ある日の冬休み①-2 高2(挿絵有り)
「このはに葵、それに雪ちゃん。ちょっと聞いてくれ。大切な話がある。」
「ん?」
「なに?どうしたの?」
「なになに??じぃーじ??」
大晦日がもう明日という所まで迫ってきた年末の夕飯時。
お父さんも会社が冬休みに入っていて、家族揃って晩ご飯を食べていた所にお父さんからそんな言葉が出てきた。
そしてそれを聞いた私と葵は、お父さんの方を振り向くの。
雪ちゃんも振り向き返事はしたものの、意識的にはテレビの方が強いみたいでそちらの方を気にしてる。
そして私達は何だろ?って首を傾げるの。
このタイミングで大切な話と言われてもいまいちピンとこないし、そもそもお母さんの反応が普通なんだよねぇ·····。
私たちと違って驚いたり不思議に思ってる感じでもないし、そうなるとお母さんは事前に知ってるって事??
「実はな······お正月の帰省の件なんだが、お母さんとも相談して今年は見送ろうかな?と思っているんだよ。」
「ありゃ······見送るんだ?」
「ああ、その予定だ。2人も知ってると思うが、ここんとこ雪が多く降ってるだろ?それに予報だと大晦日から年明け暫くは強い寒波が来るみたいだからなぁ·····。安全には代えられないかなと思って、見送ろうかなとお母さんと相談したんだけど、結局今日になっても予報は変わらないみたいだから······。」
うん。それは私も知ってる。
毎年の事でお正月は新潟に行くから、12月の中旬頃から向こうの天気とかをちょこちょこ気にはしていたんだよね。
だたその頃から年末は寒波が〜とかって予報がでてて、まだ1〜2週間あるから良くなるかな?なんて思ってたけど、今年はそうでもなかったんだよね。
「行けないのは残念たけど無理して事故とかするのとか、巻き込まれるとかも怖いし、今年は仕方ないよ。」
「そうそう。通行止めとか立ち往生とか、高速道路でもそういうのがあるからね〜。万が一巻き込まれたら大変だよ。」
「そうだよなー。そういうのもあるから怖いよな。ありがとう、2人共。じゃあ、そういう方向で連絡しとく。」
ホッとした感じのお父さん。
でもその気持ちはよく分かるんだ。
この辺りで雪が降った雪道ですら怖く感じるのに、向こうはこっちの比じゃないからね。
道中の高速道路でも側面の雪の壁に突っ込んでる車や横転してる車などを目撃したことも多々あるし······。
しかも大雪となると、通行止めや立ち往生といったニュースも度々目にするからね。
通行止めで迂回すると時間がかかるから大変だけど、立ち往生なんて巻き込まれてらどうにもならない。なんたって動けないんだから······。
大人でも辛いそれを、幼い雪ちゃんを連れてってなると考えただけでも恐ろしいよ。
たから、こういう時は思い切った決断も必要だと思う。
先ずは安全第一。それからだよね。
「じゃ、うちの方には私から連絡いれとくわ。母さん達の方は状況も分かってるだろうから納得もするだろうけど、姉さんの方は大変かもねぇ〜·····。」
「伯母さん······ああ、風花ちゃんか······。」
「風花ちゃん、お姉ちゃんの事凄く大好きで懐いてるからねー。会えないって分かったら凄く泣きそうだよね。」
風花ちゃんはお母さんのお姉さんの娘さんで、雪ちゃんより少しだけ年下の女の子。
そして凄く私に懐いててくれて、向こうに滞在中はいつも私にくっついてるの。
それなので帰る時はいつも沢山泣かれるし、雪ちゃんが今より小さかった時は私を取り合いっ子なんかもしてたんだよね。
今は雪ちゃんがお姉さん風をみせてそういうやり取りは減ったんだけど、くっついたりするのは変わらない。
そんな風花ちゃんだから、私が行けないと知ると大泣きする光景が目に浮かぶんだよね。
そしてその光景をお母さんも葵も、皆が思い浮かべて苦笑してる。
「まぁ·····仕方ないわ。安全には代えられないもの。そこは風花ちゃんの親として姉さんに任せるわ。」
結局はそれしかないよねってなるの。
行けない以上はこちらからは何も出来ないしない、電話なんかしようものなら火に油を注ぐような事と同じになる様な感じしかしないし······。
さて、この話が出て今年は向こうに行かないとなったら、次は私かな。
「じゃ、次は私から話があるよ。」
「このはが?」「何かあったっけ??」「お姉ちゃんが話?」
「ママ?」
今度は皆が私に注目してくれる。
雪ちゃんもお父さんの時はそんなんでもなかったのに、私になると反応を示すんだよね。
「うん。まぁこれはお正月に向こうに行かないってなったから発生した事案なんだけど······、皆はお正月は何を食べたい? あ、晩ご飯のお話ね。」
「晩ご飯?」
きょとんとする葵。
お父さん達は何やら考えているみたいで······。
「ほら、今までは向こうで食べてたからお正月は朝ごはんくらいだったでしょ。でも行かないなら家で食べる訳だし、何かいいかなーって。それにスーパーも元旦はどこもお休みだから、明日の大みそかに買っとかないとって思ってね。」
「ああ、そっか!元旦はスーパーは休みか!」
「そうそう。私が行ってる所はね。他は2日までとか3日まで休みって所もあるよ。勿論、元旦からでもやってる所もあるにはあるだろうけど······。」
昔はどうだったかは知らないけど、私が普段行くスーパーは元旦が休みなの。
他にも3日まで休みますっていうスーパーもあれば、元旦からでも営業してるお店もある。
そういうお店はテナントとかが入ってるショッピングモールだったりするんだけど、そういう所は新春セールや福袋などお正月の定番の催しを全開でやってたりするんだよね。
「まぁ、食べに行くっていう選択肢もあるけど、元旦だからお休みって所も多いとは思うんだよね。だから家で食べるのがいいかなーって考えてるんだけど······何かある? ちなみにスーパー行くと、今は刺身とか蟹とかそういうのが多いよね。」
「蟹。刺身ね〜······。」
「どうしよっかな?? そういうのは向こうでよく食べるし、折角ならお姉ちゃんの料理の方が美味しいからなぁ······。」
「そうよねぇ〜·····。刺身とか寿司なんて食べようと思えばいつでも食べられるわけだから、何も正月だからって食べなくてもいいとは思うのよね。だからってこのはに作って貰うのも何か悪いし······。」
「じゃぁ、お母さんが今回は作るわけ?」
「それでもいいけど、葵と雪ちゃん的にはこのはのご飯の方がいいでしょ?」
「ま、まぁ···どっちかとい「うん!! ママがいい!」 ···だ、そうです。」
「いいよいいよ、お母さん。私が作るから、その間雪ちゃんをみてて。」
「このはがそう言うなら分かったわ。任せるね。」
家族の皆に何がいい?って希望を尋ねてみたけど、直ぐには思いつかないみたいで悩んでたよね。
助け舟としてスーパーが今推してる商品、年末年始という事で蟹や刺身、寿司系を教えてみたけど、これはいつでも食べられるんだよね。
それに向こうに行けば、必ず用意してくれる物でもあるからさ。
だから皆もそんなに乗り気ではないみたいで······。
で、なんだかんだ話ししてて、お母さんが作る?ような流れになったけど、雪ちゃんの一言で私が作ることになったの。
私としては料理を作るのは楽しいから、全然構わないのだけどね。
それよりもあの場で雪ちゃんが「ババのが食べたい。」なんて言われたら、私はマジで泣く所だったよ。
私の料理は雪ちゃんに美味しいのを食べさせたくて喜んで貰いたくて、磨いてきたものだからね······。
まぁ、その代わりお母さんには悪いなって感じてはいるんたけど。
「うん、それは大丈夫だから別に気にしないで。とりあえず明日の午後に買い物に行くつもりだから、それまでに希望があれば宜しくね。なければ私が考えて用意するからそのつもりで。」
「はーい。」
「分かった。」
「悪いわね。」
「因みに雪ちゃんは、何か食べたい料理はあるかな?」
「う〜〜ん·······分かんない。でも、ママのがいい!」
「そっか。じゃ、雪ちゃんのもママが考えるからね。」
「うん♪」
可愛くって、嬉しくって、また頭をなでなでしちゃった♪
だってしょうがないよ、これはさ。
先程のだって嬉しかったのに、また「ママのがいい!」なんて言われれば、もう·····ね。
ほんと、今夜は最高の夜になっちゃうね♪
「それにしても····お姉ちゃんは雪ちゃんに甘いねぇ〜。」
「えぇ〜?そんな事はないよ?教える時はきちんと教えてるつもりだし、今のはただ単に可愛かっただけだよ。」
「うん、まぁ、そういう事にしといてあげるよ。」
なんか葵がにやけながらそんな事を言ってくるの。
まぁ、からかい半分で言ってるのは分かってるから、私も軽くあしらうだけなんだけどさ。
「私にそんな事を言うけど、葵だって雪ちゃんに甘いじゃない。それに私は葵にだって甘くしてるつもりだよ?だって、可愛い妹だもの。だからあの提案だってしたんだし······今日はヤめとく?」
「えっ!? それはヤだ! 私が悪ーございましたから、それだけはご勘弁を〜〜!」
「うふふふ♪ そういう事にしといてあげる。」
私が仕返しとばかりに軽く返してあげたら、変な時代劇風な口調で謝ってきた葵。
面白い子だねって思いつつも、それで今回は終わりにしてあげたんだ。
でも、実際に葵も可愛いんだよ。
私の唯一の妹で小さい頃から『おねーちゃん』って、慕ってくれた子だからね。
だから色々と面倒を見てあげたくなるし、教えてあげたくもなるの。
娘である雪ちゃんは勿論可愛いけど、それとはまた違った可愛さがあるんだよね。妹って。
そして話の中のあの『提案』とは、勉強を頑張る為のものかな。
葵がお願いをしてきたから私は二つ返事でOKしたけど、頑張ったら頑張ったで何かしてあげたいじゃない。
勉強物って直ぐに結果が出るものではないからモチベーションも下がりやすいし、だったらって事でね。
そしてそれに葵は飛びついて喜んだけど、私としては別にいつも来てくれても良かったんだよね。
昔は毎日そうだったけど、雪ちゃんが生まれてからは変に遠慮なんてしちゃって、たまーに来るくらいだったから。
「あらあら、まあまあ······。相変わらず仲良しねぇ〜。」
お母さんがそんな私達のやり取りを見ながら、微笑ましそうに笑ってる。
「それは勿論だよ。で、お母さんも偶には一緒に入る?」
「う~ん·····気持ちは嬉しいけど、お母さんは足を伸ばして入れる方が嬉しいから遠慮しとくわ。 あっ、でも、偶には雪ちゃんと入らせて? そうすればお母さんはそれで満足だから。」
「そっか。」
お母さんにも葵と同じ提案をしてみたけど、こちらはあっさりと断られちゃった。
ただ雪ちゃんは偶に欲しいって言われたけどね。
まぁ、足を伸ばしてリラックスして入れる気持ちよさは確かに良い物だけどね。
「で、お姉ちゃん。今夜もやるの?」
「うん。私はそのつもりだけど、葵は別に無理しなくてもいいんだよよ?」
「いや、お姉ちゃんがやるなら私もやるよ。それに頑張れば今日で終わりそうだからさ。」
「やるって······2人して何をしてるんだ?」
私達の会話を聞いていたお父さんが、疑問に思ったらしく尋ねてきた。
因みにお母さんは知ってる。
私たちが一緒に勉強してる所を目撃してるからね。
「冬休みの課題だよ、お父さん。今回は葵と一緒に取り組んでるの。」
「そんなんだよ、お父さん。わからない所は1人で悩むよりお姉ちゃんに教えてもらった方が分かるし、効率もいいの。それにさ、不思議と集中力が増すんだよねー。」
そう嬉しそうに話す葵。
でも実際に葵は頑張って取り組んでるし集中力も持続してるなと、隣で見ている私もそう感じるんだよね。
「へぇ〜、あの葵がね·····。まぁでも、あれだ·····このはにあまり負担をかけないようにな。」
「うん。でも大丈夫だよ。もうお姉ちゃんに教えて貰うような箇所はないから、その点はへーき。」
ほんと、すご~く嬉しそうにしてる葵だけど、実際に良く頑張ったからね。
いつもならまだまだ課題が残ってる状況なのに、今はあと少しやれば終わるという所まできてるから。
恐らくだけど、今夜頑張れば終わるんじゃないかなー?って私は考えてる。
それに私が教える様な箇所はとっくに終わってて、今あるのは基本的に書き写す課題だけの物。
だから本来なら葵一人でも問題ない物なんだけども、私と一緒の方が集中できるとか言うので、今夜も一緒に取り組む予定なの。
因みに私はもう終わってるから、自主勉ね。
ーーーーーーーーー
コンコン♪
「葵、そろそろやる?」
葵の部屋の扉をノックして、中から返事が来たのを確認してから扉をあけた。
そしてその部屋の持ち主である葵に勉強開始の確認を尋ねてみた。
「うん、私は問題ないよ。お姉ちゃんの方は·······大丈夫か。」
「勿論。私がこっちに来た時点で問題ないよ。雪ちゃんもぐっすり眠ってるからね。」
夜の勉強も基本的には雪ちゃんが眠ってからの開始となります。
これは雪ちゃんの事が第一優先というのか一番の理由だからね。
たから私も普段は雪ちゃんが眠ってから勉強を開始してるし、それは今回も変わらないの。
そして私がそういう風にしてるの葵も知ってるから、それに合わせてくれたんだよね。
それに雪ちゃんが寝るのは比較的早い時間だから、その後でも私達の寝るまでの活動時間としては十分な時間がとれるの。
「じゃ、早速やろっか。葵の方は大丈夫?」
「うん、問題なし! お父さんにも言ったけど、後は漢字だけだから書き写すだけだもん。」
「了解♪ 頑張れ!葵。」
「ありがとー、お姉ちゃん。」
そして私達は勉強を始めた。
私は自主勉強。葵は最後の残りの課題を。
静かな空間に、エアコンの稼働音とシャープペンシルを走らせる微かな音だけがBGMとなって······。
ーーーーーーーーー
「あぁーー······おわったーーー!!!」
「やったね!葵。お疲れ様でした。」
「ありがとねーお姉ちゃん。ほんと、お姉ちゃんのお陰だよ。こんなに早く終わったのは······。」
嬉しそうに喜んで、そのままパタッと後ろに仰向けに倒れて喜ぶ葵。
きっと彼女の心の中は『疲れたー』って言う気持ちと『終わったー!』っていう喜びの気持ちがいっぱいなんだろうね。
そんな葵を微笑ましく見つめながら褒めたくもなるけど、手が届かない······。
私の向かい側に座ってておまけに今は寝そべってるからさ。
「あっ!そうだ!! 千紗と夏美に教えてあげよっと!」
「千紗ちゃん達に?課題が終わったって事を??」
「そうそう。きっと驚くよ〜〜。」
ガバっと起き上がって何事?なんて思ったら、千紗ちゃんと夏美ちゃんに課題が終わった事の報告をするんだとか。
そして、うししし······と笑いながらスマホに入力してる姿を見るに、2人の驚いてる姿を想像してるんだろうなーって思うのは想像するに容易い。
ま、私だって知らないでそれを聞いたら驚くのは間違いないからね。
普段の葵を知ってるだけにさ。
「よし、送信かんりょ〜♪きっと驚くよ♪」
ウキウキ、わくわくとスマホを眺めてる葵。
そんなに画面を眺めててもそんな早くに返事はこ『ピンコン♪』···来た。
「随分と早い返信だね?」
「うん。まぁ、まだ起きてる時間なのは知ってるからさ、あとはお風呂とかのタイミングに重ならなかったら直ぐに来るかなーとは思ってたんだ。さて、どれどれ··········あれ??」
「どうしたの??」
スマホの画面を確認した葵が、私が想像してたのとは違う反応をした。
だって、てっきり『見てみて!お姉ちゃん!!2人とも驚いてるよ!!』なんて言う楽しそうな反応が返ってくると思ってたんだよね。
そしたら『あれ?』だもん。
「いや···それがさ······。これちょっと見てよ?」
「どれどれ?」
葵がその不思議な反応の原因である、スマホの画面をこちらに見せてきた。
そして私はその画面を覗き込み、そのLI◯Eの中身を確認してみたんだ。
>> ちょっと葵?寝ぼけるにはまだ早い時間だよ(笑)
>> 葵ちゃん。それはいくらなんでも無理があるよ〜〜。
「これは······あれだね。全く信じてないね。」
「だよね~·······。なんでだろ? もっとこう···『うっそー!?マジで終わったのー!?』とかって言う様な反応を期待してたんだけどなぁ······。」
うん。
そういう反応を期待してたんだろうなってのは、私も分かってたよ。
でもさ、私も思ったけど葵の事を知ってる人からみたら、それはやっぱり信じられ難いんだよね。
ちょっとこう····現実的じゃないというか、いくらなんでも出来ないでしょ?的な気持ちが驚きよりも先に来るって言うのかな?
まぁ、それを言っちゃうと葵が可哀想だから、私は言わないけどね。
「う〜ん······じゃあ、スマホちょっと貸してくれる?少し長くなるかもだけど、私が書いて送ってみるよ。」
「そう?じゃ、お願い、お姉ちゃん。」
「はい。任された。」
葵が書いてダメなら私からならどうかな?と思って、スマホを葵から借りて代わりに書いて送ってみる事にしてみたんだ。
葵のお姉ちゃんです。今回は私と終始一緒に勉強したので、本当に今さっき終わったんだよ <<
さてさて······どう出るかな?
久しぶりに少しドキドキしながら既読になった画面を待つ事数秒·····。
ピンコン♪
ピンコン♪
やっぱり早い反応で返信が来たんだよね。
>> えぇーー!??マジお姉さんですか!?
>> お姉様と葵ちゃん、一緒に勉強したのー?!いいなー。
······うん。
実にあの2人らしい感じの内容のLI◯Eだった。
そんな千紗ちゃん達を想像しながらクスッと笑いつつ、鳴り止まない通知のスマホを葵に返したんだ。
「どうだった?お姉ちゃん?」
「ん?まぁ成功かな?見てみてよ。」
「うん····あ。これって·····課題が終わったより、お姉ちゃんと一緒にやった事にやたら反応してるね····。」
そうなんだよね。
その後の続々と送られてくる通知の中身は、まず私と葵が一緒に課題をやってた事に対しての羨ましさとか、私も一緒にしたかったなっていう反応で。
そしてその後は、私となら終わってるのも納得だよっていう反応だった。
「まぁ·····これはこれでいっかな?ある意味2重の意味で驚かせられた様な気がするから······本当にありがとね、お姉ちゃん。」
「葵がそれでいいなら、私はOKだから気にしないで。」
結果的に私が書いて送ってビックリみたいな形になっちゃったけど、葵がいいならそれでいいんだ。
「さて····じゃあ、葵も無事に終わった事だし、今夜はこれでお終いにしましょ。それでお正月は少しゆっくり休んで、落ち着いたら改めて勉強を教えるね。」
「うん、宜しくね、お姉ちゃん。」
「は〜い。」
さてさて。これで今年のお勉強は私もお終いです。
あとは葵も伝えた様にお正月は少しゆっくりして、それからまた開始しようかなって予定です。
筆記用具をしまって、ノートを片付けて。
そんなに荷物を持ってきてる訳でもないからそれも直ぐに終わる。
「じゃあ、お休み、葵。またね。」
ドアノブに手をかけて、葵にお休みの挨拶を伝えた。
「あ·····待って!お姉ちゃん·····。」
「うん? どうしたの?」
ドアを開けて退出しようとした所で葵から「待って!」と声が掛かって、なんだろ?って考えたんだよね。
でも、考えた所で特に何か忘れてるとかそういうのがある訳でもないから、その理由が思いつかないのだけど······。
「あの···その······。」
「な〜に?葵? どうしたのよ?そんなに煮え切らない態度で·····??」
葵にしては珍しい、もじもじとした仕草。
「んとさ···その、一緒に寝てもいいかな······?」
「一緒に? いいよ、おいで。 というか、今さらそれくらいでもじもじなんてしなくてもいいのに······。」
「だってさ〜、何か恥ずかしいじゃん····。」
「そう?姉妹なのにそういうものかな〜?」
なんだ····。
聞いてみたら一緒に寝たいだなんて、そんな恥ずかしがるものでも無いだろうに······可愛いよね、照れちゃってさ。
私達は姉妹で以前はよく一緒に寝てもしてたし、お風呂だって一緒に入ってたりもした。
今日だって一緒に入ったのに何を照れてるのかなー?なんて思うのは私が変なのかな?
「じゃ、いくよ?」
「うん♪」
葵を伴って私の部屋へと行く。
廊下を挟んで直ぐ目の前だからあっという間で、そしてドアノブに手をかけてそ〜〜っと扉を開けるの。
室内は常備灯が付いている薄暗い室内で、その中に雪ちゃんの寝息が僅かに聞こえている、そんな静かな寝室だった。
「そこのクローゼットの棚に毛布と掛け布団があるから、それ出して使ってね。」
「は〜い。」
葵に毛布のしまってある位置を教え、後はお願いするの。
その間に私はベット乗り、雪ちゃんの寝顔を確認してから私の定位置である雪ちゃんの隣のスペースへ入る。
「やっぱり寒いね······。」
ちょっと口に出したそれ。
いくら雪ちゃんと一緒に寝る、寝てると言っても、私のスペースは冷えてるんだよね。
まあ、これは雪ちゃんが冷えないようにきちんと毛布の隙間を閉じてるから、その熱がこちら側まで来ないだけなんだけどね。
いそいそと私も毛布の中に潜りかけ布団を掛けて、そして葵を確認する。
「大丈夫?」
「うん、へーき、へーき。」
薄暗い室内の中で静かに作業をしてくれてる葵に確認をしてみるの。
本当は明るくしてあげたい所だけど、明るくして寝てくれた雪ちゃんを起こしてしまうのは可哀想なので、葵には悪いけど明るくは出来ないんだよ。
まぁ、葵もそれは百も承知してくれてるから、何も言わずに支度をしてくれてるんだけどね。
そして支度も終わり、私の隣のベットに葵が入ってくる。
「えへへへ····。これも久しぶりだね?」
「そうだね、久しぶりかも。···あ、でも、よかった?その毛布で??」
「あぁ、コレ? 平気だよ、気にしないから。それにさ、私と茜ちゃん、使ってるの同じだから香りだって一緒だもん。だからね······。」
「そっか。ならいいんだ。」
私が気にしたのは、今、葵が被ってるその毛布とその香り。
そんなに香りがするとは思わないけど一応それは茜ちゃんが来た時用の毛布で、茜ちゃんが使ってるからどうなんだろ?って思ったんだよね。
で、葵は気にしないって言ってくれたから良かったけど。
因みに葵と茜ちゃんは同じボディソープとシャンプー類を使ってるんだよね。
それも私と同じのをね。
葵は随分昔に『お姉ちゃんと一緒のがいい』って言って、私専用に買って使ってるシャンプー類やボディソープを使い出したんだよね。
茜ちゃんは泊まる度に用意するのは手間だろうと思って、私のを使っていいよって伝えたんだよね。
だから2人とも同じ香りがするし、それはこの毛布も私も雪ちゃんもの同じ。
「それじゃ、今度は本当にお休みね、葵。」
「うん、お休みお姉ちゃん·····あ···。」
「·····今度はまたどうしたの?」
「いや······ちょっと寝る前に千紗と夏美にLI◯Eを送っとこって思って·····。」
「そっか。ま、いくら冬休み中といっても程々でね?」
「うん。」
本当に忙しい子だなーって思いながら私も一応LI◯Eの確認をしてみたけど、私のは通知ゼロだった。
まぁ、元々この時間に送ってくるのは少ない方だったし、今は冬休みだから尚更なのかな。
それに賑やかになるのは、きっと明日の夜。
年越しの前後に賑やかに騒がしくなるだろうからね。
そっと画面を閉じて、雪ちゃんの寝顔を見つつ私は寝ることにした。
翌朝。
お昼前に起きてきた葵から「おねーちゃん!見てみて!!」と、LI◯Eの画面を見せられた私。
そこには葵が『今夜はお姉ちゃんと寝る♪』と書いて送ったのに対して、千紗ちゃん達が物凄い反応をしたの目撃して色々とあったのは、また別のお話······。




