ある日の撮影①-1 20歳高2(挿絵有り)
体育祭の少し前の出来事となります。
暖かくなってきた、ある日の夕方。
私は幼稚園に迎えに行ってきた雪ちゃんと、リビングで寛いでます。
ソファの座る部分と言うのかな?そこを背もたれ代わりにして、座卓の前に座ってるんだ。
変な座り方でしょ?
でもこれには理由があって、雪ちゃんが意外とソファを好まないんだよね。
どちらかというと座卓の前に座ってるのが好きみたいだから、私も雪ちゃんとリビングにいる時はこちらに座ってることが多いんだ。
それなんで、この座卓を中心としたエリアにはラグを敷いてあるの。
それも高反発のウレタンが入った厚みのあるラグがね。
これが厚みがあるお陰か意外と気持ちよくてさ、フローリングや薄いラグとかを敷いてるのよりも座り心地がいいんだよね。
おまけに冬でも冷たさを感じないから、仮に雪ちゃんが寝落ちしても固くもなく冷えもしないから、少しの間ならそのまま寝させてても大丈夫なんだよね。
そんなんだから、雪ちゃんがこっちを好むのも頷けるよね。
そして好む理由がもう1つ。
私はここに足を開いて座り、その間に雪ちゃんを座らせて後からギュッとするの。
雪ちゃんのぬくもりを感じながら晩ご飯を作るまでの間の幸せな一時で、雪ちゃんもそんな私を背もたれ代わりにもたれ掛かっててご満悦そうにしてるから、これはこれでやっぱりいいよね。
それが雪ちゃんの好む理由。
ピンコン♪
「ん?何だろう??」
そんなほのぼのとしてた時に、私のスマホからLI◯Eの受信音が鳴ったんだよね。
夕方のこの時間ではクラスの女の子達から来ることはまずないから、何かのお知らせ的な物の受信かな?
そう思いながら開いてみたら、なんと栗田さんからだったんだよね。
>>「今、大丈夫かしら?」
大丈夫か?と問われれば大丈夫ではある。
ご飯を用意するにはまだ時間もあるから問題はないから。
「はい。大丈夫ですよ」<<
そう送り返して、返信を待つ事にしました。
それにしても······久しぶりかな?と思う。
以前に撮った、ウェディングドレス写真の掲載雑誌を受け取りに行った以来だもんね。
それに······実はそれ以外には撮影はしてないんだよね。
私としては別になくても構わないんたけど、まぁ······最初にあれこれと条件をお願いしちゃったから、多分そのせいかな。
そのせいで依頼が来ないんだと思ってるけど、逆に考えると栗田さんもそれを守ってくれてるって事だよねと思う。
♪〜〜♪ ♪♪〜♪
暫くしてスマホから音が鳴り、電話が来たことを教えてくれた。
この何ともない、ただスマホ本体に入ってる標準の音なんだけどね。
私はこういうのにあまり興味がないから弄らないで標準のままでいたら、葵から「着信音ぐらい変えれば?」と言われたのが懐かしく感じる。
それでも変えてはないんだけど······。
「雪ちゃん。ママちょっと電話してるけど、気にしなくていいからね?」
「うん。わかった〜。」
雪ちゃんにそう伝えてから、このままの姿勢で電話を取ることにしました。
こうして電話が来るということは、おそらく撮影のお仕事だと思うんだけどね。
「もしもし?このはです。」
『こんにちは、このはちゃん。突然でごめんなさいね。えーと······今は大丈夫との事だけど······いいかな?』
「はい。大丈夫ですよ。撮影の依頼の件ですか?」
「そうなの。話が早くて助かるわ〜。」
そう嬉しそうに話す栗田さん。
まぁなんとなくだけど、連絡が来るくらいだから撮影の件かな?というのは予想してたんだよね。
というか、撮影のお願いくらいしか連絡が来る様なこともないからね。
「それでね、今回は浴衣の依頼が来てるんだけど、どうする?一応、日時は◯月◯◯日辺りでお願いしたいんだけど······。あぁ、場所は私のスタジオでね?」
「あ〜······、ちょっと確認して来ますね。また折り返し連絡でもいいですか?」
「ええ。大丈夫よ。じゃあ、確認出来たら連絡下さい。私としては受けて貰えたら嬉しいけど、ダメならダメで構わないからね?」
「はい。分かりました。」
そう話をして通話を切る私。
さてさて、今回は浴衣ですか······。
あと1,2ヶ月もすればお祭りとかが盛んになってくる季節になるから、それを見据えた撮影なのかな?と推測する私。
これがネットに乗せるなら多少加工とかしても直ぐに掲載出来るけど、以前やったドレスみたいに雑誌だとかチラシなんかだと時間が掛かるからね。
刷って印刷して製本にて販売店まで運ぶ。
その工程でも時間はかかるのに、中身はもっと細かく色んなモデルさんで様々なファッション写真を入れたり、お店とかの情報なんかを乗せたり記事を書いたりして······。
何気なく見てる新聞の折込チラシだとか雑誌とか普段は気にしないけど、こうして考えて見ると凄い労力と時間がかかってるなって実感させられるよね。
さてさて、それよりも予定か。
どうだったかなー?と思いつつ······。
「雪ちゃん?ママちょっとお部屋に行ってくるから、ここにいてね?」
「うん。だいじょーぶだよ。ここでテレビを見てるから〜。」
うふふふ。
雪ちゃんはアニメに夢中になってるから大丈夫そうだ。
とはいっても、そんなに時間をかける訳でもないんだけど。
ただ部屋に行って手帳を見て、スケジュールの確認をしてくるだけだからね。
だからほんの数分で終わる。
階段を登りながら考える。どうしようかなーと。
ドレスの撮影の時も結構楽しかったし、思い出にもなったから今回も結構興味もあるんだよね。
栗田さんの期待にも応えてあげたいって想いもあるし······。
部屋に入り、机の上に置いてあるスケジュール帳を開いて確認をして。
さあ、私の決断は―――。
ーーーーーーーー
チリンチリン♪
「おはようございま〜す。」
入口のドアを開けると、お客の来店を知らせる昔ながら風鈴の音が鳴った。
昔、まだ私が小さかった頃に近所にあった今はなきお店に入った時も、こんな音が鳴ったな〜なんて思い出しながら店内へと入る。
そして奥へ。
「おはよー、このはちゃん。受けてくれてありがとうね。それと、今日はよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします。」
お互いに頭を下げて挨拶を交わして。
お店の入口に昔ながら風鈴の音を鳴らせるこのお店は、栗田さんのお店兼スタジオ。
私はちょっと前にあった、栗田さんからの依頼を受けたんだ。
場所が栗田さんのスタジオという事で近いのもあるのと、あとコレを着てみたいのも実はあったからさ。
「じゃあ、早速だけど始めましょっか?」
「そうですね。えーと······すみません。着付けはお願いします。」
「えぇ、それは大丈夫よ。私も新井さんも出来るから任せといて。」
そう話しながら案内されたのは更衣室。
その前にはアシスタントさんの新井さんが待機していてくれた。
「おはようございます。新井さん。本日は宜しくお願いします。」
「このはちゃん、おはようございます。こちらこそ、宜しくね。私もまた一緒にお仕事出来て嬉しいわ。じゃ、早速なんだけど、コレを着てくれるかな?」
挨拶もそこそこに新井さんから渡されたのは、肌着らしき物と後は······ブラにショーツ??
肌着はまぁわかるんだけど、下着まで変えるんだ〜と驚いちゃったよね。
「新井さん···これは?」
ブラを手に持ちながら、それをまぢまぢと眺めてる。
色は白系で形は私が着けてる様な一般的なのとは違い、なんだろ······スポーツブラに近いのかな?
「これは和装用の下着よ。和服系は寸胴の方が似合うって言われてるから、胸を平らで鳩胸に補正する必要があるのよ。だから今回、このはちゃんにはちょっと窮屈に感じると思うけど、少し我慢してね?」
······なるほど。
和服系はそういう見方的なのがあるんだね。
あれ······ということは、もしかして私って今回は不向きなんじゃないかな?
「あ······このはちゃん? 今、自分が不向きじゃないかって考えたでしょ?」
「······分かりました?」
う〜〜ん······。
確かにさっき思うには思ったけど、今回は顔には出さなかった筈なんだけどなぁ······と、不思議に思う私。
「顔には出てなかったよ。ただこのはちゃんはスタイルが良いから、私のさっきの話で気にしたのかなー?って思ったの。でも、大丈夫よ。そういうのは微々たるものだし、それ以上に魅力的だからね、このはちゃんは♪」
凄いね、新井さん。
顔に出てなかったのはよかったんだけど、荒井さん自身の言葉と以前に見た私のスタイルの事から推察したみたい。
まだ短い付き合いだけど、それでも良く見てるなって感心しちゃたよ。
「ああ、あとそれにはね、透け対策とかそういうのもあるのよ。着物はいいんだけど、浴衣は生地が薄かったりして着てる色によっては透けたりするからね。だから今回、それはこのはちゃんの肌色に合わせたから大丈夫だと思うわ。それとそれはそのまま差し上げるから今度振り袖とか着る時に身につけるといいわよ。」
「すみません···。何から何まで良くして頂いて······。」
「気にしないでいいのよ。私も栗田さんも······あ、このはちゃん。着たら声かけてね。肌着の方とか調整していくからね?」
「はい、分かりました。」
いつまでもこうして話してる訳にはいかないので、更衣室に入って着替え始める私。
最後新井さんが何かはぐらかしてたのが気にはなったけど、多分悪い事ではないだろうから気にしない事にしました。
服を脱いで下着も取って。
持ってきてたボディシートで軽く身体を拭いてから、頂いた下着に肌着を身に着ける。
······うん。なんか変な感じだね。
私はスポブラ系もあまり身に着けなかったからか、違和感が半端ない感じがする······。
でもこれも撮影の為だからと、割り切って行くことにしたよ。
その後、新井さんに手伝って貰いながら着付けをしていく。
浴衣一つとっても色々と調整したりすることがあるんだなーと、いい勉強にもなるなと思いながら見つつ、アレコレと聞いている。
これが着物や振り袖となるともっと大変らしいんだってさ。
そんな話を聞いてたら、そういえば着物の着付けの資格とか技能検定みたいなのがあったよな〜って思い出したよ。
そういうのがあるくらいだから、やっぱり着付けは大変なんだなって改めて知ったよね。
「あらー! いいわね〜このはちゃん♪とっても似合ってるわよ。」
「本当ですね! 黒髪もいいけど、このはちゃんの髪色もまた神秘的な感じがしてすっごくいいよー♪」
「そうですか?ありがとうございます。」
栗田さんも戻って来て、着付け終わった私の姿を見るなり褒めてくれたんだ。
新井さんも相変わらず褒めてくれるし、ちょっと照れるよ······。
「それはそうと、髪型はどうするんですか?」
着るには着たけど、髪の毛は全く弄られなかったから気にはなってたんだよね。
まさかこのまま行くとは思わないけど······。
「それはね、先ずはそのままロングヘアーの状態で一通りの衣装を撮ろうと思ってるの。何と言ってもこのはちゃんのそのロングヘアーはとっても美しいから、それを撮らないのは勿体ないわ! その後にそうねぇ······やっぱりお団子ヘアかしら?それを作って撮って終わりにしましょうか?」
「そうですね。先に何か髪型を作ると癖がついたりしてロングヘアーを含めて支障が出るかもしれませんしね。」
「なるほど·····。確かにそれはありますね。······分かりました。それでお願いします。」
確かに栗田さん達の言ってることは一理あるんだよね。
お団子やポニーテールにしろ、何かを作って結んだりすると多少なりとも癖がつくんだよ。
洗ってドライヤーでもかければ元に戻るんだけど、ここでそこまでの事は出来ないからね。
だったら先にロングヘアーで撮ってから、お団子というのは納得が出来る。
さすが、プロ。よく考えてるよね。
「それじゃ、そろそろ始めましょうか?」
「はい。宜しくお願いします!」
そうして、モデルとしては3回目の撮影が始まる。
今回はどのような写真が出来るのか楽しみです。




