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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ある日の夏休み①-1 20歳高2(挿絵有り)

「えーと······持っていくのはタオル系と予備の下着に服。それから······。」


いそいそと、少し小さめなリュックに荷物を詰めていく私。

プリント用紙を確認しながら必要なの物を、あっちからこっちからと持ってきては丁寧に。



季節は夏真っ盛りの7月の下旬。

私達の高校の夏休みが始まって比較的すぐの頃。

私が何をやっているのかと言えば、雪ちゃんの荷物を纏めていたんです。

タオル系や予備の下着や服。

他にも用意するものは諸々あるんだけど何をするのかというと、本日雪ちゃん達幼稚園の年長組さんは幼稚園でお泊り保育なんだ。


この時期になると毎年、年長組さんは幼稚園で一泊お泊りをする恒例行事らしいの。

お昼すぎから幼稚園に行って、プールで遊んだりスイカ割りをしたり。

夜は皆でカレーを食べて、幼稚園の建物内を歩く肝試しみたいなのをやったりする予定なんだって。

これは2人一組で行くんだけど、これが意外と暗くて怖かったりするんだよね。

何か驚かす仕掛けがあるわけではないんだけど、ただ暗いという雰囲気だけが怖くて······。

なんで私が知ってるかというと、私もこれを経験したから。

だってほら、私と雪ちゃんは同じ幼稚園だからね。ちなみに葵も。

だから多少内容は変われど、肝試し自体は恐らく私の時と同じだと思ってる。


私が体験した事をたった14年で私の娘がもう体験するのかと思うと、やはり普通じゃあり得ないよな〜って感じる。

でも今が幸せだから、それはそれで良しなんだけどね♪



それと準備について。

基本幼稚園の各教室はエアコンもあるから、暑い今でも寝るには問題ない。

それにお昼寝用にお布団とタオルケット、歯ブラシも持っていってあるから、基本的な物は全て向こうに揃ってるんだよね。

あとは、念の為の着替え等とその他に必要なものを揃えるだけ。

お泊りとは言いつつも、実際に私達がどこかに泊まりに出かけるよりは準備的には楽です。


まぁ、この念の為の着替え等もお漏らしとかに備えての物だけど、雪ちゃんはもうお漏らしもしないから心配はしてないけど、一応指定されてるからね。

これも幼稚園のママさんと話を聞いてると、意外と個人差が大きいみたい。

雪ちゃんは比較早くからしなくはなったけど、同年代でもまだ時たましてしまう子もいたりで。

体格や言葉の覚えの早さ、それ以外でも性格や運動神経だとか兄弟姉妹でも違うんだから、本当に不思議。





  ーーーーーーーーー



「雪ちゃん、大丈夫?」


「うん!大丈夫だよ、まま。みんなとスイカ割りだとか寝んねとか、雪、楽しみなんだー♪」


「そっか······。じゃ、楽しんできてね。先生、よろしくお願いします。」


「はい。雪ちゃんをお預かりいたしますね。雪ちゃん、行こっか?」


「はーい。まま、いってきまーす!」


「楽しんできてね、雪ちゃん。行ってらっしゃい♪」


幼稚園の駐車場の側の通園門で、雪ちゃんを担任の先生に引き渡して一時のお別れです。

家なら偶に葵と寝るっていうのはあったけど、完全に別々というのは初めての事だからとても心配ではあるの。

でも······今の様子なら大丈夫かな?

だって楽しみって感情の方が不安とかの気持ちよりも大きいみたいだからね。

そうであって欲しいなって思いながら、私は雪ちゃんの背中を見送ります。


「雪ちゃん。明日、帰ってきたら沢山ギュッとしてあげるからね♡」


そう呟いて幼稚園を後にします。

そして今度は私の番。

ちょっと前から約束をしてた事を実行する日です。

今日のお泊り保育を逃すと、こういう日はもう数年間は訪れないからね。


スマホを取り出して、パパパパっと文字を書いて送信する。

そうすると、暫くして『待ってるね!』って返信が来た。

ほんの数文字だけど、それだけでも嬉しそうにしてる感じが画面越しに伝わってきたよね。


(ほんと、可愛い子。)


そう思いながら車を走らせるのでした。



車を走らせること約15分······も掛からなかったね。

田舎故に信号が少なく、交通量も少ないから距離の割には早く着いた。

こういう部分では地方は楽だとは思う。

都市部だと交通量も信号も多いから距離の割には時間がかかるからね。

場合によっては渋滞だとかそういうのも懸念されるけど、田舎はそれはないし。

まぁその分の不便な箇所もあったりで、どっちが良いと思うかは人それぞれなのかな?



さて、目の前には見慣れたお宅がある。

一度来た事があるから、どの方角からやって来ても迷わないでこれたよ。これは私の住む地域に近いのもあって土地勘がそれなりにあるからってのが大きいんたけどさ。

お家の脇にある駐車スペースに車を停めて、荷物を持ってインターフォンを押します。

暫くして元気な声で返答が来た。


「はーい。」


「このはでーす。こんにちは、茜ちゃん。」


「このはちゃん!? 待っててー。今行くね!!」


タタタタ····ガチャ!



「このはちゃん!いらっしゃい!!」


「こんにちはー。約束通り遊びに来たよ。」


「うん。ありがとうね♪ささ、どうぞ〜。」


インターフォンを鳴らして、元気な声と共に出てきたのは茜ちゃん。

玄関の前で待ってても、家の中を駆けてこちらにやってくる足音が聞こえたんだよね。

全く······そんなに慌てなくてもいいのにって思う。

でもそういう所が茜ちゃんらしくて、また可愛いなと感じる部分でもあるんだけどね。



「お邪魔します。」


「はーい。じゃあ······最初に私のお部屋を案内するね。そこに荷物を置いといてくれていいから。」


「うん。ありがと。」


茜ちゃんに案内されて2階へと上がる私。

そう、ここは以前に来たことのある、茜ちゃんのお家なんだ。

今日の私は雪ちゃんがお泊り保育なのを利用して、茜ちゃん家にお泊りという形の遊びに来てるんだ。

だから今日という日を逃すと、当面の間はこういう時間は取れないの。

さすがに雪ちゃんを連れてのお泊りは出来ないからさ。



玄関から室内に上がって正面に廊下とちょい奥に2階への階段がある。

廊下の脇には左右に扉があって、おそらくリビングだとかそういう部屋なのかな?

茜ちゃんを先頭に2階へと上がると、廊下を挟んで扉がいつくかあつった。


「えっとね、ここがトイレでこっちが私の部屋なんだ。あの部屋はお姉ちゃんのお部屋で、あとあの部屋は使ってないんだけど洗濯干し部屋に使ってるんだ。」


「そうなんだ。あれ?茜ちゃんのお父さんの部屋は?」


「お父さんは1階で寝てるんだよ。はい、あまり綺麗な部屋じゃないけど、どうぞ······。」


「お邪魔しま〜す。······可愛い部屋じゃない。茜ちゃん。」


「えへへへ。そっかな?」


「うん。」


挿絵(By みてみん)


照れくさそうにする茜ちゃん。

でも実際にみてとても可愛いらしいお部屋だった。

壁は全体的にややピンク色の色で、床は木目のフローリング。

部屋の南側ないし西側にはやや大きめの窓ガラスがあって。

部屋のベットや毛布、収納やテーブルなど全体的に壁の色又は白色系で統一してあるから、スッキリしてるように見えて尚且つ可愛らしくもみえる。


これを見て比べると、私の部屋の方が逆にあまり飾り気がなくてシンプルでさっぱりしてるなと思う。

まぁ私の場合は寝るのと勉強をするだけの部屋って割り切ってるし、それ以外は殆どリビングで過ごしてるからね。

だからこれと言って、可愛いい部屋にしようとかそういう気にはならなかったんだよね。

なのでそういう点では葵の部屋の方が、女の子らしい部屋をしてるよねって思う。



「荷物は適当に置いといて貰っていいからね。」


「うん、ありがと。じゃあ、お言葉に甘えて······。」


お部屋の隅に荷物を置かせて貰って、次にあと1つやらなくてはいけないことがあるんだよね。

これは事前に茜ちゃんにも伝えておいたから、案内してもらう。

部屋を出て再び1階へと戻る私達。


「こっちがリビングとキッチン。で、廊下の奥のここがトイレとこっちが洗面所とお風呂場。ここがお父さんの寝室で、お母さんはこっちにいるの。」


案内されたのは、お父さんのお部屋の隣の部屋。

畳が敷いてあって障子や襖があって、作りは和室そのものだった。

そしてその奥に、それはあった。


私のやりたかった事。

それは茜ちゃんのお母さんに、挨拶をしたかったんだ。

お父さんは今夜帰って来るらしいから、その時に挨拶は出来るからね。


仏壇の前に茜ちゃんが座って蝋燭に火をつけ、手を合わせる茜ちゃん。

そんな茜ちゃんの後ろ姿を眺めながら、私は遺影を見た。

そこに写っているのは若い女性。

黒髪で長さは写真上では肩まではある。

優しげな表情をしてて、顔立ち的には茜ちゃんに似てる。

お姉さんという方は見たことないけど、少なくとも茜ちゃんは間違いなくお母さん似だね。その位そっくり。

顔立ちも目元もそうだし、そして写真で見る限りの髪の感じも。


「どうぞ。このはちゃん。」


茜ちゃんが終わり、代わって私が前に座って線香を立てて手を合わせる。そして伝える。

私の事。茜ちゃんとの関係。これからも仲良く友達として支えて付き合って行く事。

色んな思いがあるけどなるべく簡潔に。

でも大切に想ってる事は間違いなから安心してくださいと伝えて······。



「お母さんに手を合わせてくれてありがとう。このはちゃん······。」


「ううん。いいんだよ、茜ちゃん。これからも遊びには来るつもりだから、最初にちゃんと挨拶したかったからね。」


「もぅ······優しいな〜このはちゃんは。」


「おっとっと······。」


感極まった茜ちゃんが私に抱きついてきた。

泣くとかそういうのではなくて、単に嬉しくて抱きついて来ただけみたいたけどね。

本当に甘えん坊というかなんというか······。

でもこうして遺影とか位牌を直接見てしまうと、亡くなったという事実を改めて目の当たりにしてしまい、話を聞いて想像していたよりも辛かっただろうな、寂しかっただろうなと思ってしまう。

なんたって幼稚園に入って直ぐらしいもんね。なくなったの。

茜ちゃんの誕生日から考えると、4歳になる前なんだから······。


ポンポンと背中を叩いてあげて、「大丈夫だよ」って伝えて。


「ありがと、このはちゃん。よし!遊ぼう!! このはちゃん、こういうのやる??」


復活した茜ちゃんに手を引かれて連れて行かれたのは、リビングだった。

初めて入るその空間は中々に広くて、うちと同じLDK仕様だった。

扉から右側奥にはキッチンスペースがあってその反対側にはダイニングテーブル、ソファに小さいテーブルとテレビって並びで。

私の家と似たような配置ではあるけれど、これもきっと茜ちゃんのお母さんが選んだ仕様なんだろうなって思っちゃった。


私も調理をしてて感じるけど、この仕様だと料理をしながらでもリビングにいる子供たちの様子を見ることが出来るから凄くいいんだよね。

あとは動線とかの関係でも便利で、主婦をしてるとこの動線という物は非常に重要になるんだよ。

毎日使うキッチンや洗濯物とか、なくべく動かなくて済む配置だとかスムーズに出来る配置や間取りとかね。

うちのお母さんもそういう風にした感じはあるけれど、茜ちゃんのお母さんもきっとそうなんだろうなって感じたよね。




「このはちゃん、ここ座ってて。あ、飲み物は何飲む?冷たいのならアイスコーヒーと紅茶があるんだけど······。」


「うーん······じゃあ、アイスコーヒーでいいかな?」


「おっけー♪」


ルンルン気分(?)で鼻歌を歌いながら飲み物の用意をしてくれる茜ちゃん。

カチャカチャと音を立てるそんな中に鼻歌が混じってるからね。


「お砂糖とかミルクはいる〜?」


「ブラックでいいよー。」


「はーい。」


向こう側からそんな声がして。

······うん。こういうのもいいかもしれない。

お友達の家に行くなんて、それこそ小学生の時以来だもんね。

だから茜ちゃんが嬉しいように、私も楽しみにしてたし嬉しくも感じてる。

ただそんな中でも雪ちゃんの事を心配してるのは当然あるし、淋しく不安に感じてる部分も勿論あるけれどね······。


「はい、どうぞ。」


「ありがとねー。頂きます。」


持って来てくれたアイスコーヒーを頂く。

うん。冷たくて美味しい。

誰かにいれてもらうのって、自分で用意するのとはちょっと味か違っていいなって思っちゃった。

コーヒーを頂いて一息ついて。


「このはちゃんは、こいうのやる?Swi◯chなんだけど??」


「やったことないな〜。家はこういうのはないからさ。でも、興味とかはあるよ?」


「ほんと?じゃ、ちょっと一緒にやってみない?」


「うん、いいよ。オススメとかあるの?」


「えっとね······。一緒に遊べるのだと定番のマ◯オシリーズとか、あとは······。」


茜ちゃんがソフトを見せながら色々と説明してくれる。

私の家には昔から家庭用ゲーム機はなかったから、こういったゲームにふれる機会は、私はほぼなかった。

でもある程度は知ってる。

特にマ◯オシリーズは昔から有名だし、テレビCMなんかでも偶には見かけたりもするしね。

それに最近では映画化なんかもされて、世界的に大ヒットを記録したとかっていうのも聞いたし。


茜ちゃんがソフトを機械に入れ替えして、テレビが付いて。

ピコピコと画面が進んでいって、操作方法を教えてくれる。


「これで進行方向を調整して、これがジャンプだよ。で、こっちが·········。」



茜ちゃん家に着いて、まだほんの少し時間。

これから沢山遊んで話をしたり、晩ごはんを頂いたりお風呂に入ったりとイベントは盛りだくさん。


明日の雪ちゃんをお迎えに行く時間までではあるけれど、茜ちゃんにとって楽しく思い出に残る1日になればなと私は思う。



いっぱい楽しもうね。

茜ちゃん♪



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