ある日のバレンタイン②-2 高2
「このはちゃ〜〜ん!」
「うわっ!? さ、咲夜ちゃん? どうしたの?ビックリしたよ〜······。」
すっかり定番となった茜ちゃんとの通学。
そして学校に到着して教室に入ろうかってタイミングで、いきなり抱きつかれたんだよね。
それなんで思わず驚いてしまった私なんだけど、無理はないかなと思う。
だって今までもこういうのはあったけど、それは前兆が分かっていたから身構える事が出来たんだよね。
だけど今回はそれが分からなくて来たものだから、驚いたんだ。
「ゴメンね〜、このはちゃん。でも多分もうそろそろ来るかなって思ってたから、抑えが利かなくて·····。」
「そうなのよ、このはちゃん。さっちゃんったら、ずーっとウズウズしてたんだよ。まぁ···理由は分かるんたけどさ。あ、おはよう。このはちゃん、茜ちゃん。」
「おはよう、みんな。」
「みんな、おはよー♪ ほら、咲夜ちゃん。このはちゃんから離れて?」
「うん、ごめんね、このはちゃん。」
「ううん、私は大丈夫だからそんなに気にしなくてもいいよ。」
茜ちゃんに促されて私から離れた咲夜ちゃんだったけど、その言葉からは申し訳ないっていう気持ちがすごく感じられたんだよね。
だから私も「気にしなくていいよ」って返してあげたんだけど······それよりも茜ちゃんがちょっとあれだね······。
声のトーンとかそういうのはごく普通に感じられるんだけど、でも何処となく負の感情が入ってる感じがするんだよね·····。
クラスの皆は気付かないレベルだと思うけど、私には何となく分かるんだ。
それだけ一緒にいる事も増えたから······。
「で、どうしたの?咲夜ちゃん??」
私から離れて落ち着いた咲夜ちゃんに問い掛けてみた。
志保ちゃんの説明によると、私達が来る前からソワソワとしてたらしいのだけど······。
「このはちゃん···はい、コレ! 私からです!!」
「!? ふふ···ありがとうね、咲夜ちゃん。頂きます。」
「うん♪」
満面の笑顔で微笑む咲夜ちゃん。
そんな咲夜ちゃんが私に渡してきたのは、可愛い包み紙に包まれている小箱。それは開けなくとも簡単に予想が出来るそれは、間違いなくチョコレート。
そう、今日は2月14日、バレンタインデー。
志保ちゃんの言っていたソワソワというのは、これを私に渡したくてそういう状態になってたんだよね。きっと。
「このはちゃーん。私からもあるんだ。受け取ってくれる?」
「私もー!」
「私のもあるんだ〜。はい、どうぞ。」
「ありかとうね、皆。後でゆっくりと美味しく頂くから。」
「うん!」
「「はーい。」」
咲夜ちゃんのを切っ掛けに、クラスの女の子皆が次々に私にチョコレートを渡してくれたんだよね。
四角い小さめな箱や長方形の薄めの箱、円柱型や丸型の箱など様々な形をした物なんだけど、そのどれもが可愛いラッピングをしてあるの。
しかもそれらは自身の手でラッピングをし直したんだろうなっていうのが分かる物だったんだ。
「でも···本当にありがとうね。こんなに沢山頂いちゃってさ······。」
「いいんだよー、このはちゃん。気にしないで!」
「そうそう。それにいつも私達がこのはちゃんにお世話になってるんだから、そういう感謝の意味もあるんだよ。」
「このはちゃんのお陰で成績も上がってるし、毎日いい事づくめなんだから····。」
皆が各々に感謝の気持ちを伝えてくれるけど、それを言ったら私だってそうなんだからね。
こんなに楽しい学校生活をおくれるとは思ってもいなかったし、それは皆のお陰だから······。
「鈴宮さん······。」
「はい?」
私にチョコを渡し終えた皆が、今度は女の子同士でまたチョコの受け渡しを始めるなどワイワイとやってる時に相沢君が私に声を掛けて来たんだよね。
「これ、俺から·····。チョコって訳じゃないけど、いつもお世話になってるからそのお礼というか·····そんな感じ·····。」
「「「えっ!!?」」」
「「「「ウッソーー!!??」」」」
「「「キャ〜〜〜〜〜♪♪♪」」」
「「マジーーー??!!」」
「お、おい、相沢?! お前何やってんの?今日はホワイトデーじゃないんだぞ??」
まさかまさかの、相沢君。
彼の右手にはラッピングされた箱があって、それが私に差し出されてるの。
そして左手で頬を掻きながら照れ臭そうにしてるんだけど、皆はそれどころじゃないよね。
まず、クラス全体として驚きの声。
そして女の子の驚きの感情を込めた歓声と、男の子による相沢君への突っ込みやらなんやら······。
「それは分かってるよ。でも、バレンタインデーだからって男子が女子に···っていうのがダメって訳でもないだろ? それに別に恋愛感情がある訳でもないし、本当に純粋にお礼のつもりなんだよ······。」
「ま···まぁ、その気持ちは分からんでもないけど······。」
「うちらだってこのはちゃんにあげたり、他の女の子にあげたりもしてるからねぇ〜····。」
「確かに···。私らも感謝の思いとかも込めてこのはちゃんに渡してるから、ありと言えばあり??」
皆も納得?はしつつも、でもやはり混乱してる気な様子で。
まぁでも、無理はないかって思うよね。
だって私自身も思いもしない出来事に混乱してる部分もあるからさ。
「でも···わざわざありがとうね、相沢君。」
「こっちこそいつもありがとう。これからも皆をお願いします。」
何かは分からないけど、プレゼントを受け取ってお礼を伝えたの。
これが知らない男の人だったら受け取らないつもりだけど、相沢君はクラスメイトだからね。
それに注目は浴びるのを覚悟の上で今こうして私に渡してくれたんだから、その気持ちを無下にするという事は私には出来ないの。
「相沢君も皆もありがとうね。それで私からも皆に用意してあるからお昼休みに渡すね。だから直ぐに出掛けたりしないでね?」
「「「「おおっ!!」」」」
「「キャー♪♪嬉しい〜〜♡」」
「マジマジ!? 去年に続いてまた貰えるなんて···お昼まってます!!」
「喜んで貰えるのは嬉しいけど、そんなに大した物じゃないよ?」
やたらと喜んでくれる皆だけど、そんなに大した物じゃないんたけどね······。
「いいの、いいの。物がどうのじゃなくて、このはちゃんが用意してくれたっていうのが嬉しいんだよ。」
「そうそう!それに俺等にも用意してくれるその心遣いがいいんだよね♪」
「おまけに去年のも美味しかったし、よかったよ〜♪」
わいわい、キャーキャーと、男女揃って賑やかで嬉しそう。
特に男の子の喜びようが半端ないんだけど、そういう姿を見ちゃうと用意して良かったなって思うよね。
義理チョコ的な物ではあるけれど。
ーーーーーーーー
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン·····♪
「よし! チャイムも鳴ったし今日の授業はこれでお終いだ。お疲れさん。」
「やったー!終わったーー♪」
「おっ昼だお昼♪」
「せんせー。ありがとうございました!!」
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、先生の合図により今日の午前の最後の授業が終わりになった。
その途端にフランクな口調で皆が思い思いの気持ちを声にして出してるけど、普通の教科ならあり得ない光景なんだよね。
その理由は簡単な事で、この授業が担任の高橋先生の教科だったから。
気心知れた先生が故に、皆の雰囲気がこういう風にはっちゃけた感じになるんだよね。
これが他の先生なら絶対にそうはならないし。
「午後も頑張れよー!」
「「「「はーい!」」」」
先生も先生で、そういう皆の態度を気にもしてない様子なんだよね。そんな所がまた好かれる要因の1つなのかな?って私は感じてるけどね。
「あ、先生!ちょっと待って下さい。」
「ん?なんだ?どうした??」
教室を出ようとする高橋先生を呼び止めた私に対して不思議そうにしてる先生だけど、折角のこのタイミングを使わない手はないんだよね。
ゴソゴソと机の脇に引っ掛けてある鞄の中から目当ての物を取り出して、先生に渡すの。
「はい、先生。これ、私からのバレンタインデーです。食べて下さい。」
「······お、おう。ありがとう。」
「「キャーー♪」」
「いいなー、先生〜? 私達すらまだ貰ってもいないのにー。」
「ほんとよね〜。羨ましいなぁー。」
私が今、皆より先にクッキーを先生に渡してしまった為に、先生を茶化し始めたクラスの皆。
それに対してタジタジな先生も珍しい光景ではあるなーという想いと、『ごめんなさい』っていう想いも同時に感じてはいるんだ。
でもこのタイミングで渡さないと職員室まで行かないといけなくなるからさ、どうしても渡しておきたかったんだよね。
因みに去年はそれだったの。
「まぁまぁ···皆そのあたりでお終いにしてあげて。全部私の都合なんだから、責めるなら私にしてね。それと、先生にも迷惑掛けて申し訳ごさいませんでした。」
「鈴宮、気にすんな。こういう馴れ合いはある意味ではいい事だと俺は感じてるから、大丈夫だ。ありがとな。じゃあな。」
「はい。」
やっぱりいい先生だなーって、手を振りながら教室を去って行く後ろ姿を見つめながら私は改めて思ってしまう。
皆がノリ的な感じで言ってるのは分かってはいたけれど、それでも先生がああ言う風に言われちゃったから罪悪感を感じちゃったんだよね。
だから皆にも先生にもあの様に話したのだけど、先生は気にするなといってくれてさ······。
私が逆にフォローされちゃったよね·····。
「高橋先生って、ほんといい先生だよねー。」
「だよね! 他の先生だと怒ったり何か言われたりしそうだけどそういうのはないし······。」
「それに反応が面白いというか、ノッてくれるよね。」
皆も皆でやっぱり好印象。
だからこそ、なって欲しい担任の先生として1番人気があるって言うのも頷けるものだなって思う。
「じゃあ、気を取り直して私から皆にあげるね。去年と同じ様に1人一つだから間違わない様にね。ささ、早い者勝ちで取りに来てー。」
「はーい!!」
「待ってましたー♪」
「頂くね。このはちゃん!」
机の上にバックを乗せてチャックを広げ、皆が取りやすい様にしてあげる。
そして開始を告げれば私も近くに座ってる茜ちゃんを始めとした子から取りに来てくれて、クラスの皆へと広がっていくの。
その時にお礼の言葉を口々に述べてくれるのだけど、その様子はとても嬉しそう。
「皆、行き渡ったかな?」
「「「はーい♪」」」
「受け取ったよー!」
「ありがとうねー、鈴宮さん。」
「どう致しまして。」
バックの中を覗いて空になったのを確認し、念の為に皆にも尋ねて貰い忘れの子がいない事を再確認する私。
大丈夫だとは思ってるけど、それでも数のミスをする事だってあり得るからね。
それに万が一にそういう事があると、その子にとても辛い思いをさせちゃう事になるから、この数に関してはミスは許されないよね。
「今年のはチョコじゃないから、今日中に食べちゃってね。それに勿体ないからって取っておいて、後で食べたらお腹を壊したってなったらそれはそれで問題になっちゃうから、お願いね。」
「「「「「はーい♪」」」」」
念には念を入れて、皆に伝えておくの。
いい返事が返って来たから大丈夫だとは思うけど、中には勿体ないからって取っておいて後で食べようって子もいると思うんだよね。
そういう子が出ると、食中毒とか怖いじゃない。
クッキーだから焼いてはいるし量もごく僅かだから大丈夫だとは思うけど、でも分からないからね。
それに時間が経てばカビが生えてくると思うし、それはそれで危険だからさ。
「ねぇ、このはちゃん。今年のコレも去年みたいなのは作ってあるの?」
「去年みたいの? あぁ、あれね···うん、あるよ。何かは開けてみれば直ぐに分かると思うから楽しみにしてて。」
「「「おおぉ!!」」」
「やったね!」
「マジかー!? また今年も楽しみなんですけど!!」
「去年は皆、外れたっぽいからねー·····。今年は誰かしら当たるのかな?」
茜ちゃんの問いに答えた私。
そしてその言葉にこれまた喜ぶクラスの皆。本当に楽しげでいいねーって、見てるだけでも嬉しくなれちゃうよね。
因みにこの茜ちゃんのいうそれは、去年のチョコの時に入れた当たりの事なんだ。
それを誰が取るかっていう面白さがあるかな?って思いで、皆に配った物の中に1つだけ忍ばせたんだよね。
結果的には最後に残った物を渡した高橋先生に渡ったみたいなんだけど、詳細は分からないの。
先生にはその事を話していないし、どういったのが入ってたという報告も聞いてないからね。
ただ、皆の話を総合すると先生が1番それっぽいという結論になったんだ。
でも結果的には皆なりに楽しんでもらえたみたいなので、私としても良かったって思えたんだけどね。
「よし!じゃあ、皆で一斉に開けるよー。どういうのがあったのか、報告をするように!!」
「オッケー!」
「「了解!!」」
「お願い! 私に来て!!」
「今年の運を使い果たしてもいいから、俺んとこにこい!!」
志保ちゃんの合図で一斉に小袋を開け始める皆。
こういう時の動作も個人差があって面白いなって、去年は見れなかった光景を楽しむの。
躊躇もなく袋を開ける子もいれば、開ける前に祈る子もいたりしてね。ただまぁ······1年の運をこれに使ってしまうのは勿体ない様な気がしなくもないけど、本人がいいのならいいのかな??
「あ〜〜·····今年はクッキーなんだ?」
「ホントだね。丸い型にジャム?が入ってて·····これはジャムクッキー??」
「私のは四角だよ。中は紫なのかな??何だろう??」
ワイワイガヤガヤと袋を開けた中から取り出したクッキーに、色々と考察をしてる皆。
「そう。今年はクッキーを焼いてみたの。丸い方はイチゴで四角い方はブルーベリーだよ。」
「おおー!おしゃれだねー、このはちゃん。」
「うん!見た目も可愛いし、こういうのもアリだよね!!」
「皆はどうだったーー??因みに私は四角だよ!」
「俺は丸だな!」
「俺は四角。ブルーベリーだわ。」
「私も四角だったよ。でも可愛いね♪」
クッキーを其々手に持ってまじまじと眺めたり、隣近所で見せ合いっ子したりしながらお互いに報告をし合う皆だけど、報告にもある様に今回は丸と四角にしたんたよね。
まずベースのクッキーの型は全て丸型なの。
そこにジャムを乗せる場所として丸型と四角型を作り、それぞれにジャムを乗せてるんだ。
そういう部分を作る関係で焼く時に少し手間が掛かるんだけど、それはそれで楽しかったからオッケーなんだ。
「で?で?? 当たりを引いたのは誰なのかなー??」
「そうそう! 一体誰よ? 皆の話を総合すると丸イチゴと四角ブルーベリー以外がそれっぽいけど······出た子いる??」
「まさか······また先生って事はないよねー??」
「それこそまさか!だよ?いくら何でも連続はないっしょ!?」
「だよねーー(笑)」
キョロキョロと周り近所を見渡して誰が当たりなのか、どんな物なのかを見たいらしい皆。
そして当たり報告がないから「まさか先生??」なんて考えも出たけど、流石にそれはないよねって一蹴されたよね。
私も流石にないとは思うけど、確率はゼロじゃないから分からない······。
去年は『残り物には福がある』で当たったぽくて、今年は1番最初に私が渡した物というそれ。
袋自体は中身が透けてなくて私自身もどれがそれとは分からないから、本当に適当に掴んで渡したのだけど。
それでもし本当に先生だったのなら、どんだけ運がいいんだよって思ってしまうのは仕方ないよね。
でも、そんな停滞した雰囲気を壊した子が現れたの。
「うおおーー!! 多分、俺が当たりだーー!!」
「うっそーー!?!?」
「まじーー!!?」
「えぇーー!? 瀧本くん?! 本当なの!?」
「いいなーいいな〜! 見せて見せて!!」
静寂を破り当たりを引いたっぽいのは、男の子の瀧本君。
彼は明るくて面白くて賑やかで、おバカキャラっぽい子なんだよね。でも勉強はきちんと努力してくれてるし、やる事はやってくれるから良い子なんだよ。
でもその性格故に女の子からは人気がありそうで無い、そんな男の子。
そんな彼が、今日の勇者になったっぽいです。
「ほら見てみて! 皆のは丸や四角だけど、これはハート型だぜ!しかも中はイチゴだと思うけど赤いからハートにピッタリだし! ねぇ、鈴宮さん。これが当たりってやつ??」
「うん、正解だよ。良かったね、瀧本君。」
「いよっっしゃぁぁぁーーー!!」
「「「いいなー、いいなぁ〜·······。」」」
「くそぅ···なんで瀧本なんかに·······。」
「俺が瀧本より先に取ってれば、まだいけたかもしれないのに····悔やまれるわー。」
瀧本君がクッキーを皆に見せつつ解説をしてくれたけど、正しくその通りの物なんだよね。
普通のは丸型と四角型のみにして、1つだけバレンタインデーらしくハート型にしたの。
そしてその中身はイチゴジャムにしたから、赤いハート模様のクッキーとなってるんだよね。
そしてゲットした事に大いに喜ぶ瀧本君と、その姿を見て悔しがるクラスの皆。
まぁこれは男女共にそうなんだけど、特に瀧本君と仲の良い男の子達はワチャワチャとじゃれ合ってるし、女の子は女の子で言葉と態度で悔しを表してるんだよね。
「瀧本はコレで運を使い果たしたな······。」
「うはははは···。まぁ、今年いっぱいは運が悪くても構わないさ!何と言っても、コレに勝る物はないかなら!!」
「ぐぬぬぬぬぬ······」
瀧本君と仲の良い子が何を言っても全く動じない瀧本君で、それを見てまた悔しがってるんだよね。
当たりといっても形がハートなだけで味が変わるわけでもないのだけど、それだけのインパクトはやっぱりあったみたい。
でもそんな浮かれ様子の瀧本君も、そう長くは続かなかったよね。
彩ちゃんの言葉で······。
「ここで運を使い果たした瀧本君は、次のクラス替えは残念だけど別々になりそうだね。」
「!!!??」
「!? あっ、そうだな! ここで運を使い果たしちゃったら、3年時のクラス替えは鈴宮さんとはお別れになりそうだなーー(笑)」
「そうだそうだ! 本人も『今年いっぱいは運が悪くても構わない』って言ってるんだから、別々になっても文句は言えんなー(笑)」
「そうよね〜♪その点私達は、まだまだ運は残ってるから来年もこのはちゃんと一緒になれるかもよ〜♪」
「当たりのクッキーもいいけど、それよりもまた1年間このはちゃんと一緒の方が何百倍もいいよねー♡」
彩ちゃんの言葉を皮切りに、今度は皆が瀧本君を煽りだしたの。
先ほどの言葉を逆手に取って、来年度も私と一緒のクラスになれるかもしれない事とその良さを強調してさ。
そして女の子は仲の良さを見せつけるように、代わる代わるに私にくっついてきて「ねー♪」なんて、言ってくるしね。
そんなわかり切った行動だけど、それでも幸せそうな皆を見ちゃうとつい手が伸びちゃうんだよね。
そしてまた、嬉しそうな顔をしてくれるし。
「ぐ·····。確かにそっちの方がいいよな······。誰か俺のと交換しないか??」
「ヤダね! なんで交換しなくちゃいけないのさ?」
「そうよ! それに私達にはこれがあるもの。これだってこのはちゃんの気持ちが籠もったクッキーなんだから、これだけで十分なんだよ。」
「確かに当たりには興味あったけどさ、最後はやっぱり自分で選んだのが1番だよな。」
「自分の激運に感謝して食べなよ。そのお陰でクラス替えはどうなるかは分からんけどな····。」
クラス替えという言葉に負けたっぽい瀧本君が、意気消沈気味に提案をしてきたけど見事に皆に一蹴されちゃった。
「まぁまぁ、みんな。一先ずその辺りでお終いにして、ご飯を食べよ? 瀧本君もそんなに沈まないで、折角手に入れたクッキーを味わって食べて欲しいな。」
「そ···そうだね。これはこれで嬉しいから、有り難く頂くよ。」
「うん。」
「じゃ、食べよっかー。男子〜!席、借りるから宜しくねー!」
「ほーい。こっちも席を借りるからよろしくなー。」
皆を促してお昼ご飯を食べる事にした私達。
だってこうでもしやいと、永遠にこのやり取りをしてる可能性もあったからね。
そしてガチャガチャと、机と椅子を其々の位置に動かしていくの。
私達は一塊で固まって食べる都合で、近場の男の子の席を借りないといけないからね。
ま、それももう2年近くにもなるからお互いに慣れたやり取りなんだけど。
「このはちゃん。クッキー、ありがとうね。嬉しかったよ。」
「どう致しまして。ま、私も皆が喜んでくれたから良かったし、久しぶりにクッキーを作って楽しかったから、それだけでも満足なんだけどね。」
こそっと話してくる茜ちゃんにそう返す私。
菓子系は作ることがあまりないから、久々にそれが出来たという事が兎に角楽しかったんだよね。
おまけに途中から雪ちゃんや葵と一緒に、其々のクッキーを作ったりもして楽しかったし。
「そうなんだ〜。それは良かったね♪それと······私のも後で渡すから楽しみにしててね?」
「うん、分かった。楽しみにしてるね。」
茜ちゃんが今ではなく、後で渡すねっていうそれ。
何だろうな〜って思いつつも料理が好きな茜ちゃんの事だから、楽しみにしてる私だったりもするんだ。
2月14日、バレンタインデー。
普段よりも賑やかな我がクラスのお昼休みなのでした。




