ある日の夏休み④-3 20歳高2(挿絵有り)
ーー 茜ちゃん 視点 ーー
静かなエアコンの稼働音がする中、もそもそとタオルケットを被りながら今日一日を振り返る。
色んな事があったなーって······。
でもそのどれもが新鮮で楽しくて賑やかな家族、そんな家の中っていいなって改めて感じてしまった。
ーーーーーーーー
「茜ちゃん。うちの準備が出来たから今度泊まりに来ない?」
このはちゃんが私の家に泊まりに来て1週間と少し経った頃に、このはちゃんから待ちに待った言葉が出たの。
その間は昼間に何度か一緒に課題をやったりはして、これはこれで凄く嬉しかったし楽しかったけどね。
で、そんなこのはちゃんの誘いに私は二つ返事を返して泊まりに行ったんだ。
鞄に替えの下着や洗面用具類を詰めて。
でもこの辺りはそのまま、このはちゃんの家に置いてくる事になってるんだ。
「ちょこちょこ泊まりに来るんだから、下着とか歯ブラシは置いていけばいいよ。毎回持ってくるのもあれだし、私が洗ってしまっとくからさ。」
そんな風に言うこのはちゃんに押し切られて、ある程度の荷物は置いていく事になった。
自分の履いた下着をこのはちゃんに洗われるのは恥ずかしいのもあったけど、このはちゃんだから逆に大丈夫っていう安心感もあったよね。
まぁ、下着その物はこのはちゃんが選んでくれた物であるから、その下着を見られるのは別に恥ずかしくもないんたけどね。
恥ずかしく感じるのは別の部分。
でもこの辺りはおりものシートでも予め付けていけば汚れはしないから、大丈夫かな。
······うん。そうしよう。それがいい。
初めてのこのはちゃんのお部屋に入った。
家自体はもう何度も来てるから見慣れた建物だけど、家の中はやっぱり違って、ご両親は仕事でいないとは聞いていても緊張してしまった·····。
まるで彼氏の家に初めてお邪魔するような感覚で······。
そして、このはちゃんの部屋。
このはちゃんの言うように意外とシンプルだった。
ベットが並んで置いてあって、5段程の可愛いデザインの衣類収納ケースと壁際にカウンタータイプ?のテーブルが置いてあるくらいだったけど、部屋の色の使い方というのかな?
そういうのが良いのかバランスが取れてるから変な窮屈感とかなくて、シンプルではあるけど素敵な感じだった。
でもそう思ったのも束の間で、それよりもっとヤバい事があった。
それは······香り。
このはちゃんと雪ちゃんの部屋なんだからなんの問題もないのだけど、私からしたらその部屋に微かに香るこのはちゃんの匂いだけでもクラっと来てしまった······。
この部屋で一晩泊まるのか···なんて考えてたら興奮してしまって、つい変なことを言ってしまった。
困惑する、このはちゃん。
色々とあったけど結局は見せてくれる事になって。
その時に『指切りげんまん』をした。
子供が遊びの一貫でするような只のおまじない的な物だけど私にとって、とても大切で大事な約束となった。
そしてそれは、後ほど見せてもらった時にさらに強い思いとなるのはこの時は思いもしなかった······。
その後はまた色々とあったけど、とにかく楽しかったの一言に尽きるかな。
雪ちゃんを迎えに行って、このはちゃんがご飯の支度をしてる間は雪ちゃんと遊んだ。
テレビに夢中になった雪ちゃんを抱っこして頭を撫でたりもして、あれは幸せな時間だったよ。
なんたって、ミニこのはちゃんだからね!
そんなミニこのはちゃんこと、雪ちゃんを抱っこして撫で撫で出来るこの幸せといったらねぇ〜。
まさしく天国だよ!
それからはこのはちゃんの妹の葵ちゃんとも仲良くなれて、このはちゃんのご両親にも挨拶をしたりしてご飯となった。
和やかにそれでも明るく楽しい食事の時間。
このはちゃんは何も言わなかったけど、それもみんなこのはちゃんのお陰なんだろうなづて思う。
私の事をどの様に伝えたのかは聞いてないけど、この皆さんの様子を見る限りきっといい感じで伝えてくれたのだと思う。
たから嬉しくなって、段々とこのはちゃんの事をアレコレと話したりしてしまった。
このはちゃんのお母さんに聞かれたのもあるけれど······。
「茜ちゃん。これとこれとコレが私の使ってるシャンプー類だから使って貰っていいからね。あとバスタオルもここに置いとくよ。これは私専用で家族はだれも使ってないから安心して。」
「うん。ありがとう。」
「あとタオル含めて洗濯物はこの中に入れといてくれる?明日、私が洗って干しとくからさ。」
このはちゃんに諸々の説明を聞いてからお風呂に入った私。
今回は浴槽にお湯は張っていない。
私も本来はそうだし、このはちゃんの家族も夏場はシャワーだけで済ませるそうだから。
この前に私の家でぬるま湯だけどお湯を張ったのは、このはちゃんと浸かりたかっただけで普段は張らないの。
今回はシャワーだけというのと、このはちゃんは雪ちゃんと入るのもあって私一人。
(これ、この辺りだと売ってないんだよねー。どこで売ってるんだろ??)
そう思いながら髪を、身体を洗っていく。
このこのはちゃん専用のシャンプー類は、私がお姉ちゃんと行く範囲も含めて売ってるお店を見たことはないんだよね。
まぁ、私が立ち寄らないお店なんかもあるからそこで取り扱っている線もあるけれど、最終的には通販って線になるのかな?
だけど、我が家にも置いときたいなーって思う。
香りも凄くいいし、それに今後このはちゃんが来た時に困らないもんね。
このはちゃんは『これが私の髪に合うんだ』 って言ってたから、私が使っているシャンプー類だとあの特殊な髪には合わないだろうしさ······。
それに、私もこのはちゃんと同じのを使えるというメリットもあるからね。
うん。買っとこう!
そう決断した。
洗って流して、お風呂をあがる。
(えっと、ここのこの籠がこのはちゃんの言ってた奴だよね。)
そう確認してお借りしたバスタオルや私の下着類を入れておく。
本来は持って帰って自分で洗うのが、当たり前の事。それは分かってるんだ。
でもこのはちゃんが、『ちょこちょこ泊まりに来るのに持って来て持って帰るのじゃ手間だから、私の所に1着置いておけばいいよ』って言ってくれたんだよね。
それに『私と雪ちゃんの衣類は私が洗って管理してるんだ。だから茜ちゃんのも私が洗って管理するから、うちのお母さん達に見られる事もないよ。安心して。』
そう有無を言わせない迫力で言われてしまえば、私にノーと言える力はない。
とにかく優しいこのはちゃん。でも、こういう時はちょっとだけ狡いなとも思う。
結局、このはちゃんに甘えてしまった私。
せめて···せめて汚れたのを洗われないように、明日から対処をしよう!
そう誓った私だった。
お風呂をあがって、次はこのはちゃんと雪ちゃんが入って戻って来て。
私達からすると時間はまだまだだけど、雪ちゃんとしてはもう寝る時間なんだって。
確かお姉ちゃんもそんな事を言ってたのを思い出した。
ベットに横になってスマホを弄りながら、このはちゃんがどう雪ちゃんを寝かせるのか気になってチラチラと見てた。
まぁ、私の位置からだとこのはちゃんの背中しか見れないんだけどね。
聞いていた話だと、その日その日で違うということ。
雪ちゃんが色々と話をしてくれる日もあれば、絵本を読む時もある。歌を歌ってあげる時もあるらしい······。
つまりは、その日の雪ちゃんの気分次第という事なんだって。
そして今夜は絵本だった。
これは昼間の時に気付いてはいたけど、このはちゃんの部屋には絵本が沢山ある。
それに子育て関係の本や勉強用の参考書やワークといったもので、その中でも大半が雪ちゃんに関する物だらけ。
本当に雪ちゃんを愛してるんだなって思える部屋だったよ。
「お待たせ茜ちゃん。雪ちゃん寝たからいいよ?」
「うん、ありがと。その前に雪ちゃん見てもいいかな?」
そう言って寝に入った雪ちゃんを見た私。
その寝顔は正しく天使って呼べるような寝顔で、そして何処となくこの間見たこのはちゃんの寝顔にも似てた。
まぁ、このはちゃんその物といってもいい雪ちゃんだから、このはちゃんを幼くするとこういう感じなんだろうなと想像するのは容易いのだけどね。
「可愛い寝顔だね。それに幸せそうな寝顔でもあるよ。」
「うん、そうだね。こういうのもあるから、産んで良かったって思えるよ······。」
そう言いながら雪ちゃんを見つめるこのはちゃんの顔は、普段とはまた違う母親の顔でそして何より幸せそうな表情をしてた。
産んで良かった。
愛してる。大好き。
元気で健やかに大きくなってね。
色んな感情が込められてる眼差し。
当たり前だけど、私に向けられてるのとはまた違うもの。
羨ましくは思うけれど、私は私なりの物を手に入れられたからいいんだ。
そしてこのはちゃんがパソコンを起動して、例の写真とやらを見せてくれた。
(うわっ···!)
とっさに口を手で塞いだのは正解だった。
じゃなかったら驚きの声を出してしまうくらいに、衝撃的な写真だった······。
別に変な意味ではないよ?誓って!
ネットでも探せば出てくる妊婦さんの裸の写真。正面と横向きで撮ったそれと同じ構図なんだけど······場所はこの部屋みたい。
自撮りって言ってたから、多分そうじゃないかなーとは思ってはいたけどさ。
って、それはどうでもいいの!
問題はその写真なんだよ。
ネットで見かけるのと同じ構図なのに、このはちゃんのこれは凄く神聖に見えてるのと同時に妖艶さを醸し出してる!!
ナニコレ!?
とっさに口を押さえて正解だった······。
そんな自分を褒めてあげたいよ。
「ねぇ······。そんなに変だった?口を押さえるほどに······。」
「え?! 違う!違うの!!」
咄嗟に全力で否定をする。
だって凄いなと感動してた所に、背後から底冷えのする声がしたから。
······多分これ、あれだ。
以前にこのはちゃんの告白を覗いてたクラスメイトが、このはちゃんにバレた時に感じたという恐怖という怖さ。
みんなが『あのこのはちゃんが?』なんて言ってて、私もそう思った側だけど間違いない!コレだ!!
そして、良かれと口を押さえたのが裏目に出た······。
「違うの!このはちゃん! 見た瞬間に想像してたのより神々しく神聖に見えたのに、同時に妖艶さもあって驚いたんだよ! でも、見た瞬間に声を出すのも失礼かと思って、口を咄嗟に塞いだの! お願い!信じて!!」
咄嗟に先程感じた、思ったことを全て隠さず伝えた。
そうしないと、また駄目だと思ったから。
「······そっか。ありがとう。私てっきり変なのかな?って感じちゃったから、不安になっちゃって·····。」
「全然変じゃないよ?寧ろ凄くいいと思う。それにこれを隠したい気持ちも分かった気がするよ。」
もうさっきまでの怖さは感じない。
いつものこのはちゃんだと、ホッとした私。
「ねぇ、茜ちゃん。どんな所がそう感じたの?」
「んー···そうだねぇ······。」
一通り目を通しながら感じた事を纏めていく。
そして伝える。
「私もさ、妊婦さんのこういう画像は見たことあるんだけど、それと比べると先ずはやっぱりその歳だよね。幼さの残る顔と歳相応の身体付き。まぁ胸はこのはちゃん大きい方だけど、そのギャップが本来の大人の妊婦さんと比べてエロさを醸し出してるというか······。」
「うん·····で?」
「あとはやっぱりキレイ。素敵♪胸だって大人や妊娠で変化するあれがないから綺麗で神聖に見えるんだよね。だからそのギャップに驚いちゃった。だから隠したい気持ちも分かるよ。1人で撮ったから隠したいのもあるだろうけど、これは他の人に見せちゃ駄目なやつ!虜にしちゃうから!!」
この写真は色々とマズいの。
中学生の妊婦姿という本来は決して見る事はないという物。
このはちゃんの体質によるムダ毛の無さ。メラニン色素の欠乏。
この欠乏はメラニン色素の生成に影響を及ぼしてるから、少女が大人になる過程で生じる乳輪の色の変化にも及ぼしてる。
そしてこれは妊娠すると一層濃くなったりするんだったって。
だけどこのはちゃんにはこれがないから、キレイなままなんだよ。
この前にお風呂に一緒に入った時から気付いてはいたけどさ。
そーゆー訳でこれには神聖さを感じつつも同時にエロさも感じてしまった訳です。
見てしまった背徳感も凄いけど、見れて良かったという気持ち物凄く大きい!
「えっと······分かってくれたかな?」
「うん······。まぁ元々こっそり撮った物だから他に見せるつもりは無かったからいいんだけど。でもそう言ってくれて、ありがとね。ホッとしたよ。」
「私も······。見せてくれてありがとう、このはちゃん。きちんと約束は守るから、安心してね。」
そうして何だかんだと感想をいったり、このはちゃんのこの時期はこうだった、ああだったなんて話しを聞いたりして過ごした。
私もこのはちゃんみたく母親になる事に憧れてるけど、果たしてそうなれるのかな?と思ったりもした。
そして、冒頭へと戻る。
ーーーーーーーー
(どうしよう······。眠れる気がしない·····。)
私は絶賛困っていた。
決して真新しいベットや環境になれないから、ではない。
さっき見たあの写真のインパクトが強すぎて、私自身が興奮しちゃって寝れないんだよ。
淫乱とかじゃないよ?
女の子だってそういう気分になる時もあるんだから······。
「このはちゃん·····まだ起きてる?」
小さなか細い声で問いかける。
雪ちゃんも寝てるから起こしちゃう訳にもいかないし、このはちゃんも寝てるならそれでいいんだ······。
「······起きてるよ。寝れないの?」
「うん。明日も休みだから別に寝れなくても支障はないけどさ······。」
嘘だ。
明日は明日でこのはちゃんとお出かけする予定があるから、本当なら寝ておきたい。
車の中で寝てしまうのは避けたいから。
「ほら···コレでいいかな?」
もそもそと動いてるなと思ったら、このはちゃんが身体の向きを変えてこっちに来てくれた。
鼻先に広がるあの香り。
一気に安心できるのが感じられた。
「多分···さっきの写真のせいでしょ? そんな感じがしたからね。」
「お見通しなんだね、このはちゃんは。······軽蔑した?」
何だか前もこんなやり取りがあった気がする。
なんだったかな??
「別にしないよ。だってそれって本来誰でも持ってる感覚なんでしょ?だから気にしないし、気にしなくていいよ。」
「優しいねー。このはちゃんは······。」
普通は嫌いになりそうな物だと思うけどな、と私は思う。
このはちゃんから見てみれば、自分の写真を見て興奮してる私だよ?
エッチな画像を見て興奮してる男子と対して変わらないもの。
「前も話したかもしれないけど、私はそういう感覚が希薄だからさ。だからそうなったときの辛さが分からないから、茜ちゃんが今そういう状態でも嫌いにはならないよ。」
「あり···がとう···。」
そう伝えるのだけで、精一杯だった。
このはちゃんの気持ちが嬉しくて。
「これで落ち着くかな?」
そう言って、また抱きしめてくれた。
この間と一緒だ。
そしてやっぱり落ち着くんだよね······。
香りもある。温もりもある。
そんな諸々が組み合わさって、先程までの眠れなかった状態が解消されていくのを感じる。
ほんと、これを毎日受けてる雪ちゃんが羨ましいな······。
「ねぇ···このはちゃん···。」
「うん?なに??」
「···キス···して?」
眠くなってきて、ぼんやりとした思考の中で言っちゃった······。
してくれるのかなー?なんて思ってたら、おでこに触れられた感触がした。
「···これでいいよね?いつも雪ちゃんにやってるのと同じだから。」
「···うん·····あり··がと····。」
雪ちゃんと···同じか······。
さっきも···やってたもん···ね···。
でも···いい···や。
しあ····せ···だから······。
ーーーーーーーー
抱きしめてあげてたら、段々と眠くなってきてやっと寝れたらしい茜ちゃん。
今日は初めての私の家にお泊りという事で、色々とあって大変だったよね。
そんなんだから気持ちが昂るのも分からなくもないし、落ち着かなくなるのも分かる。
だからゆっくり休んでね?
私はどこにも行かないから······。
右側に雪ちゃん。
左側には茜ちゃん。
2人に挟まれて川の字になって、寝るのでした。




