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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ある日の夏休み①-3 20歳高2(挿絵有り)

「茜ちゃ〜ん。何か手伝おうか?」


「ううん。大丈夫だよー。だから、このはちゃんはゆっくりしててー。」


「そう?分かったよ。じゃあ······何かあったら遠慮なく呼んでね?」


「うん。」



スーパーから帰ってきて暫くしたら、茜ちゃんは晩ごはんの支度という事でキッチンに入ったんだよね。

そして私はそのままリビングで寛いでるの。

何か手伝おうか?とキッチンで準備に入った茜ちゃんに聞いてはみたけど大丈夫との事で、もうこれ以上は何も言わずに出来るまで待ってようかなとは思ったんだ。



茜ちゃんから借りたコミックを読みつつ、茜ちゃんの方をチラリと見たりする。

時たま水道を使う音、包丁を使ってトントントン♪と野菜か何かを切る音がする。

その時々の調理音がして、それが不思議と居心地が良いことに気がついたよ。



「なんだか嬉しそうにしてるけど、良いことでもあったの?」


「ん?私?」


「うん。こっちから見てて、このはちゃんなんだかニコニコしてるよ。」


あらら。

特に意識はしてなかったけど、顔に出てましたか······。


「いやね······、こうして誰かがご飯を作って、それを待ってるのもいいもんだなーと思ってさ。」


「え!?」


「私さ、雪ちゃんを妊娠してからずーっと家のご飯をお母さんの代わりに作るようになったから、こうして待つのが思ったより居心地よくて······。ほら、あれだよ?今読んでるこのコミックにある、新妻の作るご飯を待つ旦那の気分?」


ポンポン♪と手に持ってるコミックを軽く突いて、強調する。

この漫画にはそんな1シーンがあったんだよね。

シーン的には朝で、朝ごはんを作ってる香りで旦那さんが起きて、料理をしてる妻の後ろ姿にうっとりする所が。

そしてこのコミックの持ち主の茜ちゃんも、そのシーンは知ってる筈で······。


「に···新妻って······。もぅ···何を急に言い出すかな〜!? このはちゃんはっ!!」


「照れてる照れてる♪そんな所もかわいいよ、茜ちゃん。でも実際の所、包丁を使ってる音を聞いててもしっかりと安定してるから、安心して待ってられるのはあるよ。茜ちゃんは、料理を作り始めてそれなりの期間になるの?」


「そうだね〜······。お姉ちゃんが家を出てからになるから、かれこれ3年くらいにはなるかな?」


「なるほどね。逆にそのくらいやってれば、安心して任せられるのはあるよね。」


誰でもそうだけど、初めのうちは怖い。

包丁を握る自分自身もそうだし、それを教えてる側もね。

びくびくしながら使うから手元が震えて指を切りそうでハラハラして、でもやっていく内にそういった怖さもなくなっていくから段々と任せられるようになってくる。

味付けとかだって基本通りに作れば、そんなには失敗はしないしね。

まぁ、多少焦がすとか硬いとかはあるかもしれないけど、その辺りは多めに見てあげないとだし。

だって誰もが最初から上手に出来る訳じゃないからね。料理ってさ。


少しずつ経験を積んで包丁の使い方、炒め方や茹で加減、調味料の入れるタイミングや分量。

そういうのを自分なりに学んで好みにアレンジしていくものだと、私は思ってる。



だから茜ちゃんの料理風景は見てて安心できる。

それは先ほども思った、包丁を扱う音がリズム良く刻んでるから。

トントントントン♪とか、タタタタタ♪とか小刻みに包丁を扱ってる音はそれなりの経験や技術がないと出せないからね。



挿絵(By みてみん)



「スーパーに言った時も思ったけどさ、茜ちゃんは将来いいお嫁さんになれるよね。」


「ちょっ·····また急に何を言うかな〜!? ······このはちゃんさ、最近不意打ちでドキッてさせる言葉も多いし、心臓にも悪いよ?」


「ごめんごめん。でも、そう感じたのは本当だよ?スーパーでも良く見て食材を選んでたし、料理だって出来るし。多分だけど、掃除洗濯なんかも茜ちゃんが全部やってるんでしょ?」


「う、うん。お父さんはそういうのをやる時間もないからね。だから私が帰ってきてから一通りやったりしてるよ。」


「やっぱり······。だからそういうのが必用だったとはいえ、自然と出来るのはそのまま結婚しても出来る事だから、そうなるなーって思ったの。」



茜ちゃんの家庭環境的にやらざるを得ない事だったとしても、それをきちんとこなせるのはとても素敵な事だし、褒められるものだとは私は思う。

学校を会社に変えれば、過ごしてる感じは社会人と対して変わらないのに、その中できちんと料理を作って掃除洗濯をしてさ。

部活をやったり、宿題を片付けたりとかもしないといけない中でやるんだから。

やらない人は料理どころか、掃除洗濯だってまともには出来ないからね。


私はさ、今では色々と出来るようになったけど、これも全ては『雪ちゃんの為』だからね。

あの妊娠という出来事が起きた結果今の私があるわけで、妊娠がなければどうなってたんだろうと思うことはある。

勉強は元々好きだったから頑張ってはいたとは思うけど、それ以外の料理や家事といったことは、果たしてやっただろうか······。

多少はやったとしても今ほどは出来なかっただろうなーって思うし、今の私とは全く違った私になってると想像が出来る。


そう自分の事を考えると、やっぱり茜ちゃんは凄いし偉いなって思う。





「このはちゃんが男の子だったら良かったのになーって、たまに思うよ。あ、もしくは私が男の子だったら良かったのにな??とか?」


茜ちゃんが『もし私が◯◯だったら?』みたいな、ifの世界の話を持ってきた。

それで何となく茜ちゃんが言いたい事は察したけど···。


「ん〜······でも、それだときっと違った結果になるし、茜ちゃんの望む様な事にはならないと思うよ。」


「そう···なの?」


「うん。まず私が男だった場合は歳が違うから、茜ちゃんと出会うことはなかったと思うし。」


「そっか····そうだよね。」


「うん。」


どうやら気がついたらしいです。

私と茜ちゃんを含めたクラスのみんなとは歳が4つも違うから、仮に高校が同じだったとしても普通だと知り合うことはまずないんだよね。

入れ違い入学になるからさ。


「で、茜ちゃんが男の子だったら······だけど、それだと今みたいに仲良くはなってなかったと思うよ。ほら、前に私が言ったのを覚えてる?」


「前に·······あ〜···、雪ちゃんがいるからって言うあれかな?」


「そそ。『私は誰とも付き合うつもりはないし、結婚もしない』っていうあれね。だから仮に茜ちゃんが男の子だったら、仮に知り合ってはいたとしても今みたいな付き合いはないよね。」


私は結構この事に関しては、キッパリとしてるからね。

私にその気がなくても、相手がその感情をもつ可能性がある以上は深くは関わらないつもりだし。

今みたくクラスメイトとして、教室内でやり取りするのは別にいいんだけどさ。


「このはちゃんは、男子にははっきり区別つけてるもんね。」


「うん。だから茜ちゃんが言う()()()の話は望むような結果にはどっちにしろならないんだよ。それに寧ろ同性だからこそ、今みたいな関係になれたとも言えるかな?」


「そっか······。そうだよね。同性なら遊びも買い物もお泊りなんかも気楽に出来るもんね!」


「そういう事♪私達の関係って、奇跡的な事が重なって成り立ってるんだよね〜。」


そうなんだよね。

私達って色んな事が重なった奇跡の上で成り立ってるって思う。

第1に雪ちゃんを妊娠した事。

これがなければ私は普通に高校に行って、今頃は大学なり就職なりしてたと思うし。


あとはあのタイミングでお母さんが高校進学へ後押ししてくれた事や、たまたま同じクラスになった事。

あの日あの時、茜ちゃんが倒れて保健室へ連れて行った事。

あれがなければ茜ちゃんの事を、深く知ることはなかったのかもしれない。

後はまぁ······、お互いの家が意外と近場だった事とかね。


様々な要因が重なり合ったからこそ今の私達の関係性がある、そう感じる。



「だから私は茜ちゃんと同性で良かったと思ってるよ。これからだってずっと付き合っていけるし、8月になったらみんなとプール予定でしょ?今夜だって一緒にお風呂に入って寝るんだから、ね?」


「·······うん♪」


どれもこれも、異性ならしないこと。それこそよほど仲の良いカップルにでもならない限りは。

まぁ同性でも友達の家に泊まりに行って、一緒にお風呂とかは普通はしないとは思うけど、そこは私と茜ちゃんの仲ですからね。

あまり細かいことは気にしなくていいんです。



その後は少し静かな時間だけが過ぎた。

茜ちゃんは照れたのか少し口数が減ったんだけど、手元はきちんと動いてるみたい。

トントントントン♪と包丁を使う音や調理器具を洗う音、鍋ないしフライパン等で調理する音など、心地よい音が聞こえてくるからね。


私はそんな音を聞きつつ、またコミックを読み進める。

時たまスマホをチェックしながらね。

雪ちゃんに何かあれば幼稚園から電話がかかってくるようになってるから、それがないということは今の所は順調と考えてよいのでしょう。

まぁ、雪ちゃん自体も今回のお泊りを楽しみにしてたし、仲の良い友達や先生たちと一緒に寝るから、そこを含めて多分大丈夫だとは思ってる。


茜ちゃんにもその事は伝えてあるから、もしもの時は夜中でも帰ることになる事を説明して了解はしてもらってる。

そうならない事を願ってはいるけれどね。






ガチャン。


「ただいまー。」


時間にして18時になろうかなという頃に、玄関の方から男の人っぽい声がした。

私は読んでた本を閉じてテーブルの上に置くと、茜ちゃんに尋ねてみたんだ。

なんとなくそうかな?とは思ってるけど、一応ね。



「もしかして、茜ちゃんのお父さんかな?」


「そうそう。私のお父さん。このはちゃんが来ることは伝えてはあるんだけど、私ちょっと行ってくるね。このはちゃんはここで待ってて。」


「わかったよ。」


火を止めたのを確認すると、パタパタと玄関······いや、お父さんのお部屋?の方に行った茜ちゃん。

そんな後ろ姿を私は見つめながら、改めて感じた。


エプロンを身につけて、スリッパを履いてるから足音はパタパタ。

そして背の小ささも相まって凄い可愛いし、めっちゃ似合ってる!

料理も家事も出来て性格だって可愛いし、スタイルも実はいいんだよね、茜ちゃんは。

あれで今、私に向けてる甘えっぷりみたいな所を男の子に向けたら絶対にモテるね!

いや、モテるというより守ってあげたくなる存在っていうのかな?

同性の私でそうなんだから、異性の男の子なら絶対だよ。


そのことは本人には勿論言わないけどさ。

可愛いねとか似合ってるねとかは普段から言ってるけど、男の子云々の話は絶対に言わない。

禁句って程ではないんだろうけど、興味あるとかって程でもまだないみたいだからさ······。



ガチャ······


「このはちゃんお待たせー。」


茜ちゃんの後ろ姿から色々と考えてたら、茜ちゃんがお父さんを連れてリビングに戻ってきた。

私はすかさず立ち上がると、そのままお父さんが入ってくるまで待つ。


「このはちゃん。この人が私のお父さんだよ。」


「初めまして。茜ちゃんのクラスメイトでお友達をしてます、鈴宮このはと申します。今日は一晩お世話になります。宜しくお願いします。」


丁寧に丁寧に頭を下げて、ご挨拶をします。

友達のお父さんっに挨拶ってだけなのに変に緊張してる自分がいて、そんな自分にちょっと可笑しくもなるけど何とか堪えた。


「あぁ。これはご丁寧にありがとうね。私は茜の父親の諸貫良平です。娘からは以前に少しだけ話に聞いてましたけど、話の通り素敵な人そうで良かった······。今後とも娘の事をよろしくお願いします。」


「ええ。そこは任せてください。茜ちゃんは私にとっても大事な子なんで······。」


「はいはーい!! 話は一旦区切ってお父さんも座って!じゃないと、このはちゃんがいつまで経っても座れないでしょ!!」


「分かったよ···。」


思いの外?茜ちゃんのお父さんとの最初の挨拶は上手く行けたんじゃないかな?とは思った。

その証というか最初の挨拶から話しが弾んでしまい、あれこれとちょっと話してたら茜ちゃんが割り込んでくるという事が起きたから。



「お〜···怖い怖い······。すごい久しぶりに茜が怒ったよ。いや···ヤキモチか?」


茜ちゃんのお父さんがダイニングテーブルの私の向かい側に座ったと思ったら開口1番にそんな事を話した。


「ちょっとお父さん!? そんなんじゃないってば!!」


「ほら···そういう所がそれっぽく見えるんだよ? まぁ、心配しなくても茜から取ったりしないから大丈夫だよ。いくら鈴宮さんが綺麗だって言っても、父さんは母さん一筋だからさ。」


「もぅ、そうやって調子の良いことだけ言うんだから······。今夜はビールなしにするからね!! このはちゃん、ごめんね。こんなお父さんで······。」


「え?そんなことないよ。寧ろ楽しそうなお父さんで良かったじゃないって私は感じてるよ?」


「······ありがと。」



確かに面白そうなお父さんではあるなとは思う。

きっとこれも、お父さんなりの茜ちゃんへの配慮とかが入ってるんだとは思うけどね······。

1人で家にいることの多い娘へ、少しで明るく楽しく過ごせるようにっていうね。


それに茜ちゃんの意外な一面を見れたのも大きいから、私としては寧ろプラスだよ。

こういうのって家族にしか見せないような、そんな貴重な姿だろうからさ······。



そんな訳で、内心では超喜んてる私なのでした。

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