ある日の後輩② 20歳高2(挿絵有り)
私は1年8組の中沢智恵といいます。
今年の春に桜ヶ丘高校に入学した新1年生です。
私達の高校には····あ、違うかな?
私の入学したこの桜ヶ丘高校には、なんと女神様がいるんです!
そしてそれは、私を含めた1年生女子の大半の子の憧れ的の人でありアイドル的な人。
私もあの人に一目惚れして、この高校を受験してしまった1人なんです。
高校受験の動機としては不純だよねと、今でも思う。
だからこの理由は私の両親も当時の中学の先生も知らない私だけの秘密で、表向きには別の理由を伝えてあるんだ。
元々は別の高校を受験するつもりでいたけど、この女神様を見てしまってから一気に変わったんだ。
幸いにして元々受けようとした高校と、この桜ヶ丘高校で似た様なコースがあったので、それを表向きの理由としたんだけどね。
私がこの高校を選んだ理由。
それをクラスの女の子と話をしてたら、同じ様な理由で受験した子が沢山いたのには驚いた。
そしてこれを機に、私達は急速に仲良くなったのは言うまでもない。
あの人を初めて見て知ったのは、今年のお正月にやってた特番の1つであった『新しい宝箱』という番組。
この番組の学校かくれんぼというコーナーは大好きで、私は毎回見てるんだよね。
そして今回の放送も例に漏れずに見てるんだけど、オープニングのナレーションで桜ヶ丘高校と出た時はビックリしたよ。
隣の市にある高校で、私の住んでる地区からでも十分に通える範囲の場所にある学校だったから。
こんな近場に来たんだ〜いいなぁ〜って思いながら見てると、いつものように応募者の生徒さんが映った。
その瞬間、ビビッと来たんだよ!ビビッと!!
「何この人!?綺麗ーー♪」
って、思わず声に出してしまった。
そしてそれは一緒に見てた両親とお兄ちゃんとお姉ちゃんも同じで、お兄ちゃんなんて完全に固まってたよね。
それ程にもの凄いインパクトというのが第一印象で、私の15年の人生で初めて見るタイプの女性だった。
まずは何と言ってもその髪。
テレビ越しでも分かる、お年寄のそれとは明らかに異なる綺麗な白髪。
最初、外国人さん?って考えたけど、すぐに違うと気が付いた。
だってそもそも、あんな髪色の外人さんはいないというのが1つ。
大半の人類は黒髪だし、あとはくすんだ感じのブロンドとか赤毛?あとは老化等で表れてくる白髪だしね。
まぁ······染めれば出来るかもしれないけど、あのロングヘアーを校則に違反してまで染める理由がないとも思うし、そもそもそれを学校が許可をするとは思えない。
だからきっとあの人は、あれが素の髪色なんだと気がついたんだよね。
髪色も不思議だけど、もっと不思議なのがあの目の色。
綺麗なルビーを思わせる色をしてて、あれも素なんだと気が付いた。
理由は髪と一緒。
わざわざ赤色のカラコンをつける理由もないし、そもそもカラコンじゃムリ。あそまで見事な赤色は出来ないもん。
そして言葉。
外国人特有の発音やイントネーションとかそういうのがなくて、私達と同じごく普通の発音にトーンだったから日本人だなと思った。
そして番組は少し進み······。
「えぇぇぇーーー!!?? 子供いるのーー!!???」
恒例のドッキリインタビューで、子供がいるとかって暴露してる······。
これにはまたまた家族一同、驚きで固まってる。
私と1年しか違わないのに、もう子供がいるとは······。
そしてお姉ちゃんが、こんな事を言ったんだよね。
「この時点で子供がいるって事は、少なくとも中学生で子供を産んでるわね。」
だってさ。
私、中3なんですけど?この時にはもう既に妊娠又は出産してたって事??
······ありえない······。
そう思った瞬間だったけど番組は進み、度々画面に映るこの人を見てて私はこの人に虜になっていった。
容姿はとても綺麗で美しくて、笑顔も素敵で。
それになんといっても、その声が我が家の安いテレビ越しでも分かるくらいに素敵な声色だったんだよね。
番組が終わった後に私は、番組を録画をしとけばよかったなーと後悔はしたけど、学校名は覚えていたので速攻でホームページを調べて情報収集をしたよ。
そして、冬休み明けに受験校を変えることを先生に報告しました。
なんとか無事に合格して、桜ヶ丘高校生になった私。
気分はルンルン♪
なんたって、待ちに待ったあの人に会えるチャンスが出来たから。
だけど現実は甘くはなかった······。
何故か全く会えないんだよー······。
この高校は全生徒が集まるような機会が少なくて、なかなか他学年の先輩たちとも会わないんだよね。
中学時代は朝礼とかでも全生徒が体育館とかに集まったけど、この桜ヶ丘高校は教室でモニター越しに見るオンラインタイプだったから。
オンライン朝礼とでも言うのかな??
あとはあるとすれば部活動とか同好会かな?
だけど数が多くて、どれに所属してるのかも分からなかった。
結局私は中学からやってた部活と同じ様な部に入部したのだけど、あの人が帰宅部だと知ったのは随分と後になってからだった。
それ自体には凹んだけど、部活そのものは好きな活動なので満足はしているけれど。
そしてある日、事態は動いた。
私達の学年のある女子生徒が、例のあの人のクラスに突撃したらしい。
そしてその結果、『お姉様』とお呼びしてもいいという許可を貰ったと、噂が広がった。
まさか!?と思ったよ。私は。
だって、そもそもというか、あの人のクラスに行けたのがまず信じられなかった。
先輩の教室は、私達の棟の1階と5階にあるの。
1階は3年生で、5階は2年生。私達はその中間の3階というわけで。
あの人は2年生だから5階にある教室なんだけど、5階はクラスの教室しかないから私達も3年生も行くことがないんだよね。
4階なら行くこともなくはないけど、教室しかない最上階には行く理由がないからね。だから余計に行きづらくて······。
会いたい会いたいと思うけど、そこまでの勇気が出せなくてヘタレだなーと凹む私······。
そんな時に広まったこの話。
最初は嘘だ〜って半信半疑だったそれは、直ぐに確信に変わった。
だってあちこちでちらほらと、「お姉様に会えた〜♪」とか「このはお姉様って声かけたら、手を振ってくれた♪」なんて、何とも羨ましい話が出て来たから······。
私は未だに会えないと言うのに、何と羨ましいんだと嫉妬して······。
でも······いいよね。『お姉様』って響き♪
私より上だから『先輩』でもいいんだけど、この人には『お姉様』って響きがとても凄く似合うと思うの。
他の先輩、身近な所だと部の先輩もそうなんだけどさ、多数いる部活の先輩は『先輩』であっても『お姉様』って感じはしないんだよね。
言ってる意味がよく分からないけど、とにかくそんな感じでなんて説明したらいいんだろう······?
持ってるオーラというのかな?
それとも他者を寄せ付けない、その整った容姿にスタイル?
勉強も物凄く出来るって話もある。
多分そういうのが合わさって、総合的に『お姉様』って感じが似合うんだと感じる。
『〜ちゃん』だと可愛くなっちゃうし、『先輩』だとごく普通だし·····。
それに聞いた話だとこのはお姉様は、移動の時に大勢の女子生徒を連れてるらしいとのこと。
多分クラスメイトの人達なんだろうけど、私から見ればそれも信じられない光景だと思う。
普通は一緒に歩くにしても仲の良い数人だと思うしね。
それを大勢ってなると、それだけ慕われてるって証だもんね。
やはり、鈴宮先輩は『お姉様』って響きがとても似合うなと、そう感じるよ。
そして、そして·····やっと、私も会えた!!
長かった······でも、その分感動も人一倍大きくて嬉しかったけどね。
会えたのは、この学校の体育祭だったんだ。
数少ない全校生徒が集まる行事だね。
その会場であるグラウンドに、椅子を持って移動してる時に出会ったんだ。
「あ!このはお姉様だ〜♪」
「あ、ホントだ! おはようございます!このは先輩!」
一緒に移動してた子が、後ろからやって来たお姉様に気が付いたんだ。
やっと初にして生で見るお姉様に感動したよ。
テレビで見たお姉様と変わらず、いや、テレビ越しなんかよりも美しかった。
綺麗な白髪の髪の毛に赤い目。白い肌。
今日はロングヘアーではなくてポニーテールだったけど、それはそれで新鮮で良かった。
そして体育祭だから当然体操着を着てるわけで、そのスタイルの良さが良さがよく分かるんだよね。
凄いなと思う。
私と1つしか歳が違わないのに、あのプロポーション。
背もあって、すらっとした手足。
細いとか太いとかでもなく非常に健康的で魅力的ないい感じで、足もO脚とかそういうのもなくて綺麗。
で、あとは何と言ってもその胸。
大きくて形の良さそうなそれは、同じ女としても羨ましく思うのと同時に、どうしたらそこまで成長させることが出来たのか聞きたくなるくらいの物だった。
「「「「おはようございます!」」」」
皆してお姉様に挨拶をした。
初の挨拶ということで、気持ちをしっかりと込めて。
「ポニーテール初めて見ましたけど、とっても素敵ですね!」
挨拶は皆でしたけれど、その直後に私は単独でお姉様に声をかけた。
内容は最初に目に入った髪型についてだけど。
そのくらい、この髪型の印象も強かったんだよね。
「似合ってます!お姉様♪」
その後も続々と声を掛ける皆。
やっぱり皆もお姉様のこと、好きなんだね〜。
まぁ、お姉様の事はよく話題にもしてるから皆が好きで憧れてるのは知ってるんだけど、改めてこうして見てるとそう実感するね。
だって皆、嬉しそうに話しかけてるもん。
そんな私を含めた皆から声をかけられて、ちょっと困惑気味のお姉様だった。
でもそれも仕方ないか······。
少ないとはいえ、そこそこの人数で歩いてた私達から一度に声をかけられれば、それは困惑もするよね?
おまけに今は急いでグランドに向かわないと行けない時間だから、尚更に。
でもそんな中、お姉様は私達に答えてくれたんだよね。
「おはよう、みんな♪ 今日はお互いに頑張ろうね!」
「「「「「あうっ······」」」」」
···
······
·········
·········ヤバい。
何!?何よ??
あの笑顔。微笑みは······。
最初、テレビで見た時に凄く綺麗な人って思って一目惚れしてこの高校を選んで、うちの高校には女神様がいるって思ってたけど······。
まさしく、その通りだった!!!
ハァ〜〜······。
どうしちゃったんだろう······。
胸が凄くドキドキする。
相手はいくら綺麗で美しいっていっても同じ女性なのに、こんなに胸がドキドキするなんて······。
「このはお姉様······凄い素敵な笑顔だったね······。」
「うん······私も初めて会えたけど、あれは反則だよね?」
「分かる分かる。あんな笑顔って作れる物なの?って思うよ?おまけに胸がドキドキしてるし······。」
「あ!マジで!? 私も何だよ!さっきからドキドキが止まらなくってさ、どうしちゃったんだろ??」
立ち止まってた足をゆっくりと再開しながら、先程の笑顔について熱く語る私達。
結局、私のみならずこの場にいた皆がドキドキを味わうという、凄い体験をしてしまった事が判明したんだよ。
そんなお姉様の後ろ姿を見つめる。
お姉様は私達の少し前の方で、クラスメイトらしき皆に囲まてれニコニコしながら歩いてる。
いいなぁ〜······。
あと1年。
あと1年、産まれが早くて運がよければ私もあの輪の中に入れたのかもしれないと思うとちょっと残念にも思うけど、今さっきとびきりのプレゼントを貰ったからまた暫くは大丈夫!
そう、自分に言い聞かせた。
体育祭は順調に進み、私個人で出場する種目も終わった。
あとは全員参加型の種目だけ。
退場門から出て、生徒の待機所の後ろを歩いて自分たちの席まで戻る道すがら、これまた信じられない光景を目撃してしまった。
それはやっぱりお姉様で、お姉様のクラスの場所を通った時だったんだよね。
何と、お姉様がクラスの女の子を抱きしめてたんだよね。
それも抱きしめつつ頭をなでなでしててさ。
思わず足を止めて、魅入ってしまった私は悪くはないと思う。
で、良く見たら競技を頑張って来た子にご褒美的な感じでして上げてるらしいみたいだった。
なにそれ······すっごく羨ましいよ······。
これから入場門の方に向かう子には「頑張ってね!」なんて、励まし付でさ。
それによって男女問わずやる気を出して向かってるし······。
これか!!
よーく、よーーく考えてみると、お姉様のクラスは2年3組。
最初の徒競走からこのクラスは結構成績が良かったんだよね。
なるほどねと、納得合点いった私。
お姉様の励ましとご褒美的な物があるとなれば、いつも以上に頑張れるという訳ですね!
凄いですね!
このシステムを考えた人は。天才だ!
そんな事を考えながら見てるとお姉様が少し困惑気な顔をして、でも何だか嬉しそうな顔をして。
周りの皆さんも仕方ないなー的な感じで?許可をした??
何だろ?って見てたら、うんと背の小さい女子生徒さんを抱きしめてた。
······ヤバい。羨ましすぎる。
この人、背が低いから位置的にお姉様の胸に顔を埋めてるよ。
良いのかな?あれ。
完全にあの豊満な谷間にボフって効果音がつきそうな勢いで埋もれてるし······。
でも、お姉様もお姉様で嬉しそうで慈愛の籠もった眼差しをしてるし······。
そっか······。
つい忘れがちだけど、お姉様って子供がいるって言ってたなとテレビで見た時の事を思い出した。
だからあの慈愛の籠もった笑みが出来るんだね。
凄く素敵な笑み。
グランドに向かってた時に私達にしてくれた、あの微笑みも凄かったけど、これはまた違った感じでいい。
何と言うか······私達にくれたのはドキッとさせてくれて胸を鷲掴みされるような感覚がある。
でもこれは、どちらかというと心が暖かくなるようなそんな安らぎを与えてくれるような微笑み。
いい物を見せてもらえた。
やっぱり私は、この桜ヶ丘高校を受験して良かった。
間違いはなかった!
そう改めて実感した私だった。
帰宅後。
自宅の自室のベッドの上にて、このはお姉様に無性に抱きしめて貰いたくなった私がいた······。




