ある日の林間学校①-7 20歳高2(挿絵有り)
ーー茜ちゃん視点ーー
「みんな〜、準備はいいかなー?」
「「「はぁ〜い♪」」」
「いいよー!」
「私もおっけー♪」
「じゃ、行こっか。ルームキーもきちんと持ったから、大丈夫っと·······。これ忘れたら部屋に入れなくなっちゃうからね。」
このはちゃんの合図で入浴に向かう事となった私達。
手提げバックにタオルや下着、寝間着のパジャマなど必要な物を詰めて出発です。
皆が順に部屋を出て最後にこのはちゃんが部屋を出た所で、ガチャンと扉のロックが掛かった。
この部屋のルームキーは、このはちゃんが持ってるの。
これは先生から渡され時に、満場一致でこのはちゃんが選ばれたからね。
このはちゃんも嫌な顔をせず受け取ってくれたんだけど、結局それが1番いいんだよね。
このはちゃんはしっかりしてるし、皆のお姉さんで纏め役。
これ以上の適任者は他にはいないの。
次点で志保ちゃんかなーとは思うけどね。
私?
私は駄目だよ。
このはちゃんや志保ちゃんに比べると、うっかりしてる所とかがあるからね。
もうちょっとしっかりしないとな〜って、このはちゃんを見てると思うけど中々改善はされない······。
でも、自分の中で何かが変わってきてるのは感じてるから悪くはないんじゃないかな?とは思ってる。
そんな私の隣を歩くこのはちゃんは、いつもの優しいこのはちゃん。
食後の後にこのはちゃんに連れられて、皆で行ったホテルの外。
本来ホテルの外への外出は認められてないのに、短時間とはいえ許可を貰ったこのはちゃんは凄いなと思う。
これもこのはちゃんの人徳の成せる技なんだろうね。
で、見せてくれたのは満点の星空だった。
このはちゃんも賭けだとい言ってたこれは、もう言葉で表すには大変なくらいの感動があったよ。
周りが山しかないから当然真っ暗で、だから私達の住む街からでは決して見ることの出来ない星々までが見えて。
それだけでも感動ものなのに、まさかの天の川まできたからね。
あれには本当に感動ものだよ!
プラネタリウムとか映像作品とか、それが写ってる地球からの写真ではCG?って思ってたのが目の前にあるんたからね······。
そしてその感動は私の心の中に大切に仕舞ってあるけど、その後のやり取りがまたね······。
ジャージを着てたのに冷え込んで、思わずくしゃみをした私。
そんな私にそっと着てたジャージを着せてくれたんだよね。
ジャージの上からジャージという非常に変な着方だったけど、それでもとても温かった。
今さっきまでこのはちゃんが着てからその温もりがまだあるのは当たり前で、それプラス優しさがね······。
でもこれを私にと言う事はこのはちゃんは半袖になる訳で、そうするとこのはちゃんが寒くなるのは誰にだって分かる。
だから断ろうとはしたんだけど、私の事を心配してくれて押し切られてしまったんだよね。
だから嬉しさとかもあったけど、同時に申し訳無さとかもあったりで複雑な気持ちだった。
だからか私のより一回り大きいこのジャージを、自然と抱き抱えるようにしてしまった······。
ーーーーーーーー
エレベーターで下へ降りて廊下を進んで行く。
場所は事前に聞いていたけど、大浴場って案内が出てるから迷うことはないです。
そして廊下を進んで行った突き当りにその場所はあった。
和風作りの門構えで、さっきまで歩いてた廊下よりは暗く。
でも提灯とかの暖色系の明かりが付いていて、ご丁寧?に暖簾までがあったんだよね。
そしてその入り口の右側が女性用で、反対側が男性用だったんだ。
そんな大浴場の入り口。
ここに来るまでに一般のお客様とすれ違ったりもしたけど皆が皆、このはちゃんを見るんだよね。
私もこのはちゃんと一緒にお出かけした事があるから分かるんだけど、ここでもこのはちゃんの美貌は注目の的らしいです。
とはいっても、そこまで大勢の人とすれ違ったりした訳でもないけどね。
どちらかといえば私達の生徒の方が多いくらいだし。
だって時間的にお風呂はまだ早い時間だし、各部屋にもお風呂は基本付いてるらしいから、そっちを使う方もいるだろうからね。
それにフロントでも『団体さんが来てます。』『何時頃入浴される予定です。』とかって話を聞いてるかもしれないしね。
私だったらその時間を避けて入浴すると思うし、それに大浴場も遅くまで開いてるみたいだから、敢えてこの学生で混み合いそうな時間に入らなくてもいいとは思う。
「「「「おお!」」」」
脱衣場に入れば皆でまた驚くの。
今日はこのやりとりが多いなーって思うけど、場所が場所なだけに仕方ないよね。
その1つはこのはちゃんが用意してくれた景色だったのだけど、どうせこの後も直ぐに皆は驚いたり感動したりするんだからね。
分かるんだ。私には。
それを身を持って体験したのが、この私だからね······。
入った脱衣場は暖色系の温かみのあるライトに照らされた、清潔感ある部屋だった。
私の背より高い、3段になってる鍵付きのロッカーがズラーッと並んでいて、部屋の端の方には洗面台も用意されてるの。
だけどまぁ······、皆でここのドライヤーとかを使うわけにもいかないから、部屋に戻ってから使わないといけないかな?なんて考えたり·····。
「どこにしよっか?」
「そうだねぇ······。どこか纏めて空いてる箇所でもあればいいのたけど、さすがにないか·····。」
皆でロッカーを探すけど纏めて空いてる箇所はなかったので、其々が空いてる所で着替える事にしたの。
とは言っても程々の間隔で空いてたから、皆ともそんなに離れることなく着替える事が出来たんだけどね。
そして私はこのはちゃんの隣のロッカーで着替える事にしたんだ。
「じゃ、私達はここで着替えよっか?」
「うん。」
······何だか最近思うのは、私がこのはちゃんの隣にいるのがクラスの中で普通になっちゃったなーってこと。
始まりは私がカミングアウトして皆が配慮してくれてる感じだったけど、それが続いていく内にこのはちゃんの隣が私って感じになっちゃったんだよね。
それで空いているもう片側を、皆で分け合うみたいな感じで。
そしてその皆から愛されてるこのはちゃんも、私が隣りに居るのが普通になってる様な気がするんだよ······。
今さっきだって、『私達はここで着替えよっか?』って、私がさも隣で着替えるのが当然みたいな感じで言ってくれたからね。
言い方を変えれば『貴女の着替える場所は私の隣よ』って言ってるのと同じだよね。
そんな言葉を言ってくれたから私は嬉しいし、幸せを感じる。
このはちゃんが大好きだから、隣りにいられるのはこの上ない幸せだからね!
それにこのはちゃんがそう思って言ってくれてるなら最高に嬉しいし、仮にそうでなくてもいいの。
そう言ってくれた事実だけでも満たされるから······。
「ここのお風呂って、どういう感じなんだろうね?」
「う〜ん·····、どうなんだろう?分からないけど、山に近いから源泉を使ってるとかそういうのがあったらいいよね。」
服を脱ぎながら、このはちゃんが浴場についてどうなんだろう?ってワクワクした様子で尋ねてきた。
私もお風呂は好きだけど、このはちゃんもかなりお風呂が好きだからね。
ホテル名は事前に貰ってたしおりに記載されてるから、ネットで調べようとすれば調べられたのに敢えてしなかったらしいんだよね。
なんでも当日まで知らないで行けば、その分楽しみも喜びもワクワクも増えるからなんだって。
勿論、事前に調べて予約とかを入れスケジュールを立てて効率的に回ったりして楽しむのもあるけど、今回は一度きりだからワクワクを優先したんだそうです。
「源泉······温泉か〜。それだったら嬉しいね。美容に良かったり健康に良かったりとか、色んなタイプがあるけど······。」
本当に楽しみだな〜って感じで言う、このはちゃん。
「じゃあ、早く行こっか。」
「だね♪」
このはちゃんの楽しみを早く叶えるべく、私はササッと脱ぐのであった。
「ねぇ······。2人共脱ぐの早くない?」
「えっ!? そ、そう??」
脱ぎ終わってむ§》持ち物を整理してる場面で、美紅がそんな事を言ってきた。
いつもだったらここでまた話し込んだりするのだけど、今は早く浴場の方に行きたいんだよ〜······。
「うん、早いよ。私も皆もまだ脱ぎ終わってないもの。」
「確かに······。」
見渡せばまだ皆はゆっくり脱いでるんだよね。
まぁ、そのゆっくりな原因は身体にタオルを巻いてるのと、恥ずかしがってる(?)からみたいだけど。
「というかさ、茜もこのはちゃんも前を隠しなさいよ!? なんで·····その·····隠さない訳?!」
「えっ!? このはちゃん達、隠さないの??」
「うそ!? うわっ! マジだ!」
「えぇーー?! 恥ずかしくないの??」
美紅がそんな事を言うもんだから、こっちを気にしてなかった他の皆までもこっちを振り向いちゃったじゃないかー······。
「ん〜〜······。私はそんなに恥ずかしくはないよ? 女の子同士だからさ、隠すような物も別にないからね。」
この言葉を聞くのも夏休み以来だね。
その時は私が皆と同じ様な事を、このはちゃんに尋ねたんだよね。
私の家に泊まりに来てくれて一緒にお風呂に入る時に、あまりにも堂々と脱ぐもんだから『恥ずかしくないの?』って。
「そうなんだ······。まぁ、このはちゃんはスタイルがいいから分からなくもないけど、でもやっぱり······裸を見られるのって抵抗がさ······。」
「というか、茜ちゃんも何で平気なん?前なんて恥ずかしくしてなかった??」
「そうだよね? 照れくさそうにしてたのに、今はこうも堂々としちゃって······。」
「何があったわけ??」
やっぱりというか、私にも話が振られた。
まあ、確かに以前の私なら恥ずかしながら着替えてただろうね。
それは間違いない。
「私もこのはちゃんと似たような理由だよ?以前はさ、コンプレックスに感じてたのがあったんだけど、それが解決したから気にしなくなったの。だからかな。」
「へぇ〜。そうなんだ。」
「それって·····下着の事?」
「うん。それもその1つだね。」
コンプレックスに感じてた物のは1つは下着。
子供っぽいのしか持ってなかったから、皆に見られるのが恥ずかしかった。
でも、それはこのはちゃんのお陰で解決したからね。
このはちゃんに選んで貰って身につけるようになって、体育の時とかに見られても大丈夫になったんだ。
だってさ、このはちゃんも皆もこういうのを身に着けてたりしてるし、それになんと言ってもこのはちゃんが私に似合うって選んだ物だから!
これが1番大きいの!
「······そっか。それは良かったね。」
「うん♪」
美紅をはじめとした皆が、微笑ましく私を見てくれてる。
皆は身体にタオルを巻いたり、こらから体操着を脱ぐぞーって状態とか色々で、こっちはこっちでタオルは持ってるもののスッポンポンという何とも言えない姿だけどね(笑)
「じゃ、先に行ってるねー。行こう、このはちゃん。」
楽しみにしてるこのはちゃんを待たせてはいけないから、私は話を早々に切り上げて浴場の方にこのはちゃんと向かうことにした。
「このはちゃん、ごめんね。」
歩きながら隣りに居てくれるこのはちゃんに、そっと小声で話しかける。
「何が?」
「このはちゃんがお風呂を楽しみにしてて早く行きたがってたのに、私が話に捕まっちゃったから······。」
申し訳ないなーって感じてしまう。
いつもこのはちゃんに助けてもらってたりしてるから、今回は少しでも早く脱いで行こうとしてたのに······。
「大丈夫だよ。」
「あっ····。」
「そう思われる様な脱ぎ方をしたのは私達なんだから、聞かれても仕方ないでしょ?私もそれは理解してるし、以前の茜ちゃんもそう思って私に聞いてきた事あったじゃない。」
私の頭をポンポン撫で撫でしながら、懐かしがる様に語るこのはちゃん。
確かに言ったよ。
美紅にそう言われて、私もこのはちゃんに尋ねたなーって思ったくらいだからね。
「だからへーき。それよりも·····茜ちゃんも随分と堂々と脱ぐ様になったね?前はあんなに恥ずかしそうに脱いだりしてたのに······ママは嬉しいわぁ♪」
「ちょっとぉ〜·····何を言うかな?! このはちゃんは! ぜーんぶ、このはちゃんのお陰でしょ?」
そうだよ!
全部このはちゃんのお陰なんだよ!私が変われたのは。
下着の件もそうだけど、もう1つのコンプレックス。
それは私の身体の下半身。
私は体毛が薄い体質なのか、股に陰毛と呼ばれる物が本当にちょこっとしか生えてない。
それが下着と同様に子供っぽくて見られて笑われる、からかわれるんじゃないかと思ってずっとコソコソ着替えたりしてたんだよね。
でもそれもこのはちゃんが救ってくれた。
このはちゃんは私よりもっとない······いや、生えない体質で見た目なら私と遜色ない物だった。
だからこのはちゃんと同じ見た目なら、これだって全然恥ずかしくないと思えるようになったんだ。
しかも、ほぼ同じ見た目という事で嬉しく感じるくらいだもの······。
気になって調べたらさ、これって凄く珍しくて天然なのは本当に少ないんだってよ?
脱毛とかをすればそう作れるけど、そうじゃないからね。
だから嬉しいの。
それにね、このはちゃんはこの事でからかわれたりしたら、その子に怒るって言ってくれた。『味方だよ』とも言ってくれて·······。
そういう経緯があったから私はこの身体の事も好きになれたし、コンプレックスだったのが解消もされたの。
みんなみんな、全部、このはちゃんのお陰なんだよ!
それを分かっているうえで、からかってくるんだから·······もう······。
偶にイジワルというか、いたずらっ子みたいな感じになるこのはちゃん。
でも·····こういうこのはちゃんも、また好きだ。
家族は別として、クラスの皆には決して見せない姿だから······。
このはちゃん。
本当に、いつもありがとう♡




