ある日の夏休み④-1 20歳高2
「お···お邪魔します······。」
「はい。いらっしゃい♪茜ちゃん。······そんなに緊張しなくてもいいのに。誰も取って食べたりしないから平気だよ?」
「いやー···それは分かってるけどさ、でも緊張しちゃうじゃん?遊びに来たをすっ飛ばして、お泊りに来ましただもん。」
「まぁそうだねぇ···。一緒に出かけたり茜ちゃんの家とかならあるけど、私ん家に来るのは初だからね。ま、大丈夫だよ。ささ、上がって?案内するから。」
「うん。」
ちょっと···というか、かなりドキドキしてる様子の茜ちゃんを我が家にあげて、1階から順に軽く部屋の説明をしていきます。
1階だと使ってもリビングとお手洗い。
あと最後にお風呂くらいかな。
その後は2階へと上がって、私と葵の部屋とお手洗い場所も教える。
私が茜ちゃんの家に泊まってから1週間と少し。
そう。
1週間と少し······準備が出来て茜ちゃんを呼ぶまでこれだけの時間がかかってしまったんだよね。
想定より遅くなったのは、ベット本体の到着が思ってたより遅かった事なんだ。
だからその分がそのままそっくり遅れた。
でもそれ以外に注文してた物は届いてたから、ベットが届いてからはサクサクと
事が進んだんだけどね。
コンコン♪
扉をノックする。
「なーにー?お姉ちゃん?」
「茜ちゃんが来たから葵にも紹介したくて。今、大丈夫〜?」
直ぐ様ガチャッと扉が開いて葵が出てきてくれた。
Tシャツに短パンスタイルなんてラフな格好で出てきた葵。今日は1日ゴロリモードだな?なんて思ったのは内緒です。
「茜ちゃん。こちらが私の妹の葵です。私と違って活発な子なんだけど、漫画とかゲームとかそういうのも好きだから意外と話が合うかもだよ。で、葵。こちらが私の友達の諸貫 茜ちゃん。よろしくね?」
「諸貫茜といいます。あの···今日は一晩お世話になります。宜しくお願いします。」
丁寧に頭を下げる茜ちゃん。
そこまで丁寧にしなくても大丈夫なんだけど、こういう所も茜ちゃんの良さが現れてるなって思う。
「私はお姉ちゃんの妹の葵です。よろしくね、茜ちゃん。お姉ちゃんから話は聞いてたけど、私と歳は一緒なんだからそんなに畏まらないでも大丈夫だからね?それと後でお姉ちゃんの話、いっぱいしてあげるから楽しみにしててね!」
「あっ···はい!それは是非聞きたいです!」
「ちょっと葵?何を話す気なの?」
「え?それはみんなの知らないお姉ちゃんの姿だよ?」
何やら不穏な感じがしたので牽制を込めて確認をしてみたら、やっぱり何か変な事を話しそうな感じ······。
まぁ私はそんな変なことはしなかったと思うけど、雪ちゃん絡みになるとちょいポンコツになるからなぁ······。
一応その辺りの自覚はあるからね···私。
「まぁ、いいや。そういう事でよろしくね。」
「うん。また後でねー。」
葵を紹介してその後は私の部屋へと行きます。
葵とは廊下を挟んで反対側。
だから多少は騒いでもそこまでは音が響かないんだ。以前に葵の友達が来た時もそうだったからね。
ガチャ···
「はい。ここが私の部屋だよ。茜ちゃんの部屋と比べるとシンプルだけどね。」
あははは······と、笑いながら私と雪ちゃんの部屋を紹介する。
実際には2階で1番広い部屋(約10畳)なのに、ベットが2台どどんと占拠してるからぱっと見は狭くも見える。
配色も床はフローリングで茶系の色。
壁やカーテンといったものはアイボリー系で纏めてるから、配色的には悪くないのだけど、それがかえってシンプルに見える。
また女の子の部屋にありそうな、ぬいぐるみといった可愛い系の物があまり置いてないからね。
「そんな事はないとは思うよ?綺麗に纏まってるから違和感もないしさ、部屋の使い方なんて人それぞれだ····し······。いっ···いいんじゃないかな!?」
「そう?それならいいんだけど······それよりどうかした?大丈夫??」
「え!?あ、ああ!大丈夫、大丈夫!なんもないよ?」
「ならいいけど······何か変だったら我慢しないで言うんだよ?」
「うん。」
とは言ったものの、絶対に何かあったのは間違いがないよね。
茜ちゃんは何でもないと言ってはいたけど、態度に思いっきり出てたし分かり易すぎなんだよ。
言葉だってどもってたし、今だって手で顔をパタパタしてる。
まぁ、体調不良じゃなければ私もそれ以上は踏み込まないけどね。
さて······今この家にいない人が3人いる。
その内2人は両親でお仕事中。
残るもう1人、私の愛娘の雪ちゃんで彼女は幼稚園中なんだ。
それもあと数十分でお迎えに行く時間なんだけども、その時は茜ちゃんも一緒に行く予定なんだ。
雪ちゃんは茜ちゃんにも懐いてるし、登校の朝会う時は嬉しそうにしてるからね。そしてそんな雪ちゃんを茜ちゃんも可愛がってくれるから。
で、この中途半端な時間をどうしようかな?と思ってたんだけど、茜ちゃんが私の昔の写真とかを見たいとかで、それを見ることにしたんだ。
今日は課題をするつもりはなかったので茜ちゃんは道具を持ってきてないし、私の部屋は2人で勉強するにはちょっと不向きなんだよね。
一応出来るようにはしたんだけど、葵の部屋や茜ちゃんの部屋みたいに座卓みたいなのは置いてないから。
これは雪ちゃんが、ぶつからないようにって配慮なんだけどね。
で、私の勉強場所は壁にくっつけるように置いてある長机。
イメージ的には会議室とかにある、あの長机を思い出すと分かり易いかな?
飲食店とかのカウンタースタイルで座って勉強してる。
それなんで並んで座って勉強するしかなく、ちょっと寂しいかなと感じるんだ。
「これが私の中学······妊娠してからの個人的に撮ってたものね。」
「お〜!ワクワクするよ♪」
茜ちゃんが見たいと言ってた、私の妊婦辺りからの写真を見せたんだ。
あまり時間もないのでどの辺りを見たい?も聞いて、これになったよね。
私も茜ちゃんの昔の姿を見たくて見せてもらった口だから、駄目とも言えないし。
まぁ、そもそも駄目と言うつもりも、これっぽっちもなかったけど。
それと卒アルにしなかった理由。
それは私の写真がないからなんだよね。
厳密に言うとクラス毎の個人写真はあるけど、それ以外の部活や運動会、修学旅行などのイベント写真等に私は写ってない。1つもね。
これは学校をほぼ休んでて、行事を全て欠席だったから仕方のないことなんだけど。
「うわっ!このはちゃん可愛いー♪それにお腹もちょっとだけ膨らんでる〜。」
「そうだねー。この頃はまだそんなに目立つ程でもないけど、服装次第では分かるよね。」
アルバムをめくっていって最初に出てくるのは、私の妊婦写真。
中学の制服姿で撮った写真や私服姿だったり。
場所も大体は家の中か公園。
この頃は学校も休み妊娠も隠していたから、大っぴらに出歩く事は出来なかったんだよね。
なのでこの公園で撮った写真は、産科の健診帰りに寄ってもらって気分転換がてら少し歩いてた時のもの。
平日だったから私達以外に人もいなくて、リラックス出来たのは凄くよかった。
そして撮影日と妊娠何ヶ月頃と書いた紙を挟んであるから、時期が一目瞭然。
「もう分かってはいるけどさ、それでも中学の制服を着てる妊婦さんって違和感ありありだね?」
「まぁね〜。それに私服でも顔つきがまだ幼いから、自分で見ててもやっぱり変に感じるよ。」
めくればめくるほど月日が進んで、それに対応するようにお腹も大きくなる。
私服だと季節で服装が変わるから多少はあれたけど、制服姿だとそうもいかない。
臨月に近くなればなるほど制服の上着の裾をお腹が持ち上げ、そのぽっこりしたお腹がこんにちわをしてる。
ちなみにスカートも普段の位置では履けないので、かなり下げた位置で履いてる。
故にバランスが悪い。
「凄い···お腹がこんなにも······。」
写真を凝視する茜ちゃん。
彼女の心の中はどういう風に思って感じてるのだろう?
身近な所だと茜ちゃんのお姉さんが少し前に妊婦をしてたらしいから、姿としては見てるはずだよね。
でもそちらは大人で、こっちは子供。
見てる写真は13〜14歳の子供の私。普通ならあり得ない妊婦さん。
「この頃のこのはちゃんって、身長はいくつくらいだったの?」
「身長?そうだね〜·····今よりは少し小さかったと思うけど、それでも150ちょいはあったんじゃないかな?」
「そうなんだ······。じゃあ、それよりもっと小さい私が妊婦さんになると、お腹はもっと目立つのかな?」
「んー······どうなんだろうね?よくは分からないけど胎児の大きさとか向きとか、そういうのでも変わってくるだろうし······実際になって見ないとわからないと思うよ?」
「そうだよね······。ほんと、不思議だよね。」
自分のお腹を見たり、私のお腹を見たりして考え込んでる茜ちゃん。
いつかは私みたいなママになりたいって言ってたから、そういう想いも含めて思う所があるなかな······。
「ねぇ?このはちゃん。妊婦さんの時のヌードみたいな写真とかは撮ってないの?」
「ヌードぉ?!」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまった······。
ヤバ······今の、葵に聞こえてないよね??
別の意味で内心ドキドキしてる私。
「あぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!!そういう変なつもりじゃないの。ただその······ちょっと前に自分の妊婦姿を記念に撮ろう!みたいなのが流行ったのがあったよね〜って、思っただけなの!だから、気にしないで!」
もの凄い勢いで謝る茜ちゃん。
関係を持つようになってまだ半年だけど、ここ最近は濃い付き合いをしてるから茜ちゃんの性格は理解はしてるつもり。
だからこれも言った以上の意味はなく、いやらしい気持ちとかもないのも分かってる。
だけど······。
「······ない···わけでもないよ······。」
「あるんだ······。」
言い出した本人が1番驚いてるよ······。
そう···。あるにはあるんだよねぇ······。
写真としてはないけど、データーとしてなら。
私のパソコンにもスマホをにも入ってはいない。それは万が一の流失が怖いから。
だからメモリーカードに入れて、私が厳重に管理·保管をしているんだ。
そしてこれは葵は当然知るはずもなく、お母さんですら存在そのものを知らないんだ。
つまり、この世で私しか知らない筈だった。
まぁ、今さっき茜ちゃんは知ってしまった訳だけども······。
「見せていいけど、それには条件があるよ?それを茜ちゃんが守れるならね······。因みにこれは、他の誰かに言うつもりはないよ。だからもしどこかに漏れるようなら私は茜ちゃんを疑う。そのくらいの物だからね······。それでも見たい?」
ゴクリ···。
息を飲む感じがした。
茜ちゃんから緊張感が伝わってくる。
ずるい言い方だなとは思う。半分脅し的な言葉も使ってしまったから。
そして、こんな事を言うのであれば最初から『ない』と言えば良かったのに、それを私は言えなかった······。
それはきっと茜ちゃんなら見せていいと思ったからなんだけど、でも万が一の事を考えると信用が出来なかったんだろうなと、心の何処かで思ってしまった。
そしてその不安な気持ちを消すために茜ちゃんを試すような、半脅し的な言葉で言ってしまった······。
「私は······前に伝えたけど、このはちゃんの事が大好き。だから、このはちゃんに嫌われたら私は駄目になる。そうなるって自分自身でも分かってる。だから······誓えるよ!誰にも言わない。秘密にするって!!」
やっぱりそうだ······。
この子はこういう子なんだよね。
私の事を好いていてくれて信じてくれてるのに······最初から分かってはいたのに······。
ちょいちょいと手招きをして『?』を浮かべてる茜ちゃんを抱きしめた。
「ごめんね······。試すような酷い事を言ってしまって······。茜ちゃんは私の事を信頼してくれてるのに、私はそれを分かってるのに何処かでまだ信じられてなかった······。」
「······いいよ。私は気にしないから。それに私もいきなり失礼な事を言った自覚があるもの。だからお相子にしよ?」
普段とは逆に茜ちゃんの方から、私の背中をぽんぽんとしてくれた。
こうされるのっていつ以来かな?なんて、考えてしまったよね。
そのくらい珍しい光景。
「ありがとうね。私も茜ちゃんとはずっと仲良しでいたいから·····もう一度言うね。本当にごめんなさい。それから、これからもまたよろしくね。」
「うん!」
酷いことを言ってしまったから、それを謝罪してお詫びをして。
茜ちゃんが私を信頼してくれてるから、私も信じる。
そういう関係でずっといたいから······。
「気を取り直してなんだけど······それでも条件だけはやっぱり外せないんだ。物がものだけに······。それでもいい?」
「さっきも言ったけど、このはちゃんには嫌われたくないから······守るよ、私は。」
ハッキリと決意の籠もった言葉。
だから大丈夫。守ってくれる。
「分かった······。条件なんだけどそれは、私の妹の葵とお母さんにこの写真が存在することを絶対に言わない事。もちろんクラスメイトとかにもね。後は···この写真を見た事とかそれとなくこの写真の事を匂わせる様な事も言わない事。」
「え?それだけ??」
「そうだよ? とにかくこの写真の事を今後一切、誰にも言及しないことね。出来る?」
「出来るよ! というか、もっと凄いことを言われると思ってたけど······。」
「私はこの写真の事を、お母さんや妹にも教えるつもりはなかったからね。だから、それが守られるならそれでいいんだ。」
茜ちゃんが言ってた様に、ちょっと昔に自分の妊婦姿を記念に撮るようなのが流行ったような気がする···。
だからって訳でもないけど、私も撮ったんだよね。
お風呂上がりに自室で自撮りで。
だから、お母さんも葵もこの写真の存在そのものを知らないんだ。
私だけの秘密だから。
産むと決断して、今後結婚もしないと決めた。
だからこの妊娠は、私の最初で最後の妊娠で妊婦姿なる。
そんなんだから、何となく残したかったんだろうなと思う。
だから撮った。
こっそりひっそりと、身体の変化が分かるように裸で······。
いつか誰かに見せるとしたら私の子供くらい?そう思ってた。
でも、男の子なら母親の妊婦姿なんて絶対に見たがらないよね?
でも生まれてきたのは女の子。
もしかしたら興味をもってくれるかもしれない。
いつか大きくなって、結婚もしくは妊婦さんにでもなった時に、話してみようと思ってる。
見てくれればそれはそれでいいし、見なかったらひっそりとお墓まで持って行く予定······。
「ては、早速······と言いたい所だけど、雪ちゃんをお迎えに行こう。時間だからね?」
「えぇー!?まさかのお預け!??」
「まぁまぁ、そう言わないの。」
頭を撫でつつ落ち着かせる。
期待をしてた所でこれだから、そういう反応もするよね。
「流石に昼間っからは見せられないよ。それに時間も足りないしさ。雪ちゃんが寝てからなら、たっぷり時間もあるしその時に見せてあげるよ。それでいい??」
「うん。分かった。······はい、これしよ?」
「うん?小指??」
納得してくれた茜ちゃんが差し出してきたのは、右手の小指だった。
きょとんとする私。
なんだろう?と思う。
「約束。指切りげんまんってやつ?このはちゃんの約束を守るよって!」
「あぁ!! 了解。しよっか。」
私の右手の小指と茜ちゃんの右手の小指を絡ませて言う。
「「指切りげんまん 嘘ついたら針千本 の〜ます。 指切った♪」」
2人で繋いでリズミカルに誓いの言葉を言う。
昔からある、約束を守るための儀式。
「うふふふふ···」
「あははは····」
自然と笑みが溢れる。
大丈夫。
私達はまた1つ仲良くなれたから。




