ある日の夏休み①-7 20歳高2(挿絵有り)
ーー 茜ちゃん 視点 ーー
ちゃぷちゃぷ······
私は1人で先に湯船に浸かっている。
夏場というのもあって、相当にぬるいお湯にしたんだけどね。
そして水量は私の胸元程にした。
まぁ実際にはこんなに入れる必要はないのだけど、久しぶりの湯船だからいいんだ。
それに私の大好きな人が入ってくるから、その分かさ増しされて溢れてしまうのもあるかもしれないけど、こういうのも最初で最後かもしれないからね。
プチ贅沢みたいなのもしてみたいんだ。
ちゃぷちゃぷと水の音を立てながら、隣の洗い場で髪の毛を洗ってるこのはちゃんをじ〜~っと眺める。
私とは違って髪の毛が長いから、立ちなから洗うスタイルみたいなんだよね。
シャワーヘッドを壁につけてシャワーを出して、まず髪の毛を軽く洗う。
これは私にやってくれたのと同じ流れ。
その後シャンプーと続いて丁寧によく洗った後はこれまた丁寧に流してからのコンディショナー。
長くて大変そうだけど、でも丁寧につけてる。
私にとても丁寧に優しくして洗ってくれたのを思いだす。
あれだけ丁寧に優しく洗ってくれたのは、美容院でもなかったなって思う。
このはちゃんの優しさがまた1つ分かった瞬間で、嬉しかったしとても気持ちが良かった。
また洗ってもらいたいなって、そう感じる位の腕前と幸せ感だったよ。
「どうしたの?茜ちゃん??」
「ううん。なんでもないよ?」
コンディショナーを馴染ませてるこのはちゃんに、私が見つめてたのを感づかれてしまったみたい。
咄嗟に『何でもない』と誤魔化したけど、きっとバレてるよね。
このはちゃんは私の事については結構鋭いというか、お見通し的な所があるからさ。
それだけ私の事を想って見ていて考えてくれてるんだと思うと、心の中がポカポカと温かくなるのを感じる。
そして凄く幸せな気持ちにさせてくれるの。
あの時このはちゃんに話した私の境遇。
それを静かに聞いてくれたこのはちゃん。
その時に語ってくれた事を今も守ってくれてるんだよね。
優しいこのはちゃんだから······。
そんなこのはちゃんだけども身体を隠そうとしない所を見るに、私が見てるのを特に気にしてないようです。
まぁ服を脱ぐ段階から隠そうともしてなかったし、むしろ気にしてたのは私の方だったしさ。
私は自分の身体の一部にコンプレックスを抱いてた。
それは言うのも恥ずかしいけど、アレがちょこっとしか生えていない事。
だから中途半端な子供みたいでイヤだった。そして恥ずかしかった。
でもこのはちゃんに隠し事は嫌だったから、思い切って話したんだ。
そしたら抱きしめてくれて、『子供っぽくない、自身持って!』って言ってくれた。
普通なら何が自身持ってってなるんだろ?って思うけど、このはちゃんに言われるとそう思えてしまうんだから不思議だよね。
そしてその後の言葉がこれまた衝撃的だった。
下を見て?というからそのまま下を見た。あえて見ないようにしてた、このはちゃんの下半身を。
そしたら私以上に何もなくて、キレイなそこがあって······。
『私は気にしないの。それが私だから。』
その言葉を聞いた瞬間に今まで心にあった、気にしてた物がストンと嘘のように消えたんだよね。
このはちゃんと同じなら何も怖くはない。気にする必要もないって。
寧ろこんな所も似てるなら嬉しいなって思えるようになっちゃってさ······。
そこからは私は隠さなくなった。今までのが嘘のように。
だってこのはちゃんと同じだから、恥ずかしくもないし怖くもないもん!
そんな勇気をくれたこのはちゃん。ありがとう♡
それにしても相変わらず 美しいなーと思ってしまう。
体育の時の着替えでの下着姿。
去年のプール授業での水着姿。
どれも良かったけど、今は生まれたままの姿で私の家の浴室にいて、私の眼の前でその姿を晒している。
シャワーを浴びる姿や動作。どれもしっかりと凛とした姿で様になってる。
普段から姿勢が良くて、今こうやって見ててもムダ毛の一切がないこのはちゃん。
女神様ってこういうのを言うんだろうなーって思ってしまった。
そしてそれを今、私だけが独占してる。
娘の雪ちゃんと、もしかしたらこのはちゃんの妹さんは知ってるかも知れないけど、それ以外の、赤の他人としては多分私だけが知ってる、見てしまった裸。
男の人は誰として永遠に知る事のないそれを、私は脳裏に焼き付ける。
このはちゃんみたいに、なりたいから。
「茜ちゃん、入るね〜。」
「うん。どうぞー。」
コンディショナーの終わったこのはちゃんが、湯舟に入って来た。
私は足を縮めて、このはちゃんが入るのを邪魔しないようにした。
1人で入るのには大きいなとは思ってた浴槽だけど、それが幸いして2人で丁度よい感じだったのはラッキーだった。
そしてお湯の量もこのはちゃんが来た事で溢れはしたけれど、それはそれでいい感じだしね。
「お湯、熱くない?」
「大丈夫だよ。寧ろ夏だからこの位で十分だよ。」
「良かった······。でも、もっとぬるくとか希望があったら遠慮なく言ってね?」
「うん、ありがとね。」
「いえいえ···········。」
「·········」
「·········」
沈黙が流れる。言葉が続かない。
何でだろう??
眼の前のこのはちゃんは気持ちよさげにしてるけど、私はちょっと恥ずかし···いや、照れてる?
そっか······。
湯舟に入る直前に、このはちゃんに抱きしめられたからだ。
泡々の状態で抱きしめられて、尚且つ生乳とか言うからだ。
変な事を言うから良いセリフと感動をちょっと台無しにして·····でも嬉しかったなぁと思い出した。
そして顔が赤くなる。
「茜ちゃん、ここ、おいで?」
「······うん。」
このはちゃんが足を開いて、その開いたスペースにチョイチョイとやってる。
ここに座れって事らしい。
私は一度ザバァっと立ち上がって、クルッと向きを変えてこのはちゃんの前の開いた所へすとんと座り直す。
すると私のお腹に腕を回してギュッと抱きしめてくれた。
私は弾みでこのはちゃんにもたれ掛かるようになる。
後頭部に柔らかくそして温かい感触がする。
私はこの正体を知っている。
このはちゃんのおっぱいだ······。
「茜ちゃんが、ちょっと遠慮してる感じだったから······違った?」
「······いや、違ってないよ。というか、さっきこのはちゃんが変な事を言ったからじゃん!だから···意識しちゃったんだよ·····。このはちゃんを変な目で、変な気持ちで見たくなかったから······。」
「ごめんごめん。ついイタズラ心がでちゃってね。反省してるよ。でも、これもまたいいでしょ?」
「うん······。癖になりそうだよ。」
ほんと、このはちゃんは私の気持ちを良く理解してる。
目を反らしてはいたけど、本当はこうして湯船の中でもくっついていたかった。
私が遠慮してるなとかみんなお見通しで·····。
「私さ、小さい頃はお姉ちゃんとよく一緒にお風呂に入ってたんだ。でもあの頃は幼稚園とか小学生とかだったから、お風呂で甘えるよりは玩具とか入れて遊んでる方が楽しかった。」
「あー、分かる分かる。雪ちゃんもそんな感じだよ。」
雪ちゃんもそんなんだ。
やっぱりその位の年齢だと、お風呂の中で遊ぶほうが楽しいのかと思ったりもした。
それに今はお風呂で遊べる玩具なんかも、色んな物が売ってるからね。
そういうのを色々と揃えておけば、今日はどれで遊ぼうかな?なんて選んだりする事もできるからね。
「でね、高学年くらいからお姉ちゃんの都合で1人風呂が増えてきて、留守も増えてきて寂しいな〜とかって思うのが増えてきたから······。こういう楽しいお風呂って本当に久しぶりだよ····。」
浴槽の中だから向き合ってくっつけないのが残念たけど、これはこれでいい。
背中にぬくもりが感じられて、このはちゃんがそこにいる安心感があるから。
身体に回されてる腕にギュッと力が入るのを感じる。
「じゃあ、いっぱい堪能しないとね♪」
そうして、お風呂を堪能する私達。
抱きしめられて温もりを感じて、のぼせない程度に色んな話をして······。
楽しかった。
そして今度は「私の家に沢山泊まりおいで」と、このはちゃん家に誘ってくれたのも嬉しくって。
このお泊り会がまだ終わりじゃないんだ、これからもあるんだと思えたのも幸せで。
それとあと1つ、大事な事があった。
「茜ちゃん。前々から思ってたんだけど、髪の毛伸ばしてみない?」
「髪?」
「そう。髪の毛。茜ちゃんの髪はサラサラだし癖もなくて綺麗だからさ。伸ばしても綺麗になると思うんだよねー。」
「そう···なのかな?考えた事もなかったよ。」
そうは言ったけども、実際は伸ばしてみようかな?と考えた事はある。
それは分かり切った事だけど、このはちゃんの存在。
あの綺麗なロングヘアーに憧れた。これは私のみならず、クラスの女子はみんなそう思ったって言ってた。
てもなぁ·····。
私に似合うのかなー?
だってロングヘアーなんて、ありふれた髪型じゃん。
クラスメイトにも長い子はいるし、学校内でもそれなりの人数は見かける。勿論町中でもごくありふれた髪型だし。
そんな髪型だけど、このはちゃんのあの髪色と艶、スタイルとかそんな素晴らしいのが見事に噛み合って、ありふれた髪型であるのにも関わらず素敵になって憧れるてしまったんだよね。
だからごく一般的な黒髪の私が伸ばした所で······って思ってしまうんだよ。
「それに今、茜ちゃんは長い方でしょ?ここから毛先を整える位でカットしていけば比較的早くに長くなると思うんだ。」
「その通りだよ。一応、夏休み中のどこかでカットしようかな?とは思ってたんだ。」
やっぱり良く見てるよね、このはちゃんは。
今の私の髪は、私の中では長い方なんだよね。
だから夏休みの終わの辺りにでも切りに行こうかなとは思ってはいた。
「じゃ、伸ばしてみない?まぁ、手入れは今より手間も増えて大変にはなるけど······伸びたら私とおそろの髪型にも出来るし、私が髪型も作ってあげるよ?こう見えても作るのは得意なんだからね!」
チャプンとお湯が揺れた。
私の後ろでこのはちゃんが胸を張ったからね。
それにもしかすると、ドヤ顔をしてるかもしれない。でもこの向きだと確認は出来ないから見ることは叶わない······。
でも、このはちゃんとおそろの髪型。作ってくれる。
ヤバいよ······。
それは今の私には、『魔法の言葉』そのものだ。
「うん。髪、伸ばしてみようかな? このはちゃんと一緒って魅力的だよ。」
この日から私は、髪の毛を伸ばすことにした。
単純だなーとは我ながら思うけど、でもいいんだ。
好きな人とおそろに出来るし、なりよりその好きな人が似合うよって言ってくれてくれたんだもん!
だから、やらないって選択肢は私にはないんだ!!
ーーーーーーー
「はい。ばんざーい。」
指示に従い腕を上に持ち上げる。
すかさずバスタオルで腕と脇を拭かれた。
······ナニコレ?何プレイ??
本当に小さい頃にお姉ちゃんにしてもらったなーと、懐かしく思い出しながら私は拭かれていく。
このはちゃんがしゃがんで私の胸やお腹、背中に下半身と。
恥ずかしい箇所も見られて拭かれてるけど、もう今更なので気にはしない。
それに、このはちゃんと同じだからね。
一緒なら何も恥ずかしくはない······私が赤ちゃんみたいに扱われてる以外は。
私もこのはちゃんを拭いてあげた。
髪の毛の水気を別タオルで吸わせてる間に、体の方をね。
超間近でみるそれは、やっぱり凄くて憧れる。
同じ女の子、日本人でも頑張ればこういう風になれるんだと希望を持たせてくれるよね。
まぁ年齢を考えれば骨格とか基本的な部分はほぼ完成してるから、今後私に出来るのは今の体型を維持するとか、そういう方向にシフトするんだろうけどね。
でも、それでも良いと私は思う。
将来なれるかは分からないけど、このはちゃんみたく素敵なお母さんになりたいって思えたら。
いっぱい勉強して、体系も維持して、このはちゃんみたいな優しい素敵なママさんにいつかなれる日を夢見て·····。
このはちゃんがドライヤーを使ってる間に、私は浴槽のお湯を抜いて洗っておく。
お父さんも今の時期はシャワーだけで済ませるからね。
私もそうであるけれど、今日は特別。
洗って水で流して、一晩換気扇を回しておけばオッケーです。
洗面所の小さな縦窓を少し開けて外気を取り入れる。
ドライヤーの熱で洗面所も暑くなってきたきたから、夏とはいえ夜の外気がなり気持ちいい。
「ありがとね、茜ちゃん。まだ時間掛かるからお部屋に行っててもいいよ?」
「ううん、大丈夫。ここで待ってる。」
ゴーっというドライヤーの音と共にこのはちゃんが気を遣ってくれたけど、私はここで眺めてる事を選んだ。
だってこういう光景もレアだし、そうそう見る機会もないからね。
だからずっと眺めてても飽きることはないよ。
これも好きになっちゃった弱みだよね···と、思いながら。




