ある日の休日⑧-2 20歳高2(挿絵有り)
「茜ちゃん、着いたよー。」
「お疲れ様でした。このはちゃん。私ばっか楽しちゃってごめんね?」
「いいっていいって。気にしないで。運転するのは別に大変って訳でもないからさ、大丈夫だよ。」
「うん。ありがとう。それにしても大きいねー、ココ。」
茜ちゃんの家から車を運転する事、約1時間ほど。
私達はとあるショッピングモールに無事到着しました。
時間的には狙い通り午前10時を少し過ぎた頃に到着して、もうお店も開店をしていていい感じです。
また開店直後というのと、月曜日というのもあり駐車場はまだスカスカでした。
お陰で楽に車を駐車出来たのは良かったよね。
こういう所は休日にもなると混んじゃって、車の駐車出来る場所を探すだけでも苦労する時があるからさ。運が悪いとしばらくウロウロして探し回るってハメになるから······。
ただ今回は空いてるが故にどこに停めようかな?と悩んだよね。
入口に近いほうが良いのかな?とか、見晴らしの良い屋上?それとも楽な1階?
混んでる時は出来ない悩みに悩みつつ出した答えは、屋根付きの立体駐車場の店舗入口に近い付近の場所にしたんだけどね。
理由は、ここなら買い物をしても直ぐに車の中に荷物を置きにこれるのが1つ。
もう1つが暑さ対策。
今日は雨の心配はないんだけど、太陽が出てるから外に停めると車の中が熱くなるんだよ。そうすると帰る時に乗り込んむと車内が暑くて冷房が効き出すまでキツいからね。
その辺りを鑑みて立体駐車場の方にしたんだ。
「そうだね。私もここに来るのは初めてだけど、近場にあるイ◯ンモールと同等規模じゃないかな?ほら、来るとき脇を通ったでしょ?」
「うん。確かにあれも大きかったよねー。まぁ、私はあまりそっちにも行かないから今一ピンとこないけど······、やっぱり車欲しいなって思っちゃった。」
「そうだね。確かに持ってると好きな所に自由に行けるようになるし、行動範囲もかなり広げられるから便利って言えば便利だよね。」
車を降りて鍵を掛けて、案内標識を頼りに店内へと向かいます。
この時に車を停めた位置と、店内に入った時の周りの様子の確認をする事を忘れないよ。
こういう広くて初めての場所だと、どこに停めたのとか分からなくなっちゃうからね。
それで車探しでオロオロするのって、恥ずかしいと思うしね。
店内を茜ちゃんと並んで歩いて行きます。
この場合は、私が茜ちゃんの歩くスピードに合わせる感じかな。
ほら、私達って身長差が20cmくらいあるから歩幅が少しだけ違うんだよね。
そのほんの少しの違いでも普通に歩いてると、どうしても私のほうが速くなってしまうの。
そうすると茜ちゃんはチョコチョコと早歩きをしなくちゃいけなくなるから、なら私のほうがちょっとだけ抑えた方が茜ちゃんも無理することなく楽なんだよね。
ちなみにコレ、雪ちゃんと歩く時も当然してるよ。
雪ちゃんとの場合は、明らかにスピードが違いすぎるからね。
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「見てみて、茜ちゃん。ここ映画館が入ってるよ。」
「ホントだ。やっぱり大きいんだねーここ。」
店内に入って暫く歩いた所で目に飛び込んできたのは、映画館の施設。
広いスペースの受付カウンターと物販のスペースに、本日の上映作品の案内とか諸々があって独特の雰囲気が出てるよね。
私がたまに雪ちゃんと見に行く、近くのイ◯ンのシネマとはロビーの雰囲気も違う。
別にどっちがどうとかって甲乙付ける訳ではないけれど、これはこれで好き。
「ねぇ?あれ······4DXって書いてあるけど、あれなんだろう?」
「4DX?うーん······私も分からないや。イ◯ンの方は普通のしかなないからなぁ······。」
茜ちゃんが気付いた『4DX』の文字。
聞き慣れない文字に2人して首をかしげる私達。
店員さんに聞けは早いけど、私もわざわざこっちに来てまで映画を見ることはないからスルーすることにしたんだ。
でも、気になったまま放置ってのもモヤモヤするから、帰ってから調べるつもりではいるけどね。
「このはちゃんは映画とかって見るの?」
「映画館では殆ど見ないけど、レンタルだったら多少はってくらいかな?ディ◯ニー作品とか有名どこのアニメ作品とか。あとは雪ちゃん絡みで見たりとかね。」
「お〜······。このはちゃんがアニメ見るのとか、ちょっと意外だったな。でも、雪ちゃん絡みなら納得かなー。」
「好きなシリーズ作品なんかもあるよ。特に小さい時に見てた物なんて特にね。」
私は映画館で映画ってあまり見ないんだよね。
映画館は小さい雪ちゃんがいるから行かないってのもあるけれど、あとは見たいと思うのがあまりないのと時間的なものが主な理由かな?
洋画によくあるアクション系とかSF物とかは苦手だし、かと言って邦画も······。
若い子に人気の若手俳優さんを使った恋愛物とかもイマイチでさ、まぁこれは私が恋愛とかに興味が無いのが原因なんだと思うんだけどね。
逆に好きなものもあるよ。
ディ◯ニー作品なんかは、定番過ぎるけど好き。
もちろんこれも、全部が全部好きって訳じゃないけどね。
あとは雪ちゃんが見るもの。
ここら辺はテレビ放送のや映画版のも見たりはしてるね。
「あれなんかは見たりする?」
そう言って茜ちゃんが指さしたのは、非常に有名な名探偵のアニメ映画だった。
頭脳は大人、身体は子供で有名なあのシリーズ映画。
「うん。あれは私の数少ない好きなアニメ作品だよ。それにこれはまだ見てないし、レンタルが始まったら借りて見ようかなって思ってるけど······もしかして、茜ちゃん見たいの?」
「うん······。私もこの作品好きなんだ。面白くて小さい時から見てるんだけどね。でも、今見ると時間があれかなー??」
なるほど。茜ちゃんもこの『名探偵』さん好きだったんだ。
私も勿論好きで昔から見てはいたけど、こんな御長寿作品になるとは思わなかったな。
それに今年のは組織が関わる内容らしくて、かなり評判が良いらしいんだよね。
「だったら折角だし見てみない?私も見てみたいって思ってたしさ。」
そう茜ちゃんに提案してみたんだ。
「でも、時間は大丈夫?お迎えだってあるんだし······。」
「13時までに始まる回のを見れば大丈夫だよ。まぁその分お店を見て周る時間が減っちゃうけど、それはまた来ればいいだけだしね♪」
「またか······うん、そうだね!また来ればいいんだもんね。じゃあ、見よう!このはちゃん!」
「オッケ~♪じゃあまずは、時間を確認して······丁度いい時間の回があるといいね。」
そんな成り行きで、急遽映画を見ることになった私達。
急遽といっても本来の目的以外は特に予定もなく、ブラブラ見て周って過ごす予定だったから全然構わなくて、寧ろオッケーって感じだよ。
そして私もこの作品は好きで、毎回レンタルして見てるくらいだからね。
今回の作品もまたレンタルかなーって思ってた所に、まさかの茜ちゃんのカミングアウト。
で、見たいって事だから私としてはとても嬉しいんだ。
だって映画館で見られるって機会は中々ないからね。
雪ちゃんが見たいっていう『ドラ◯もん』や『ア◯パン◯ン』なら映画館で見たりした事はあるけれど、この『名探偵』はちょっと早いかなーって思ってる。
殺人とか爆破シーンとかが沢山あるからそういった意味でもちょっとあれだし、それに内容的にも難しくて理解出来ないだろうから······。
「12時40分の回があるね。それでいい??」
「うん。私は構わないよ〜。」
「はーい。じゃ、それでいきましょ。」
いい感じの上映時間のがあって良かったよ。
まぁ、まだ公開開始して2ヶ月少しだからそれなりの上映回数もあるし、席も平日というのもあってかなり空いてた。
というか、殆ど空席かな?
なので真ん中辺の1番見やすそうな席を取ったよ。
前すぎると首が疲れるし、後ろ過ぎてもスクリーンが小さくなっちゃって私は好きじゃない。
見やすくてスクリーンも大きく見える、真ん中辺が私は好き。
茜ちゃんも同じ様な意見だったので、この席選びはあっさりと終わったよね。
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「やったね、茜ちゃん。結構いい席も取れたと思うし、楽しみだね。」
チケットを無事入手した私達は、また店内を歩いてます。
映画を見るという予定が入って1時間半程はそちらで消費する事になったので、今日本来の目的をまず済まそうかと言う事で。
「うん。本当に楽しみ〜♪映画館って本当に久しぶりだし、家族以外の人と見るのって初めてかも?」
「それ言ったら私も家族以外の人と見るのは初めてだよ?ほら?私達何気に一緒だ。」
「本当だねー。偶然にしても面白いね!」
アハハハって2人して笑いながら、仲良く店内を歩いていく。
以前にみんなとショッピングモールに来たことがあって、その時も楽しかったけど、茜ちゃんと一緒にいるのはまた違った楽しさがあって凄くいい。
表現として正しいのか分からないけど、あまり気を使わなくていいというのか······まぁ、とにかく楽なんだ。
茜ちゃんを蔑ろにしてるとかじゃなくてね、素の私でいやすいというかそういう意味で。
茜ちゃんもそういう私を受け入れてくれるから、余計にね。
左隣を歩いてる茜ちゃん。
朝は少し冷っとしてたけど、ここに到着した頃にはそこそこ暖かくなったから、着てたカーディガンは車の中に置いて来ちゃってる。
今、ラフな格好をしてるけど小さな茜ちゃんには似合ってて良いなと思ってしまう。
「茜ちゃん?どうかしたの??」
「え!? あ···いや、その······。」
先程まで会話は普通にしてたんだけど、ふと見たらモジモジしてたから気になったんだよね。
で、結果はご覧の通り話しかけたらキョドってる。
茜ちゃんとはクラスのみんなの中でも1番触れ合いが多いから、なんとなく分かるようにはなったんだよね。
そして今は、何を求めてるのかもね。
「手、握る?」
これが今、茜ちゃんがしたい事。求めてる事。
「いいの!?」
「いいに決まってるじゃない。おいでおいで♪」
「やった♪嬉しいな〜。」
心底嬉しそうな笑顔で私の左手を握ってくる。
全く······学校じゃ進んで握ってくるのに、外だからって変に気を使っちゃって我慢しちゃってさ。
車を降りた直ぐくらいから、あれ?って思ってはいたんだけど敢えて言わなかったんだよね。
一応向こうからくるかな?とは、思ってたから。
で、待てど待てど来ないし、今となっては限界そうだったから私から促してみたわけです。
ま、そういう所がまた茜ちゃんらしく可愛い所でもあるけどね。
でも······1つだけダメな所がある。
「茜ちゃん。出来たら左手じゃなくて右手にして貰ってもいいかな?私さ、握るの右手の方がしっくりくるんだ。」
「右手?うん、わかった!」
パッと手を離して、トトトトっと回り込んで右手を握ってきた。
す···素早い。さすが足の速い子だと、変な所で感心してしまった私だった。
「これでいいかな?」
「うん、いいよ。じゃ、行きましょ。」
「うん。」
お互いに納得して、また歩き始める私達。
その手はお互いの指を絡ませる恋人繋ぎ?とかって言われる、そんな繋ぎ方。
これは私がそうした訳ではなく、彼女がそう握ってきたからなんだけど、この握り方は学校と同じ。
先程までは握るのにも躊躇してたのに、これは普段通りなんだもんね。笑っちゃうよ。
でも、茜ちゃんの気持ちを考えれば理解もするし納得もするからね。
それに私も嫌じゃないから。
嬉しそうに色々と話をしてくる茜ちゃん。
話題は先程の映画の作品の話なんだけど、私はこういう話をする事も少ないから新鮮で楽しいね。
どのキャラが好き?とか、どの映画作品がいいとか······。
御長寿な作品なだけあって、尽きることのない話のネタ。
そんな会話をするこの子の笑顔を、私は守って支えていくよ。
「そういえば茜ちゃんは、あれ、普段は何処で買ってるの?」
「うん?···えーとね、私ん家からだと近くに◯◯◯◯ってスーパーがあるんだけど、その店舗が大きくて食品以外にも洋服類とスポーツ用品、日曜雑貨とかを扱ってるんだよね。だからそこでササッと買ってきちゃうんだ。」
「あー······なるほど。私も食品は同じ系列の店だけど店舗が違うね。」
私と茜ちゃんの食料品買いのお店。
同系の店と判明したけど、店舗は違った。
それに私のとこは食品メインのお店だけど、茜ちゃんの所は大型店で洋服とかその他の用品も揃う店舗だったみたいです。
まぁ、郊外は広いから色んな店舗が一箇所にポンポンと集まって出来るのもよく見る光景なんだけどもね。
現に私の所もスーパーの隣に大型のホームセンターが隣接して建ってるから、買い物は非常に便利。
内部通路で繋がってるから雨の日も濡れることなく両方で買い物が出来るし、ホームセンターで日用消耗品を買ってから隣のスーパーで買い物ってパターンをよくやってるり
「このはちゃんもこのお店行くんだね〜。まぁ、あちこちにあるからそうなるのかな?」
「だね。それにこの店舗、安いし近いから便利なんだよね〜。」
私達の生活圏、半径10キロくらいにメインとなるスーパーは数店舗ほどあり、それぞれが異なる会社のお店なんだよね。
で、それなりの規模の店舗でお互いに競合店だから、セールなんかもよくやってくれて、こちらとしては大変に助かるの。
そして私と茜ちゃんもその中の1店舗を利用してると。
「私、そこで買うんたけど種類が少ないとかそういうのはないんだよ?ただ見てるというか選んでるのが恥ずかしくてさ、あまり見てられないんだ······。」
「そっか。まぁ、そういう気持ちは私も分かるから大丈夫だよ。それに今日は私も一緒だからね、一緒に選んで素敵なのを買おう。」
「うん!お願いします。このはちゃん。」
今日の目的、茜ちゃんとのお出かけ。
これは茜ちゃんに誘われて来たんだけど、ついでにもう一つのあるんだよね。
それは茜ちゃんのランジェリー選び。
これは以前に気にしてた茜ちゃんに対して、『私が選んであげる』って言ったことが関係してる。
その約束を、今日果たそうかなって思ってるんだ。
素敵なのがあればいいけれど······いや、見つけて見せる!
内心そう意気込む私がだった。




