駅からの階段を降りた所に目的の友達を見つけた葵。

私の方からも確認出来たその2人組に、早速声がけしに行った葵だったの。

そんな後ろ姿を見つめながら、嬉しいのは分かるけど周りをきちんと見てね?と思いつつ、私は私で次の準備を始める事にしたんだ。


「雪ちゃんは、そのまま待っててね。」


「うん。」


雪ちゃんはそのまま助手席に乗ってて貰いながら私は車を降りて、バックドアを開けにいったの。

これから荷物を積むから、その準備でね。


「おねーちゃん、お待たせ!」

「こんにちは、お姉さん。お世話になります!」

「こんにちは!このはお姉様。今日はお世話になります。」


「はい、こんにちは。千紗ちゃん、夏美ちゃん。私の事は気にしなくてもいいから、楽しんでいってね。」


「「はい!ありがとうございます♪雪ちゃん、こんにちは!」」


「こんにちは~。千紗おねえちゃん、夏美おねーちゃん!」


雪ちゃんともそれなりの回数の面識のあるこの2人。千紗ちゃんと夏美ちゃん。

この2人が葵のお友達にして、今日我が家に遊びに来る子だったんだ。


「2人とも、荷物はこっちに載せちゃって。」


「はい、わかりました。」

「ありがとうございます。」


そんなに大きくない荷物をトランクルームに乗せて扉を閉めれば出発準備は完了です。

そして皆が乗り込んでシートベルトを締めたのを確認後、我が家へと一旦帰ります。


さて、今回遊びに来たのは葵の友達の千紗ちゃんと夏美ちゃん。

この2人が我が家に来るのは久々ではあるけれど、初めてではないんだよね。

基本的には長期休暇の時に遊びに来てたりはするんだけど実は今回、お泊りで遊んでいくらしいの。

事前にお父さん達の了解は取ってあるんだけど、私も茜ちゃんを泊めたりしてるからこれと言って何か言われたりはしなかったらしいんだよね。


そしてその葵はこのお泊り際して色々と考えた模様で千紗ちゃん達と打ち合わせのうえ、私に相談をしてきてたんだ。

それは車が必須の地方ならではの事で、要は移動の足が欲しいとのこと。

そしてそれを聞いた私も二つ返事でOKを出したんだ。

理由としてはそれが凄く久々で、私も行きたいなーってなったからなんだ。


その1つは明日の日中に3人でショッピングモールに行きたいって話なんだけど、それは私も雪ちゃんを連れて楽しめるから勿論OK。

そしてメインのは今日の夕方、暗くなって来た頃に予定されてる事で私も凄く久々で楽しみなんだよね。





 

  ーー葵 視点ーー



「いや〜···やっぱり葵ちゃん家っていいねー♪」


「何がいいのよ?千紗??」


「えぇ〜···だって、優しいこのはお姉様もいるし、可愛い雪ちゃんもいるじゃない。そんな2人に囲まれた生活っていいなーってさ。」

「確かにこのはお姉さんは優しいよね。今回のうちらのお願いも引き受けてくれた訳だし······。」


「まぁ···確かにお姉ちゃんは優しいけど、今回のうちらの提案はお姉ちゃんにもメリットがあったからだよ?」



お姉ちゃんに千紗達のお迎えを頼んで3人でお迎えに行って、無事に合流して我が家に帰ってきた今、私達は私の部屋でまったりを満喫してる最中なんだ。

そして早速始まる、千紗のお姉ちゃん褒め。


ま、これは大体何時もの事で「お姉様素敵!」とか「雪ちゃん可愛い!天使〜♪」なんて必ず言うものだから、私達もすっかり慣れちゃったんだよね。

お姉ちゃんに惚れ込んでる千紗だけど普段はそうそう会うこともないから、こうして会えた時の反応というかそういうのが凄いんだ。


今日も早速それから始まった訳だけど、確かにお姉ちゃんは優しいよ。

それも、とびきり優しいというもので。

今回のお泊りに関する事もそうだけど、今までだって私のみならず千紗や夏美まで良くしてくれた。

嫌な顔をせず、対してメリットもないのに面倒を見てくれたりしてさ、そんな事をしてくれれば好意を持ってしまうのも仕方ないと言うものだしね。



「そうなの?」


「そうだよ。だってお姉ちゃんお風呂好きだもん。そんなお姉ちゃんが銭湯とはいえ、露店付きの所だったら喰い付かない訳がないもの。」


「そうなんだ····。」

「へぇ〜···。でもまぁ、なんか分かるかも?お姉さんとお風呂って何だか似合いそうな感じがするもん。」


そうそう。お姉ちゃんはお風呂が好き。

これは雪ちゃんが出来る前からそうだったんだよね。

熱いお湯よりかは温めのお湯を好み、更に半身浴に近い形で長めに浸かるのを好むんだよ。

雪ちゃんを産んでからは短くささっと入る様になったけど、最近は大きくなってきたのもあって徐々に浸かる時間も長くなってきてるしね。


「でしょでしょ! お姉ちゃんの入ってるお風呂って、結構いい絵になるんだよ〜♪」


「マジ!?」

「ちょっと···それってどういう意味?! というか···何故それを葵が言えるの····あ、もしかして······一緒に入ってる??」


「むふふふふ······♪ うん、一緒に入る事もあるよ♪」


「くはぁ·····。」

「羨ましい······葵ちゃん·····。」


ドヤ顔で自慢する私。

そしてそれを羨ましそうにする千紗と夏美で、端から見ると何とも言えない面白い光景だったりするのかな?


でもでも、こういうのも妹の特権だよねって、私は思ってる。

それに、その歳になってもまだお姉ちゃんと一緒にお風呂に入るの?ってバカにする人もいるかも知れないけど、私は全然そう思わない。 

雪ちゃんが産まれて配慮していた時期もあったけど今はそうでもないし、それにそもそもそれだけの魅力がお姉ちゃんにはあるからね!

そんな価値ある物を妹として見れて堪能出来る今のうちに沢山やっときたいんだよ。


「そういう訳だから····今日のお風呂は期待しててもいいと思うよ〜。きっと驚くから!」


「「·········。」」


何を想像したのか敢えて突っ込まないけど、だんまりしちゃった千紗と夏美。

そんな2人を見つめながらクスッと笑ってしまう私だった。


このお泊まり会、私はお姉ちゃんには車出しを何回かお願いしたんだけど、その1つが今夜のお風呂なんだよね。

家のお風呂はまぁまぁ大きいから私らが2人で入るには入れるけど、3人では無理、狭い。

なら1人ずつならっていうのもあるけど、私の両親とかもいるからお互いに気を使うじゃない?

で、折角なら3人で入りたいよねーって事で考えた結果、銭湯に行ってみない?ってなったんだよね。

調べてみたら車でそこそこの距離の場所にスーパー銭湯があって、銭湯とは言うもののかなりの種類の露店風呂やお洒落な岩盤浴があるらしいの!

他にもマッサージもあるし、お食事も出来る。

これは「行くっきゃないよね!」ってなって、お姉ちゃんにお願いしたら二つ返事でOKしてくれたんだよね。


只でさえ優しいお姉ちゃん。

そこにお風呂好きと大きくなった雪ちゃんという要素を加味すれば、断られないだろうっていう打算的な考えもあったけど正解だった。

まぁ···お姉ちゃんのアレをこの2人に見せちゃうのはちょっと複雑な想いもあるけれど、それよりも3人で楽しみたい気持ちが勝ったんたよね。



「ま、そういう訳でまだまだ時間はあるから、取りあえずちゃちゃっとやっちゃおっか?」


「そ···そうだね。やっちゃお!」

「だね! 今日で終わりにしちゃわないと、明日思いっ切り遊べないからね。」


変な雰囲気になった2人を元に戻すべく、私は本来の目的の1つである春休みの課題をやる事を勧めたんだ。

そしたら思い出したかの様に、千紗と夏美もやる気になってくれた。


「で、課題の残り具合はどんな感じなわけ?いつもの通りならそんには残ってない筈だと思うけど······。」


取り敢えず千紗と夏美の課題の残り具合を尋ねてみたんだ。

私達は冬休みを除く長期の休みの時は、お互いの家に遊びに行って課題を一緒にやったりとかしてたりするんだけど、皆して頭が良いわけでもないけど得意な教科がお互いに違ったりするから、分からない所があるとフォロー出来たりして結構いい感じで仕上がるからさ。

後は···1人で黙々とやるよりは楽しく出来たりする部分も気持ち的に大きいのかも。


「私は数学と英語のワークが数ページずつかな〜。」

「私はワークは終わってるけど、漢字の書き取りが結構残ってるねー。メンドイよ····。そういう葵はどうなのさ?」


なるほど······。

どうやら2人ともそんなには残ってなくて、今日少し頑張っちゃえば終わるレベルだね。

だからか2人とも言葉にそれ程悲壮感が出てないんだよね。


「私?私はね······実は終わってるんだなぁ〜♪」


「なっ······なにぃぃーー!?」

「えぇーー?!うっそぉ〜〜!?? 葵ちゃんが裏切ったー!?」


私のまさか!の発言に驚く2人。

でもでも、それは間違いなく事実なんだよ·····。


「まさか葵が課題を終わらせてるなんて···明日は雨か?」


「いや···明日はバリバリの晴天だから······。」


夏美がなんか失礼な感じで言うけど、まぁ···以前までの私なら終わってるっていうのはなかったから、そのくらいインパクトはあるよね。


「そう言えばさ·····冬休みも随分と早い段階で終わったとかって言ってなかった?葵ちゃん??」

「あ!そうだ! 確かに言ってたわ!! ······やっぱりこのはお姉さん??」


「······うん、そう。お姉ちゃんの影響だよ。」


「「いいなぁ〜···。」


私が前回も早めに終わらせたというのを千紗が思い出して、そしてその理由に夏美が気が付いた。

そして羨ましそうにしてる。


「今回はさ、そんなに教えて貰ったっていうのは無かったのよ。只、一緒に課題を進めたってだけなんだけど···、でもこれが意外と不思議で、お姉ちゃんと一緒にやると何故か手が進むのよ。」


「えー??何それ??」


「不思議だよね?だけど本当なの。分からない所は確かに躓くんだけど、それ以外の箇所は頑張れるというか······集中力が続くっていうのかな···。そんな感じ。」


千紗と夏美がきょとんとしてるけど、それは私も同じ。

理由は分からないけど、お姉ちゃんと同じ部屋で課題をやってると不思議と集中力みたいなのが続くんだよね。

私一人でやってるとそんなに集中力が持続しなくて、何回も休憩を挟んじゃったりして中々進まないから、本当にお姉ちゃんの存在はありがたいの。


「う〜〜〜ん······。お姉様って······ほんと不思議??」

「見た目以外にも何が不思議パワーでも出てるのかな?」


「あははは···何それ? まぁ、その気持ちは分かるよ。妹の私でもそう思う事は多々あるからね。取り敢えず進めちゃお?私も自主勉やってるからさ。」


「えっ?!」

「マジ?? あの葵が!?」


「私だってやる時はやるんだよ······。」


またまた驚く2人だけど、私だってやる時はやるんだよ。

それにいくら終わってると言っても、まだ残ってる2人を尻目に私一人で遊んでるのも悪いから、一緒に勉強しようと思ったんだ。

そう思うのも以前の私なら出てこなかった発想なのは間違いないんだけどね······。





カリカリカリカリ·····。 



そこそこ静かな室内にペンを走らせる音が響く。

時通り会話もしてはいるけど、それでも手が止まることは無く課題終了に向けてひたすら頑張っている千紗と夏美。


「ねぇ、葵?」


「うん?」


「前の時も思ってたけど、お姉さんって頭もいいんだよね?」


「うん、いいよ。それもめちゃめちゃね。」


手を動かしながらふと夏美がお姉ちゃんについて尋ねてきた。

そして私もそれに答えたんだ。


「お姉ちゃんと一緒に勉強をする様になって気が付いたんだけどね、お姉ちゃんってめっちゃめちゃ手が早いんだよ。あ、手って言うのは進めるスピードって意味ね。」


「そうなの?」

「へぇ~···凄いんだね。」


「うん、凄いよ。私もビックリしたくらいだからね。お姉ちゃん、数学とか英語は得意だからスラスラ解けるのは分かるんだけど、書き写し系とかそういうのは教科書を見ながら手だけ動かしてんのよ。分かる?この凄さ??」


「え?何それ??」

「スラスラいけるのは分かるけど、その後半はなんなのよ??」


2人が不思議がるけど、それを知った私も意味不明だから気持ちは分かるんだ。

ただきっと、これは現物を見ないと絶対に「はぁ?」ってなるんだよね。

まぁ···見た所でまた「はぁ??」ってなるんだけどさ(笑)


「えーっとね···分かりやすく言うと、書類とかを見ながら手だけキーボードを打ってるのを見たことない?アレの手書き版なんだよ。目線は教科書なんだけど、ノートの方は殆どの見ないで写し書きしてんの。で、改行辺りでチラッとノート見てまた教科書。それにも関わらず真っ直ぐに書いていくし、字も丁寧で綺麗なの。そんなんだからめちゃめちゃ早く書き写ししていくし、なんでそんな事出来んの?って、本気で思ったよ······。」


「凄いね···お姉さん······。」

「うん······。流石このはお姉様だよね。」



私のお姉ちゃんは妹の私から見ても色々と凄いなーって感じる所はあるんだけど、同時に不思議だなっていう部分も多々あるんだよね。

その1つがこれ。

とは言ってもこれは最近知った事なんだけどね。

あんなノートを見ないで書くなんて、どうやったら出来るんだろう?って、本当に思うよ。


私だって見ないで書くくらいなら、恐らく出来る。

ただ絶対に行は上へ下へと乱れるから、お姉ちゃんみたくあんなに綺麗には書けないよ。

だからどうやって身に付けたのか気になる部分ではあるけれど、そこはお姉ちゃんだからなぁ···ってなっちゃうんだよね。

きっと私の知らない見えない所で努力したんだろうなって思うし、そういう人だからね、お姉ちゃんは······。


「あとね、早く終わった理由なんだけど、それはお姉ちゃんと一緒に課題を進めたからなんだよ。」


「あぁ···確か、冬休みの時もそんな事を言ってたよね?」


「うん。あの時は分からない所を教えてもらいながらっていうのがあったけど、今回はそんなんでもないよ?」


「そうなの?てっきり今回も教えて貰ったから、早く終わったのかと思ったけど?」


「まぁ···それも否定はしないけど、冬休みの時ほど教えては貰ってないよ。多少私も出来る様になってきたからね。」


そうそう、そうなんだよ!

今回の私はお姉ちゃんとやるにはやったけど、冬休みの時ほど教えて貰ってはいなんだよね。

それは単にお姉ちゃんに勉強を教えて貰ってから私の理解度が少し進んで、自力で出来るようになったのが大きいんだ。

お陰で今回の学年末テストはいつもよりも点数が良くて先生も驚いてたけど、当の私が一番驚いて喜んだんだ。


「でね、確かに分かんない所を教えて貰えれば確かに早く進むけど、そうじゃなくて、お姉ちゃんと一緒に勉強をすると何故か集中して出来るんだよ。だから早く終わったの。」


「な、なるほど〜??」

「分かる様な分からない様な······。ぁ、でも、教え上手な所はあるよね、お姉さん。」


「うん。伊達に教師を目指そうって決めただけのものはあるよね。」


そうなんだよね。

お姉ちゃんは教師を目指すつもりでいるからなのか、勉強を教えるって事が凄く上手なの。

これは私達は勿論の事、茜ちゃんも実感してる確かな事なんだ。

只し今回はそれはあまり体験してなくて集中出来た方に恩恵があるわけなんだけど、それは相変わらずの謎なんだよね。

説明してって言われても説明の出来ないそれなんだけど、そこはお姉ちゃんの謎仕様って感じで私はそう納得してるつもり。


「お姉様、数学の教師目指してるんだっけ?」


「そそ。私的には英検準一級持ってる英語でも全然いけると思うんだけど、お姉ちゃん曰く「数学の方が楽しい」なんだって。よー分からない世界だよね?」


アハハハと笑いながら私は答えた。


「確かに···数学が楽しいって感じるその気持ちが私もわかんないや。」

「私もだよ。英検準一級だってものすごーく凄いのに、数学だもんね〜······。」


「そうなんだよ! 検定で受かる為にすっごく頑張ったんだからそれを活かせばいいのに、それはそれって言うんだもん。ほんと、分かんない!」


「まぁまぁまぁ、落ち着いてよ、葵ちゃん。お姉様にもお姉様なりの考えがあるんだから仕方ないよ。」


「そうなんだけどさぁ〜······。」


挿絵(By みてみん)


熱が入っちゃってちょっと憤りが出て来た私を千紗が鎮めてくれたんだけど、分かってはいるんだよ。

お姉ちゃんはお姉ちゃんの人生で自分で選んで決める。それは私もそうだし、ここにいる千紗や夏美もそう。

たださ、苦労して手に入れた物を活かさないのは勿体なくない?って思うのは私だけなのかな?って思うの。


それだけの英語力があって今年は更にその上を目指すって言ってるお姉ちゃんが、別に英語の教師じゃなくてもその英語を活かせる仕事はある様に思うんだけどね·····。

碌な知識がない私が言うのもおこがましいのだけど·····。



「と···取り敢えず、飲み物持ってくるよ。何かリクエストはある?」


「サンキュー♪ どんなのがあるの?」


「えっとねー······。」


取り敢えず私は気分転換に飲み物を持ってくる事にしたんだ。

多少話しながらの課題になったけど、めんどくさくて残ってた課題だった故に、手を進めれば終わりも見えてきた頃合いだったからね。


冷蔵庫に何があったかなー?って考えながら、持ってくる飲み物リストを考える私だった。

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