ある日の休日⑧-4 20歳高2(挿絵有り)
「ねぇ、このはちゃん。これキレイだねー。私、こういう輝きって好きなんだよ〜。」
「うん、いいよね。私もこういうのとか、あとこっちのコレ。これも色合い的には好きだなー。」
そう茜ちゃんと話しつつ見てるのは、アクセサリーショップ。
ネックレスやピアス、髪留めとかを扱ってるお店。
別の棚にはハンドメイドで作れるようなパーツなんかも置いてあって、見てるだけでも楽しい。
近場の所でもこの手のショップはあるんだけど、雪ちゃん連れだとさすがにまだ危なくて入れないんだよ。
細かいパーツだから、ひょっとした拍子で触って落としたりでもしたら大変だからね。
だから見たいなーと思ってても、意外と見る機会が持てなかったりしてたんだよね。
こういう雑貨系のショップを見てるのには、一応それなりの理由があって······。まぁ、そんな大した理由ではないんだけどね。
ブラを買ったあの後、お手洗いを兼ねた時に茜ちゃんの荷物を一度車に置いてきたんだ。
まだまだ時間もあって色々と見たりする予定なんだけど、この荷物が軽いけど意外とかさ張ってて歩きづらかったりしてたからね。
こういう所は車で来るメリットだなとは、いつも思う。
大きい物や重い物、持ちにくい物とかを、何をどのタイミングで買っても車に戻る手前さえ気にしなければ、一度置いて来てからまたフリーで見て周れるからね。
電車で来るような所だとロッカーとかを利用しないとだし、お金もかかるからね。
その後、また手を繋ぎながら見て歩いてたんだけど、茜ちゃん的には先程ので洋服系は満足しちゃったらしくて雑貨店を中心に見て回る事にしたんだよね。
まぁ、私も洋服は今は特に欲しいなとも思ってもなかったから、茜ちゃんが良いならそれでいっかって感じで。
で、今はこのアクセサリーショップを見てるわけです。
「このはちゃんはピアスとは付けてないけど、穴は開けてないの?」
「うん、まだね。まぁ、今まで子育て中心でやってたから、そういうのを必要としてなかったのが一番の理由だけどね。でも、卒業したら開けるかな?着けたいなっていうのはあるからさ。茜ちゃんは?」
「私も卒業してからでいいかなー?今はやっぱり勉強とかそっちを優先したいし······。でも、こういうの憧れるよね。」
そう言って茜ちゃんが見てるのはネックレス。
これ1つ取ってみても様々なデザインがあって、見てて飽きないよね。
隣にはピアスとかイヤリングなんかもあって、当然こちらも様々なデザインや種類もある。
「確かにね〜。高校の時はあまり着ける機会はないけど、卒業すれば着ける機会も増えるだろうから欲しくはなるよね。」
「あ······でも、このはちゃんはネックレスは着けてるよね?それは?」
「あぁ、これね。これは18になる前に買ったやつだよ。安い物だけど、あの時は丁度雪ちゃんの入園式が控えてたからさ。耳は付けなくても首元は少しお洒落しようかなって思ってね。それまでは持ってなかったよ?高校は通ってなかったけど、それでも特に付けていくような場所にも行ってはなかったからね。」
「そうなんだ······。じゃあ、もしだけど、あの時に高校を受けないって決断してたら私達は出会えてなかったんだよね?」
「そうだね。そうなるね······。」
そう考えると、あの時にお母さんが後押ししてくれた事には感謝してる。
あれがなければ今頃私は、認定試験を受けて卒業資格を取った後に普通に働きに出てた筈だから。
「そっかぁ〜。そう思えばこれも奇跡ってやつだね。歳も違うのに同級生になれて、クラスも一緒で仲良くなれて······。」
「古い言葉だと『赤い糸』ってやつかな?でも、同性だから違うか······?」
「えー!? いいよ、いいよ! 赤い糸って事にしとこ!私はこのはちゃんの事好きだし、それでいいよ♡」
と、言う事になったみたい。
でもまぁ、本当に奇跡の上で出会って今に至る訳だからね。
どこかで何か1つでも選択肢を違えば、出会うことも今の関係もなかった訳だから。
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「このはちゃんは、何頼むか決まった?」
「そう···だねぇ······。私はこのサンドウィッチのセットにしようかな?茜ちゃんは?」
「私も······それにしようかな?」
「そう?じゃあ、シェアする?それなら何かサイドメニューを1つ辺りを頼めば丁度いいかな?」
「うん。それでいいよ。じゃあ······。」
メニューを睨めっこしながらお互いの注文品が決まった所で、卓上の呼び出しベルを押しオーダーをする為に店員さんを呼びます。
程なくして店員さんがやってきてくれて、オーダーをして。
今、私と茜ちゃんはお昼ご飯として1階にあるカフェ風のお店にいるんだ。
色々と見て歩く中でお昼をどうしようか?となって、フードコートも選択肢としてあったんだけど、このお店を見つけてここにしたんだよね。
このお店は全国に展開してるチェーン店で、私達の街にも勿論ある。
私も利用した事があって、内装の雰囲気とかが結構気に入ってるんだよね。
で、入ってメニューを選んで。
茜ちゃんも私と同じでいいというので頼んだ訳だけども、シェアを提案したのには理由があって······。
実は、時間がちょっと足りないんだよね。
ショップを見て回ってるのが思いの外楽しくて、ちょっとお昼を取る時間を失念しちゃったんだよね。
空いてるから直ぐに提供してくれそうではあるけれど、2人分ともなればそれなりに用意する時間もかかるだろうし、食べる時間もね。
その分、同じものならシェアすれば提供も食べる時間も早いし。
あとこのお店。
意外とボリュームがあるから、私達ならシェアでもお昼としては十分足りると思う。
「お待たせしました。こちらサンドウィッチセットとお飲み物になります。」
「「ありがとうございます。」」
「ごゆっくりどうぞ。」
持って来てくれた店員さんにお礼を伝えて、頂きます。
「想像してたのより、ボリュームがあるね·····。」
「そうなんだよね。このお店意外とボリュームがあってさ、売りにしてるこのデザートも結構量があるのよ。」
「そうなんだぁ。」
私が指摘したのはメニューにドドンと記載されてる、この店舗で売りにしてるデザート。
ふわふわの生地の上にアイスクリームが乗ってる物なんだけど、私1人だと食べきれないし、仮に食べるとカロリーが高すぎるんだよね。
だからたべたいなと思ったら葵を連れて来ないといけないんだよ。
雪ちゃん?
雪ちゃんはこのデザートよりも、アイスクリームです。
「ミニサイズってのも売ってるんだけど、それでもやっぱり私には多いかな?······これ、食べてみたい??」
「まぁ、ちょっと興味あるかな?」
「そっか。じゃあまた今度、食べにでも行ってみようか?私達のとこにも店舗があるからさ。時期によっては季節限定の物とかも出たりもするからね。」
「うん!いいね!あぁ〜楽しみだな〜♪」
また嬉しそうにする茜ちゃん。
私も食べたいなと思うことはあっても、さっき言ったように1人じゃ多いし······。
雪ちゃんと来ると雪ちゃんは他のを食べるから結局は一緒だし、葵もなんだかんだで出かけてる事が多いからなぁ······と、我が家の事を考えるの。
それが茜ちゃんが同席してくれるなら、私としても嬉しいしね。
「茜ちゃん茜ちゃん。はい、あーん♪」
「·········あーん。」
パクっ。
「美味しい??」
コクコクコク。
真っ赤な顔をして頷く茜ちゃん。
口にサンドウィッチが入ってるから喋れないから仕方ないのだけど、まぁでも美味しくて良かった。
「もー、このはちゃん今日は色々と突然過ぎだよー。」
サンドウィッチを飲み込んで、ドリンクを一口飲んだ茜ちゃんの開口1番はそれだった。
私も自覚はあるけどさ。
でもついしたくなってしまったんだから、しょうがないです。
それもこれも、茜ちゃんが可愛いから。
「でも、悪くなかったでしょ?それとも······いやだった?」
ずるいなとは思いつつも、悲しそうな顔をして訪ねてしまった。
「いや!そんな事ないよ!!······恥ずかしいのはあったけど、その、憧れ的なのもあったから嬉しかったのもある······。」
「なら良かった。」
顔をブンブンと振って、そんなんじゃないよ!ってアピールしてくらた茜ちゃん。
まぁ、こういうのってカップルでしたりするんだろうけど、私にはいないし作る気もないから男の子相手にそれはしない。
でも、雪ちゃんとはしたりしてる。
一般的なお母さんが子供に『あーん』って、食べさせてあげるアレたけど。
それをしてあげたんたけど、茜ちゃんは多分経験がないんだと思ったんだよね。
いや、厳密にはあるんだろうけどそれは物心がつく前までしか出来なかったわけで、本人は恐らく覚えてない。
それは以前に教えてくれたし、甘えられなかったとも言ってたから。
私は茜ちゃんのそういう寂しい部分も埋めて癒やしてあげたいと思ってるからね。
「茜ちゃん。ほらほら?」
私は指で自分の口を突いて、茜ちゃんを促します。
分かるかな??
「······あっ! えーと、いいの?」
「勿論だよ。やってみたいのもあるでしょ?」
コクリと頷く茜ちゃん。
そしてテーブルにあるサンドウィッチを手に取り、マジマジと見つめた後に行動に移した。
「じゃ、お言葉に甘えて······はい。あーん?」
「あーん。」
パクっとサンドウィッチを口に入れて食べます。
偶に雪ちゃんも真似をして私に『あーん』ってやってくれる事があるんだけど、それはそれで美味しくて幸せになる。
けど、こちらの『あーん』もそれに負けじと美味しいね。
「美味しい??」
「うん、とってもね。はい、次。あーんして?」
残りのサンドウィッチを茜ちゃんの限界が来るまで、お互いに食べさせっこしながら消化していく私達だった。
これならやっぱりもうちょっと時間が欲しかったな、と思う。
でもお店を見て周ってるのも楽しかったから、バランスとりが難しいなーと感じるよ。
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「あー······恥ずかしかった···。でも、ありがとう。」
手を繋ぎながら映画館コーナーへ向かう私達。
そんな道中でお礼を言われたけど、どってことはないよ。
それに私も楽しかったのは事実だから。
「いえいえ。そんなたいした事はしてませんから······。またしてあげるからね?」
「また??」
「うん。ほら、学校で。」
「えぇーー!?それは流石に恥ずかしくない??」
「でも、それ以外だと一緒にご飯を食べる機会なんて中々取れなくなるから難しくなるんだよね?」
「うー······。」
そうなんだよね〜。
一緒にご飯を食べたいと思っても中々難しいんだ。
私は実家で家族がいるし台所を預かってる身。
茜ちゃんは1人になる事もあるから比較的一緒に食べやすいといえばそうなんだけど、私の方が身動きがし辛いから······。
その点、学校なら週末を除けばほぼ毎日会えるからね。
「それに多分、一口ぐらいで終わるよ?みんなもやってくると思うから······。」
「確かに、それは絶対に来るねー。皆もこのはちゃんの事大好きだから。」
「うん。だから照れくさく感じるのは最初だけだよ。それに最初の一口二口はお腹も減ってるから、より美味しく感じるからね。」
一緒のクラスでいられる内に、出来ることはやっておきたい。
今年度は高橋先生が上手く調整してくれたんだと思うけど、正直来年はどうなるか分からないから······。
仮に別々のクラスになっても、お昼は一緒に食べようとは絶対に思ってるけどね。
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「ポップコーンは、いらないかな?」
「そうだね。食べたばかりだからお腹も膨れてるし、ドリンクくらい?」
「茜ちゃん何か飲んでみたいのある?私もお腹いっぱいだから、ドリンクもシェアしちゃお?」
先程の食事でドリンクも飲んでたから、新しいのを丸々一本はいらないかなーって思い、そう提案をしてみた。
茜ちゃんもそれでいいよって事で、気になった飲み物を選んでもらってお会計をして、いざ劇場内へ。
「えーと······ここだね。」
チケットに記載されてる座席番号を確認しながら、席を探します。
真ん中辺りの席を取ったからすぐに見つかった席。
「茜ちゃんは私の右側でいいかな?」
「うん。いいよー。」
そんなお願いをして、茜ちゃんは私の右側に座ってもらいます。
要は今までの歩きスタイルと同じ配置。
この方が1番しっくりくるんだよね
「結構空いてて、よかったね?」
「そうだね~。やっぱり平日だから見る人も少ないのかな?」
「かもしれないね。殆どの人は学校とか仕事とかだろうからねぇ。」
入ってみてから気が付いた、かなり空席があること。
私達より後ろの席にはまばらだけど座ってる人達もいるけど、だけど前には誰もいないので、とても見やすくていい感じ♪
「ドリンクはここに置いとくから、好きに飲んでね?」
「うん。ありがと。」
私と茜ちゃんの間にあるドリンクホルダーに入れて、いつでも好きな時に飲めるようにしときます。
「ねぇ。このはちゃん?また、手握っていい??」
「うん、いいよ。はい。」
右手を差し出して握り返してくる。
映画中はこのまま鑑賞するスタイルかな?なんて思いつつも、それもまた悪くないなと思って。
暗くなる館内。
映画の宣伝が終わればいよいよ始まる。
毎回楽しみで、レンタルして見てた作品の新作映画。
まさか映画館で見れると思ってもなくて、それもお友達と見るという驚きと嬉しさと······。
「いよいよだね。楽しみだな〜。」
ちいさな声でそう伝えてくる隣の女の子。
その小さな手はしっかりと私の手を握ってて。
「うん。ホントに楽しみだね。」
軽くギュッと握り返してあげた。
一瞬ピクッと反応したけど、それ以降はお互いに会話をすることもなく静かに時が進んでいくのでした······。




