ある日の夏休み①-10 20歳高2(挿絵有り)
―― 茜ちゃん 視点 ――
「あのね、このはちゃん。このままで聞いて。」
「うん。いいよ。」
優しい声。
癒やされる。
「さっきね、このはちゃんの寝顔の話で私、思い出したの······。」
「あ···やっぱり私、変だった?」
「違う違う。惚れ惚れするほど良かったよって、そうじゃないの。私、このはちゃんに···その···キスしちゃった······。ゴメンナサイ····。」
このはちゃんにギュッとした腕に力を込めてしまった。自然と。
言っちゃった······。
さすがにこれは嫌われたかなと思う。嫌われるよね。当然だ。
そしてきっと怒るよね。
そして、お泊りとかの話も全てなしになっちゃうかな······。
頭を撫で撫で、ポンポン。
背中を撫で撫で。
静かな室内で、このはちゃんが黙って撫でてくれる。
「やっぱり茜ちゃんは優しいね。身体がこんなにも震えてるのに······。それに、謝るのは茜ちゃんじゃなくて私だよ。」
「······なんで?」
私は意味が分からない。なんでそうなるの??
このはちゃんが謝るような事はないのに。
「多分それは、茜ちゃんじゃなくて私からしたんでしょ?私は寝てたけど、何となく雪ちゃんにキスをした様な夢を見たんだよね······。それを茜ちゃんは、私からされたとは言わずに自分からしたと言った。寝ぼけてた私が悪いのに私のせいにしないで、自分のせいにしてやった事にして······。」
「·········。」
「優しいよね。茜ちゃんは。そして本当にごめんなさい。震えるくらい気をつかわせてしまって。それに···その······ファーストだったのかな?奪ってしまって本当にごめんね。こんな事になるなら別々に寝ればよかったね······。私も嬉しくてつい舞い上がってたから、ちょっと冷静な判断が出来てなかったよ······。」
本当にこのはちゃんは、こんな時でも私の事をよく分かってくれてる。
このはちゃんの言う通り、本当はこのはちゃんからキスされたの。
そしてそれは、寝ぼけてたうえでの事故だったのは分かってたんだ。
あの時このはちゃんは確実に寝てたから。
でもそれを言い訳にして相手の、このはちゃんのせいにしたくなくて、私からしたと嘘をついた。
まぁ······、あっさりとバレてしまったけど。
ポタッ。ポタッ···。
何かが垂れてきてる様な感じがする。
背中に回してた手を持ってきて、見えないけどこのはちゃんの顔付近に持ってくる。
すると何か液体が付いた気がした。
·····涙?
泣いてくれてるの??
何に対して?
私に嘘をつかせるほど気を遣わせてしまった事?
ファーストキスを奪ってしまった事?
それとも······そんな事をしてしまった自分自身が許せなくて??
違う違う!!
「このはちゃん!泣かないで!!」
私はこのはちゃんから離れて、その顔をじっと見つめた。
······やっぱり泣いてた。
いつも笑顔のこのはちゃん。
時々困った顔をしたり怒ったりした様な表情は見たりしたことはあったけど、涙を流してるのは初めてだ。
それを私がそうさせてしまった······。
それが堪らなく悔しい!
このはちゃんにはずっと笑顔で笑っていて欲しかったのに!!
「確かに私は嘘をついたよ。私がしたって。でもそれは、寝てたこのはちゃんのせいにしたくなかったからなの。だっていくら寝ぼけてたとしても、このはちゃんからされたと言ったらこのはちゃんが傷付くでしょ?それが嫌だったの!!」
「それにファーストキスだけど、それは本当···。でもね、このはちゃんならあげてもいいなってずっと思ってたの! 最初は亡くなったお母さんとこのはちゃんを重ねて甘えてたけど、いつからかこのはちゃんを1人の女の子として見るようになっていって、好きになって······。女の子同士で変って思われるのは分かってるけど、この想いは止められなかったの!」
「昨日、沢山遊んでご飯を作って美味しいって喜んでもらえて、それがまた嬉しくって。一緒にお風呂に入って洗いっこして、とても楽しくて幸せで、自分の身体の事もまた好きに慣れて。このはちゃんの温かさに包まれて一緒に寝れたのが、この上ない幸せだった。こんなのがずっとずっと続けばいいのになって思ってたんだよ!」
「だから···結果はどうあれ、私はこれで良かったの。このはちゃんの事を大好きだって再確認も出来たし、事故とはいえファーストキスも貰ってもらえた。気にしてないとは言ったら嘘になるけど、それは決して嫌とかじゃなくて、あくまで照れてるだけだからね。勘違いしないでね!」
「そして私は寧ろ、このはちゃんの事を気にしてるよ。さっき言ってた私のファーストキスの事とか、自分がしてしまったんじゃないかと言うような、自分を責める事をね。このはちゃんは優しいからさ。だからそれはやめて欲しい。」
私は起き上がった。
そして手を引いてこのはちゃんも起き上がらせた。
そして今度は私の方に引き寄せて抱きしめた。私から。
「私はこのはちゃんが大好きです。女の子同士だけどキスしてもいいよってくらいにね。まぁ、今回してなかったら、どこかのタイミングで私がしちゃったかもしれないしね······。だからこのはちゃんには、今回の事を気にして欲しくないの。今すぐには無理でもさ。」
「そのうえで私はこのはちゃんと、これからも一緒に友達として付き合っていきたいの。夏休み一緒に勉強したり泊まったり、泊まりで遊びに行こうって約束もいつかやりたいしさ。今と変わらないお付き合いを、こらからもずっとずっとしていきたいんだ。······このはちゃんは? 私、このはちゃんの気持ちも知りたいな。」
言っちゃった······。
私の想いを全部ぶちあげちゃった。
だって一度喋りだしたら止まらなくなっちゃったんだもん。仕方ないよ。
そして······このはちゃんは何でも答えてくれるんだろう?
それだけが心配だよ······。
「私は···いや、私も茜ちゃん事は好きだよ。それも大好き。甘えてくる所が最初は雪ちゃんみたいだなーって感じてたけど、だんだんと1人の女の子として健気に頑張ってる所、甘えてくる仕草、優しい所。色んな表情や仕草、そういう所に惹かれるようになって一緒にいて楽しい、癒やされるなって感じてた。だから私も茜ちゃんの事を大好きだし大切にしたい!そしてこれからも、茜ちゃんと変わらないお付き合いをしたいなって思ってる。」
「これからも、私と付き合ってくれる?」
「うん!!これからも、またよろしくね!」
強く強く、今度は私が抱きしめられた。
ベットに再び横になって。
でも不思議ときつくはなかった。寧ろ今までで1番気持ちよくて幸せに感じるかもしれないね。
「でも、最後にもう1回だけ謝らせて?ファーストキスを奪ってしまってごめんなさい。」
もう······。
それはもう気にしてない···いや、寧ろ嬉しかったんだから謝んなくてもいいのにな······。
でも、そういう所がこのはちゃんの優しさがなんだよね。
そしてそんな所も私は惹かれて好きになった訳だし。
「はい。謝罪は受け取りました。でも···まだ気にしてるようだから、これで許してあげるよ?」
「なに?」
チュッ♡
「仕切り直しと言うことで♡大好き!このはちゃん!!」
「·········。」
このはちゃんがポカ~ンとしてる。
うふふふふ♪
このはちゃんの唇にキスをしちゃった♪それも私から。 ♡
そしてこのはちゃんの胸に再び飛び込んだ。
真っ赤っ赤な顔を見られたくなくて······。
「ふふふふ。確かに受け取りました、茜ちゃん。ありがとうね。この想い、大切にするからね。」
耳元から声がする。
あー······朝から幸せだ。
気持ちを伝えられて、このはちゃんの気持ちもしれて。
おまけにキスも貰ってもらえて、私にからもあげられたから。
「7時まで後どのくらいあるのかな?」
抱きついてて分からないから、このはちゃんに時間を尋ねてみた。
「えーと······あと20分くらいかな?いいよ、このままで。そういう話だったからね。」
「うん、ありがと。ねぇ、このはちゃん。聞いてくれる?」
「いいよ。どうしたの?」
折角なので、これも伝えたいなって思ったんだ。
「さっきも伝えたけど、私はこのはちゃんが大好きです。女の子同士で変だよって世間では思われるけど、このはちゃんとキスしたいくらいに大好き♡」
「うん。知ってる。私もそれは受け入れるよ。私も好きだからね。」
「ありがとう♪」
あー···これだけでも超幸せだ。
「でもね、同時にこのはちゃんみたいな、ママさんにもなりたいって思ってるの。このはちゃんの雪ちゃんに対する想いとか、私に向けてくれる優しさだとか。そういうのを引っくるめて、このはちゃんみたいなママになりたくて······。」
「そっか···。いいんじゃないかな?そういうのも。」
「うん。だから今すぐは無理だけど、いつか大人になったらそういう風になれるように頑張ってみようと思うから、今は······せめて在学中は甘えさせて下さい。女の子が好きでも、将来は男の子を好きになれる様に頑張るから!」
これが私の長期的な目標です。
母親の温もりを知らず寂しがり屋で甘えたがり屋の私が、このはちゃんを通じて見つけた事。
そう成りたいと思った事。
「いいと思う。そして私は応援するよ! 私に恋愛相談は厳しいけど、でも茜ちゃんの事ならいつでも力になるからね!」
「うん。ありがとう♡」
このはちゃんが応援してくれるなから、私は頑張れる!
単純と言えばそうだけど、でもこれが惚れちゃった弱みなのかなー?と思う。
それに好きな人が出来たり恋愛をすると周りが見えなくなるって言うけど、ホントその通りだなって。
まぁでも、いいや。
今だけは、在校中だけは···ね。
「あ〜···私からも謝らないといけない事があるんだ。」
「このはちゃんから??何かあったっけ?特に何も思い当たらないけど······?」
顔を埋めてるからこのはちゃん表情は分からない。
けど、声の感じからしてなんとなく申し訳なくしてる感じがする。
「茜ちゃんがさ、眠くなってきてベットに横にして寝させた所までは良かったんだけど······。」
「あ、やっぱりこのはちゃんだったんだ。私を寝させてくれたの。ありがとね。」
「あ、うん。どういたしまして。」
多分そうかなーとは思ったけど、私の世話をしてくれたのはやはりこのはちゃんだったね。
「でね。寝たのは良かったんだけど、その···ついキスしちゃったんだ···その、ごめんね。謝ってばかりだね。」
「え! 嘘!? マジ!!?」
うそうそ、嘘ーー!?
キスされる前にもうされてたの!?
しかも、寝ぼけてされる前にこのはちゃん自ら?
「えっと······それってどこ?」
「······おでこ。おでこならノーカンかな?って思ってた。」
あ···あぁ〜〜······。
残念だ···。
唇ならよかったのに···でもその場合だと私は寝てて気づかなかったから意味がないか?
あの時、私がたまたま目が覚めてた時の事故だったから良かったのであって。
それに······。
「おでこなら気にしないから大丈夫だよ。それにおでこなら雪ちゃんにもしてるでしょ?」
「そうなんだよね。だから癖でついやっちゃった♪」
知ってる。
これは学校に行く時の迎えに行った時に、雪ちゃんが行ってきますのチューをねだって、このはちゃんがおでこにしてる事を。
たぶんそれの、寝るバージョンなのかなとは思う。
それにやっと、声の感じがいつも通りのこのはちゃんに戻って来た感じがする。
やはりこのはちゃんは、この感じが1番いい。
これが1番好きだ。
それにお互いに秘密にした事と隠してた想いを吐き出して、スッキリ出来たのが良かったのかな?
お互いの関係もまたいつも通り甘えて甘やかされて、そんな日々がずっと続くんだろうなと思う。
まぁ、私が我慢できなくて少し暴走しそうな気がしなくもないけど、そこは以前の件で懲りてるからね。
抑えないと······。
でも···たまにはキスくらいねだってもよいのかな?
してくれるかはまた別だけど······。
「そういえば、私からももう1個あった···。」
「何が?」
「えっとね、このはちゃん、ナイトブラはどうしたの?忘れたって訳じゃないんでしょ?」
夜中に目が覚めた時に気になったのを聞いてみた。
「うん。持ってきてはいるよ。でも、茜ちゃんが嬉しそうにしてたから今夜だけはつけなくてもいいかな?って思ったんだよ。」
「そんなに私の事を······。」
私はまた嬉しくなる。
直での良さに気付いたのはお風呂での話だけど、その僅かな間でそこまでの事を決めてくれたなんて···。
「恐らくもう、今限りになるかな?まぁ先の事は分からないから、もしかしたらまた味わえるかもしれないけどね?」
ちょっとお茶目っ気っぽく言ってくる。
そこはあることに期待したいけど、過度の期待はしないで待ってよう。
「ほら、おいで?あと···5分?そしたら着替えて朝ご飯だからね。」
ぽつぽつとパジャマのボタンを外して、形の良いそれが現れて抱きしめてくれた。
ドクン、ドクン···。
心臓の鼓動が聞こえる。でも、昨日の音とは少し違う。
昨日はトクン、トクンだった。
今朝はドクン、ドクン。鼓動も少し早いかな?
告った後だからこのはちゃんも意識してくれてるのかな?
それだったらそれで、私は嬉しい。
それでもこうしてくれる、このはちゃんの優しさが。
あと3分くらいかな?
私は甘える。味わう。この幸せを。
優しい温もりを感じて、リラックス出来るこの不思議な香りを胸いっぱいに吸い込んで······。
「······よし。時間だよ。着替えよっか?」
「···うん!」
日が昇る。
新しい1日が始まる。
そして昨日とは違う、新しい私達の関係が始まる。
でもそれは、幸せに満ちたとても素敵な関係。
これからまた、沢山の楽しい思い出を作ろうね!!
大好きだよ♡このはちゃん♪




