ちょっと昔の出来事② (挿絵有り)
2023.10.24 加筆修正しました。
「ウェぇぇーーん!やーあ!!やーやー!」
「ほら、雪ちゃん。あとちょっと!あとちょっとだから頑張ろうね。」
泣きじゃくる雪ちゃんを必死になだめる私。
ああ、可哀想に。見ている私も可愛そうで泣きたくなってくるよ。
でも、コレは必要で大事な事。
心を鬼にしてでもやり遂げないといけないのです。
実は今日、雪ちゃんの予防接種の日なのです。
知ってる方は分かるかと思うけど、子供の予防接種ってもの凄い数というか量があるんだよね。
定期接種や任意接種のものだったりで、先生と相談しながら予定を組んて受けるの。
当日に体調が悪いと延期になるからそれはそれで、また大変なんだけどさ。
それにね、また可哀想だなって思うのが混合接種とういやつで、4種混合だとか3種混合とかってのがあるの。
その名の通り、4種なら4種類のワクチンを1回で「プス、プス、プス、プス」って、刺すんだよ。
大人でもヤダな〜って思うのを、生まれてそこそこの月齢からやり始めるんだよね。
も〜、これが可哀想で可哀想でさ······。
こんな小さい身体でにこんなに注射を刺されてって。
出来ることなら変わってあげたい!って思うもの。
でも、必要な事だから仕方ないんだけどさ。
頑張れ雪ちゃん。終わったらぎゅーーっとしてあげるからね!
「はい。終わりましたよ。よく頑張ったね。」
針をプスッと刺し終わった先生が雪ちゃんを褒めてくてた。
まぁ、雪ちゃんもまだ何を言われたのかは理解出来てないけどね。
先生のその言葉にお礼を告げて、診察室を一旦あとにします。
普通ならこれで終わりなんだけど、私の場合は雪ちゃんが落ち着いてから先生とお話があるんだ。
これには私と雪ちゃんの出生が関係してるから。
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私が雪ちゃんを妊娠した時、婦人科の橘先生は事件性を疑ったらしいです。まぁ、当然だよねと私も思う。
で、もう一つ。
産まれてきた雪ちゃんが私そっくりの容姿だったこと。
普通アルビノの人の子供でも、アルビノで生まれてくることは凄い稀なんだって。
しかもここまでそっくりというのが、余計に不思議なんだって。
そういった事件性の疑いがあったので、出産後に先生に提案されたんだよね。
「まずDNA検査をしませんか?半分は母親であるこのはちゃんと同じなのは決定してるので、残りの父親の所を確認しましょう。」って。
先生に提案されDNA検査をすることにしました。
まぁ、私も両親もその可能性があることは分かってたし理解もしてたから、拒否する理由がないもんね。
産まれたての雪ちゃんの髪の毛少しと唾液をちょこっと採取して、検査をかけたんだ。
そこまで取らなくても出来るらしいのだけど、念のため多めに取りたかったんだって。
後日、呼ばれて先生の所に行ってみたら橘先生以外に新しい先生がいて、こちらは研究医療の分野をしてる高野先生だそうです。
最初に先日のDNA検査の結果を聞いたんだよね。
そしたら私は混乱した。
普通、父母半分づつのDNAが私の100%なんだって!
意味分からないよね?
私も分からない。先生も分からない。
でも、その私の遺伝100%の雪ちゃんが産まれたから、高野先生は生命の神秘だ!とか人類の奇跡だ!とかで大興奮したとかなんとか。
それに、どうしてそんな事が起きたのか?メカニズムは?
世界初の事が起きたから、高野先生としては論文として発表してできればそのメカニズムなどを解明したいと思っているんだって。
それなので、是非私や雪ちゃんにもご協力お願いできませんか?って言われちゃった。
ちなみに、この時点で私の妊娠に対しての事件性は薄いだろうとの見解だそうです。
帰ってから両親にこの事を話ししました。
そしたらやっぱり最初は混乱してたけど、最後は喜んでくれたんだ。
どこの誰とも分からない男の血が流れてないという事実が、私が無事だったということが嬉しくて泣いてくれた。
嬉しかった。
良かった。
お父さん、お母さんにはそのことでも沢山の心配をかけちゃったからね。
それに私100%だから将来は私にそっくりになって、可愛いぞ〜美人確定だぞ!とかって、お父さん気が早いよー!
検査協力の件は、後日お父さんと一緒に話を聞くことにしました。
まず、医療研究とは人体のメカニズムや機能など調べたり、解明されてない病気や症状を研究し、新しい医療技術や新薬の開発に繋げるといった研究をしてるらしいです。
で、私についてはまずアルビノに対してのデメリットが出てないので、それの解明。
そしてゆくゆくは薬の開発や対処法発見などに繋げられたらいいなと言ってました。
そうすれば同じアルビノで苦労してる方、肌の弱さなどで苦しんでる方の助けになれるかもしれないからね。
次に雪ちゃんが出来たメカニズムの解明。
これが解れば不妊治療にも活かせるのではないかと。
例えば、男性の無精子症で子供が持てない場合、女性は第三者からの精子提供でしか子供が持てない。
只この場合、赤の他人の血が入った子供を育てなくてはならない為に夫婦関係が不安定になったり亀裂が起きる可能性などが大きい。
そこに、女性だけの遺伝子で子供が作れればあるいは······、という事みたい。
難しい話だけどね。
それで、数ヶ月に1回くらいのペースで県内の大病院、この間の高野先生がいる所に来てもらって検査やデータを取りたいんだって。
それに報酬も出せるようにしますとも言ってくれました。
雪ちゃんについても、データとか欲しいけどさすがにまだ産まれたてなのである程度大きくてなるまでは、橘先生の所(小児科もある)で、予防接種や検診などを通じて成長の記録や髪の毛や唾液、予防接種のときにちょこっとだけ血液を貰ったりしたいって。
それと生まれが特殊なので向こうの大病院と連携して、容体が急変したとか何か起こった場合には直ぐに対応出来るようにしますと言って下さいました。
あとは日々の成長の中で私が気づいた普通とは違うことがあったら、そういうのを纏めて記録して欲しいそうです。
生まれが特殊なだけに、いつ何処で何がどうなるかは誰にも予測が出来ないから······。
私は考えた末に協力することにしました。
無収入な私に収入が入るなら有り難いけど、なによりこの研究が将来、誰か困った人達の為に力になってくれると思うと嬉しいもんね。
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今回の報告と先生からの話も終わり自宅に帰ります。
今日も大変頑張ったね~、雪ちゃん。
ロビーでお母さんと合流して、車へと向かいます。
「雪ちゃん、沢山泣いた?」
「うん。それはもう······ね。可哀想なくらいだったよ。」
お母さんの問にそう答える私。
刺すまでは平気だったんだけどねー。
「まぁ、こればかりは仕方ないわね。貴方も葵も通った道だし、必要な事だからね。」
「うん。分かってるよ。」
私の腕の中でスヤスヤと寝てる雪ちゃん。
泣き疲れて寝たのかは分からないけど、これからも続く予防注射。
病気を防ぐためにしなくちゃいけない事だけど、頑張って行こうね!雪ちゃん。
寝てる雪ちゃんを、起こさない様にチャイルドシートに乗せます。
その隣の座席に座って寝てる雪ちゃんを、確認しながら帰路につくのでした。




