ある日の成人式①-3 高2(挿絵有り)
「あ···あ······。···皆様、本日はご成人誠におめでとうございます。それとお忙しい中、◯◯中学校の同窓会にご参加頂き誠にありがとうございます。私はこの度幹事を担当しました、3年2組の······。」
市内のとあるホテルの大ホールにて、幹事を担当してる男の子の挨拶が響く。
手始めにマイクがきちんと機能してるのかを確かめるべく、マイクをポンポンして、その後に軽く声を出して確かめた後の挨拶。
その挨拶に注目してる子もいれば、仲の良い友人同士で再会を喜んだり話を楽しんでる人もいたりで様々な様子を見せる、そんなこの場は私が卒業した中学校の同窓会場なんだ。
市内の全地区を対象にした合同成人式。その成人式会場にて、懐かしい同級生達と数年ぶりの再会を果たした私。
最初は私の事を覚えててくれてるのだろうか?っていう不安とかもあったけれど、結果的にはそんな不安は全くいらなかったんだ。
再会する皆が私の事を覚えていてくれて、尚且つ心配までしてくれてて、再会する度に「身体の方は大丈夫??」って聞いてくれたんだよね。
1年生の時に同じクラスになった子もいれば、2,3年生で同じクラスになった子もいる。
しかも小学校が別だった子なんて殆どコミニケーションが取れずに終わってるのにも関わらず、そういう面識のない子まで私の事を心配してくれてた事に驚き、「ありがとう」という感謝の気持ちと同時に申し訳なさも込み上げてきて、複雑な気持ちだった。
でもそんな気持ちを忘れさせてくれるくらい、賑やかで面白い皆だった。
会場では皆と一緒に並んで写真を撮ったりしならがら久しぶりの会話を楽しんだりして、市長さんの話や成人代表の挨拶、ちょっとした催し物を見たりして式そのものは無事に終わった。
そしてその後は一旦解散して、夕方からの各学校毎の同窓会に参加する事にしたんだ。
これも案内を頂いた時は正直どうしようかな?って、結構悩んだんだよね。
理由はやっぱり私の事。
途中から休んでたから私の事を皆が覚えてるのか?とか、そういうのがあったから楽しめないかな?なんて考えてたんだ。
だけど私は参加する道を選んだ。
それは皆が私の事をどうのというのは置いといて、この同窓会に参加予定の当時担任だった先生に本当の事をお話したかったから。
先生は2年生と3年生の時に連続で担任になったんだけど、休んでた時に親身になってくれて大変お世話になったんだよね。
でも結局最後まで本当の事が言えなくて、それがずっと心残りになってたから、この機会にお礼と共に本当の事を話しておきたかったの。
「······続きまして、先生方にもご挨拶を賜りたいとおもいます。遠藤先生、中西先生、山崎先生、田中先生よろしくお願いします。」
幹事にして司会者の子の紹介によって前に出てきた4人の先生方。
男性3名と女性1名でなるその先生方は、私達の学年を3年間担当してくれた担任の先生達だった。
「◯◯中学校、第37期卒業生の皆さん、お久しぶりです。そしてご成人、誠におめでとうございます。私達が担任した皆さんが·······。」
最初に1組の担任の先生にして私達の国語を担当してくれた遠藤先生という男性の先生が挨拶をした。
そして続いて2組の中西先生、3組の山崎先生と順に続いていき、その話を静かに聞く私達一同。
「変わらないねぇ〜、先生達······。」
誰かがぽつりと呟いた。
「そりゃそうだよ。大人の先生達が5年くらいじゃそんなに変わらないって·····。寧ろ私達の方の変化が大きいよね。」
「確かに!」
「だよね~。あっちゃんなんてあんなに小さかったのに、今じゃこんなにも立派になって······。」
「ちょっ·····あんた、何言ってるのよ!」
「え? 何って······身長の事だけど?? 中学の時は1番小さかったじゃない??」
「し···身長······。」
「あんた·····一体何を想像したのよ?······もしかして···あっちも大きくなったの??」
「えっ?! えぇぇぇ~〜!?!?」
「「「「あはははは·····」」」」
「あっちゃん、相変わらず面白いねー♪全然変わらないわ!」
「ほんとほんと。こういう誘導尋問とかひっかけとか、そういうの弱いよねー。」
先生方の話を聞きつつも、お馬鹿なやり取りをする彼女達を面白ろ可笑しく見て笑う私達。
本当にこういうやり取りも昔にあったよねって、懐かしく思う。
「変わったと言えば、このはちゃんも凄く変わったよね。あ、いい意味でだよ? 昔から綺麗で可愛かったけどさ、今は凄く磨きがかかってる感じがするもの。」
「そう?」
「うん。それにその髪もさ、短い時も良かったけど長くしたのもドレスに凄く似合うよ。おまけにスタイルもすごくいいみたいだし······。」
「ありがとうね。私さ、良くなってからスタイルとかにも力をいれたんだよ。勿論中身も頑張ったけど······。」
「へぇ〜···そうだったんだ。」
「なるほどねー。それってやっぱり運動とかそういうの?」
「何か秘訣とかあるの?私にもできるかなー?」
皆が皆、美容だとかの話になると一気に話に盛り上がるの。
やっぱり女性は美容絡みの事には敏感で興味津々だよね。
「えっとね、私はまず食事の栄養面をきちんと整えてバランス良く食べる所から始めたの。それから·····。」
そこから私なりの美容やスタイルの維持とかの話を少ししたんだけど、なんでこんな話をしてるのかなー?なんて内心では思ったりもしてる。
まぁ······皆が興味あるみたいだから、良いと言えば良いのかもしれないけど······。
「そう言えばさ······このはちゃんって、モデルとかしてる?? あ···勘違いだったらゴメンね。」
「「「えっ!??」」」
「モデルぅー??」
「えっ??何でなんで、そういうあれになるの??」
友達の1人から突然の確認に、驚く皆。
「その·····去年の夏辺りだったかな? 私の通ってる大学の子がさ、雑誌のモデルの子で凄く盛り上がって話ししてるのを偶々聞いたんだよ。私はモデルの人とかは特に興味も無かったから、それ以上の詳しい事は知らないんだけど·····只、それが外国人さんっぽいとか髪が白いだとかって言ってて·····。」
「あー·····そう言われると、このはちゃんっぽく聞こえなくもないけど······?」
「白い髪って外国人さんでもそうそういないしねぇ······。」
「で、どうなの? このはちゃん??」
皆が期待の籠もった目を私に向けてくる。
そんなに興味があるのかな?なんて思うけど、身近で芸能絡みの話ってそうそうあるわけでもないからやっぱり興味は出ちゃうのかな?なんて思ってみたり。
「うん、それ多分私だよ。まぁ、あんなに大きな雑誌に使われるとはこれっぽっちも思ってなかったから、私自身も結構驚いたんたけどね·····。」
そうなんだよね。
最初はネット通販の方で小さく掲載とかそのくらいにしか考えてなかったから、あの様に大きく取り扱ってくれて凄く驚いたんだよね。
「「「「ええーー!!?」」」」
「うっそーー?!」
「マジで!?」
「このはちゃん、モデルデビュー?!」
「そのまま芸能界とかも行っちゃうの!?」
やんややんやと、またまた大盛り上がりの皆。
そしてそんな皆だから、近くにいた他の同級生達も何事?みたいな感じで見てたりするんだよね。
「いやいやいや······そんな本格的にモデルをやるとか芸能界だとか、そう言うのには興味ないからしないよ。それにモデルって言ってもたま〜にしてるくらいだし、そもそも今年か来年辺りには辞めるつもりでいるからね。」
「ええー?? 辞めちゃうの? それこそ勿体なくない!?」
「そうだよ〜。このはちゃんの容姿なら絶対に成功すると思うのに······。」
皆が口々に「勿体ない」とか「続けなよ〜」って言ってくれるけど、モデルに関しては元々興味がなかったからね。
だから、受けるには受けたけど色々と条件を付けたりもしたんだ。衣装に関してだとか撮影場所だとか。
それで「新人が何、条件を付けてるんだ!」って思われて仕事が来なくても、それはそれで別に構わなかっし·····。
まぁ、実際にはそれでもいくつかお仕事を頂いたから、それにはきちんと全力で取り組んだけとね。
「あ、いたいた! もぅ······こんな所にいたのね。先生、探しちゃったわよ。」
「あっ!? 田中先生!!」
「「「先生、お久しぶりです!」」」
「お久しぶりです、先生。元気でしたか??」
「はい、皆、お久しぶりね。そして成人おめでとう。皆、見違えるほどしっかりして大きくなって······先生、嬉しいわ。」
楽しげに会話をしてる私達の所にやって来た人は、私が2,3年生だった時の担任の田中先生。
女性の先生で当時小学生の子供がいるって言ってた記憶があるから、まだまだ若い先生なんだよね。
それに他の先生が国語、社会、英語を担当してたのに対して田中先生は音楽。
授業数そのものが少ない教科なんだけど、その穏やかな性格で先生としての人気は結構高かった···ような記憶があるの。
「鈴宮さんも随分と大きく素敵になって······身体の方は大丈夫なの?」
「はい、お陰様で·····。先生、その節は大変お世話になりました。改めてお礼申し上げます。」
しっかりと頭を下げて、先生に感謝を伝えたの。
卒業式の時はバタバタしてて、まともにお礼を伝える事が出来なかったからね。
「いいのよ。先生は先生としての事をしたまでなんだから······。それと高校の方はどう?順調??」
「はい。そちらはもう毎日楽しく過ごさせて貰ってます。」
「そう···それは良かったわ。」
私の言葉にホッと安心した様な表情を見せた先生。
それもその筈で、先生にお世話になった事の1つに高校入学を決めた時の書類とかの諸々を用意してもらったんだよね。
その事で中学校に出向いた時に先生はまだ在籍しててくれたから、話を通しやすかったの。
その翌年の春に隣の地区の学校へ転任したのを新聞記事にて知ったんだけどね。
「えー!? このはちゃん、高校に通ってるの!?」
「どこの学校?」
「桜ヶ丘高校だよ。駅の近くの。」
「あー、あそこか〜。」
「確か私立の制服が可愛いところだよね?」
「そーそー。確かあそこは偏差値も高くて、うちらの学年でも何人かは行ってたよね?」
「このはちゃん、すっごいじゃん!がんばったねー!」
「じゃあ······このはちゃんは現役女子高生かー···いいね♪」
いいね♪か······。
元々は行く気はなかったんだよね、本当はさ。
それに頑張ったのは間違いないけど、選んだ理由は『家から近い』だからね······。
余り褒められた理由じゃないんだよ。
でも結果的には通って良かったって、今は心から思ってる。
素敵なクラスメイト達にも出会えたし、将来の目標も出来たからね。
だから高校について進言してくれたお母さんに感謝もしてるし、お世話になった先生にもとても感謝してるんだ。
そんな先生だからこそ、本当の事を伝えないといけないと思ってる。
今更だけど······。
「先生、あのね·····。私、先生に話さないといけないと事があるんです。それと皆にも···。」
「私に?」
「私達にも??」
「はい。」
不思議そうにする田中先生や由依ちゃんを含めた皆。
「私、学校には病気という事で休んでたんですけど、本当は違うんです。本当は病気じゃなくて······妊娠してたんです。赤ちゃんがお腹に出来てたんです。」
「「「「「えっ!?!?」」」」」
先生を含めた皆の声がハモった。それはキレイに。
そしてポカーンという表現がピッタリの驚きの表情で固まってる。
「えっ?えっ??えぇぇぇーーー??!!」
「妊娠!!?? 妊娠ってあれだよねーー??」
「うっそーーーー!!?? マジ!? ドッキリじゃないよね?! このはちゃん!!」
「あの頃のこのはちゃんって、付き合ってた男子なんていたっけ?? いなかったよね??」
「ちょっ····ちょっと、鈴宮さん!? あなた、それ、本当なの!? だって鈴宮さん·····そういう様な事をする様な子じゃなかったじゃない???」
一瞬止まってた時が動き出したら、皆がそれぞれ驚きの声を上げた。
由依ちゃんは私の肩を掴んでガクガクと揺するし、先生は私が知る限りで1番の取り乱しを見せてる······。
そんなんだから周りにいる子達も、もうこっちに注目しちゃってて······。
「本当なんです、先生。みんな·····。でもそれには難しい問題がありまして、これからお話しますね·······。」
そして私は先生と皆に、私の妊娠についての説明をした。
異変に気が付いた時の事。
残り時間が僅かな中で、産むか堕ろすかの決断を迫られた事。
そしてその後の決断······と、子供の出生について。
「······そういう訳で私は産む事を決断しました。ただ事件性の可能性もあったので、私の心や赤ちゃんの事を考えて両親や産婦人科の先生と相談した結果、学校にはこの事を公にしないで病気ということで対応させてもらいました。結果的には事件性はなかったんですけど、別の謎は出来ましたけどね·····。」
「そうなのね·······。それは···もの凄く辛かったでしょ?妊娠って望んでそうなっても辛い事が沢山あるのに、それが13歳で···しかも突然だなんて······。」
「はい。それは本当に不安とか怖さがありましたね。でも結果的には産んで良かったって、今は心からそう思ってます。そういう事なので、今の今まで本当の事を話せず嘘をついていて誠に申し訳ありませんでした。」
改めて頭を深々と下げて、先生と皆に謝ったの。
今まで嘘をついていた事。本当の事を言えなかった事。
「いいのよ、鈴宮さん·····。仮にあの時に学校へ本当の事を話してたら、間違いなく騒ぎにはなっていたでしょう。そして、そう言う話は恐らく何処かしらから漏れる······。そうなれば他の生徒の耳に入る可能性もあるし、そうなると噂としてどんどんと広がる。すると結果的には鈴宮さんの精神的ストレスにもなって、お腹の子にも危ない状態が来てもおかしくはないと思うのね。だからこそ、ご両親や医者の先生の判断は良かったと私は思うわ。」
「先生·····。」
「だから、本当に気にしなくてもいいわよ。それに····改めて出産おめでとう! 随分と遅いお祝いになっちゃったのは許してね?」
「あははは······。全然、大丈夫ですよ、先生。それとありがとうございます。そう言ってもらえて、とても嬉しいです♪」
先生は私が嘘の報告をして休んでいたというのに怒るどころか、寧ろそうしたのが良かったと私の事を気遣ってくれたんだよね。
そして、お祝いまでしてくれて。
先生の語った様に事件性の可能性も含めて危ぐしてたから、私の両親も産婦人科の先生も学校には上手く隠す判断をしたんだよね。
お陰で私はあまりストレスなどを受けないで、無事に出産まで行く事が出来たんだ。
「それにしても、鈴宮さんがお母さんねぇ〜······。世の中は不思議だわ······。」と、先生。
「このはちゃんが、まさか妊娠してただなんて······。まだ信じられないよ·······。」と、由依ちゃん。
「ほんとだよね······。13歳···あの休み始めた時には既に妊婦さんだったんでしょ?マジかーって感じ······。」
「それで、子供を産んでこのスタイルな訳? 凄いわ、このはちゃん·······。」
「本当の事を言えなくてごめんね、皆。」
皆も放心しながら口々に色んな感想を言ってるの。
でもその全てがやっぱり信じられないって言うような意見で······まぁ、私が向こうの立場ならそう思うのも無理はないよねって思うけどね。
「じゃあさ、このはちゃん。このはちゃんが2年の1学期に一度も学校に来なかった理由ってそれ······?」
「由依ちゃん達が思ってる様な事だよ。その時はもうお腹が目立ってたから来れなかったの。そして出産もしたから身体の負担も考えて余計に来れなかったんだよね。そしてその後は子育てをしてたからテストの時くらいしか来れなかったんだ。」
「なるほどね〜·····。私達が運動会や修学旅行で浮かれてた時に、このはちゃんは大変な時だったんだね······。知らなかったとは言え、何だか申し訳ないよ·····。」
「いやいやいや······全然そんな事はないよ! 運動会や修学旅行はとっても大切な思い出の物なんだから逆に楽しんで貰わないと、私が申し訳なく感じちゃうよ。」
私の事を気遣ってくれるのは嬉しいけど、そこまでされちゃうと私の方がかえって恐縮しちゃうよ。
「ねーねー、このはちゃん!」
「うん?」
「言葉で言われてもいまいちピンと来ないんだけどさ、このはちゃんの妊婦さんの時の写真とか、その子供の写真とかってないの? あったら見せて欲しいな!」
「あーー!私も見てみたい!すっごく気になる!!」
「私も!!」
「私も是非!!」
「先生も見てみたいわ。鈴宮さんのお子さんって、どんな子かしら??」
「いいよ。じゃ····ちょっと待っててね······。」
皆が今度は写真が見たいって言ってきて······。
それは今までに私が私達の事を教えてきた人達の反応で必ずそう来ると分かってはいたから、想定内なんだよね。
たから事前に準備はしといたんだ。
バックの中からスマホを取り出して、この日の為に用意しといたファイルを開いて。
「じゃあ、まずはこれね。2年生の一学期の時の臨月に近い時の私だよ。」
「「「「おおぉ〜〜!!!」」」」
「マジだー! マジでこのはちゃんのお腹が大きい!!?」
「本当だ。しかも顔立ちはあの頃のこのはちゃんだし·····。」
「ヤバい·····。何だか凄い背徳感があるんだけど······」
「うわぁ〜···。マジで中1の妊婦さんだ······。あ、中2だったか······。」
「あらあらあら、まぁまぁ······。」
皆が一斉に驚きの声をあげて、それからは食い入る様に私の出した写真を見てるの。
そして先生までも驚きのあまり、言葉になってない声を出してるくらいだから、やっぱり衝撃は大きいみたい。
「あれ?······このはちゃんって、この頃は髪の毛短くなかった? あ、でも····卒アルは長かった····かな?」
「流石由依ちゃん、よく覚えていてくれたね。その通りで、休むまでは短かったけど休む様になってからは伸ばし始めたの。それでそのまま、卒業アルバムの写真って流れかな。」
まさか由依ちゃんが私の髪の毛の事を覚えていてくれただなんて、嬉しくなっちゃう。
長いか短いかなんて髪型の1種だから、自分自身は兎も角としても他人のなんてそうそう覚えてないと思うのにさ。
それをうろ覚えでも、気付いてくれた事に嬉しくなる。
「じゃあさ、このはちゃんのその子供って、次、見せてくれる??」
「そうそう! このはちゃんの子供見てみたい!」
「男の子?女の子?? あー···気になる〜〜〜。」
「ほんと、気になるよねー! 一体どんな子なんだろー?」
「うん、いいよ。じゃあ、ちょっと待っててね····。」
そう言いつつ、またスマホの中から雪ちゃんの写真を表示させる。
今回は赤ちゃんの時のではなくて、比較的最近の雪ちゃん。
多分、皆的にはこっちの方がしっくり来る様な感じがするんだよね。
「はい。これが私の子だよ。女の子で名前は『雪』って言うの。」
「「「「「キャーーーーーー♪♪」」」」」
「「「可愛い〜〜〜〜!!!」」」
悲鳴みたいな歓声が辺りに響いた。
それは先程妊婦をカミングアウトした時よりも大きく、こうなるのを予め分かってはいたにも関わらず、思わず耳を塞ぎたくなる様な皆の見事なハモリ声だった。
「えぇ~〜!?? 何この子? めっちゃ可愛いんだけどー?!」
「うん!凄く可愛い♡ 」
「ほんとほんと!! 髪も白くって目も赤くって·····って、このはちゃんそっくりじゃない!?」
「そーだよ!このはちゃんの小さい頃にそっくりだよ!」
「いいなー、このはちゃん···。私もこんな子が欲しいよ·····。」
皆が雪ちゃんの事を驚きと共に可愛いねって言ってくれるので、つい嬉しくなってしまう私だけども、今回は頑張って顔には出さない様に努めた。
それでも油断をすると、出ちゃいそうなんだけどね······。
「ねえ、鈴宮さん。この子···雪ちゃんがここまで似てるのには、先ほどの出生についての事が関係してるのね?」
「はい。そうなんです。原因とか仕組みはまだこれっぽっちも解明出来てないんですけど、この子は私の遺伝のみで産まれた子なんです。だから分かりやすい例えで言うと、一卵性双生児の親子版みたいな感じですかね。」
「それはまた凄い奇跡が起きた物ねぇ······。でも良かったわ。鈴宮さんが男性と······その、事件性とかなくて。」
「はい。それには私もホッとしてます。なんせ身に覚えのない妊娠だったもので······。だから両親も婦人科の先生も、そこを1番心配してました。」
そこが周りの皆が危ぐしてた事なんだよね。
なんせ産まれてからじゃないとDNA検査は出来ないし、もしそれで他人のDNAがあった場合にどう対応するか?とかって、かなり頭を悩ませてたから。
ただまぁ、私としてはどちらに転んでもこの子、雪ちゃんを愛して守り、大切に育てて行く事には違いはなかったんたけどね。
「じゃあ、このはちゃん。」
「ん?なーに??」
「難しい事はよく分からないけど、つまり雪ちゃんは大きくなったらこのはちゃんそっくりになるって事?」
「ああ、その事ね。先生からはDNA···つまり遺伝が私と同じだから、将来は私とそっくりになるでしょうって言われてるよ。ま、太ったりするっていう可能性は雪ちゃんの食生活次第だから、そこは何とも言えないけどね。」
「「「おおっ!!!」」」
「「マジかーー······。」」
「このはちゃんそっくりのなるの?この子??」
「羨ましいわ······。しかも約束された将来の見た目だよ。親としても子としても、凄く安心出来るよね!?」
こういう所もやはり他の皆と変わらない反応だよね。
私の今の学校の皆とか、家族や親戚の皆も。
その中でお母さんの反応が1番凄かったのが、今でも鮮明に覚えてるんだけどさ。
皆で軽食を食べたりドリンクを飲んだり、又は余興を楽しんだりしながら時は過ぎる。
その中で久しぶりというのもあって、お互いの近況を報告したりしたんだよね。
専門学校や大学へ進学した子もいれば、就職や家業の方をしてる子もいたり。
また彼氏彼女がいる子もいれば、居ない子もいて。でもそのどちらの子も私の事を話すと、結婚して子供を持ちたいなとか、彼氏が欲しいなーとかって言ってたりしたのが印象的だったんだ。
そして私も、そう言った色んな話を久しぶりに再会した皆と出来て楽しかった。
当初はどうなるのか不安だらけだった成人式&同窓会たったけど、行って正解だったよって言える、そんな会だったんだ。




