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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ある日の体育祭①-6 20歳高2(挿絵有り)

『それでは恒例のお題の確認と、何故それを選んだのかを聞きたいと思います!!』



放送委員さん(実況・解説)の方の、その言葉による恒例の確認。

シンプルなお題であればそんなに聞かれることもなくあっさりと終わり次の人へ確認に移るんだけど、そうでもない場合はそれなりに理由を尋ねられたりするんだよね。

あとは個人的凄く興味を惹かれるようなお題だとかそういうのだとね。


ただシンプル故に点数も低いという噂もある。

逆に言うとこの確認の答え方次第では印象も良くなって、点を稼げるかもしれないという事なんだよね。

とは言っても、私は私の思った事をそのまま言う事なんだけど。



『では、最初にゴールした方から確認したいと思います! クラスは2年1組さん、お題は『赤くて薄いもの』だそうです!!持って来た物は·········。』



すぐ向こうでは順に確認をしてるけど、私はそっちは置いといて隣の高橋先生を確認します。

結構無理をさせちゃったからね。心配ではあるの。


「先生?大丈夫ですか??」


「はぁ···はぁ······。正直言って···キツイな······。そんな大した距離じゃないのに······普段走りなんてしないから、意外と身体にくるわ······。」


はぁはぁ、ぜぇぜぇと、膝に手をつきながら肩で息をしている高橋先生。

うん。これは相当きつそうだ······。


「しかし·····凄いな、鈴宮は······。そんなに息、あがってなさそうだ······。」


「まぁ、普段走ってはいないですけど、運動はそれなりにはしてますからね。それに体育の授業もありますし。」


「そうか。······あー······、やっぱり学生生活を終わると、途端に運動をしなくなるからヤバいな······。」



先生のそんな言葉になるほどなと思うと同時に考える。

確かに学生のうちは体育の授業や部活などで、走ったりとかして身体は動かすもんね。

あとは私みたいに中学・高校と自転車で通ったりもするのもある。だから地味だけど意外とこの運動というのは、身体にとっては大きいのかもしれない。

それが社会人になれば、自分で意図しない限りは運動する機会って殆どないから······。 

車やバイク、電車で通勤や買い物と行くことが殆どになるからさ。


私も体型作り・維持でストレッチ等をしてたけど、今の高橋先生を見てたらランニングも取り入れようかな。

まだこの先、雪ちゃんと一緒に何かをする事もあるだろうし、その時に今の高橋先生みたいな姿を雪ちゃんに見せたくないからね。

1日1キロでもしっかりと走ればそんな大した時間はかからないし······うん!悪くない!!



「先生。ありがとうございます。」


「え?なんだ??急に······?」


「先生を見てたら、私も普段の運動にランニングを取り入れようと思いました。それなので、そのキッカケをくれた高橋先生に感謝です。」


「おう···。それはありがとう?」


お礼を伝える。先生はちょっと困惑してるけどね。

でも先生のお陰で私の今後の目標というか方針みたいなのがまた1つ出来たから、良かったと思ってるよ。だから感謝です♪



「ところで先生?もう大丈夫ですか?そろそろ確認が来ますからシャキッとしてくださいね? みんなからも注目はされますから······。」


改めて確認してみれば、もう目前まで確認がてらのインタビューが進んでるからね。

あまり情けない姿を晒してると、こちらとしてもちょっと恥ずかしいから。

そうじゃなくても、走ってる時に色々と言われてはいたし、引いたお題の内容があれだから絶対に注目を浴びるのは分かってるんだ。



「おう!もう大丈夫だ。少なくとも呼吸に関してはな。」


「それは良かったです。先生は普段はシャキッとしてて格好いいんですから、そっちの方が私は好きですよ。」


「··········そりゃぁ、どうも。」


照れてる照れてる♪

放送で色々と言われてた意趣返しに言ってみたけど、うん、面白い光景が見れたね。

まぁでも、格好いいと思うのは本当。

面白い所もあるけれど、しっかりもしてるし頼りにもなるからね。




『さあ、最後は高橋先生を連れて来た2年3組の鈴宮さんです!!お題は何かなーー?その物ズバリ、高橋先生と書いてあったのかが気になる所です!』


「では、紙を確認しますね?」


と、実況をしてる3年生の女子生徒と共に来た男子生徒に紙を渡します。

そしてその髪を確認する······。


『おおぉ!!!』


素っ頓狂な声が上がって、それがスピーカーに流れてしまったので周りがザワザワとしだした。


『なんと紙に書かれていたのは『大好きな人』です!! 鈴宮さんは高橋先生が好きなんですか!?』


「「「「「うおぉぉぉーー!」」」」」

「「「「キャーーーー!!!」」」」


その瞬間、もの凄い歓声があがった。

好きだね〜、みんな。

そう思いつつもマイクを受け取って、私が何故高橋先生を連れてきたのかを説明し始めます。


「一応説明させて貰うと、真っ先に浮かんだのはクラスのみんなです。でも、その中から誰か1人を選んで連れて行くという事を私には出来なかったので、高橋先生にしました。」


「おぉ! それはかなり素敵な事ですね。クラスのみんなが好きだけど1人は無理だから、高橋先生を選んだと······。」


そうは言ったけども、本当は違う。

真っ先に浮かんだのは、当然雪ちゃんです。

でもそれを今、語っても意味はないから言わない。

それにクラスのみんなの事も好きなのは本当だからね。

中でも茜ちゃんを特に気に入ってはいるし、みんなより贔屓をしてるのは分かってはいるけれども、基本的にはみんな平等に接してるつもり。

なので今回のコレについては、クラスから誰かを連れて行くのは無理だった。


『でもその消去法的な感じで選んだ高橋先生だと、お題の『好きな人』にはならないのでは??』


当然の疑問を聞かれたけど、これも丁度よいね。

変に思われてもよくないから、ハッキリとわかりやすく説明をします。


挿絵(By みてみん)



「そうでもないですよ? 私ってこんな見た目で色々とあるんですけど、『何かあったらすぐに言え。助けになってやるから。』って言ってくれて親身になってくれて嬉しかったんです。それにまだ始まったばかりですけど、進路の事でも真剣に聞いてくれますし······。担任の先生として当然の事なんでしょうけど、その当然が出来るって素敵じゃないですか。だから高橋先生の事は先生として信頼·信用してますし、とっても好きです。」


『おおぉぉぉ!!凄いですねー高橋先生!! 鈴宮さんに絶賛されてますね!! そんな高橋先生、最後に一言どうぞ!!』


「え!? えーと···生徒に頼りに思われると言うことは、担任として非常に嬉しく思っております。今後とも生徒の期待に添えるように励んで参りたいと思います。」


『はい。高橋先生ありがとうごさいましたー! 以上を持ちまして2年1組目を終わりたいと思います。引き続き2年生2組目スタートです!!』



最後にいきなり振られた高橋先生だったけど、無難に話して一先ず私の出番は終わった。

あとは美紅ちゃんが終われば一先ずは一件落着だね。

確認を受けたのがトラックの外側だったので、席に戻っても良かったんだけど、ここで美紅ちゃんが終わるのを待つことにしました。

だけど、その前に。



「先生。無理させちゃってすみませんでした。でも、お陰で助かりました。ありかとうございます。」


「いや、こっちこそすまなかったな。」


改めて先生にお詫びとお礼を伝えます。

先生が辛かったのは分かってたけど、時間が迫ってたので無理をさせた自覚はあるから。

それについ強い口調で、あれこれと言ってしまったのもあったから。


「だけど最後のあれは、なにもあそこまで持ち上げなくてもよかったんじゃないか?」


「そうですか?私としてはあれは本音ですし、変な噂を出されても先生にも迷惑かな?と思ったんで、あえてそう言ったんですけど······。」


噂は怖いからね〜〜。

特にこの場合、お題を読まれた時の反応から噂されそうな事は想像がつくし、下手をすると先生にも私にも害が及ぶ可能性があるからね。

だからあえて話した。


()()()()()好きだと。


先生の株も上がって、尚且つ噂もたぶん立たないと思う。

まー、私はまぁいいとしても、高橋先生はそうもいかないからね。

生徒と向き合って指導していく職業である以上、私との変な噂はとても困るだろうし、それに先生は既婚者だからね。

私との事が奥様の耳に入ってありもしない事で夫婦喧嘩なんてなったら、目も当てられないよ。

だからハッキリと語ったの。



「そっか······。まぁ、鈴宮がいいならそれでいいよ。しかしなぁ······」


「なんですか?先生??何かあるならこの際言っちゃいましょう。」


何やら煮えきらないというか、何か言いたげな先生。

内容にもよるけれど、黙っててもよくないこともあるから話すように先生を促してみました。


「いやな······鈴宮と話をしてると高校生と思えなくて、そのギャップに混乱するんだよ。年齢は知ってるから大人なのは理解してるけど、今みたいに体操着や制服を着てると普通の女子高生に見えるだろ? なのに言葉遣いや態度とかはしっかりした大人だし······頭では分かってはいても他の子と比べると余計に混乱するんだよ。」


「ああ······そういう事ですか。それはすみませんです。こんななりでも、もう20歳(はたち)になりましたからねー。」


「いや、今どきの20歳(はたち)は鈴宮ほどしっかりはしてないと思うぞ?大半のやつは進学しても、遊んだりバカやったりしてるんだから。鈴宮程しっかりしてる者は少ないな?」



そういうものなんだろうか?

小・中学校時代の同級生とはほぼ連絡をとってないからら、今何をやってるのかは知らないんだよね。

順調に進んでれば、大学か専門学校、又は社会人だとは思うけど。


「でもそこが鈴宮の良いところだからな。今の時期でも自分であれこれと出来るのは、将来目指そうとしてる教員にもプラスになるし、他の子に対しても有利になるからさ。そのままの鈴宮でがんばれ!」


「はい!ありがとうございます!」



『そのままの私で』か······。

意外な所で先生に褒められてしまった。

でも嬉しいね。

目指す教員の先輩から、そういう風に思われて言われるのは。

ありがとう、先生。

私は私のまま、これまで通り頑張って行きますね!!






  ーーーーーーーー



「「ただいまーー!!」」


「「「「「おかえりー♪」」」」」

「「「お疲れ様〜!」」」


美紅ちゃんと一緒に戻るとみんなに出迎えられた。

ワッーっとみんなが寄って来て、ハイタッチをしたり抱きついてきたり。

わちゃわちゃと暫くやって、やっと一息つけたよ。

「ふぅ···。」っと息を吐いて、持って来た水筒から水分を補給して汗を拭う。

 


挿絵(By みてみん)


「大変だったね、このはちゃん。」


「うん、そだね。今回は私もだけど美紅ちゃんも中々苦戦してたから、お互いに大変なのを引いちゃったよ。」


アハハハ···と、終わった今となっては笑って済ませられるけど、ホントにあれは大変だった。

私もだけど、美紅ちゃんも大変でさ。お互いに人物だったんだよね。

私は『大好きな人』という、こういうのでありがちな内容で高橋先生にしたんだけども、美紅ちゃんは『モノマネ上手な人』だったらしいんだ。

なんだそれー!?って思うよね。

私もそう思うし、美紅ちゃんもしかり。

しっかりフリーズした後に私達のクラスへ探しに来て、見つからないからどんどん他のクラスへ探しに行ってたよ。


私が遠くへ行ったのに対して、美紅ちゃんは近場で探しまくり。

幸いにして特定のモノマネではなかったから結果的には見つかったんだけど、かなりヘトヘトだったのは言うまでもないです。


そして私も。

まさか高橋先生があんな所にいるとは思わなかったよね。

てっきり本部席辺りにいるものだと思ってから。


「ねーねー、このはちゃん。高橋先生って結局どこにいたの?」


「ん?高橋先生??」


「そ。このはちゃんグラウンドの外に行ったでしょ?」

「そーそー。皆で何処に行ったんだろって、心配したんだよ?」


どうやらみんなは、私が先生を探しに行ったのを分ってたみたいだね。

隠す程のものでもないから、ここは話しても大丈夫かな?


「えっとね、高橋先生はトイレだって。」


「うわぁ······。」

「トイレって······。それはまた何とも······。」

「何とも間の悪い······。」


みんながポカーンとした後に、『間が悪い』『タイミングってもんが···』『我慢しろよ〜』とか、言いたい放題だったね。

まぁ、少しはみんなの気持ちも分かるけど、こればかりは仕方ないよ。生理現象だもん。

高橋先生の為にも、フォローはしておく事にしました。


「まぁまぁ、みんな。こればかりは仕方ないよ。生理現象なんだからさ。それに先生だって、まさか連れて行かれるとは思っても見なかっただろうし、それは私も同じだからね。寧ろアレを引いて高橋先生を選んだ私が悪いんだから、あまり先生を悪く言わないで欲しいな。」


「このはちゃんがそう言うなら·····」


「そう···だね。生理現象だし仕方ないよね。」


「結果間に合ったんだし、良しとしとくか。」


とりあえずは落ち着いて納得してくれたみたい。

普通に考えれば生理現象だし、不可抗力だから先生に非はないからね。

みんなに話したように、高橋先生を選んでしまった私が全て悪いの。


「それにさ実際の所、先生はこっちに戻って来てた所で発見したから、なんとか間に合ったんだよ?」


「そうだったんだー。」


「それはさすがに分からなかったよね。」


「なるほど。それが結果的に良かった訳だ。」


そっかそっかと、頷きあうみんな。

よし。これなら高橋先生も大丈夫かな。


そんなドタバタで無事終わった借り物競争。

プログラムを確認すれば前半というか、午前中は私達学年別女子によるダンスで終わりだね。

午後は部活動対抗リレー······これは私は出ないからいいとして。

残るはクラス対抗の大縄跳びとリレーか。

と、なると残りは3つ。



さてさて、どうなるのかな?






  ーーーーーーーー



「高橋先生、よかったですね〜。『大好き』ですって。」


「ほんとほんと。羨ましいですな。あんな綺麗な生徒に慕われて。」


本部テントの隣、教員や来賓用の椅子が置いてあるテントに戻ると、井上先生を筆頭に声を沢山かけられた。


「鈴宮もああ言ってましたけど、教師としては嬉しい限りですね。」


全くその通りである。

今は様々な出来事・事件があるが、教員という立場を利用した犯罪もけして少なくはない。

そしてまた高校生という多感な時期に、こうして信用・信頼して貰えてるというのは教師として担任として、非常に嬉しく感じる。


それをまた本人は自覚はないかもしれんが、3組をある意味で纏めて1つにしている鈴宮にそう思って貰ってるという事実はやはり嬉しい。


「いいなー高橋先生。私もクラスを持てたら生徒にその様に思われてみたいですね。」


「こういうのは一気にどうのこうのと出来るものではないですからね。地道に日々をこなして、それでも何とも思われない事も多々ありますし、難しいものです······。」



そう言う井上先生。

もうタイミング的にはクラスを担当しても良いとは個人的には思うが、来年か再来年あたりにでもいけるかな?

まぁ持てたら持てたで色々と苦労もあるんだけどな。

それは言わないでおこう。



······ああ、でも良かった。

鈴宮がああ言ってくれたお陰で、変な風に思われていなくて。

本気にする人はいないとは思うが、それでも分からんからな。


生徒と教師の恋?

本当に洒落にならんからな。

変なことはこれっぽっちもないが、こういうのが好きな奴は『大好きな人』、そのキーワードだけでありもしない事を広めるし、今はSNSなんかもあるから更にたちが悪い。


そしてこれが()()()()でも、妻の目にとまっただけでもと考えると······ああ!恐ろしい!!



こんな事を見越して対応した鈴宮に本当に感謝してるよ。

ありがとう。 



そんな鈴宮を見てると、うちの子供も鈴宮みたいな性格の子になってくれるといいなーと思いつつも、何をどうやったらあの様な子になるのか、見当も付かない俺だった――――。





「あ〜······、ランニングでもするかな······。」


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