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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ある日の誕生日② 20歳高2(挿絵有り)

「お姉ちゃん、こんな感じでいいかな?」


「うん。いいよ〜。じゃ、そのまま押さえてて。先にこっちを止めちゃうね。」


「はーい。」


学校から帰ってきた葵と一緒に作業をする私。

お互いに踏み台に乗り、今までコツコツと作ってきた輪飾りを天井に近い壁にくっつけてる最中です。


「こっちいいよー。葵の方も止めてくれる?」


「おーけー!よいしょっと······。」


2人で協力しながら輪飾りを固定していく。

1人でも出来なくはないけれど2人の方が効率もよいし、なによりバランスとかそういうのが調整しやすいというのがあるからね。


「どう?」


「うん!いいよ。高さも丁度よいし問題ないね。ありがとね、葵。」


「いいって、いいって。大変って訳でもないし、何よりこういうのも楽しいしね♪」


手をピラピラと振って、ほんとに何ともないよといった感じで言ってくれる葵。

そんな葵に助けられながら、毎年この時期にやっているこの飾りつけ。

葵も特に不満とか文句を言うこともなく手伝ってくれるから、私もそんな葵に甘えてるんだけどね。




6月某日。

今日は雪ちゃんの6回目のお誕生日。雪ちゃんは6歳になりました。

最初の1歳のお誕生日の時からやり始めたこの飾り付け。

最初の頃は当然ながら雪ちゃんも分かってはないから軽く飾って写真を撮るくらいだったけど、3歳くらいからは理解もしてきたからまたアレコレと飾り付けがパワーアップしたんだよね。


「お姉ちゃ〜ん。これは?これも去年と同じ感じで付けちゃっていいの?」


「うん。いいよー。葵のセンスで付けちゃっていいから。」


「私のセンスって······私、こういうのセンスないんだけどなぁ···任された!!」


センスがないとか何とかって言いつつも、鼻歌を歌いながら飾り始めた葵。

この娘もこの娘で分かりやすいなー、と思いながら私も飾り付けを進めていきます。

葵が今飾ってくれてるのは、折り紙。

色や柄がとりどりの折り紙に『お誕生日おめでとう!雪ちゃん 10歳』と、一文字づつ印刷して。

これをリビングの壁にバランス良く飾るんだ。


そして私は他の飾りを付ける。

折り紙を使って作った☆や花、雪ちゃんの好きなアニメのキャラを印刷したのとか。

それと今年は少しだけど、バルーンアートもやってみたんだよね。

細長い風船をキュキュッと捻ったりして、動物とかを形作ったりするあれね。

動画なんかで作り方を見てやってはみたものの、バンバンと割ったりバランスが悪くて変なのが出来たりと結構苦労したよ。

それで作っていく内に、それなりの物は出来たけど。


作ったのはハート。これは絶対に外せない!

ピンク色はもとより緑とか黄色とか色とりどりに作って、紐で結んで上から吊るす様にしてみた。

これを2セット作れば飾るにしてもバランスも良くなりいい感じです♪

ちなみにハート型以外にもチャレンジはした。

したけど、無理だった······。

動物とかやってみたんだけど、練習時間が足りないのもあってバランスの悪い変なのが出来ただけだったんだ。

こっちは要練習。

来年には飾れるようにしとこうと誓ったよ。




「出来たー♪どう?お姉ちゃん??」


「うん!いいよ。バッチリじゃん!さすがだね!」


「えへへへ···。まあね!」


葵に飾ってもらった文字入り折り紙。

『こ』の字のような感じで「お誕生日おめでとう!」と飾ってくれて、間に「雪ちゃん10歳」と入れてくれた。

うん!

一気にそれっぽくなったよね。

リビングの壁1面だけではあるけれど、それでも誕生日会って雰囲気は出てる。

本当はさ、リビング全体的に飾りたい所ではあるけれど、テレビや扉、ダイニングテーブルがあったりで飾れない部分もあるからその辺は我慢です。



「ままー。これも飾って〜〜。」


「何々?雪ちゃんは何を作ったのかな?」


私と葵で飾り付けをしてる間に主役の雪ちゃんは何をやってたのかというと、座卓に向かって座って折り紙をチョキチョキと切っては糊でくっつけて雪ちゃんなりの飾りを作ってたんだよね。

私も葵も気付いてはいたけど、敢えて触れないで好きに作らせてあげてた。


「お花と〜お星さまと〜、ままとねーねとゆき!じょーず??」


「うん!とっても上手だよー!ありがとね~雪ちゃん♪」


「ねーねも作ってたくれたの!?嬉しいなー♪ありがとね、雪ちゃん!」


私と葵、姉妹揃って感動です。

チョキチョキとやってたのは分かってたけど、まさか私達の似顔絵まで書いてくれてたなんてね。

まだ幼稚園児だからそんな上手な絵ではないけれど、それでも私達の特徴をキチンと書いてあるから一目見て誰と分かる絵。


あぁ······。嬉しいな。

こういう優しさを持ってくれてる子に育ってくれて。

思わずに涙ぐんでしまったよ······。


「じゃ、早速飾らないとね。雪ちゃん。あとお爺ちゃんとお婆ちゃんも書いてくれるかな?」


「うん!」


「ありがとね♪」


私のお願いに2つ返事で応えてくれた雪ちゃん。

私達のだけあると、お父さん達が凹んでしまうかな?と思ってお願いしてみたけど、もしかしたら言わなくても書くつもりだったかもしれないけどね。



「じゃあ···あと2枚追加であるから、どこに飾ろうかな?」


キョロキョロと見渡して飾る場所を探します。


「お姉ちゃん、ここなんかはどう?」


「あ、いいね。じゃ、そにしよう。雪ちゃんを真ん中にして上を私達、下をお父さん達にしよっか?」


「そうだね。それでいいかも。」


葵の見つけてくれた場所にペタペタと貼っていきます。

今は壁を傷つけずに簡単に貼れて剥がせる便利な物があるから、こういうのを飾るのも楽になったよねーと思う。

一昔前だとどうしても画鋲とかっていうイメージがあるからね。





「よし、出来た!! うん。いい感じいい感じ♪ 手伝ってくれてありがとね。」


「可愛い妹の為だからね。どうって事ないよ、お姉ちゃん。気にしないでー。」


手伝ってくれた葵にお礼を伝えたけど、可愛い妹か·····。

本当は姪と叔母という関係の2人。

でも葵が叔母さんと言われるのを嫌って、お姉ちゃんと言わせようとしたのが事の始まりなんだよね。

そしてその目論見は今のところ成功してて、葵は「葵ねーね」と雪ちゃんに呼んで貰ってるんだよね。

そんな雪ちゃんだからなのか葵も雪ちゃんを可愛がってくれて、この6年間雪ちゃんには甘々になってる。


まぁ元々2人姉妹の妹で姉の私にべったりだった葵。

そこに妹に近い存在の雪ちゃんが出来て、嬉しかったのもあるんだと思うんだよね。

私も葵が生まれた時、それはそれは嬉しかったのを覚えているからさ······。



クスッ。


「どうしたの?」


「いや·····なんでもないよ。」


そんな葵が築いた雪ちゃんとの関係を思い返してたら、つい笑ってしまった。

そんな私に気付いた葵に何でもないよと誤魔化して······。


私も葵の気持ちはよく分かるから、あえて雪ちゃんには言ってないんだけどいつ雪ちゃんが気付くのかな?と考えてるの。

そしてその時雪ちゃんは「葵叔母さん」と言うのか、又はそのまま「葵ねーね(お姉ちゃん)」で通すのか······。

まだ当分先の話だけど、その時の光景を考えるとつい······ね。



「そう?ならいいんだけど······ちょっと変なこと考えた?」


「え?そんな事ないよ?」


「そっか······。」


ちょっとドキリとした。

普段の葵って元気っ子であまり細かい事は気にしないタイプなのに、たまーに鋭い時があるんだよね。

それでも何でもないと返せば、余程の事がない限り深くは追求はしてこないんだけど。


「じゃ、私、ご飯の支度してくるから雪ちゃんが出来たら飾っといてくれる?」


「うん。いいよ〜。」

 

「ありがとう。助かるよ。」


残りの雪ちゃんの事は葵にお願いして、私は晩御飯の支度に取り掛かります。

今日は普段より少し豪勢にするからね。

豪勢······要は雪ちゃんを始めとしてみんなの好きなおかずを作って出すって感じではあるんだけど。


冷蔵庫から材料と朝に仕込んでいた物を取り出して。

今日が休日なら良かったんだけど、生憎と平日だったからね。

学校も普通にあるから、仕込みとか必要なのは朝にやっといたんだよ。

まずご飯はちらし寿司。

これは具材から私の手作り。ご飯もこれから炊いて酢飯にしてってね。

おかずも唐揚げとか海老フライとかポテトの揚げ物がメインになって、そこにスープやサラダなんかもつけて。

そこにケーキを食べたりもするから、まぁ余るといえば余る。

余った分は翌日にアレンジして出すつもりたから、別に構わないんだ。



「ねえ?お姉ちゃん······。」


「どうしたの?葵??」


キッチンカウンターのすぐ向こう側。

ダイニングテーブルの椅子に座り肘を付きながら、葵が尋ねてきた。


「この光景もあと何年見れるかなーって、ふと思ってね。お姉ちゃんはどう思う?」


「どうしたの?急に······?? でも、この光景ね······。う〜ん···難しいけど、雪ちゃんにだけに限ればあと5〜6年とかじゃないかなー?」


「だよねぇ〜。」


「さすがに10歳過ぎれば恥ずかしくもなってくると思うんだよね。そしたら飾り付けはしないで、普段通りケーキと豪華目なご飯くらいになるかなと思ってるけど······何、葵?もしかしてやって欲しい?」


「え!? いやいやいや····さすがにそれは恥ずかしいから勘弁してよー······。お姉ちゃんのご飯だけで十分だよ。」


顔を赤くして必至に勘弁してよと否定する葵。

まぁ、確かに誕生日を祝ってもらえるのは嬉しいけど、恥ずかしいのもあるからねー。

結構複雑な気持ちなんだよね。誕生日ってさ。


そう考えると雪ちゃんのもあと数年かな?とは思ってる。

今はまだ喜んでくれてるけど、中学生になる頃にはこうやって飾って祝うのも恥ずかしがると思うから。

そうしたら私達と同じ様に、ケーキと豪華目なご飯を用意してってだけになっちゃうかな?

そう思うと成長を嬉しく感じつつも寂しくも感じてしまう私です。


「それはありがとね、葵。でも······今年の葵の誕生日の時はきちんと歌を歌ってあげるからね!」


「え······!? マジ!!?」


「うん、マジだよ。この前の私の誕生日の時も歌ってくれたでしょ?だから私も歌ってあげるからね♡」


「イヤーー!! ホント勘弁してよーお姉ちゃん! あれはノリでやっちゃったんだよ!ホント、反省してる!!」


「だ〜〜めっ♪ あの時は私だって凄く恥ずかしかったんだからね!だから葵にも味わって貰うよ!うふふふふ♡」



最初は手を合わせて懇願してたけど私が本気と分かったのか、そんな私の言葉に絶望して机に突っ伏す葵。

私はこうって決めたらやり通すのを知ってるからか、回避する手段はないと思ってるみたいだね。

可哀想ではあるけれど、でも私は今年の葵の誕生日には歌ってあげるつもりでいる。


だって私だって恥ずかしかったんだもん。

20歳になって友達とかならまだしも、家族から歌われるというのはかなり拷問に近い物があるよと私は思う。

それにあの時は葵だって結構ノリノリで歌ってたと思うしさ。

だから私もってわけ。

やられたからやり返すって訳ではないけれど、これも姉妹の戯れだと思ってね。

それとこれに懲りたら来年は止めてね?というニュアンスも込めて。




「ままー!できたよ~!」


「はーい。じゃ、葵。お願いしてもいいかな?私、手が塞がってるからさ。」


「おけー。」


残りの絵が出来たという雪ちゃんに対して私は葵に飾り付けをお願いしました。

私は料理で手が塞がってるからね。



下ごしらえをしながら、チラチラとリビングの方を覗く。

飾り終わって仲良く並んで一緒に座ってる雪ちゃんと葵。

こうして後ろから見てると、歳の離れた姉妹そのものに見えるんだよね。

髪の色は正反対だけど、そこは実際の姉妹である私達がそうであるから今更そこに違和感はないし。


それと······雪ちゃんに妹弟を作ってあげたいなという想いもなくはないけど、それはムリだから······。

だからああして、葵がお姉ちゃん役をやってくれてるのはもの凄く嬉しく感じているんだよね。


「ありがとうね、葵。」


ボソッと呟いた言葉。

でもそれは誰にも聞かれることなく、静かに消えていった······。






「ハッピバースデー・トゥーユー♪」


みんなで歌を歌いながら、雪ちゃんの誕生日を祝う。

お父さんも残業をすることなく帰って来てくれたので、ありがたかったけど。

まぁお父さんの場合、残業があっても今日だけは無理して早く帰ってくるという可能性が大きいんだけどね······。

だって雪ちゃんが生まれてからのお父さんは、雪ちゃんの誕生日には必ず定時であがって帰って来てるっぽいからね。


そんな爺バカになったお父さん。

私と葵はお父さんを嫌ってはないけど、歳もあって触れ合うのはなくなったんだよね。

けど、その点雪ちゃんは「じじ〜♪」って言ってじゃれついたりもしてるから、それはそれはまあ可愛いみたいでデレッデレになってるんだよね、お父さんは。

お母さんも、まぁ似たようなものだけど(笑)



「「「「誕生日おめでとー!雪ちゃん!!」」」」


「ありがとうー♪」



満面の笑顔で応える雪ちゃん。

ああ···可愛いな♡

ケーキに乗せたロウソクの火をフウって消して。


「もう1回やる?」


「うん!」


余程嬉しいみたいで、もう1回やるみたいです。

そんな様子をほのぼのとした様子で見守る私達。

お父さんはそんな様子をカメラでパシャパシャと。



こんな素敵な光景がいつまでも続けばいいなと思いながら、雪ちゃんのお誕生日は過ぎていくのでした。


挿絵(By みてみん)

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