ある日の林間学校 ーそれぞれの夜 その2ー (挿絵有り)
(う〜ん······。どうしよう······寝れないや。)
一泊二日の林間学校の最初にして最後の夜。
私は寝れないでいた。
理由は分かってるんだ。それは私の隣でこのはちゃんが寝てるから。
皆が憧れて大好きで慕ってるあのこのはちゃんが、私の隣でスゥ~スゥ~と可愛い寝息をたてて寝てて、寝れる訳がない······。
自分の側に置いてあったスマホを手に取り時間を確認してみれば、もう既に日付は変わっている。
就寝時間が来て、もう1時間以上は経ってるね······。
そっと寝れない布団から起きて、薄暗い部屋の中を見渡した。
まずは、隣のこのはちゃん。
ピンク色の寝間着を着てて、それだけでも福眼物だったのにこの寝姿······。
ヤバい······。
これだけでも私をどうにかしちゃうような破壊力があるよ······。
薄めの毛布の下から微かに上下する、その胸。
呼吸してる証でもあるその胸は、仰向けで寝てるにも関わらずに強調してて、形の良さを表してるの。
そして寝顔。素敵♡
元々から整った顔立ちのこのはちゃんだったけど、この寝顔ですら破壊力抜群。
美人さんってこんな何気ない寝顔ですら様になるんだから、いいなーなんて思ったり。
髪の毛と同じ色の眉毛にまつ毛。
だから普通なら眉毛とかまつ毛なんて見えないんじゃない?なんて思うけど、意外とそんなことはないんだよね。
まつ毛も目立ち難いけどよく見れば意外と長くていいなーって思うレベルだし。
鼻だちもよくて、唇もぷっくらで薄っすらとピンク色をしてるんだよ?
反則·····本当に反則的な美貌なんだよ······。
こんな女の子が同級生として一緒になったのにも驚いたけど、知れば知るほど外見以上に内面から惹かれていくの。
優しくて包容力があって、しっかりしてて頼り甲斐があって。
頭脳明晰なんだけど気取ることもなくて、私達に丁寧に勉強を教えてくれるの。そのお陰で私達は成績も上がって、他の教科の復習に時間を沢山使えるようになったから凄く助かった。
このはちゃんがいてくれる嬉しさ。
見守っててくれる安心感。
まだまだ語り尽くせる想いがあるから、私も皆もこのはちゃんが大好きで·····。
続いてこのはちゃんの向こう側、丁度私と対になる方を見た。
そこには茜ちゃんが寝てるんたけど、なんと彼女はこのはちゃんの腕を抱きしめて寝てるんだよ。
(いいなぁ〜······。私もあんな風に出来たら······。)
そう思うけど、その勇気は出ない。
散々手を握って頭を撫でて貰って、抱きついて·····。
凄い今更感があるけれど、それとこれはまた別なんだよ······。意識のある起きてる時とは違って、寝てる時にくっつくのはさ。
目を覚ました時に私がくっついてて、それが原因で嫌われたらどうしようって考えもするし。
結局私は皆を起こさないようにそっと布団を出て、隣の部屋に移動した。
そして窓際に行ってカーテンを開け、そこにある椅子に腰掛けたの。
この窓際は少し広い空間になってて、椅子と丸テーブルが置いてあったんだよね。
私のおじいちゃん家にもあった『広縁』という空間。
縁側って言うと分かりやすいのかな?
それをもう少し広くとった空間なんだよね。
椅子に腰掛けて、そのまま外を眺める。
······見事に何も見えない。
日中に皆で見て喜んだあの光景が、真っ暗で微かに山があるな〜くらいの見え方だったんだ。
そしてあの綺麗な星空も、ここからだと山が近いせいで視界の殆どを山で占めてるから、ほぼ見えないし······。
こういうのも良し悪しだなーって感じちゃうね。
それでも寝れないのには違いないのでそのまま暗闇を眺めなら、ボ〜っと今日一日の出来事を思い返えす事にしたんた。
濃密だった今日一日。
ハイキングもそうだけど、私としてはやっぱり星空とお風呂が1番印象に残ってる。
星空は元々スケジュールにはなくて、食後の自由時間にこのはちゃんが先生から許可を貰ってきて実現した物だったんだよね。
だから私達限定で他の子には内緒なんだけど、それでも凄いなとしか言いようがないんだよね。
先生から絶大な信用のあるこのはちゃんだから出来たことであって、これが私達だったら絶対に許可なんて降りなかったと思う。
そのくらいの事をなしたこのはちゃんは、私達を連れて星空を見せてくれた。
「見れるかは賭けだった」と、このはちゃんは言ってたけど、実際に見た星空は100点満点の美しさだった。
私達の住んでる所では決して見れない星々。そして天の川······。
写真でしか見たことのない、星空がそこにはあったの。
驚きと美しさと感動と。
最初こそ騒がしかった私達だけど段々と静かになって、このはちゃんがちょこっとだけ解説してくれたの。
天の川がどういった物なのかとか、天の川の話に出てくる織姫とひこ星。
天体についての知識があまりない私には少し難しかったけど、天の川がどういった物なのかは何となく分かった。
そうすると不思議なもので、さっきまでは綺麗だなーって只見てた物の見方が変わったんだよね。
あそこが銀河の中心方面なんだとか、あそこにブラックホールがあったりするのかなー?って。
ちょっと天体っていう物に興味が湧いた瞬間だったよね。
後はやっぱりお風呂だよね。
これは私のみならず、クラスの皆が1番楽しみにしてたやつ。
理由はもう、このはちゃんしかないの。
皆でこのはちゃんのいない時に話したりした事があったから間違いなくて、女の子が女の子に興奮してるのはどうなんだろう?ってつくづく思うけど、もう諦めた。
だってさ、美しいの物は見たくなるじゃない?
それが例え同性の身体だとしても·····いや、寧ろ同性でクラスメイトだからこそ見る事が可能なのであって、そこに見ないという選択肢は私達の中にはなかったの。
で、このはちゃんの裸が見れる、最初で最後の一緒のお風呂。
私達は焦った。
だって私達が人前で裸になるのが恥ずかしくてコソコソ脱いでるのに対して、このはちゃんと茜ちゃんがサクッと脱いで行ってしまったから······。
しかもこれといって隠す事もなくだよ?
このはちゃんが堂々としてるのはまぁいいとして、問題は茜ちゃん。
あの子がまさか、あんな風に行くとは誰も思いもしなかった。
何があったのかは知らないけど、少なくとも1学期の時点では私達とそんなに変わらなかった筈なんだよね?
まぁ、途中から下着が可愛くお洒落な物に変わったのには気が付いたけど······。
やっぱりこのはちゃんの影響なのかなー?
というか、それしかないような気がする······。
で、何だかんだあってお風呂。
ハプニングもあって茜ちゃんが泣いたんだけど、その対処にこのはちゃんがした仕草に皆で羨ましがったりもしたけど、楽しかった。
終始、話が盛り上がってたけど、その皆の視線の先にはこのはちゃんがいたのはもうお約束。
なんたって制服や体操着越しでも分かる、そのプロポーションの大元が見えてるんだからね!
露天風のお風呂は半身浴ぐらいの深さだったから、上半身はお湯の外。
流石に私達も浸かってる時は隠してないから、おっぱいは丸見え。
個人差のあるそれだけどさ、このはちゃんのはやっぱり格別だった。
お風呂中はよりじっくり見ちゃって、やってる事はセクハラだけど······でも、まぁ······素晴らしいの一言なんだ。
あれで雪ちゃんを産んでるんだから、このはちゃんの努力は凄いんだねって実感させられるの。
言うのは簡単だけど実際は6年間も続けてるらしいからさ、雪ちゃんへの想いは並大抵の事ではないよね·····。
私もいつかママになれたら、このはちゃんみたいに子供想いになれるのかな??
ちなみにこのはちゃんと一緒に堂々としてる茜ちゃんも、身長の割に大きくてなかなかの物をお持ちだったんだよね。
ブラが変わった時に「大きくなったんだ〜♪」なんて嬉しそうに話してたけど、これなら嬉しくもなるよねと思う。
それに2人共綺麗だった······。何がとは言わないけど。
私だって今回は念入りに手入れはしてきたけど、あの2人みたいなのはいくらなんでも無理。
だって普通に生えてるから·····。
でも······あれを見てしまうと、あの方が綺麗でいいなと思ってしまったんだよね······。
剃ってる感じでもないし、エステかな?
でもこのはちゃんはともかく、同い年の茜ちゃんが行くとも思えないし······天然?
謎は深まるけど······でも素敵なのを見せられるとそれがいいなって、私もそうしたいなって思えてしまうんだから凄いよね。
風呂上がりは部屋で、皆とトランプで盛り上がって。
このはちゃんは普段笑顔とか微笑みが素敵なのに、ババ抜き中は無表情でババを持ってるのか持ってないのか、サッパリ分からなかった。
故に強い。
何回か遊んだけど、その全てにおいて上位だったよね。
途中で電話してくるねって退席して、その間は皆とお風呂話でキャーキャー盛り上がって······。
結局、皆が考えてる事は一緒だったんだ。
そして、トランプ前の寝場所決めのじゃんけん。
これがいけなかった······。
まさかの私が勝って、このはちゃんの隣で寝る権利をもぎ取ったんだ。
すっっっごく喜んだけど、いざ寝るとなったらドキドキし過ぎて寝れないという状態に陥ったんだ·······。
恋愛系の漫画でヘタレな男の子が、『ドキドキ過ぎて寝れねー!』なんて言って悶々としてる描写があるけど、それに見事にハマったヘタレな私。
本当に漫画みたいな事になるとは、あのGETした時の私は微塵も思わなかったよね。
そんな今日の色んな出来事を思い出してたせいか、私は気付けなかった。
私の後ろに近づいてくる足音に······。
「どうしの?咲夜ちゃん??」
「うわあぁぁ!?」
突然の声にビックリして、素っ頓狂な声をあげた私。
ただそこまで大きな声ではなかったのが、せめてもの救いかな??
「こっ······このはちゃん·······?ど、どうしたのさ?」
「どうしたの?って······それはこっちのセリフだよ?? 布団から出ていって暫くしても戻ってこないんだから、心配してたんだよ?」
「うっ······。それはごめんなさい······。」
まさか気づかれていたとは思わなかったよ······。
てっきり寝てるとばかり思ってたけど·······それはそうと、変なことをしなくて良かったよ。
あの時に何かしてたら、今となっては完全にアウトだったね······。
「で、どうしたの? もしかして、寝れないとか??」
「うん、そんな所かな? 変に目が覚めちゃっててさ、ここで景色でも見てれば眠くもなるかなー?って思ってて見てたんだ。」
「そっか······。あ、私も隣座るね。」
そう言って隣·····とは言っても、2つしかない椅子の残り1つに腰掛けたこのはちゃん。
まさかこんな時間にこのはちゃんと2人きりになるとは思わなかったよ。
「それにしても······見事に真っ暗だね。」
「そうなんだよね。山は暗くて全然紅葉も分からないし、かと言って星空も山が近すぎてそんなに見えないからね。」
『景色を見てれば·····』なんて言ったけど、実際はほぼ何も見えてないんだよね。
だからボ〜っと今日の事を思い出してたんだよね。
「このはちゃん。星空の件、ありがとうね。とっても素敵なのを見れて嬉しかったし、思い出にもなったよ。」
「それはどういたしまして。でも、良かったよ。何とか見れて······。」
あの時、時間がなくて見せてくれたお礼を言えなかったから、今このタイミングで改めてお礼を伝えたの。
このはちゃんもそれを受け入れてくれて、そして見れた事にホッとしてる様子だった。
「これがあったから、先生にお願いしたの?」
「うん。この部屋に来た時に皆で外の風景を見たでしょ?その時にね······。 本来はこの部屋から見れれば良かったんだけど、山が近すぎて空までは無理そうだったから、お願いをしてみたんだよ。」
「そうだったんだね。でも、そのお陰で私達はあの星空を見れたんだから、このはちゃんには本当に感謝だよ。ありがとう。」
このはちゃんの行動力と、常日頃の行いによる先生からの信頼があってこその星空だったと······。
約1年半の行いの結果のだから、あの10分少しの観察時間は途轍もない価値があると改めて気付かされた。
それから少しの間このはちゃんは私に付き合ってくれて、話をしながら過ごしたんだ。
私は寝付けなかったから別にいいんだけど、このはちゃんはそうでもない。
たまたま戻って来ない私を心配してくれて、ここまで付き合ってくれてるだけ······。
「このはちゃん······。私の事はもういいから、寝てくれていいよ?」
私は伝えた。
布団から出た時には日付が変わってた時間から更に経過して、気付けばもう深夜1時を回ってるんだ。
そんな時間まで私に付き合ってくれてるのは悪いから······。
「でもね、そうすると咲夜ちゃんが1人になっちゃうでしょ? それはそれで心配だし、これが原因で体調でも崩しちゃったら明日を楽しめなくなるから······そうなったら私は後悔するからヤだな。」
「このはちゃん······。」
「それにさ、私の隣を取れて喜んでくれたでしょ?私、それ見て咲夜ちゃんが喜んでくれたから嬉しかったんだよ?なのにそれ、放棄しちゃうの?」
「ゔっ······。それは、そうなんだけど······。」
心配してくれる、優しいこのはちゃんの言葉に詰まる私。
だけど···だけど違うんだよ······。
私だって、やっと取れたこのはちゃんの隣。
そこで寝たいのに放棄なんてするわけない!!
「分かってる!分かってるんだよ!!そんな事は!」
「咲夜ちゃん······。」
つい、言葉を荒げてしまった。
でも·····一度出してしまったら、もう止められないの!!
「私もこのはちゃんの隣で寝れるのは嬉しかったの。嬉しいんだけど、寝れないの! それはこのはちゃんが隣で寝てるから······。このはちゃんのせいにはしたくないけど、このはちゃんが寝てて、それに私がドキドキしちゃってるから寝たくても寝れないんだよ······。」
「ゴメン···ごめんなさい······。このはちゃんに······女の子にこんな気持ちを抱いてはいけないって分かってるけど······。でも、優しいこのはちゃんが私は好きなの······。」
話すつもりはなかった、この想い。
でもこの時間この空間で、このはちゃんの優しさに触れて私の気持ちは爆発してしまった。
このはちゃんの事だから、茜ちゃんを始めとしたクラスの皆がこのはちゃんの事を好いてるのは気付いてるとは思う。
特に茜ちゃんはその気持ちとかを素直にこのはちゃんにぶつけているし、このはちゃんもそれを受け入れてるからね。
だけどそれを直接口に出して気持ちを伝えるのは、私の中では何か違うんだよね。
同性故にハッキリとそれを告げると、変な子に思われて関係が壊れるとか嫌われるとか······。
あぁ······これが告白する側の気持ちなのかと、こんなタイミングで気付いた······。
出すつもりはないのに、勝手に口から気持ちが溢れて······。
目からは涙が零れ落ちて······。
今迄の、この居心地の良い幸せな関係性が明日から壊れると恐怖して身体が震える······。
「咲夜ちゃん······。」
いつの間にか側に来てたらしいこのはちゃんが、私をそっと抱きしめてくれた。
「こんなに震えて······涙も流しちゃって······。こんな私の為に、せっかくの可愛い顔が台無しだよ?でも、ありがとう。気持ちは嬉しいよ。」
「このはちゃん······。」
「咲夜ちゃんが前々から私を好いてくれて、慕ってくれてたのは気が付いてたよ。そしてそれを理解したうえで、私もそういう風に付き合ってたからね。」
あぁ······。
やっぱり私の気持ちなんて、このはちゃんはとっくの昔に気が付いてたんだね······。
「咲夜ちゃんはさ、たぶん·····関係性とかが壊れるとかって心配して恐怖したんでしょ?でも大丈夫。安心して。 何も壊れないし変わらない。私も咲夜ちゃんの事は好きだから、これからも変わらず今まで通りだよ。ね?」
「うん······。」
安心感、安らぎ、温もりや香り。
普段でもこのはちゃんに抱きしめてもらうと感じるこの幸せ感は、このタイミングでも有効みたいで怖かった気持ちが、震えてた身体が、急速に落ち着いてくるのが分かる。
ポンポンと背中を擦ってくれて、優しい穏やかな声で私を落ち着かせてくれて······。
いつまでそうしてくれたのかは分からないけど、長くも短くも感じたこの時間、私は嬉しかった。
「じゃ、おいで。」
「ん?」
このはちゃんに手を引かれて立ち上がって、 カーテンをこのはちゃんが締めて、手を繋いだままこのはちゃんに連れて行かれた。
「ほら、おいで?」
「えっ?!」
ポンポンとこのはちゃんが軽く叩いたそこは、このはちゃんの寝るお布団だった。
「寝付けなかったんでしょ?だから私が一緒に寝てあげる。大丈夫だよ。雪ちゃんも寝られない時は、こうすると直ぐに寝れるからね。」
(いやいやいや······。そもそもの寝れない原因がこのはちゃんなんだよ?そんなこのはちゃんにくっついたら、余計に興奮して寝れなくなっちゃうよ〜〜!)
「う、うん。ありがとう······。」
自分の気持ちとは裏腹に、関係のない言葉が私の口から出た。
そしてドキドキしながらも、いそいそとこのはちゃんの隣に潜り込む私。
「ちょっと狭いか······。ごめんね。暫く我慢してね?」
「うん、だいじょーぶ。」
「そっか······。じゃぁ·····寝ましょう?大丈夫、暫くは私が起きてるから安心してね。」
そんなこのはちゃんの優しい言葉に頷いて、私は眠りにつく。
たまにさせて貰う様に、腰に腕を回して······。
さっきもだけど、こんな事をしたら只でさえドキドキしてるのに更に興奮して寝れないと思ってた。
でも違った。
このはちゃんの温もり、優しさ、包まれてる安心感。そういうのがあって凄く落ち着くの。
だから今さっきまでのドキドキとか興奮だとか、そういうのが一気に落ち着いていくのが分かる。
(ああ······。これなら寝れそう······。)
だからか、自然と私は眠りについた······。
ーーーーーーーー
「すぅ~···すぅ~······。」
(もう、大丈夫かな?)
何とか寝てくれた咲夜ちゃんを確認して、頭を撫でていたその手を止めた。
そして、ふぅと一息吐いて······。
(まさか、咲夜ちゃんにこうも気持ちをぶつけられるとは思わなかったな······。)
最初は戻って来ないのを不思議に思って見に行ったのが始まり。
そしたら広縁で椅子に座ってぼ~っとしてだよね。
具合が悪いのかな?とも思って暫く一緒に話をしながら寛いではいたんだけど、そこでまさかの告白。
咲夜ちゃんに限らず茜ちゃんや他のみんなも、私を好きなのは知ってる。
知ってるうえでそう付き合ってるんたけど、はっきと言われるのはコレで2回目だね。
1回目は茜ちゃんだけど······。
気持ち良さそうに寝息をたててる咲夜ちゃん。
この子も色々と心配だったのかな?
私達は女同士だから、男女間のそれとはまた違う。
男女のそれなら成功すれば付き合うか、駄目なら『さようなら。』になる。それは私も1回経験してるしね。
だけど私達は女で同性。
成功したからってお付き合いするとかそういうのではなく、そのまま友達って感じでって私は思ってる。
けど、失敗したら?
よく言われる関係性が崩れるとか嫌われるとか、同性故に気持ち悪いとかって思われるかもって考えたのかな?
それに私達は人一倍仲が良いから、その辺りの付き合いとか関係も気にして······。
ツンツン···
「うん?どうしたの、茜ちゃん??」
背中をツンツンされて、そちら側には茜ちゃんしかいないから直ぐに茜ちゃんだと分かったけど。
「このはちゃん······、私を······捨てちゃう??」
「······は?」
いきなり何を言い出すのかな?この子は??
私が茜ちゃんを捨てる?
なんでそんな発想に??訳わからない······。
よいしょっと心の中で声を出して、身体の向きを茜ちゃんの方に変える。
だってほら、咲夜ちゃんがくっついてたから向きを変え難くかったんだよね。
「どうしてそんな風に思ったの?」
向き直って彼女に問いただした。
私の茜ちゃんに対する想いは知ってる筈なのに······なのに「捨てちゃうの?」だよ?
雪ちゃんもたまに「どこでそんな言葉を!?」って思う時があるけど、このセリフもねぇ·······。
まぁ、出所はなんとなく想像がつくのだけど······。
「だって······さっちゃんが······その······。」
膝を抱え込んで小さな身体を更に小さくして震えてる茜ちゃん。
「もしかして······見てたの?」
「うん。」
コクっと頷いた。
なんとなくそうかなーって思ってたけど、やはりそうだったみたい。
「馬鹿ねぇ······。私がそんな事する訳ないでしょ?咲夜ちゃん含めて皆が私の事をどう思ってるかは分かってるつもりだし、さっきはその想いを直接告白されただけだよ。それに、だからって付き合い方が変わる訳でもないし、そこはいつも通りいくつもり。だからね、茜ちゃんは何も心配しなくていいの。いつも通りに私の隣にいればいいのよ?」
「うん!」
ハッキリと言葉に出して伝えてあげる。
そうしないとまた同じ様な告白があった時に、茜ちゃんが不安に陥るかもしれないから。
抱きしめて落ち着かせて、また眠りにつく茜ちゃん。
それを見守りながら、この『嫉妬』ともとれる感情を出してくれたのには嬉しくも感じるんだよね。
今までは『嬉しい』『淋しい』『不安』『辛い』『幸せ』そういった感情は見せてくれたけど『嫉妬』はなかったから。
それに今は以前と比べてかなり元気に明るくもなったし、感情も皆に見せるようにもなった。
その変化の違いは、皆も薄々気がついてる様子だしね。
この様子ならいずれは大丈夫かな?なんて思いつつ、今でも可愛いのに更に可愛さが増すかもしれない茜ちゃんを想像しながらクスッと笑ってしまった。
きっとモテるぞ〜って。
そして最後に咲夜ちゃんと茜ちゃんの、このやりとり。
今日は本当に色々とあったな〜って思いながら、私も再び眠りについた。




