ある日の誕生日③-4 20歳高2
前回の投稿でこのエピソードを忘れていたので、175話の続きとして投稿させて頂きます。
申し訳ございませんが、宜しくお願いします。
「おっはよー☆ こ〜のはちゃん♪」
「お······おはよう。茜ちゃん。今朝はまた一段と元気だね?」
「うん!それはそうだよ。だってそれは、このはちゃんも知ってるでしょ?」
「まぁね〜。」
茜ちゃんの誕生日から一夜明けた、翌日の朝。
いつものように我が家のインターフォンが鳴って、茜ちゃんが来てくれたんだよね。
9月の半ばにもなって、台風や秋雨前線の影響で朝一緒に登校する機会が少し減ってはいるのだけど、今日は幸いに晴れ空。
それに10月になれば、台風を除けばほぼ晴れの日が続くような天気になるからね。
そういう訳で久々の一緒の登校にはなるんだけど、今朝の茜ちゃんはニッコニコ。
笑顔満開ですっごく可愛い♪
こーゆうのを男の子が見ちゃったら、惚れちゃうんだろうなーって思ってしまう、そんな素敵な笑顔なんだよね。
まぁ、その笑顔の理由は分かってるんだけども。
その1つは、久々に一緒に登校が出来るという事なんだ。
雨の日は危ないからそれぞれ別で登校しよって話をしてあるから、最近は行けてなかったんだよね。
それだけで少し元気の減る茜ちゃんではあるけれど、2つ目の理由が今日は大きい。
2つ目、それは昨日が茜ちゃんの誕生日で私がお祝いをした事。
この事が今の茜ちゃんの心の中に、大きなウエイトを占めてるんだよね。
背筋をピンと伸ばした茜ちゃん。
「このはちゃん。改めて昨日は私の誕生日を祝ってくれて、プレゼントまで用意してくれてありがとうございました。とってもとっても嬉しかったです!」
そう言うとペコリと丁寧に頭を下げて、お礼を伝えてくれた。
そしてふたたび顔をあげる。
その顔は表情は、とても清々しく素敵な笑顔だったんだ。
(あぁ、良かった。お祝いする事が出来て。)
そう心から思えるほどに喜んで貰えたんだなと、改めて思わせてくれる。
「どういたしまして。茜ちゃん。私も茜ちゃんをお祝いする事が出来て良かったよ。プレゼントは私の感覚で選んでしまったけど、デザインとか大丈夫だったかな?」
「うん!大丈夫だよ!! すっごく綺麗で素敵で気に入っちゃったよ。大切にするからね。本当にありがとう♡」
「いえいえ、どういたしまして。」
昨夜もあった、このやり取り。
雪ちゃんが完全に寝に入った午後10時過ぎに、茜ちゃんから電話が来たんだよね。
話の内容は誕生日のお祝いのお礼だったんだけど、それはそれは嬉しそうに『ありがとう!』『嬉しかった!』『ビックリしたよ。』って、沢山の気持ちを伝えてくれてさ。
私も私でそんな茜ちゃんの声が聞けたので、嬉しかったんだけどね。
そしてそんな会話だからか、電話の向こうにいる茜ちゃんの姿が容易に想像できてしまった。
ベッドの上で寝転がってるか、ベッドを背もたれにしてるかの違いはあるかもしれないけど、そのどちらかの姿勢で電話をしてて。
そして顔を染めて嬉しそうな表情をしながら足をバタバタ、私のプレゼントしたネックレスを見つめながら電話をしてるんだろうなーって······。
私も雪ちゃんに対してはそうなんだけど、茜ちゃんも私に対しては結構分かり易い態度を取る事が多いから、安易に分かるんだよね。
嬉しいとか寂しいとか不安に思ってる、伝えたい事がえるけど言い難いとか、そういう感情が表情や仕草に直ぐに現れるからさ。
そういうのをここ半年濃密に付き合うようになって、分かった事でもあるんだ。
「でも······、昨日も言ったけど、あんなに高価そうなのを私にで良かったの?」
これも昨夜、やり取りした事。
なんでも······というか、昨日、お姉さんの家にお邪魔してた事から分かるように、プレゼントのネックレスをそのお姉さんに見られたんだって。
それはそれで私は別に構わないのだけど、そのお姉さんに『これ、結構いいお値段するんじゃないの?』的な事を言われて気にしてた様で······。
それを聞いて私は私の思いを伝えたのだけど、やっぱり直接聞きたいみたいで。
「いいんだよ。茜ちゃん。 これは私が送りたくて送った物なんだからね。デザインの好みはあるだろうけど、でも物としてはどのシーンでも身につけていても大丈夫なのを選んだつもりだから······。だから、そういうのは気にしないで使ってくれると嬉しいな。」
「······うん。ありがとう。お姉ちゃんも何かそういう事を言ってたけど、そこまで考えてくれてたなんて、本当に嬉しいよ。大切に······大事に使うから······。」
昨夜もそうだったけど、また感極まって泣きそうな茜ちゃん。
でも、ここは私の家の前だからそれは困っちゃうんだよね。
理由は雪ちゃんがいるから。
雪ちゃんが懐いてる茜ちゃんに、あの時の彩ちゃんみたいな思いはさせたくないんだよ。
だから私は先手を打つ!
「そうそう、茜ちゃん。」
「なーに······?」
「近い内にさ、そのネックレスを身に着けてる所を私に見せてね?あくまで私の想像で茜ちゃんに似合いそうなのを選んだからさ、ちょっと不安なんだよね。」
「!!? も、勿論だよ!! このはちゃんに頂いたんだから、見せるに決まってるじゃない。いや、寧ろ見て!って感じだよ。」
うふふふふ。
いい感じに気を逸らすことに成功したかな?
私に見せるって言ってくれた茜ちゃんも、『あのネックレスに合う洋服は何がいいかなー?買わないといけないかなー?』なんて、楽しそうにしてるしね。
そんな光景を見てると、私としてもプレゼントして良かったって思える。
誰でもそうだと思うけど、悲しそうな顔を見るより笑顔を見てる方が何倍もいいもんね。
「おはよ〜。雪ちゃん。」
「うん!茜おねーちゃんおはよー。」
話が一段落ついた所で、雪ちゃんと朝の挨拶をする茜ちゃん。
久しぶりの対面でもあるから、雪ちゃんも茜ちゃんもお互いに嬉しそうにしてる。
茜ちゃん雪ちゃんの頭を撫でたりして、いい子いい子ってやってるし、それを雪ちゃんも受け入れてるからね。
「じゃ、雪ちゃん。ママ行ってくるからね。」
「うん。」
「「行ってきまーす。」」
玄関で雪ちゃんとお別れをして、家の中にいるお母さんにも聞こえるように声を出して一旦のお別れ。
そうなる筈だったんだけどね······。
「茜おねーちゃん。いい事あったのー?」
「えっ!?」
「·······ねぇ、雪ちゃん。なんでそう思ったの?」
雪ちゃんからの思わぬ言葉に、フリーズする茜ちゃん。
そして私も驚いてはいる。
だって雪ちゃんには私、話してないからね。
「だってねー。茜おねーちゃん、凄く嬉しそうにしてるんだもーん。」
「あ〜······、そういう事かー。なるほどね······。雪ちゃん、昨日、茜おねーちゃんの誕生日だったんだよ。」
「そうなの?」
「うん。雪ちゃんもお誕生日はみんなから『おめでとう』って言われたりして、嬉しいでしょ?茜おねーちゃんもそれと一緒で、嬉しかったんだよ。」
「そっか〜。茜おねーちゃん、おめでとー!」
「ありがとう、雪ちゃん。雪ちゃんから『おめでとう』って言ってもらって、おねーちゃん嬉しいよ♪」
またまた笑顔になる茜ちゃん。
私もだけど、まさか雪ちゃんから『おめでとう』って出るとは思わなかったからね。
そのキッカケが茜ちゃんの雰囲気の違いで、その違いに気付いた雪ちゃんにも驚かされたけどね。
そしてそれは、それだけでは終わらなかった。
ーーーーーーーー
「ねーねー、茜。何か良いことでもあったの?」
「えぇ!?······なんで?!」
「だって、いつもと何だか雰囲気が違うよ?」
「そーそー。」
「普段より明るいっていうか、妙にウキウキしてるっていうか、そんな感じかな?」
家を出発して、いつも通り自転車に乗って学校へ向かって。
教室の扉を開けて2人で挨拶をしつつ教室に入ったんだ。
そしたら入った瞬間にバレた。
何がって、茜ちゃんの違いっていうのかな?そういうのが。
なんせ雪ちゃんが気が付いたくらいだから、当然クラスのみんなも気が付く訳で······。
普段は私の方にみんなが来たりするんだけど、今朝は茜ちゃんの方にみんなが集まってそんな質問が飛んで、しどろもどろになる茜ちゃん。
もうそれだけでこれは何かあったなーって、答えてる様なものだけど······。
「このはちゃ〜ん······。たすけてぇ〜·······。」
「······仕方のない子ね·······。まぁでも、そういう所もまた可愛いからなぁ〜。」
案の定というか、茜ちゃんから助けを求められてね。
出来ることなら乗り切って欲しかったけど、助けを求められちゃうと助けてあげたくなっちゃうんだよね。
そんなんだから、私も甘々だよなーって思ってしまう。
「何々?! このはちゃん、知ってるの?」
「茜の今朝の様子、一体どうしたの??」
茜ちゃんが私に求めてきた=私も知ってる。
そういう方式が成り立つ訳で、今度は私の方に視線が飛んできたよ。
「うん。まぁ、聞いたから知ってるよ。話しちゃっていいの?茜ちゃん??」
「うん。」
一応、本人に話してよいのかの確認をとってみます。
勝手に話すのも悪いし、かと言いつつ話さないって訳にもいかないからね。
それに、みんなにも何かあったな?ってのは分かっちゃっているし、それを私も知ってるっぽいとなってしまったからね。
これだけの理由があって、何もありませんでしたは流石に無理があるし、茜ちゃんの事を考えるとみんなに教えちゃった方がいいと私は判断したんだ。
お母さんの事は私も含めて大半の子が高校からの知り合った子だったから知られなかったけど、今日の事はもう無理。
特に私が絡むと、茜ちゃんは直ぐに表情に出ちゃうからね。
嬉しいことも悲しい事も······。
「えっとね、実は昨日、茜ちゃんの誕生日だったんだ。それで家族からお祝いしてもらったのが嬉しかったんだってさ。」
「「「えっ!?」」」
「うそ?!」
「マジ!?ちょっと、茜ちゃん。そうなの??」
「う······うん。そうなの。」
「なんだ〜。教えてくれればお祝いしたのに·····。でも、遅れちゃったけど、お誕生日おめでと!!」
「「「おめでとー♪」」」
「おめでとう♪茜。そっかそっか······。それで朝からウキウキだったのね。」
みんなから『おめでとう』のお祝いを貰って、これまた嬉しそうな茜ちゃん。
最後は美紅ちゃんだったけど、どうやらウキウキしてた理由に納得してくれた模様で、それは皆も同じだった。
「あれ?と言う事は、このはちゃんも知ってた訳?」
「うん·····。まぁ知ったのは昨日だったけどね。それなんで昨日と今朝、改めてお祝いを伝えたらこんな感じ?」
「あ〜······。分かる分かる。このはちゃん大好きな茜の事だもん、このはちゃんに『おめでとう』なんて言われた日には、こうもなるよね。」
「確かに!」
「うん!間違いないね!!」
みんなで茜ちゃんを囲んでワイワイやってる。
『おめでとう』の嵐に茜ちゃんも嬉しそうにしてて、隣でそれを眺めてる私は良かったねって思う。
それとみんなを納得(?)させる事も出来たからね。
勿論、全部を話した訳ではない。
特にプレゼントの件はみんなに知られると色々とありそうな気がするので言えないし、もしもの時はお姉さんから貰ったって事にしてと話してはあるんだよね。
後はまぁ、ほぼ合ってはいるかな?
知ったタイミングこそ違うけど、昨夜と今朝お祝いをしたのは合ってるし、家族からのお祝いで嬉しかったのもその通りだからね。
「ねぇ、このはちゃん?ちょっと教えて欲しいのだけど······。」
「ん?なぁに??」
志保ちゃんから声を掛けられて、それに応える私。
このタイミングで教えて欲しい事と言えば、もしかしてもしかする?
「このはちゃんの誕生日って、いつなのかな?」
「あー、それ私も気になるなぁ。」
「お祝いしたいよねー。」
やっぱりそうだった······。
この誕生日の話で教えて?って来たら、何となくだけど私のを聞かれるかな?って感じたんだよね。
でもまぁ······、隠すようなものでもないし聞かれた分には答えるつもり。
「私は4月の3日だよ。」
「4月!?」
「あー·····もう過ぎちゃってるのか〜。」
「しかも春休み期間中と来てるし······コレは中々難しそう······。」
私の誕生日を知って一瞬喜んではいたけれど、直ぐに今年の分は終わってしまった事に落ち込むみんな。
まぁ、お祝いをしたい気持ちは私も分かるし、そこには何も言わないけど、私って春生まれなんだよねー。
社会人ならなんら問題はないけど、学生としてみると春休みど真ん中。
いいのか悪いのか分からないけど、高校生だと遠方から来てる子もいて中々会いづらいというのはあるよね。
「まぁ、あれだよ。来年の春休みは私結構忙しくしてるから中々会えないけどさ、気持ちだけ貰っとくからそれでいいかな?」
そういう事にしてみんなに納得してもらうことにする。
直接は会えなくても、LI◯Eとかでやり取りは出来るしからね。
それに来年の春休みは雪ちゃんの小学校入学というのもあって、忙しくしてると思うんだよね。
だからというか、元から自分の誕生日自体は特に気にしてないけど、来年はそれがもっと加速しそう。
そんな予感がする。
そして高橋先生がやって来て、この誕生日のやり取りは一旦お終い。
ふと隣をチラ見すれば、しっかりした表情で先生の話を聴いている茜ちゃんがいる。
でも時通り口角がニヘッってしてる時があるから、また思い出してるなーって思ってもみたり。
最終的には、終日そんな感じの茜ちゃんだった······。




