ある日の夏休み④-2 20歳高2(挿絵有り)
「ママー!!」
「お帰りー♪雪ちゃん♡」
テテテテっと走ってきてホブっと、私に抱きついてくる雪ちゃん。
そして顔をグリグリと押し付けてくるんだよね。
コレが毎回お迎えに来た時の雪ちゃんの行動なんだけど、本当に可愛い。
それに『ママは私のだ!』と言わんばかりにグリグリする姿は、犬や猫の自分を主張するマーキングを彷彿させる。
だから偶にクスッと笑ってしまうんだよね。
「あれー?あかねおねーちゃん?」
「こんにちは、雪ちゃん。久しぶりだね?元気だった?」
「うん!雪、元気だよー!今日はどーしたの?」
「そっか。それは良かった♪今日はねー······。」
私に抱きついてた雪ちゃんが茜ちゃんの存在に気がついて、不思議そうに尋ねてた。
初めて知り合ってからここ1ヶ月少々、雨の日以外は毎朝顔を合わせてたからね。
それが帰りの時間にいる事が初めての事で珍しいから、疑問に感じてる雪ちゃん。
そんな雪ちゃんに対して茜ちゃんも丁寧に優しく対応してくれて説明をしてくれる。
そしてそんな光景に不思議に思う人はもう一人いて。
「このはちゃん。あの子は······?」
「あの子は私の友達で、家が近いので一緒に学校に行ってるんですよ。それなんで毎朝雪ちゃんにも会うようになって、仲良くなったんです。」
「そうなのね。それなら良かったわ。」
心配してくれたこの先生は、雪ちゃんを担当してくれてる方なんだ。
そして小さい時の私を担当してくれた先生の内の一人でもあるの。
可愛がってくれるのもあるんたけど、見た目が特殊だからすごく気にかけてくれてるんだ。
小さい子供って見た目とかをからかったりとかする傾向があるからさ。
私もそういう経験があるから危惧をしてたけど、幸いにして雪ちゃんはそういう事をされてないみたいでホッとはしてる。
だから安心して預けられるのは嬉しいと感じてるし、先生にも感謝は凄くしているんだ。
「先生。今日も1日ありがとうございました。」
「どういたしまして。雪ちゃん、またね〜。バイバイ。」
「せんせ〜、さようなら。ばいばーい♪」
先生に挨拶をして、雪ちゃんも先生に挨拶をして幼稚園を後にします。
そして雪ちゃんはまたまたご満悦な表情をしてる。
いや、表情だけではなくて全身でそれを表してるよね。
雪ちゃんの左手には私。
雪ちゃんの右手には茜ちゃんが。
両手をそれぞれの手に繋いで、気分はルンルン♪状態。
幼稚園の門から車までのほんの10メートルちょっとの距離を、そんな感じて歩くのでした。
ーーーーーーーーーー
「「「「「頂きまーす。」」」」」
「はい、どうぞ。召し上がれ。」
いつもの晩ご飯タイム。
お父さんとお母さんはダイニングテーブルで。
私達はテレビの前にある座卓で座って食べるの。ただいつもと違うのはこの場に茜ちゃんがいる事。
長方形の座卓の長辺の部分に雪ちゃんと私が座って。
私の隣の短辺部分に茜ちゃん。その対の場所には葵が座る感じでね。
初めての場所で初めての人達とご飯だから、私の隣が良いと思ったんだよね。
その方が安心感もあるし、話もしやすいからさ。
「あ···美味しい。このはちゃん、これすっっごく美味しいよー♪」
「そう?それは良かった。沢山あるからいっぱい食べてね?」
茜ちゃんが私の作ったおかずを食べて喜んでくれてる。
暑くない時期に雪ちゃんのお弁当の日限定で、私のお弁当も一緒に作って学校へ持って行くけど、そういうお弁当の日にちょこっとだけおかずをあげたことがあるんだよね。
その時も美味しいって喜んではくれたけど、今はもっと喜んでくれてる。
まぁ冷めた弁当と出来立ての温かい料理じゃ、美味しさは全く違うからその通りなんだけどね。
「葵ちゃんや雪ちゃんはいいねー······。毎日このご飯が食べられるんでしょ?羨ましいなぁ······。」
「うん。まぁね。食べたいメニューの希望を出せばそのように作ってくれるから、ほんとお姉ちゃん様々だよ。」
「ママのご飯はとっても美味しいから、ゆき大好きなのー♪」
茜ちゃんの『いいなぁ〜』って言葉に、葵と雪ちゃんがそれぞれ言葉を返す。
どっちも私を褒めてくれて、ちょっとこそばゆいよ。
そんな茜ちゃんと葵だけども、私が晩ご飯の支度をしているうちに少し仲良くなったみたいなんだ。
支度をしてる間はどうしても相手をしてあげられないから、悪いなって思いつつも茜ちゃんに雪ちゃんの事をお願いしたんだ。
お迎えから帰ってきて、最初の内は仲良く遊んでて。
夕方のアニメや子供向け番組の時間になると雪ちゃんはテレビになるんだけど、その時に茜ちゃんのは自分の前に雪ちゃんを座らせて頭を撫で撫で。
いつも私が茜ちゃんにしてる事を、雪ちゃんにやってあげてたね。
きっとあれだね。
茜ちゃんは私が好きだから、私そっくりな雪ちゃんを愛撫したかったんだろうね。
雪ちゃんを気に入ってるのもあるんだろうけど、いつもはされる側だからね。
で、部屋からリビングに来た葵がそんな状態の2人を見て驚いて固まって。
その葵の様子にちょっと笑ってしまった私がいた。
その後は2人で雪ちゃんの話題を中心に話をしつつも、漫画やアニメの話なんかに移ってたみたい。
茜ちゃんの部屋には漫画コミックはそれなりにあったし、葵も漫画は好きだからね。
だからそういう共通の盛り上がれる話題があったのは良かったみたい。
「茜ちゃん···美味しそうに食べるねぇ〜。そんなに美味しい??」
「えー? だって、本当に美味しいよ? それにこのはちゃんの手作りご飯だもの。私嬉しくって······。」
うっとりしながら食べる茜ちゃんに、葵が少し呆れ気味?に聞いてた。
私としては特別に何かをした訳でもなく、いつも通り作ったつもりなんだけど茜ちゃんには違うらしい。
いや、葵は食べ慣れてるからそこまでの感動はないのかな?
一方の茜ちゃんは好いてる私のご飯だから、余計に美味しく感じてると·····。
これはあれだね。
久しぶりに実家に帰ったご飯が懐かしくて美味しいとか、恋人が作ってくれた手料理が美味しかったとか。
恐らくそういう類いのものを、今まさに茜ちゃんは感じてるんだろうね。
「茜ちゃんのご飯だって凄く美味しかったよ。私、びっくりしたもの。」
「えー!? 茜ちゃんって、そんなに料理上手なの??」
「あらあら·····。このはが褒めるなんて、茜ちゃん相当な腕前なのね?」
「ほうほう······。」
私の茜ちゃんへの賛辞に私の家族みんなが驚いてる······なんでかなー??
普通に美味しかったから褒めただけなのにさ。
何だか余り褒めないような感じて言われてる気がする······。
「いや···その·····私、お姉ちゃんが結婚して家を出るって分かってから教えてもらって作ってたから······。でも、まだまだですよ?このはちゃんの方がとっても上手ですし、美味しいです。」
謙遜してる茜ちゃん。
でも私はそんな事はないと思う。
家庭の事情とはいえ16歳でそこまで出来るのは、とても凄い事だと私は思うから。
「そんな事はないよ、茜ちゃん。あの時のご飯、下処理とか出汁とか上手に使ってとっても美味しかったもの。それにお家の事だってしっかりとやってあるし、何処にお嫁に出したって恥ずかしくないくらいだよ?」
「ちょっ···やっだーー·····このはちゃんったら!! また何を言うのっかな!?」
ベシベシと私の肩を叩きながら、照れてる照れてる。
うふふふふ······。
こんなやり取りも久しぶりで、ちょっと懐かしいね。
「あらあら···まあまあ······。」
「うは〜···。お姉ちゃんがここまで言うなんて······。ねぇ?お姉ちゃん。お姉ちゃんが泊まりに行った時は、何を作ってくれたの?」
お母さんはお母さんで微笑ましく見てるし、葵は褒めちぎってる茜ちゃんの料理に興味が湧いたみたいだね。
「えっとね···あの時は焼き魚に野菜炒めにポテサラ、お味噌汁だったかな? 魚は姿焼きだけど塩とか振って処理とかしてくれてたし、お味噌汁も出汁を入れてくれて美味しかった。炒め物も味のバランスが良くて絶品だったなぁ〜。」
「それは凄い·····。」
「茜ちゃんやるわねー。特に姿焼きの塩振りなんて知らない子も多いのに······。それにその歳で家事諸々も出来るなんてね。やる必要があったにせよ、その努力は褒められるものよ。」
「そうだね···私もそう思うよ。まぁ、私は出来ないからそう偉そうには言えないがね。」
あははは···と、苦笑いするお父さん。
確かにお父さんは家事類は何も出来ないからね。典型的な仕事の出来る男の人ってやつで。
お母さんは私の話を聞いて、絶賛してる。
(いいよいいよ。もっと、褒めてあげて!)
そう心の中で思う私だった。
その後も会話をしながら和やかに食事をした。
茜ちゃんも私が当初思ってたよりも、うちの家族と馴染めてるみたいで私としてもホッとしてる部分もあった。
それにこれには雪ちゃんの存在が大きいみたいで······。
というのも私がご飯の支度をしてる時に、お母さんとお父さんが別々のタイミングではあるけれど帰ってきた。
で、その都度紹介をしたんだけど、その時に雪ちゃんと仲良くしてたもんだからお母さん達も驚いていて、そのお陰か警戒心的なものも少なくなったみたい。
雪ちゃんが懐く、つまり心を許す様な娘なんだなって具合にね。
「茜ちゃん。」
「はい?何でしょうか?」
「このはの学校での生活ってどんな感じなのかしら?ちょっと前にクラスの皆に勉強を教えてるっていう事は聞いたのだけど、それ以外はよく知らないから······。」
「そうですね〜······。」
お母さんが茜ちゃんに声をかけたと思ったら、私の学校生活について尋ねてたよ。
まぁ確かに話すこともあまりなかったし、親としても知る機会は殆どないから仕方ないのだけどさ。
だってほら、よく考えると高校って親は殆ど来ないでしょ?
授業参観はないし体育祭は小学生時代みたいに見に来ない、文化祭は来てくれたけど学校によっては文化祭その物ががなかったり、あったとしても来るとは限らないからね。
必然的に来るとしたら後々にある、三者面談くらいじゃないかな?
それも基本的には進路についての話がメインなんだろうしさ。
そう考えると成績表と子供が話すくらいしか知るすべはないよねって思う。
「勉強を教えてくれるこのはちゃん以外だと、すっっっごく皆から慕われてますよ。とっても優しくて頼りになって、このはちゃんが居てくれるとその場の空気が和むし幸せな気持ちになるんです。だから皆がこのはちゃん事を大好きなんです。席替えをすれば隣近所は取り合いになりますし、教室から移動する時なんてこのはちゃんの手を取り合いですよ。」
「あらあら、まあまあ······。それは凄いわね······。」
「お姉ちゃん······、いったい何をやってるのさ?」
「何をって····何だろうね?? 私は至ってごく普通に振る舞ってるつもりなんだけどねぇ······。」
茜ちゃんが嬉しそうに語ればお母さんは驚き、葵は呆れ半分ぎみ?
そんな風に言われても、私としては特に何をしてる訳でもないんだけどね······。
いつの間にかそういう風になってしまっただけで。
でもあれだよ、茜ちゃん。
その取り合いの大半は茜ちゃんがGETしてるよね?
時々交代とかはしてるけどさ。
「ああ···あと、下級生にも絶大な人気がありますね!『このは先輩♪』とか『このはお姉様♪』なんて呼ばれてて·····。廊下を歩いてすれ違う度にこんな感じなんです。」
「切っ掛けはあのテレビ番組だったらしいけどね······。」
「テレビ番組??······あぁ! かくれんぼのやつかな?」
「そうそう、それ。」
確かその番組を見て私を知ったって子が多いんだった。
1学期が始まってから訪ねて来た、1年生3人娘の子達もそんな事を言ってたしね。
「だから、すっごくモテモテです。美人でスタイルも良くて性格も良しで。おまけに成績も良くて授業態度も良いから先生にも受けがいいし······。」
「すっごいねー、お姉ちゃん!!流石だよ!!」
「驚きすぎて言葉が出ないわよ······。」
反応はそれぞれ違うけど、驚く葵とお母さん。
お父さんはただ静かに聞いてはいたけど、驚いてる感じは伝わる。
「あとは···何かあったかなー?」
「茜ちゃん、もういいんじゃないかな?もうみんな、お腹いっぱいそうだよ?」
私は茜ちゃんを落ち着かせようとした。
だってさっきから恍惚とした表情をしていたから······。
こういう茜ちゃんって何か突拍子もない事を言ってきたり、行動を起こしたりするんだよね。
でも、そういうのも見たくて止められない私もいるんだけどさ。
「あぁ!あと1つありました!とびっきりのが。」
「え?! 何々?? ちょー気になるんですけど?!」
「あら、それは親として私も気になるわね······。」
あれ??
そんなのあったっけ?と考え込む私。
茜ちゃんはうんうんと頷いていて、葵は前のめりになって続きの催促をしてる始末。
「ねぇねぇ! 何なの茜ちゃん!!」
更に促す葵。
そして何を言い出すのか分からなくて困惑する私。
「これも随分前なんですけど、このはちゃん······男の子から告白された事があったんですよ〜。私、それ知った時にハラハラドキドキしちゃって······。」
「「えぇーー!!」」
「それは本当なのか!? このは?!」
茜ちゃんカミングアウトに驚くみんな······。
私としては、ああ···そんな事もあったなーってくらいの感じしかないけど、茜ちゃんを含めたみんなからしたらそうでもないみたい。
やっぱり『告白』という言葉の衝撃は大きいらしい······。
私は既にご飯を食べ終えたっぽい雪ちゃんを、足の間に入れて抱っこをする。
そして頭を撫で撫でしながら、傍観することにした。
果たして茜ちゃんは、どう話を進めていくのか。
テンションの上がってる4人を見つめながら、こういうのもまた新鮮でいいよねって思うのでした。
いつも御愛読頂き、ありがとうございます。
さて、今週ですがお盆という事で私の帰省絡みもあり、1週間ほど更新がお休みになるかと思います。
お盆明け後に更新をしたいと思っですので、引き続き宜しくお願いします。
まだまだ暑い日が続きますが、お身体に気を付けてお過ごし下さい。




