ある日の夏休み①-6 20歳高2
「えっと······これが私の使ってるシャンプーとコンディショナーだよ。で、こっちがボディソープ。」
「了解〜。普段、身体を洗う時はどうしてるの?」
「えっとね······。」
そんな感じで入浴に関して、茜ちゃんに説明を貰っている私です。
シャンプー類に関しては茜ちゃんも自分専用のを使ってるみたいで、それは見れば直ぐに分かったんだけど、一応確認がてら聞いてみたんだ。
そして使う物等必要な情報が揃えば、あとは洗うだけ。
いくら夏場で浴室も寒くはないとはいっても、早く洗って浴槽でお湯に浸かりたいところだからね。
「じゃ、早速洗ってこうか。茜ちゃんは座って洗う派?」
「うん。でもそれだと、このはちゃんが洗いづらかったりする?立とうか??」
茜ちゃんが気を使ってくれた。優しいね。
「いや、大丈夫だよ。私も雪ちゃんを洗う時は座ってもらってるから問題ないよ。」
「そうなんだ···。」
シャワーから適温のお湯が出るまでの間に、そんなやり取りをしてる。
私自身は立って洗う派だけど、雪ちゃんを洗うには立ったままだと危ないんだよね。
シャンプーだとかボディーソープなんかで床が滑りやすくなって、転倒するおそれがあるから。
だから椅子に座らせて洗ってあげてる。
その方が安心・安全なの。
で、それにもう慣れてるから茜ちゃんを洗うのもへっちゃらです。
背自体も茜ちゃんの方が当然大きいから、その点でも楽だしね。
「どう?熱くない?」
シャワーのお湯が丁度よい加減になったので、こちらもチェックをしてもらった。
この辺りの感覚も多少個人差があるからね。
「うん。大丈夫だよ。」
「はーい。じゃあ、まずシャワーから行きますね〜。熱かったり痛かったりしたら遠慮なく言ってくださいね。」
「んっ······。」
美容院のスタッフさん風のノリで進めていく私。
背中側の髪の毛から優しくお湯をかけていく。
慣れた所で頭頂部からお湯をかけて、もう片方の手で優しく洗って···。
まずは濡らすのと同時に、軽く汚れや土埃とかを落としていくの。
まぁ今日は午前中もお家にいたらしいから、土埃とかはついてないとは思うけど念の為にね。
終わったあとは、いよいよシャンプーです。
「シャンプーいくからねー。」
茜ちゃんからの返事はない。
緊張してるのかな?と思ってちょっと身体を移動して顔を覗いてみると、目と口をギュッと瞑って泡が入らない様にしてる。
(何これ、可愛い······。)
思わずギュッとしたくなったけど、何とか堪えたよ私は。
手にシャンプーをプッシュして乗せて、シャカシャカ、シャカシャカと優しく丁寧に洗っていく。
自分で洗うのと他人に洗って貰うのとでは、感覚が違うからつい力を入れて目をギュッとしちゃうんだよね。
雪ちゃんもそうだけど······まぁ雪ちゃんはまだ子供だから仕方ない。
あの子は『ちゃんと目をギュッとしてるんだよ?』と言ってたのにも関わらず、目を一度だけ開けてしまった事が昔あったんだよね。
で、案の定泡が目に入ってワーワーと泣いたことがあったんだ。
その後は手で目を押さえて泡を防ぐ徹底ぶりを見せた。
今は手で押さえる事はしなくなったけど、子供って本当に面白いなって感じた一幕だったんだよね。
「どうしたの?このはちゃん??何か笑ってた?」
「ううん。何でもないよ。それより、痛かったりしない?」
「大丈夫。寧ろ凄く気持ちいいよ♡ このはちゃん上手だねー♪」
「まぁ、それなりにやってるからねぇ·······。」
危ない危ない。
洗ってるうちに雪ちゃんの事を思い出して、つい笑ってたらしい。
今は茜ちゃんに集中しないといけない場面なのに、どことなく雪ちゃんに似てる所があるからつい···ね。
再びシャワーでシャンプーを丁寧に流してから、今度はコンディショナーをつける。
丁寧に丁寧に。
量はそれなにり使ってしまうけど、綺麗な髪を保つためなら私は遠慮はしない。
それに髪を綺麗に保つコツは、何もコンディショナーやトリートメントだけではないの。
普段の食事バランスや生活習慣、ストレスを溜め込まないとかそういうのも色々と重要なんだよね。
だけれどその中でもこのヘアコンディショナー等は手軽に出来る物だから、自分に合った物を見つけられて私は良かったなって思ってる。
一通りつけ終わって、あとは馴染ませるだけ。
その時間を利用して身体を洗う事にするんだ。
手を軽く洗ってから、ボディソープを沢山つける。
そして背中へ······。
ピトッ。
「うっひゃぁあ!!」
茜ちゃんが奇声を発した。
そして身体がハネた。
「茜ちゃん······。女の子がなんて声を出してるのよ?」
「だってだって···このはちゃんがいきなり······。」
ゴゴゴゴって効果音が付きそうな感じでこちらに振り向いて、恨めしそうにそう言ってきた。
確かに私も「身体を洗うからねー」とは言わなかったけどさ······。
「まぁ、言わなかった私も悪いけど、さすがにあの反応は辛いな······。」
ショボ〜ンとショックを受けた感じで、しんみりとしながら私の気持ちを伝える。
「ああぁ·····。いや、大丈夫!! 突然だったからビックリしただけだから! このはちゃんに洗ってもらえるの楽しみにしてたから、もう大丈夫だから、やって!!ね?ねっ!?」
「······ほんと?」
「うん!!本当!!」
「はーい♪じゃ、再開しま〜す♡」
というわけで、背中洗いを再開しました。
ボディソープをつけた手で優しくさわさわ、さわさわと。
時通り何かを堪えるような声がするけど、聞かなかったことにしてね。
「ねぇ······このはちゃん??」
「ん?どうしたの?」
「さっきのって········もしかして演技?」
「······そうだね。気付いた?」
「ううう···やっぱり······。このはちゃんには敵わないなぁ〜。」
先程のあれにこれといった理由はないんだけどさ。
ただちょっと拗ねてそうだったから、ショックを受けてる様な感じを出してはみたんたけど···。
もしかしたら要らなかったのかもしれないね。
「はい。背中は終わり。こっち向いて?前も洗うよ。」
「え?前!? このままでも洗えないの?」
「胴体は洗えなくはないけど、足はちょっと厳しいよ?平気平気。今更だからね?」
「う、うん。」
顔を真っ赤にして、こっちを向いてくれた。
すると身長の割に大きな形の良い胸が飛び込んでくる。
これも以前に私が話した事を、茜ちゃんなりに実践したら育った様な事を言ってたなと思い出した。
(良かったね。頑張ったね。)
そう心の中で思いながら、次にいかなくちゃ。
顔は下を向いて恥ずかしそうにしてるけど、頑張ってくれてるお礼にと丁寧に洗う事にしたよ。
勿論、いやらしい事をしようとかそういう気持ちは微塵もないからね!
まず腕から洗い始める。
そしてその次は足。
この辺りになってくると、手で洗ってても随分と泡がたってくる様になってきた。
なのでそんなにボディソープを出さなくてもいい感じなんだけど、ちょっぴりだけ足して。
「はい、茜ちゃん。足開いてね?じゃないと洗えないから。」
「うう···。恥ずかしいよ······。でも、頑張る。」
「うん。でも泡で見えないから大丈夫だよ。」
コクン。
頷いて分かってくれたみたい。
安心してもらえる様にそう言ったけど、実際は丸見えなんだよね。
だからって変な気持ちが湧くとかそういうのはないから、安心という部分では問題ないよ。
それに茜ちゃんの気にしてる秘密はきちんと守るから。
「あはっ!あはははは······。くすぐったいよー!このはちゃん!!」
「ほらほら。暴れないの!洗えないでしょ!?」
「でも、ムリぃ〜·····。あはははは···。」
足の付根、太腿、ふくらはぎに足の指ときちんとモミモミ洗ってあげてたら、どこかでツボにハマったみたいで笑い出したんだよね。
そしたらそこから何をどうやっても「くすぐったい」の一点張りで、身体のどこを触っても、くすぐったくなってしまったみたいなんだ。
足をバタバタ、腕もバタバタ。
ちょっと大きな子供みたいだよ(笑)
私も最初は落ち着くようにと諭してたけど、無理だと悟ったのでそのまま行っちゃえ!と洗いを続行した。
両足を洗って最後の胴体の前側。
お胸を触った時はちょこっと反応はしてたけど、やはりくすぐったさが勝るみたいで無事に洗えた。
やはりくすぐったい状態だと、羞恥心よりもそれがかなり上回るみたいだね。
おかげて全部が洗えたので、私としても良かったよ。
ちなみにというか、おへそとその脇を触れた時が1番のリアクションだったのは語るまででもない······。
ざばー······。
「はい、終わったよ。落ち着いた??」
「はぁ···はぁ···はぁ······。うん、なんとか···?」
一度茜ちゃんを立たせて、頭からシャワーを丁寧に流してコンディショナーとボディソープを流す。
その過程でなんとか落ち着きを取り戻した茜ちゃん。
「もう·····。あんなにくすぐったいなんて、聞いてなかったよ?」
「いやぁ······。私もまさかあそこまで耐性がないとは思わなかったよ?」
どうやらお互いに何か認識の違いがあったみたい。
茜ちゃんはこんなにもくすぐったくなるとは思わなかったみたいで、私はあんなにも耐性がない=笑うとは思わなかったんだよね。
私は雪ちゃんを毎日洗ってるけど、雪ちゃんはそんなには笑わないんだ。
笑う時はあえて私が洗いつつ、コチョコチョとお巫山戯をした時なんだよね。
つまり普通に洗ってる分にはくすぐったくないんだよ。
で、さっきもお巫山戯なしで普通に私は茜ちゃんを洗ってた。
ということは、茜ちゃん自身に耐性がまるっきし無かったという事になるんだよね······。
「まぁ、終わった事だからいいよね?」
「うん。そうだね。くすぐったかったけど、それでも嬉しかったし楽しかったよ。ありがとね、このはちゃん♡」
「どういたしまして。じゃ、次は私だけど茜ちゃんが洗ってくれるの?」
「洗いたい!でも······このはちゃんの髪の毛はちょっと自信無いから、身体だけでいいかな?」
「いいよ。茜ちゃんのしたいようで。立ったままで洗った方が楽かな?」
と、言うわけで今度は茜ちゃんが私を洗ってくれるみたいです。
洗い方的には私が立ったままで、後は私が茜ちゃんにやったのと同じ。
手にボディソープを取って、最初はおっかなびっくりサワサワ。
段々と慣れてきたのか手つきも良くなっていったよね。
「このはちゃんは、くすぐったくないの?」
「うん。大丈夫だね。」
時通り聞いてくる茜ちゃん。
だってそれもその筈で、私には耐性があるんだよ。
ここ1年くらい雪ちゃんが私の身体を一生懸命に洗ってくれるからね。
雪ちゃんの無邪気で健気に洗ってくれるのそれは、手順も力加減もなにもが規則性もへったくれもないんだ。
ただ一生懸命に私を洗ってくれるその健気な姿、気持ち故にくすぐったくても笑うことは出来ずに耐えた。
そして耐性が身についた。
だから茜ちゃんの洗いくらいでは、くすぐったくないんだ。
「ぶぅ〜······。」
「何をそんな膨れてるのよ?もしかして······私を笑わせたかったの?」
「うん······。だって私だけケラケラ笑って、ちょっと悔しかったんだもん!」
「だもん!って···。全く···可愛いんだから。」
「あっ···!」
折角泡を流してキレイにしたのに、また抱きしめたから泡がついてしまった······。
ま、いっか···。
どうせ風呂場なんだし、浸かる前に流せばいいんだからね。
「慣れない事をされたんだから、耐性がなくても仕方ないよ。これからちょこちょこ一緒に入って洗いっ子すれば慣れるようになるから、それで勘弁してね?」
「ちょこちょこって······それは出来たら嬉しいけどさ、出来るものなの?このはちゃんは私んちに泊まりは厳しいでしょ?」
「まぁ、雪ちゃんがいるからね。でも、だったら茜ちゃんが私の家に泊まりに来ればいいんだよ?」
「!!? いいの!?」
「勿論だよ。夏休みはまだまだこれからだしね。それに学校が始まっても偶にはおいで?一度家に帰ってから荷物を纏めて用意すれば、私が車で迎えに行ってあげるからさ。そのまま泊まって一緒に登校っていうのもいいじゃない。」
「このちゃ〜ん♪大好き!!」
泡も関係なく力を込めてくっついて来た。
そんな子をよしよしと相変わらずいつもの様にする私。
今日一緒にいて改めて感じたこと。
それはこれだけ広い家でお父さんはいるけれど、ほぼ一人というのは寂しすぎるという事。
兄弟の誰かしらがいればまた違ったかもしれないど、それはないからね。
そして今日という日が楽しければ楽しい程、私の帰った後は静かになって寂しくなる。
それは雪ちゃんが幼稚園に行って、家で私一人勉強してる時に偶に感じるのと似てるしね。
だから茜ちゃんを誘った。
私が行くのが無理なら来ればいいんだよって。
そして私は夏休み中と夏休みが終わった後も、度々泊まりに誘うことにした。
そうすれば寂しさも和らぐし、宿題なんかも一緒に出来るし。
それと雪ちゃんも茜ちゃんに懐いてるから、喜ぶと思うんだよね。
ひっくひっくと泣きながら喜んでる茜ちゃん。
それを見て、提案してみてよかったなと心から感じた。
「ね?茜ちゃん。これからは私と一緒に楽しく過ごそうね。」
「うん!うん!!」
私の胸の中で嬉しそうに頷く。
身体は立派でも心はまだまだ子供だね。でもそこがまたいいよ。
「······ところで、茜ちゃん?」
「ん?なーに?」
上目遣いで私を見つめてきた。
ふふふふ。残念。
普通の子ならこれでイチコロ(?)なのかもしれないけど、私には効かないよ。
狙ってやってる訳じゃないのは知ってるけど。
(ただの身長差故にそう見える)
「ほら?今は私の生乳の抱きしめだよ?感想はどうかな?」
イタズラっ子風に尋ねてみた。
偶に出るこういう所が、お父さんやお母さんに似てるんだよね、私って。
「ばっ···なななな······何を言うかなー!?感動が台無しだよーー!!!」
「あははは······。だね。失礼しました。」
「でも、最高だよ♡ 暖かくて柔らかくて居心地がいい······。ドクンドクンって制服越しでは分からない、このはちゃんの心臓の鼓動も聞こえる。それが一人じゃないんだって安心させてくれて、不思議と心が安らぐの。」
と、私の胸に耳を当てて抱きついている。
雪ちゃんも泣いてる時とかにこうして抱きしめてあげると、不思議と落ち着いて来てたのを思い出した。
マタニティの本とかで、胎内にいた時の事を思い出して落ち着くってあったなって。
心臓の鼓動がそれに似てるとかってね。
茜ちゃんもきっとそれと似たような事を感じてるんだと思う。
今までもそうやって甘えることも出来なかったから······。
ましてや裸の状態で直に鼓動が聞こえる状況なんて、母親以外は無理だもんね。
「そっか。じゃ、今夜は沢山抱きしめてあげるからね。」
「······うん♡」
泡にまみれて抱き合う2人。
母の温もりを知らない少女と、そんな少女を大切にしたい母をしてる少女の優しい想い。
そんな2人の仲は、また急速に仲良くなっていく―――。




