ある日の休み時間⑥ 20歳高2(挿絵有り)
「ねぇねぇ皆? 夏休みになったらさ、皆で行けたらプールとかに遊びに行かない??」
「「「プールぅ〜!??」」」
時はやや過ぎ、梅雨もそろそろ明けるかな?と感じ始めてきた、そんなとある日の休み時間に、彩ちゃんが唐突にそんな提案を言ってきた。
蒸し暑くてジメジメした梅雨。
私達のいる教室の中はエアコンが稼働してるから快適ではある。
あるけれど、ひとたび教室を出てお手洗いや体育の授業、部活動(特に運動部)に行けば暑くて大変で。
そうでなくても、朝の登校の時点ですでに蒸し暑いからねぇ······。
そういう相変わらずの蒸し暑い日が続く中で、その様な気持ちが出てくるのも分からなくもない。
私自身も当然暑くは感じてるから······。
そしてその彩ちゃんの唐突な提案に、みんなが素っ頓狂な声をあげた。
直ぐにではないにせよ、いきなりプール行こ!ともなればそうもなるよね。
私もちょっとはビックリしてるし。
「ねぇ、彩? いきなりどうしたのよ?」
「そうそう。唐突すぎてちょっと理解が追いつかないんだけど?」
志保ちゃんが彩ちゃんに尋ねてる。
まぁ、私もみんなも少なからずそう思ってた所はあるんたけど。
「ん?いや〜······、毎日暑いじゃん。だからプールなんかでさっぱり遊びたいかな〜って思って思ったわけよ······。ほら、私達って今年はプールの授業がないでしょ?そういうのもあるし、後は長期の休みになっても皆と遊ぶのとかって余りないから、たまには遊びたいかなってのもあるんだよ。」
「あー·····まぁ確かに、冬休みとか春休みに皆で遊ぶとかはないね······。」
「基本的に皆、部活とかに時間を割いてるからね。後は家の方向もバラバラだからね〜。」
「カラオケしたのが最後だっけ?でも、あれは······受験か何かで学校が休みになった日だったよね??」
彩ちゃんのその言葉に、みんなで考える。
そして確かにその通りだよねーって意見で纏まったんだ。
まずプールの授業について。
これは去年から分かってはいた事だけど、私達女子は1年生の時にプール授業を行うんだよね。
で、代わりに2年生になると男の子達がプール授業をする交代制。
なので今の私達は体育館とかで、扇風機をガンガン回しながら軽い運動という授業をやっているんだ。
熱中症の危険も常に付き纏うから、あまり派手というか大きな運動は出来ないらしくて。
そして、2つ目の長期休暇。
これも話の様にみんなが部活動で練習をしてるのが大きいんだ。
主に午前〜お昼を中心にどこの部も活動をしてるらしいんだけど、そこに夏場だと運動系は半日とかで終わるらしい。
でも文系の部活はエアコンが効いてたりとかで、意外と長時間の時もあるんだって。
特に音楽系の部とか。
大会なんかも勿論あったりするから、そういう時期が近くなると帰りも遅くなったりで大変なんだって。
だから基本的にはタイミングが皆、合わないんだよね。
他にも理由はあるけど、まずはこの部の方が問題······。
「行けるなら行きたいよねー。夏だと気持ちいいだろうし、スライダーとか流れるプールとか色々とあったりもするけど、私は海よりプールの方が好きだなぁ〜······。」
心ここにあらずって感じて話す彩ちゃん。
私も海よりはプールの方が好きだから、気持ちは理解できるけどね。
「このはちゃんは海とプールなら、どっちの方が好みなの?」
「あー······気になるな〜。」
「うんうん!」
「確かに!ま、私はどっちかというとプールに賭けるかな?このはちゃん、プール好きって前に言ってたから。」
隣りにいた茜ちゃんからそんな質問をされて、それを元にみんながアレコレと推察してたよ。
海が好きか、プールが好きか。
よくある海と山どっちが好き?みたいな感じて。
「私はプールの方が好きかな。海は海のある県には行ったりはするんだけど、実は一度も入った事がないんだよね。まぁ、プール自体もほんの数回くらいしか行った事がない様な気もするんだけどね······。」
「そうなんだ······。なんか意外かな?」
「でもでも、私も海ってまだ行ったことないよ?埼玉からじゃ海って遠いしさ〜。だったらプールってなるよね。」
「まぁ、確かにそうだよねー······。内陸県の辛い所だよね。」
なんだかんだで話をしてると、海で遊んだって子は意外と少なかった。
埼玉から海水浴ってなると、茨城か千葉、又は神奈川辺りになるのかな?有名な海水浴場となると。
私の実家の方の新潟もあるけど、そっちは物理的にかなり遠いんだよね。
混むのもあるから車だと2時間は覚悟しなくちゃいけなくなりそうな気もするし······新潟はもっとかかる。
だったらプールってなりそう。
それに帰省先でって可能性もあるけど、ピンポイントで海あり県っていうのも少ないかもしれない。
仮にあったとしても、海側と内陸側でも距離があったりで行かないとか。
私がいい例だけどね。
しかも私の場合は、クラゲが出るから行かなかったっていう理由もあったし······。
「私も近年は全く行ってなかったし、そろそろ行っても良い頃合いかな〜??」
「おっ!? このはちゃんプール行く?」
「「「ほんと!?」」」
「「「「マジ!?」」」」
私が行ってもいいかな〜なんて言ったら、早速みんなが反応したよね。
全く······分かりやすい子達だなぁと思ってしまう。
でもそういう所も可愛いんだよね。
「私の場合はさ、雪ちゃんを妊娠してからはプールとかって行ってなかったんだよね。生まれた後も、ここ何年かは水遊びの出来る所とかは連れて行ってあげたりとかはしてたんたけど、プールはさすがに小さいから遠慮してたんだよね。」
「ほうほう。」
「なるほど〜。」
「今は大分大きくもなったし、しっかりもしてきたからスライダーは無理でも流れるプールとかそういうのは楽しめると思うんだよね。」
そう。
今までは水遊びの出来る所とか、自宅の庭でビニールプールを作ってそこに水を入れて遊ばせたりとかぐらいしかしてなかったんだよね。
年齢や身長の関係で危ないとか、オムツの問題とかもあって一般的なプールへは連れていけなかったし。
だけど今は6歳になって身長も大分大きくなってきたし、言葉や行動もしっかりしてきた。
そしてオムツも必要なくなった。
だから浮き輪等を使って、私がしっかりと見てれば一般的なプールでも大丈夫だと思うんだ。
「だから、雪ちゃん付きでいいなら私は行ってもいいよ?まぁその分、遊ぶペースはみんなとは違っちゃうけど······。」
「えぇー!? 雪ちゃんも連れてきてくれるの?! いいよ、いいよ!私も雪ちゃんまた会いたいし!」
「あー!私も会ってみたいな!写真でしか見たことないから、本物のこのはちゃんの子供に会ってみたいな♪」
「「「私もみたーい!」」」
「いいね!いいね!是非行こうよ!!」
「うん。じゃあ、行く決定なら雪ちゃんも連れてくね。」
「「「「「やったーー!!!」」」」」
盛大に喜ぶみんな。
中にはハイタッチなんてしてる子もいて、そんな雪ちゃんに皆が会ってみたいらしいです。
まー、今でも「新しい写真とか動画とかないの?」って聞かれたりして、あればその都度見せてあげたりとかもしてたからね。
そういう反応をみてると、やっぱり男の子と女の子って違うよねって感じる。
男の子って歳の近い女の子には興味とか反応はするけど、子供ってなるとそうでもない。
もしくは関わり方が分からなくて戸惑うのか。
この辺りは妹とかがいる子はまた違うのだろうけど、やっぱり個人差、環境による所が大きいのかな?
でも女の子は小さな時からでも構ってあげたりとか、反応を示すんだよね。
うちのクラスでも一人っ子って子も多いけど······。
ほんと、不思議。
「あれ?茜は意外と普通だね?」
「そう······かな?」
「うん。このはちゃん絡みだからもっと喜ぶかと思ったけど······?」
美紅ちゃんが茜ちゃんに聞いてる。
普通に考えると、茜ちゃんがもっと喜ぶだろうと想像したんだろうね。
それが意外と普通の反応だったから、あれ??って不思議に感じたんだと思う。
まぁ、その理由は私は分かってるんだけど。
「ほら、私ってこのはちゃんと一緒に登校するようになったじゃない?で、その日はいつも雪ちゃんに会うから、皆程の喜びがないというか······そんな感じなの。」
「······そうだったんだ。甘々の茜かな〜って思ってたら、意外とやる事はやってるのね?」
「ちょっ·····美紅ぅ〜〜···変な言い方しないでよーもぅ······。」
ポカポカと美紅ちゃんを叩く茜ちゃん。
こんなやり取りをするくらい、この2人は本当に仲がいいんだよね。
見ててほのぼのするやり取りだから。
そしてその茜ちゃんが言う様に、私と一緒に登校する時の茜ちゃんは必ず雪ちゃんに会っている。
それは茜ちゃんが私の家に寄ってから一緒に通うから。
一緒に行くようになってから、毎朝私が玄関で雪ちゃんとのやり取りをした後に、茜ちゃんも同様に挨拶をするようになったんだよね。
雨の日を除いてそんな日々を経て行く内に、雪ちゃんも茜ちゃんに随分と懐いてくれるようになって、今では「茜おねーちゃん」と呼ぶようになった位だから。
そんな雪ちゃんとの関係があるから、みんな程反応しなかったんだと思う。
「じゃ、夏休みに皆でプールでも行こっか?」
「賛成〜♪」
「「いいよー♪」」
「おっけーい!」
きっかけを作った彩ちゃんがそう決めた。
それに習うように皆も賛成して、プールに行こうと決まったんだけど······。
「ねぇ?みんなは部活はどうするの?さすがに全員が休みって日はないと思うけど·····?」
「そうだよね······。そこが問題だよね······。」
私はネックである部活について聞いてみたけど、普通に考えると全員が休みって日はそうそうないと思う。
お盆の日なら多分ありそうだけど、さすがにその付近は私は無理だし、みんなも無理だと思う。
「じゃあさ、行く日を決めたらその日は皆、部活は休んじゃお!仮病でも用事でも適当に言ってさ、1日位なら大丈夫っしょ?」
「···そうだね!そうしちゃおっか?」
「うん!それがいいよ。暑い中、学校に来るのもキツイし、なりよりこのはちゃんとプールだもんね!そっちの方が重要だよ!!」
「おっけー!私もそれに乗った!!」
「私も〜!」
「うちも!」
「·········」
あっという間に解決してしまった、部活問題。
まぁでも、こうでもしない限りはみんなで行くっていうのは無理だもんね。
それは分かってる。
その解決策がアレだけど、みんながいいと思ってるなら私からは何も言わないです。
「じゃあ、後は場所と日取りかな?」
「そうだね······。このはちゃんは夏休みは何かあるの?」
「うん。何日かは予定が入ってるから無理な時もあるし、お盆の時も無理でしょ。あとは······。」
ガサゴソと鞄から手帳を出して7月後半から8月までのスケジュールを確認してみる。
お盆は新潟に帰省したり、こっちのお爺ちゃん達の方に顔を出す予定だから無理。
あとは雪ちゃん絡みや私の用事が入ってる日もあるから、そういう日も除いて······。
そうやって見てると、そこそこ空いてる日があることが分かったよね。
あぁ、でもあれか。
プールに行くんだと生理に重なるとダメだから、そう考えると今年は意外と行ける日が少ない事が判明した。
少ない日ならやり方によっては入れない事もなくはないけど、私の気分的にはそこまでして入りたくはないんだよね。
だから、ちょっとみんなには申し訳なく感じてしまう。
手帳とスマホを交互に見ながら確認していく私。
「う〜んとね、意外と行ける日が少ないことが判明したよ······。ごめんね。」
「ううん、大丈夫だよ。気にしないで、このはちゃん。」
「ありがとね。取りあえず明日軽く纏めてくるから、みんなも1回纏めて来てくれるかな?それで1回調整してみよう?」
「「「「おっけー!」」」」
「「「はーい。」」」
という事で日取りについては改めて明日、皆で調整してみることにしました。
ただ遊びに行くだけならなんて事はないけど、プールってなると女性ってやっぱり不利だよねって、改めて感じるし思う。
薬とかでズラすとかってやり方もあるにはあるけど、そこまでするのもな〜って思ったりもするし、少ない日ならまだいいけど多い日はまず無理。
うん。
本当に大変だ。
みんなは大丈夫なのかな?上手くズレればベストだけど、果たしてどこまで上手くいくやら······。
「あとは場所か〜······。」
「だね。この辺りでプールってあまり聞いたことないけど······。」
私の知ってる限りだと、この近辺でみんなと遊べるようなプールはないんだよね。
私がうんと小さい頃には市民プール的なのがあったのは覚えてるけど、今はもう閉鎖されてないし。
スマホを開いて検索をかけてみることにした。
キーワードをいくつか入力して、検索実行。
何件ヒットするかな?
イメージ的には東京サ◯ーランドみたいな、レジャープールがあればいいんだけどね······。
流れるプールとかスライダー系とか、そういったみんなで楽しめる物があればと思う。
「う〜ん······あるにはあったかな······。」
「私もいくつかはヒットしたけど、そこまで近場って訳でもないよね。」
みんなとポチポチ検索して調べてみたら、県内でいくつかは見つかった。
でもそれは私達の地区、この場合学校を中心に考えると県内ではあるけれど決して近いというわけでもなく、そこそこの距離があったんだよね。
「こっちのプールは結構いいお値段するね?」
「そうだね。それに位置もかなり遠いし交通的にもちょい不便だね。それに比べてこっちなら、かなり安いよ?800円だって。」
「おお!本当だ。安いね〜。それにここは電車と駅からバスでも行けるね。」
「スライダーとか波のプール、流れるプールなんかもあるよ?他にもまだあるみたいだし、これなら悪くはないんじゃない?」
みんなとワイワイしながら、行き先を決めていく。
その時のみんなの顔はとても楽しそうで、いい光景だな〜って心から嬉しくなる私。
その中に私も入ることが出来て······。
1年前は全く想像出来なかった光景。
それが今は眼の前にある。
この、みんなとのプールが楽しい思い出になりますようにと願いながら、話は続いていく――――。




