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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ある日のバレンタイン②-3 高2(挿絵あり)

ーー 葵 視点 ーー



「千紗、夏美〜。これ私からのバレンタインね。」


「ありがとう、葵。私からも葵にあげるね。」

「ありがとね、葵ちゃん。私も葵ちゃんに持って来てあるから渡すね。」


「うん、ありがと。二人とも。」


挿絵(By みてみん)


ある日のお昼休み···とは言っても、やり取りで分かるように今日は2月14日のバレンタイデーなんだけど、そのお昼休みに私は仲良しの友人である千紗と夏美にバレンタイ恒例のチョコレートを渡したんだ。

これは『友チョコ』と言われる、『義理チョコ』とは違う仲の良い友達や仲間に渡す物なんだ。だからちょっと可愛い物を探してきて、それを2人に渡したんだ。

まぁ····なかなか気に入る物が見つからなくてお姉ちゃんとお店を色々と見て歩いたのはお約束なんだけど、それはそれで楽しかったからOKなんだけどね。


そんな買い出し思い出があるチョコを2人に渡せば、2人もまた私にチョコを渡してくれた。


高校に入学してから知り合った千紗と夏美だけど、私達は不思議と気が合って仲良くなった。

そして3人でいる事が増えた訳だけども、去年も含めてこうしてチョコを貰えるというは凄く嬉しく感じちゃうんだよね。

それに私も千紗達も『義理』だとか『友チョコ』とかって敢えて口にはしないけど(私は友チョコとして用意してる)、これが仮に義理として用意してくれた物だとしても、気持ちの籠もった物を頂けるというだけで十分に私の心が満たされるんだ。



「そうそう、もう1つ2人に渡す物があるんだ。受け取ってくれる?」


「もう1つ···?」

「あ······もしかして······葵の手作り??」


「ピンポーン♪当たりー♪♪」


私の言葉に一瞬きょとんとした千紗と夏美だったけれど、直ぐに察してくれたよね。

まぁ、去年の前例があるからだというのは私もわかっているのだけど、それでも多少は驚かす事が出来た事には良かったかなって思うんだ。


「はい、これね。一応私の手作り···なんて言うけど、大半はお姉ちゃんが作ったんだ。」


そう言いながら私は丁寧にラッピングしたクッキーを2人に渡した。

そして受け取った包をしげしげと見つめた2人は、袋を開いて中身を確認して······。


「おお!今年はクッキーにしたんだ?」

「凄いねー!葵ちゃん! 可愛いし、なりより美味しそうだよ♪」


「そう言ってくれてありがとね。まぁ、形はイマイチだけど、味は保証するよ。なんたってそこはお姉ちゃんの領分だからね!」


2人の好反応に気をよくしてついドヤ顔になってしまう私だけども、冷静に考えれば私は大した事はしてないんだよね···と思う。

今年はクッキーになったけれど、そのクッキーの材料配分から混ぜ合わせ、焼き加減と、味や食感という部分においては完全にお姉ちゃんの物。そして私は形を作ったに過ぎないから。


でもまぁ、それでも私としては良かったって思ってる。

理由は簡単。

まず第一にお姉ちゃんと一緒に何かをするというのは楽しいという事。

料理にしても勉強にしても大変な部分とか苦労する部分は当然あるけど、それを抜きにしても楽しく嬉しく感じるんだよね。

勿論それは私がお姉ちゃん大好きという所に作用してるのは否定しないけど、それに加えてお姉ちゃんの教え上手とか優しさとかそういうったお姉ちゃんの良さという部分に触れられるのが凄く大きいと私は感じてる。


そして良かったという第2のの理由。


「このはお姉様の手作りクッキー······♡」


「ほらほら、千紗。ぼーっとしてないで、早くお昼食べるよ?そうすればクッキーも食べていいから······。」


「そ、そうだね! ササッと食べてクッキー頂くよ♪······あ〜···でも、食べちゃうのも勿体ないなぁ〜······。」


クッキーそのものはお姉ちゃんの手作りって教えたら更に喜んだ、私の友人の千紗。

夏美はそこまでではないけれど、千紗はお姉ちゃんに憧れや好きっていう感情を強く持ってるから、本当に喜んでるんだ。

ボーっとしてて見兼ねた夏美に促されてお昼を食べ始めたけど、これだけ喜んで貰えるなら形だけといえど、作って良かったって思える理由なんだよね。



私達のお昼は基本的には教室で食べてる。

なかには食堂に行ったり校内の好きな場所で食べたりするっていう人達もいるけど、私達は大体いつも教室。

そして私達3人の誰かの机をローテーションするような形で一緒に座って食べてるんだよね。

そういうので本日は夏美の席を囲って、隣近所の席の子の机と椅子をお借りして食べてる私達。


「葵のお弁当って、本当に美味しそうだよねー。」

「このはお姉様が作ってくれてるんでしょ?羨ましいな〜。 ······ねぇ葵ちゃん。おかず一品貰えないかな??」


「だーめ!今日はあげないよ。昨日はあげたんだから我慢してよね·······。」


「ぶぅ·····。」


頬を膨らませて拗ねる千紗だけど、今日は私も譲れない。

だって昨日は貴重なおかずを一品というか、一口あげたんだから我慢してよね!っていう思いが強いだもん。

いつもというか、毎日「一口ちょーだい♪」なんてやり取りをしてる私と千紗、そしてそこに偶にだけど夏美も参入してくるこのお昼の原因は私の食べてるお弁当が元凶なんだ。


私達のお昼ご飯は弁当を持参するか、食堂で購入して食べるかのどちらか。

そして私達は基本的には弁当を持参してくるんだよね。

時にはコンビニやスーパーでパンとかおにぎりその他諸々を買って来て食べるというパターンもあるけど、この冬の時期に限っては私は家からお弁当を持参してる。

それには理由があって、この冬に限りお姉ちゃんがお弁当を作ってくれるからなんだ。


それはお姉ちゃん曰く、食中毒とか食品の傷みの心配が夏に比べて少なくなるからって言うのが大きな理由らしいんだよね。

だから寒くなってくる12月辺りから3月上旬くらいまで、毎朝私の分まで用意してくれるの。

メインのおかずとしては前日のおかずを使ったりもするけれど、それ以外にも栄養バランスを考えて色々と入れてくれる。

そしてなるべく冷凍食品は使わないで手作りで作って入れてくれるという徹底ぶりで。

またご飯もただ白米を入れるたけじゃなくて工夫をしてくれるし、おにぎりの時なんかも同様にアレコレしてくれるんだよね。


栄養バランスや見た目にも配慮して手間暇かけて作ってくれるお弁当は本当に美味しい!

元々料理の上手なお姉ちゃんだけど、それが冷めた状態でも美味しいんだから凄いとしか言いようがないんだよね。

そしてそんなお弁当な物だから、お姉ちゃん好きな千紗や夏美が黙ってる訳がなくて、先程の様なやり取りが毎回発生してるんだよね(笑)



おいひい···(美味しい)


「いいなぁ〜···葵ちゃん······」


私が食べながら「美味しい」って感想をもらせば、それに対して反応する千紗で。

千紗もお弁当を持ってくる時もあるけれど、今日はパンのみだから余計に食べたくなるのかもしれない·····けど、先程も言った様に今日は譲れないんだ!

それは昨日のお昼におかずを一品あげたという事。


基本的に1つおかずをあげた代わりに私も1つ貰う事にしてるけど、私の中ではお姉ちゃんの作るお弁当と千紗や夏美のお弁当ではどうしても価値が違っちゃうんだよね······。

千紗や夏美のお弁当も勿論美味しいけれど、私の中ではやっぱりお姉ちゃん最高!な訳で、それを1つあげるという行為は量としては足りても精神的に苦しい物があるんだ。

だからやっぱり毎日交換したりするという行為は、私には受け入れられなんいんだよ······。


「ごめんね、千紗。また近い内に交換してあげるから、それまでは我慢して?」


「うん、分かってる·····。ごめんねー、葵ちゃん。」

「ま、千紗がそうなるのも仕方がないよ。実際にこのはお姉さんのお弁当は美味しいし、冷めてる状態でそれなんだから出来立てはどんだけなんだよって、私でも思う事があるもん。」


私が千紗にあげられない事を謝れば、千紗もその事で迷惑をかけてるのを実感してるのか素直に謝ってくれた。

そして夏美も表面上は冷静を装ってはあるけれど、『私も食べたいなー』『羨ましいな〜』っていう気持ちがひしひしと私に伝わってくるんだよね。

だって夏美は今日はお弁当で見た感じは私のより量があるっぽいけど、その視線は私のお弁当と自身のお弁当をチラチラと行ったり来たりしてるからね···。


「まぁ、確かにお姉ちゃんのご飯は美味しいよ。でもそれは最初からそうだった訳じゃなくて、努力した結果の今の美味しさだからね〜······。」


もぐもぐとお弁当を食べながら千紗と夏美に言葉を返す。

そしてそれに対して「そうだよね······。いくらお姉様でも最初から出来るわけじゃないもんね。」って千紗がまた返してくれたけど、ホントにそうなんだよね。


高性能なお姉ちゃんだけど、そのお姉ちゃんだって何も最初からできたわけじゃない。

料理だってお母さんから1から教わったって言ってたし、最初に作ってくれたカレーなんかも人参やジャガイモの大きさがバラバラだったのを当時幼かった私の記憶としても残ってるくらいだからね。

そして作っていく内に綺麗に切れるようになっていったり、味付けや炒め方、煮方といった調理手法も上手になっていって、そして今がある。


だから一見してパーフェクトなお姉ちゃんだけど、それにはお姉ちゃんの途轍もない努力があっての結果だというのは、私を含めた家族みんなが知ってる事。

まぁ、一部理解不能な能力?を持ってるような気がしないでもないけれどね·····。(主に勉強面で···)



「ま、それはそれでいいんだけどさー······、今日はバレンタインじゃん。千紗や夏美は他には誰かにあげたの?主に男子とか??」


「えぇ~?!」

「そんなのいるわけないっしょ! いつも一緒に過ごしてるんだから、そこら辺は葵だって分かってるだろうに···全く、何を聞くかねー·····。」


このままお弁当の話をしてると千紗がまた「頂戴」って感じになっちゃいそうだから強引に話を変えてみたけれど、まぁそう言う事で。


「いや、まぁ······分かってはいるけどさ、そういう話とか感じもないのはある意味で寂しいなーとも思う訳よ······。」


「そういう葵ちゃんはどうなわけ?誰か男子にあげようとかって気持ちはないの?」

「······千紗。葵にそういうのがあると思う?」

「う〜〜〜ん······ない···かな?」


「そう言われると何とも言えなくなるけど···ないね!」


振った話がブーメランとして返ってきたけど、まぁその通りなんだよね。


「だろう。少なくともお姉様の話で喜んでる葵の状態の内はそういうアレはこないよ···きっと。」


夏美が確信をついた事を言ってくるけど、その通りなので反論は言えない···。

でもまぁ、一言くらいはいいかな?と思って言おうかなとは思うけどね。


「だってしょうがないでしょ。学校じゃ、千紗や夏美といるのが楽しいしさ、家に帰れば帰ったでお姉ちゃんに可愛い雪ちゃんまでいるんだもん! そこに男子が入り込む余地なんて今の私にはないんだよ。」


「葵ちゃんにそう言われちゃうと私としても照れちゃうな······。」

「だね···。ま、私も葵や千紗と一緒に過ごしてるのは楽しいから、その気持ちは分かるわ······。」


「でしょ!」


ふふんとドヤ顔をしてるかもしれない感じて「でしょ!」なんて言ったけど、そういう事なんだよねー。

早い話が今の環境が好きで気に入ってるから、壊したくないっていうの。

学校では千紗と夏美と一緒にお昼を食べたり、連休になれば遊んだりする事もある。また家に帰ればお姉ちゃんや雪ちゃんがいるからそれはそれで楽しくて、そこを壊したくないんだよね。

だからそこを犠牲にして男子と付き合うとかっていうのが想像もつかないし、付き合いたいなーっていう気持ちも特に湧かないんだよね。


だから今日のバレンタインでも千紗や夏美は勿論の事、クラスの女子の皆にはチョコを渡したけど、男子の諸君には義理としてでも渡してはいないんだよね。

そんな私だから男子達が朝からそわそわとしてるのは気付いてはいたけど、そこは他の女子から貰えることを期待してね?って心の中で思ってはいたんだ。


「まぁ···葵にその気がないのは分かってはいたけど·····男子はどうなんだろうねぇ〜······。」


「夏美···何、その変な含みは??」


突然夏美が変な事を言いだした。

男子がどう?

何それ?

 

「あー······葵ちゃんって、男の子達から密かな人気があるからねー·····。その内アプローチしてくる男子も出てくるかも······?」


「千紗まで何々!? えっ?? どういう事? 私ってそんな人気あるの??」


夏美に続いて千紗までそんな事を言うものだから、ビックリして頭の回転が追いつかないよ···。

ってか、私が人気ってなんの冗談?って思うんだけど、そこについて2人に問い詰めたい!


「だってねー······葵って結構というか、かなりプロポーションいいのよ。身長だって普通にあるし、体型だっていい。それに顔だって整ってるし、そこは流石このはお姉さんの妹だねって納得出来るレベルだしね。」


「そうそう、そうなの! それに葵ちゃんって明るくて元気で、時たま見せる笑顔とか照れ顔とかが凄くいいのよ♪」


「そういう所が男子の中でもいい!ってなって来た所に、あのお姉さん登場でしょ。予想以上に素敵なお姉さんだったっていうのが私達女子と偶々チラ見した男子からの情報で拡散して、葵の人気に更に火がついたみたいなのよね·······。」


「うわぁぁ······マジか······。」


私の知らない所でそんな事になってるとは知らず、あまりの事に返す言葉も出てこない私。


「あのこのはお姉さんありで、その妹の葵がモテないっていう考えは普通はないよね······。」

「髪色とか瞳とかは違うけど、顔立ちとかはこのはお姉様と似てるからねー葵ちゃんは。だから美人さんなんだよ、葵ちゃん。」


「う······そう言われてもあまり実感ないし········。」


なんかやたらと持ち上げてくる2人に対して言葉に詰まる私。

そりゃあさ、お姉ちゃんが美人でモテるのは分かる。

妹としていうのを抜きにして見ても、お姉ちゃんはスタイルもいいし美人だというのは昔から分かっていた事だからね。

そしてその髪色とかの特徴も相まって外を歩いてれば皆が振り返るレベルだし。


それに対して私はまぁ···妹だから顔立ちとかが似てるのは分かるけど、美人?私が??

what?

気にした事もなかったよ······。


「ま、まぁ····太らない様にだけは気をつけてはいたけどさ、そっち方面はホント気にした事なかったな······。」


「葵ちゃんらしいと言えはそうなんだけど······。」

「確かに葵らしいわね。食に対して気にしてるのは知ってはいたけど·····。」


千紗も夏美も納得と言った風に頷いたりしてるけど、ホントその通りなんだ。

だってよく考えてみてよ。

朝晩とお姉ちゃんのバランスの良いご飯を食べて、冬季限定だけどこれまたお姉ちゃんの手作りお弁当だよ。これを食べてる限り太る要素は皆無なんだよ!

それで尚、太るようならそれは私の間食が原因という事になるんだよね。

お姉ちゃんが私達の身体の事を考えて食事を作ってくれてるのにそれを台無しにする様な事はしたくないから、私も私なりに食事には気をつけているし。


飲み物もなるべくジュース類は飲まないようにして、お茶系とかミネラルウォーターとかを飲むようにしてる。

間食も付き合いとかもあるからゼロには出来ないけど、それでもカロリーは余計に取らないように控えめに抑える様にしてさ。

そして私もお姉ちゃんに教わってストレッチなどの運動をする様になって来た。

これも基礎筋力などを付けたり維持するのが目的で、要は基礎消費カロリーを増やそうっていう意味合いが強いかな。

そうすれば普段の消費カロリーが増えるから多少食べすぎた時があっても太りにくい体質になるからね。


「お姉ちゃんがお姉ちゃんだからね〜。食事も私達の事を気にして作ってくれるから、私だけ太る訳にもいかないじゃん。だから私も私なりに努力はしてるつもりなんだ。」


「はぁ〜···。やっぱり葵は葵だね。変わらないわ。」

「それが葵ちゃんのいい所だと私は思うけどねー。」


もぐもぐと食べながらそう答えれば、千紗も夏美も納得?してくれた。

まぁ多少呆れなのかやれやれ···なんてニュアンスも含まれてそうな感じもあった気がしなくもないけど、まぁ、いいや。

そのくらい私達の関係はいいからね!



お喋りをしながらパクパクもぐもぐとご飯を食べる。

もう少しでお姉ちゃんの手作りお弁当もお終い。

もうちょっと食べたかったなーなんて思いつつも、楽しいお昼休みはあっという間に過ぎ去っていくのでした。





  ーーーーーーーーーー





「ただいまー!」


「あっ!おかえりー♪葵ねーね♪」


「うん、ただいま、雪ちゃん。ありがとねー♪」


玄関を開けて帰宅の声を掛ければ、それに応えるかのようにリビングへの扉が開いて中から雪ちゃんが飛び出してくる。

笑顔いっぱいで元気な、我が家の小さな天使。

いや、ホントに天使なんだよ。

容姿がお姉ちゃんそっくりだとか、可愛いだとか笑顔が良いだとか挙げればきりがないけ雪ちゃんだけど、それでもこのくらいの小さな子が笑顔でお出迎えしてくれれば、もう私はメロメロなんだ······。

疲れも吹っ飛ぶし、バレンタインデーという事で色々とあった事も忘れさせてくれるくらい癒されるし。

世の中の親御さんが子供の顔を見て喜んだりする気持ちが、自分の子じゃないのに理解出来ちゃった瞬間なんだよね。



「お姉ちゃん、ただいま。」


「お帰り〜、葵。」


「うん。ありかと。着替えてくるねー。」


雪ちゃんのお出迎えの後、階段を上る前にリビングに顔を出して中にいるであろうお姉ちゃんに声を掛ける。

そうするとキッチン側からひこっと顔を出したお姉ちゃんが私に声を掛けてくれた。


(もう、晩御飯の仕込みをしてるんだ。早いな〜。)


そう思うのもいつもの事で、お姉ちゃんがキッチンに立つのは当たり前の光景なんだ。

ただ私が帰ってくるこのタイミングでキッチンに立って晩御飯を作るのには流石に早すぎるから、そういう時は大概仕込みをしてる事が多いんだよね。

お肉やお魚に下処理をして味を染み込ませるとか、乾物とかを水に浸してもどすとか色々ね。


(今日の晩御飯はなんだろう?)


そんな事を考えながらルンルン♪気分で階段を上がり自室へ入った。

だって仕方がないよね。

本当にお姉ちゃんのご飯は美味しいから、それが和風だろうが洋風だろうが、はたまた中華系でも期待しちゃうんだよね。

それにさ、和風の煮物系って年寄り臭くて好きじゃないって子も多いけど私には当てはまらない。

それもこれもお姉ちゃんの料理が、味付けが良すぎて好きっていうシンプルな理由だからね。

だからああいう風にキッチンに立ってるお姉ちゃんを見ちゃうと嫌がおうにも期待しちゃうんだよ。



ブレザーやスカートを脱いでハンガーにかけて、クローゼットにしまって。そしてシャツも脱いで部屋着へと着替える。

そして脱いだシャツを片手に階段を降りて洗面所の洗濯かごに入れておけば一先ずはOK♪

あとはご飯まで取り合えすのんびりとするだけなんだ。


「葵〜、何か飲む〜?飲むなら淹れるよ?」


「あー······じゃあ、紅茶お願いしてもいいかな?」


「紅茶ね?了解〜〜♪」


お姉ちゃんと雪ちゃんの居るリビングに入ったら早速お姉ちゃんから「何飲む?」って聞かれて一瞬考えたけど、食前というのもあって紅茶をお願いした。


これもやっぱり何時ものやり取りなんだよね。

冬場は寒い外から帰ってきたばかりだから温かい飲み物を飲みたくなるし、夏場ならその逆で冷たい物を飲みたくなる。

それが学校から帰ってきた私のルーティンとなっていて、お姉ちゃんもそれを知ってるから私の帰宅に合わせてお湯を作ってくれているし、私がリビングに来るなりそう声を掛けてくれるんだ。

本当に優秀で気が利いて優しいお姉ちゃんだよね······。


そんなお姉ちゃんにすっかり甘える私はお姉ちゃんとは逆の方に目を向ければ、そこにはお姉ちゃんの娘にして姪っ子の雪ちゃんがソファーに座ってアニメを見てた。

見てたのはポケ◯ンで曜日を考えると録画したものだなってのは直ぐに分かったけど、その真剣そうな表情は先程の笑顔とはまた対照的。

でもやはり可愛いのには違いないんだよねー。

ほんと、マジで天使でお姉ちゃんの子だよねって毎回思うよ。


そんな真剣に見てる可愛い雪ちゃんの邪魔をしないようにそっと傍に腰を下ろして、こたつの中に足を入れる。


(あー······温かい·····駄目になる······。)


早速、こたつの魔力に駄目にされる私。

でもそれも仕方のない事だよねと毎回おもうんだよね。

何時も私より先に帰ってくるお姉ちゃん達がいるから、私がリビングに来る時は既に暖かいの。それでも、足元がぬくぬくと暖かいのはまた違うんだよねぇ·····。


「はい、葵。紅茶出来たよ。熱いから気をつけてね。」


「ありがとー、お姉ちゃん。」


こたつの魔力にほんわかしてると、お姉ちゃんが紅茶を持ってきてくれた。

それにお礼を伝えつつマグカップをみればそこには湯気と共にダージリンの香りがほのかに感じられたんだ。


「そうだ、葵。今日さ、食後の後にロールケーキ食べる?」


「ロールケーキ?? 珍しいね、お姉ちゃん······。まぁ、あるなら食べるけどどうしたの?」


『ロールケーキ』

別に珍しい物でも何でもないよね。今はケーキ屋だけじゃなくスーパーでも量産品だけど売ってたりもするし。

そして私が言った「珍しい」も言うのは、それ其の物じゃくて私に勧めるくらい有るらしいという事なんだよ。


お姉ちゃんは買い物に行っても基本的にはデザート系は買って来ない。それには理由があってお姉ちゃんが単に食後にデザート(果物は除く)を食べない傾向にあるからなんだ。

但し例外もあって雪ちゃん用には買ってくるよ。それも小分けや個包装されてる物に限るんだけどね。

だから私に「食べる?」なんて言ってくる事が珍しいんだよ。


「ロールケーキさ、茜ちゃんから頂いたのよ。バレンタインデーってロールケーキを手作りしてくれて、持って来てくれたんだよね。」


「マジ·······!?」


「うん。なんでも私が皆からチョコを沢山貰うだろうからって気を利かせてくれてね·····。こっちの方が作るの大変だろうにさ······。」


そう言うお姉ちゃんは申し訳なさそうな表情をしつつも、でも嬉しそうな顔もしてたんだ。

そんなお姉ちゃんを見つつ茜ちゃんすごーい!って思ったり、お姉ちゃんをそんな風にさせる茜ちゃんにちょっと嫉妬してりもする私で内心はちょっと複雑な気分······。


「でね、これが大きも普通にあるから皆で食べてねーって言われてね。お母さん達も交えて皆で食べようかなって考えてたんだ。」


「な、なるほど······。」


そう言われちゃえば皆で食べちゃった方がいいよねとは私も思う。

そもそも生菓子だから日持ちはしないだろうし、一人でパクパクと沢山食べられる物でもないからね。


内心で驚いたりなんなりとしてるけど、お姉ちゃんの事情を察して用意するなんて茜ちゃん相変わらず凄いなって感心しちゃうよ。


お姉ちゃんって人気があるから、去年なんてクラスの女子を含めて結構な数を貰ってきてたりしたんだよね。

その量に驚いたのは私もだけどそれをまた食べる方も大変で、あまりに多いから「私も少し食べようか?」って聞いたら、「私が貰った物だし皆の気持ちも籠もってるから、私がきちんと食べるよ」って言って、お姉ちゃんは地道に少しずつ消化していってたのを私は覚えてる。

だから人気があり過ぎるのも困りものだよねって初めて思い知らされたんだよね。

で、それを知ってる茜ちゃんは別の物で考えたと。



「で、茜ちゃんはどんなロールケーキ作ってきたの?お姉ちゃんは見た?」


「いや···まだ見てないんだ。ちょっと見てみよっか。」


そう言いつつお姉ちゃんは冷蔵庫へ向かい、その中からロールケーキらしき物を取り出した。


(何だ······お姉ちゃんもまだケーキその物は見てないのか·····。でも一体どういうのを作ってきたんだろ??気になるー······)


今までのお姉ちゃんの話や茜ちゃんと遊んだりする中で、茜ちゃんが非常に家庭的な子だというは私も知っている。

だからこそ、ロールケーキという作るのが難しいお菓子をどう作ったのか凄く気になる私だったんだ。


ドキドキ······

ワクワク·····


取り出されたそれは、大きめの紙皿に乗せられていて、可愛いデザインの包がされてた。

大きさ的にははっきりとは分からないけど、10センチ少々くらいの大きさで、確かにこれは皆で食べた方がいいよねと思わされる大きさだった。

そしてお姉ちゃんがその包を丁寧に開けていって······。


「「おおっ!!」」


私とお姉ちゃんの驚きの声がハモった!


出て来たそのケーキは綺麗な焼き色が付いたスポンジ。その上に控えめに粉砂糖がまぶしてあって、とても素人が作った様には見えない。

そして肝心の中身は白いホイップクリームが入っていたんだけど、何とそこには細かく切った苺が入ってるじゃありませんか!!


「お姉ちゃん·····凄いよ、これ······。苺のロールケーキじゃん!!」


「うん···そうだね······苺のロールケーキだね······。しかもこんなに素敵に作ってくれて······。」


なんと、出てきたのは苺のロールケーキだった。


想像もしてなかったロールケーキに驚く私とお姉ちゃん。

そしてお姉ちゃんは更に感動しちゃってるっぽいんだよね····。


恐るべき茜ちゃん······。

女子力高すぎだよ······と思った瞬間だった·······。

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