ある日の授業④-3 高2(挿絵有り)
長文になりました。
宜しくお願いします。
「はーい!そこまで!」
先生のストップの声で、ダンスの練習が一先ず終わりました。
ハァ···ハァ······と肩で息をしながら、何とか呼吸を整えようと頑張ります。
周りを見渡してみれば、みんなも大体同じ様な感じで呼吸をしてる。
違うといえば運動部に所属してる子くらいなんだけど、それでも疲れてる感じがするもんね。
だから文系の部活の子や、そこそこの運動をしてる私なんかくらいでは疲れるってものです。
「皆、だいぶ良い感じだよ。これが今回の2年生のダンスの一連の踊りの流れになります。あとはもう少し完成度を高めれば大丈夫かなと思いますので、頑張りましょう!」
「「おおーー!」」
「「「「「はーい!!」」」」」
先生のそんな言葉に喜ぶみんなです。
それはもちろん、私も嬉しい。
去年も踊った体育祭のダンス。
各学年事に分かれてそれぞれ異なったダンスを披露するプログラムがあるんだけどさ、これが中々大変なんだ。
巷でよく見る本格的なダンスではないけれど、それでも手足を振り上げたり回転したり、動いて陣形を変えてまた踊ったりとか······まあ、忙しくて大変なんです。
私達がそういう女子用の競技をやるので、当然男の子達にも男子専用の競技が当然あって、それを向こうで練習してる。
私達はダンスだけど向こうはなんていうのかな?
応援団?よく分からないけど伝統的な物らしいです······。
説明が難しいね。
まぁ、3年生になると体力を使うような肉体的な競技になるらしいけどね。
「次回もダンスを一連の流れでやりつつ、完成度を高めて行きたいと思ってますので宜しくお願いしますね。あと平行してクラス競技の方も練習していきますので、そちらもお願いします。」
「「「「「はーーい。」」」」」
先生が次の授業の内容について語ってくれました。
クラス競技の練習か·····。
これもこれで中々大変なんだよね〜と、心の中で思う私。
「では、早いですが今日はこれで授業を終わりにします。次の授業に遅れないようにして下さいね。」
「「「「「はい。」」」」」
「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」
先生が授業を終りにしてくれました。
みんなでお礼の挨拶をして終わりになるんだけど、みんなの声が嬉しそうだよね。
おそらくだけど、ダンスが大変だったのと早く終わった嬉しさがあるんだと思う。
今回もなんだけど、この先生は授業を早めに終わらせてくれるんだよね。
理由は知らないけれど、私達としては大変にありがたく感じているし、思っている。
体操着姿になるより、制服に着替える方が手間暇がかかるからね。
「このはちゃん、行こう!」
その声と共にガシッと右手を茜ちゃんに握られた。
こういう所も茜ちゃんは素早やくて行動的なんだよね。
まぁ、仲良くなる前から茜ちゃんは活発な女の子だったけどさ。
ただその活発な所とは裏腹に心は寂しがり屋なんだよね。
家に帰ってもお父さんしかいないし(お姉さんは近場の別の家)、そのお父さんも夜勤があるらしく、下手すると帰ってから朝まで1人という事もあると教えてくれた。
殆ど記憶にもなく覚えていない、そんな歳の時に亡くなった茜ちゃんのお母さん。
そんなお母さんに雪ちゃんのママをしてる私を重ねて甘えて来ててさ。
そんな健気に頑張ってる茜ちゃんを支えてあげようって誓ったんだけど、茜ちゃんが可愛くってつい私も甘くしちゃうんだよね。
もう一人娘が出来たみたいな感じでさ。
そんな茜ちゃんに引っ張られて更衣室へ向かい始めようとした時、
「あ!私こっちもらい!」
と、空いてた左手を今度は別の女の子に握られた。
その瞬間に「「「ちっ!」」」なんて声も聞こえてさ、もう何をやってるんだか······。
みんなして私の取り合いみたいな事をしてさ、なんだか子供みたいだよね。
兄弟姉妹でお母さんを取り合いしてる、そんな感じで。
「どうしたの?このはちゃん?何か笑ってたよ?」
「え!? 私、笑ってたの?」
「うん。『クスッ』って、可愛い笑みだったよ♪」
「私も見たよ。クスって笑ってたね。」
「うんうん」
「私も見た〜」
「えー?まじ!? 私、見れなかったんだけど?!」
私の横もしくは前に居て、偶々こっちを見てた子には見えてたみたい。
逆に後ろにいた子は見えなくて······それは当然か。
後ろに居て見えるわけないもんね。
それはそうと、私、笑ってたのか〜。
全く気づかなかったよ。
「で?急にどうしたの?」
茜ちゃんが私の手を引きつつそう尋ねてくる。
「いや······さっきのみんなのやりとりがね、お母さんを取り合う姉妹みたいだなって見えちゃって、そしたら何か可笑しくなっちゃって笑っちゃったみたい。」
正直に言ったよ。
だって本当にそうなんだもん。
「お母さんを取り合う姉妹·····。」
「このはちゃんがお母さんで、私達が子供?」
「あははは······。確かにそんな感じだったねー」
「うんうん。そう見えなくもないよね!」
「じゃあ、茜が末っ子かなー?」
「えーー?! 私、末っ子なのー???」
「だって、1番このはちゃんに甘えっ子じゃん! それに背もちっこい。」
「「「だね!」」」
「うう······否定出来ない所が痛い······。」
再びあれこれと賑やかになるみんな。
まぁ1年間一緒に過ごして、また1年誰一人欠けることなく一緒にもなればそれは嬉しいだろうし、仲の良さや絆も深まるよね。
その中心が私みたいだけども。
私もこれだけみんなに好意を向けられれば、嫌でも気がついたよ。
年の離れた私がこんなに慕われるとは、1年前は思っても見なかったしね。
どちらかというと、卒業出来ればいいやぐらいの気持ちだったからさ。
歩きながら皆に伝える事にします。
「私はさ、みんながわいわいと楽しくしてるのを見てるのが好きだから、皆仲良くしてほしいかな。私を好いてくれるのは嬉しいけど、それで取り合いとかして悲しくなるのは辛しい······。私も1人だからみんなに満遍なくしてあげられないのは分かってるし、申し訳ないなって思うけど······。」
「「このはちゃん······」」
みんなが歩きながらではあるけれど、きちんと聞いていてくれる。
「今みたくタイミング悪くて手が繋げないとか、まぁ色々と悔しくなるかもだけど、そしたら遠慮しなくていいから言ってきて。そしたら私も可能な限り応えてあげるからさ。ね??」
これもまた私の本音。
女子はそれなりの人数がいるけど私は1人。
やれる事、今やってる手繋ぎや腕組は2人しか出来ないし、その他も限界はある。
立ち位置が悪くて出来なかったり、性格的な所が影響して絡んで来れなかったりとかね。
そういう子にも個別に来てくれれば、まぁハグレベルぐらいなら問題はないし、逆に私からも声をかけてあげようかなって思う。
それに教員を目指そうと決めたのもある。
先生になれば今もそうだけど、色んな性格の生徒と向き合わないといけないし、色んな気配りや配慮その他諸々必要になると思うんだよね。
だから今からでもみんなをよく観て、みんなが仲良く過ごしやすくなるように気配りとかスキルを磨いていきたいって思った。
「このはちゃんって、やっぱり優しいよね。」
「ホントだね。」
「「「うんうん。」」」
「やっぱりママさんを、やってると違うのかなー?」
「それはこのはちゃんだからじゃないの?うちのお母さんとは全然違うよ?」
「それを言ったらうちもだよ??いっつもガミガミ、ガミガミ······嫌になるよ。」
そんなんでまたあれこれ始まって······。
分ってくれたかなー?
更衣室はもうすぐそこです。
部屋に入る前に、もう一言追加で伝えることにした。
「みんな、最後に1つ追加で。さっきの手つなぎでちょこっと舌打ちみたいなのが聞こえたけど、あれもやっぱり私一人だから限界があるのね。だから出来なくて寂しいとかならハグでもしてあげるから、悲しくなったりとか他の子を妬んだりして欲しくないかな。ほら、今、勉強会で達成出来たらハグってご褒美があるけどさ、それとは関係なく出来る場所で出来る時はしてあげるから、それで満足して欲しいかなって思うの。 どうかな?みんな??」
「「「「「···········」」」」」
みんな考えてる。
私は黙って答えが出るまで待ってるつもり。
其々が納得して答えを見つけるのも大事だと思うから。
「私はそれでいいよ。」と、志保ちゃん。
「私も!」
「うちも!」
「私もそれでいい!」
それから結局みんなが、それでいいよって納得してくれた。
話を聞けば教室からの移動教室で手を繋ぐ時は、やはり席の近い子が有利とかで出来なくて残念に感じる時が多々あるんだって。
そういう時に私が何かしてくれると、凄く嬉しいって言ってくれた。
当然私に負担ばかり押し付けちゃうから、ゴメンナサイってみんなで謝ってくれたけど、そういうのまで含めて皆のことが好きだから気にしないでいいからねって言ってあげたんだ。
そしたら感極まったのか泣き出した子まで出てきちゃって、早速ハグが発動したよね。
ほんと、こんなに好かれるとは思いもしなかったよ······。
勿論、迷惑なんてことはなく、嬉しく感じてるけどね。
ーーーーーーーーー
そんなやり取りをしつつ、更衣室に戻って来て着替え始める私達。
始まりの時と違って、終わりは時間的に余裕があるので本当に助かるんだよね。
これには毎回、授業を早くに終わらせてくれる先生に感謝だよね。
そんな着替えだけども、毎回見ててこれも結構な個人差があるんだなって知った。
例えば脱いだ体操服。
私はきちんと畳んで持参してるビニール袋にしまってからバックの中にしまうんだけど、人によってはそのまま突っ込んで終わりっていう子もいるんだよね。
殆どの子の場合、お母さんが洗濯した服を仕舞ってくれたりとかしてくれてるんだろうから、自分から畳むって事をあまりしないだけかな?とは思う。
あとは帰宅すればどうせ洗うんだからっていうのも、あるのかもしれないけれど。
その点、茜ちゃんはきちんと畳んで仕舞ってるんだよね。
うん、偉いなと思う。
恐らく家事全般を茜ちゃんが担当してるのだろうと想像がつくから、家事スキルも高そうだなって思っちゃう。
脱いで畳んで仕舞ってから私も着替える。
でもその前に、ボディーシートである程度身体を拭くのを忘れない。
汗をかいてるからさ、やっぱり気になるもんね。
首周りから腕や脇、足とか大体一通りを拭いて。
ここはみんなも一緒で、各々持ってきてるシートで拭いてるんだよね。
そのせいなのか、更衣室の中はよく分からない香りが充満してる。
色んな香りがミックスされて、もうカオス······。
「ねえ?このはちゃん······。」
「なーに?茜ちゃん??」
不意に茜ちゃんに呼ばれて、そちらに振り向く私。
すると少し神妙そうな顔をしてて、こんな事を言ってきた。
「私って子供っぽいかな?ほら、コレ······。」
そう言いつつ指で突いたり引っ張って見せてくるのはブラジャー、要は下着な訳で······。
なるほど。そういう事かと理解する。
思春期の少女にある悩みってことだね。
「こらこらこら。そんなに引っ張ったりしないの、茜ちゃん。私より背が小さいんだから、中が見えちゃうでしょ?」
そうは言ったけど既に見えてはいるんだけどね。何とは言わないけれど。
クラスで1番小さい茜ちゃん。
私との身長差は約20センチくらいだから、普通に茜ちゃんを見る時は上から覗き込む様な形になるんだよね。
だから引っ張れば見えるんだよ。
しかも私の直ぐ隣で着替えてるから余計にさ。
「別に、このはちゃんならいいよ?見られたって······。」
全く······顔を赤らめてそんな事を言ってはダメでしょうに。
いくら同性だとはいえ、もう少し慎みを······なんて思うけど、それだけ信用、信頼してくれてるってことなのかな?
そういう事にしときますか······。
「私は似合ってていいと思うよ。茜ちゃんは小さくて可愛いから、そういう感じのでも私はいいと思うけどな。」
思ってる事をそのまま伝えてみた。
今日の茜ちゃんは白色ベースに黒のアクセントがちょこっとついてるシンプルだけど、でも可愛い下着。
他にも身に付けてくるのは、やはり可愛い系のデザイン物が多いい感じがする。
私はそれでいいと思うけど、敢えて聞いてくると言う事は何か不満なのだろうか??
「そうかな〜······。私さ、正直に言うとこのはちゃんみたく、もっと大人っぽくてセクシー系っていうのかな?そういうのを身に付けてみたいなって思うんだけどさ······。似合わないかな??」
「私みたく? うーん······難しい問だね、これは。」
どう答えたものだろうか。
いつもの事だけど、こういう話も何気にみんなも聞いてるんだよね。
気になるお年頃なせいかさ。
「私は、自分で言うのもあれだけど、サイズ的にそんなに種類が売ってないのよ。普通サイズならそれこそブランド物からそうでない物、値段の安いものから高いものまで種類もデザインも豊富で沢山売ってるけどね。でも私の場合は大きい=重いから、たまたま売ってた安いのを買えば直ぐに駄目になりやすくて、結局高いのを買ったほうがコスパは良いんだけど、メーカーとデザインが同じになりやすいのよ。」
「そうなんだ······。大変なんだね?」
「うん。で、色だって気に入ったのがなかったりもするし、でも買わなくちゃいけないから仕方無しに買うけどね。だから、気に入ったのをつけるならやっぱり普通サイズが1番いいと思うよね。数も種類も多いし値段も手頃だしさ。とは言っても胸の大きさなんて、自分で望んだ大きさを手に入れられる物じゃないから難しい所だけどね。」
そうなんだよねー。
大きければ大きいなりに、色々と悩みはあるんだよね。
身体の方の悩み事だったり、衣服の事だったり。
さっき話したこともその1つので、サイズが大きければ売れ筋でもなくなってきて種類とか色なんかも限られるし、そもそもの物自体が少ない。
おまけに高い。
だから私はそろそろ買い替えかな?って時はチラシをチェックして、30%オフセールとかのタイミングで纏めて買ってるんだよね。
それだって数を揃えれば恐ろしい値段なんだから······。
まぁその分、ブラに至ってはしっかりした作りだから長持ちはするけどね。
「で、茜ちゃんが私みたいなのを付けたいなら買ってみてもいいんじゃない?そこはそれぞれの自由だし好みだしいいと思うよ。それに茜ちゃんは一般的なサイズでしょ?それならデザインもカラーも豊富だから自分好みの物を探す楽しみもあっていいじゃない。」
「そっか〜。······うん、そうだよね。自由だもんね。」
「そうそう。それに似合う似合わないかなんて、実際に着けて見ないことには分からないし、気になるなら今度都合を合わせて買いに一緒に行く?それなら大丈夫でしょ?それにさ、恥ずかしかったら別に学校に着用してこなくても、休日用とかにすればいいしさ。」
ブラに限らずショーツもデザインが沢山あるからねぇ〜。
こんなの何に使うのよ?的な物も売ってるしさ。
さすがにそういうのは買わないだろうけど、休日専用とかで持っててもありだと私は思う。
「このはちゃんが見てくれるなら嬉しいかな♪それとさ、このはちゃんは私から見るとうんと大人っぽいのつけてるけど···その······勝負下着的なのも持ってるの??」
「え!?勝負下着??」
「うん。」
つい、素っ頓狂な声を出しちゃったけど、一体どうしたのかしら?今日の茜ちゃんは······。
今日はなんだかいつもより随分とグイグイくるし、皆もみんなでピクッって反応して聞き耳を立ててるし〜。もう······。
「私は持ってないよ、そういうのは。以前にも言ったけど、そういう関係の人を作る気も持つ予定も私はないからね。だから必要ないんです。」
「このはちゃん、ゴメンナサイ。変なこと聞いちゃったね······。」
「いや、いいよ。でも、茜ちゃんやみんなが持つのはいいんじゃないの?実際にそれ用としてではなくても、それこそ休日用にして出掛けたりすれば、それだけでもテンションが上がったりしない?まぁ、そんな感じだけど、納得してくれた?」
「うん、大丈夫。ごめんね、ありがとう。」
私の事云々より、茜ちゃんが自身の事として納得してくれたのかな?
そちらの方が私としては大事だからね。
「その話の関係だけども、洋服も可愛いのとかでもいいと思うよ。」
「そう?」
「うん。自分が着たいって思った服が1番だと思うけど、可愛いのって今しか着れないでしょ?無理して大人びたのを着なくてもあと2〜3年もすれば、みんな大人っぽくなるんだし自然とそういう服も着るようになるからね。だったら今の少女時代しか着れない可愛い洋服を楽しむのもいいじゃんって思うな。」
「さすがこのはちゃんだね。説得力があるというかなんというか······。」
「うん。なんかストンって頭に入ってくるよねー。」
「だねぇ〜。」
みんなも聞いてくれてるから色々と反応してくれてる。
「だからさ、茜ちゃんも下着が子供っぽいかな?とか気にしないで、身に付けたい物、着たい服を着てさ今を楽しもう?可愛いのだっていいじゃん。今のそれだって似合ってて私は好きだよ。」
安心するように茜ちゃんの頭をぽんぽんしてあげる。
勿論、優しい笑顔で見つめる事も忘れずに。
うちの雪ちゃんもこうしてあげると、泣いてる時とかでも落ち着いてくれるんだよね。
暫くボ~っとしてた茜ちゃん。
だけどしばらくした後にハッとして「ありがと!このはちゃん!」って、可愛い笑顔でそう言ってきて、残りの着替えを始めた。
顔が赤かったけど、これなら大丈夫そうだね。
ロッカーについてる小さな鏡を見ながら、髪の毛を整えて着替え完了です。
こういう話をしてても、時間的に余裕があるから本当にありがたいです。毎度の事だけども先生に感謝だよね。
「ねぇねぇ、このはちゃん?」
最後の身だしなみを終わらせた所で、彩ちゃんに声をかけられた。
「私達にもぽんぽんしてほしいんだけど、いいかな?」
ちょっとバツが悪そうな、そんな顔をしながら言われてしまった。
まぁ、断るつもりは元からないけどね。時間もまだあるし、先程言った手前もあるから。
「いいよ。おいでー。あ、でも時間があるとはいえ残りは少ないから皆、2列で並んで来てね?」
「おお!やった!」
「ありがとーこのはちゃん♪」
そんな感じで喜んでくれて皆が一斉に並びはじめる。
私は両手でそれぞれ撫で撫でしてあげて、皆もそれで満足してくれてるみたいなので無事解決!って思ったんだけど······。
「鈴宮さん。そのー······私達もいいかしら?」
「え?」
なんと、4組の女の子にまでお願いされちゃった。
どうしたんだろ?って思わなくもないけど、ここで断るのはさすがに気がひけるので「いいよー。じゃ後ろに並んでね」ってお願いしたんだ。
ーー 3組のある女の子 視点 ーー
ぽんぽん。ナデナデ···。
ナデナデ···さわさわ···。
「はわわわわ······これが噂の······。」
「凄い不思議な感じだよ······。」
「ヤバい。癖になりそう······。ナニコレ?ただ撫でて貰ってるだけなのに······。」
このはちゃんが4組の子にナデナデをやってあげてる。
これは一見すると、いや、しなくても旗から見ればごく普通に頭を撫でたりしてるだけなんだよ?
それなのに謎の魅力というかよく分からないものがあって、虜になるんだよね。
そしてそれで癖になるんだ。
そんなナデナデだから、初見の4組の子が耐えられるわけがない。
何回かやって貰ってる私達でさえ、未だに耐えられないんだから······。
また一人、また一人と虜になっていってる。
そして幸せそうなうっとりとした表情をしてるから、もうあの子はダメだなって、とっさに分かってしまった。
でも悲しいかな。
あの子たちはクラスが違うから、このはちゃんと触れ合う機会は少ないんだよね。
故にナデナデをしてもらう機会も少ないという事。
唯一機会のありそうな、この体育の授業だって週に3回だしね。
そういうのを考えると、私達は本当に運が良かったとしかいいようがないよ。
1年生の時に偶々同じクラスになって仲良くなり、2年生になっても誰一人欠けることなく、みんながまた同じクラス。
本当に本当に軌跡で運がイイ。
「いいな〜これ。彩たち、これよくやって貰えてるんでしょ?」
「うん、まぁそれなりにはね。他にもあるんけどね。」
「他?」
「何々?? まだ何かあるの!?」
「稀にだけど、ハグしてくれるんだよ。」
「「「「ハグぅー!?」」」」
ナデナデが終わった子が、彩に話しかけてる。
親しげな感じたから部活でも一緒なのかな?
で、話しかけられた彩が何故かこのはちゃんの必殺『ギュッ』をバラしたよ!
あれこそ、私達だけの秘密だったのに······。
「そう、ハグ。抱きしめてくれるの。ギュッてね!」
「これが気持ちよくて幸せな気分になれるんだよ!」
釣られて他の子まで加わって、手振り羽振りしながらバラしちゃってるし······。
きっとこれはあれだね。
ナデナデで虜になったのを見て、更に上があるんだぞ!って自慢したくなったんだろうな。きっとそうに違いない!!
しかもこれは、ナデナデ以上にレアな行為だからね!
「そうそう!このはちゃんのあの胸にギュッとされると気持ちよくてさ、おまけにいい香りがするんだよ!」
「香り??香水か何かかな?」
「いや、このはちゃんは香水は使ってないって言ってたよ?」
「うん、そう言ってたね。で、何だろうって思ってさ、シャンプーとかボディソープ何使ってるの?って聞いたんだけど、教えてくれたそれだとその香りはしないんだよねぇ······。」
「何それ?じゃあ何?まさか······体臭ってこと??」
「結論から言うと多分そうなるんだけど、体臭であんなにいい香りがするのかなー?って私達でも不思議に思ってんの。」
「まぁでもいい香りには違いないし、私達も幸せな気分になれるから全然気にしないんだ♪」
「「「「そうそう!」」」」
そしてバラしたこのはちゃんの『ギュッ』の秘密。
秘密と言ってもその会話の通り、私達も全く分ってないんだけどね。
ただ言えるのは、『気持ちいい』『幸せ』『天国』『いい香り』『ずっと抱きしめられていたい』『こんなお母さんが欲しかったな』ってそんな感情。
細く言えばもっとあるけどね。
まー、とにかく超幸せ気分になれるということ。
あの大きくて形の良い胸に抱きしめられるのは、私達女子だけの特権で、1番は娘の雪ちゃんなんだろうけどね。
『こんなお母さんが欲しかったな』そんな言葉の、まさに理想を体現したお母さんの子として生まれた雪ちゃんを、羨ましく思うよ。
それに5歳にして19歳のお母さんだもんね。
似たような若さの母を持つ子は他にもいるだろうけど、あれ程の美と優しさ、思いやりがあって家事の腕も良くておまけに勉強も出来るとか、そんなパーフェクトと言ってもいい若い母なんて他には絶対にいないよ。
普通はさ、興味本位でやったら出来ちゃって仕方なく産んだってパターンが多いいんだからさ。
そういうのは相手も学生とかで若くて、生活面とかでも苦労してるとかって話を見聞きするしね。
そして若い。
雪ちゃんが私達くらいの歳になっても、このはちゃんは30歳くらいのお母さんでしょ?
40過ぎでお腹の弛んでるうちの母とは偉い違いだよ。
あー、羨ましいなぁ······。
······話がずれたけど、このはちゃんの『ギュッ』はとにかくヤバい!!
その一言に尽きる。
そしてそれを興味本位で知って味わってしまった4組の皆はどうするんだろうね?
まー、どうしようも出来ないけど、来年のクラス替えに賭けるしかないのかな??
ーー このは 視点 ーー
今回初めて4組の女の子にしてあげたんだけど、好評のようでした。
このただの撫で撫での何がどう違うのかよく分からないけど、まぁ満足されたみたいたので良しとしましょう。
噂の······って言葉が気にはなったけどね。
前方の方で4組の女の子と歩いている彩ちゃん達がふと視界に入った。
何を話してるのかは分からないけど、時通り彩ちゃん達がなんかドヤ顔をしてるんだよね。
チラッとこっちを見るから、手を振って返してあげてるんだけど。
こっちはこっちで茜ちゃんがくっついていて、幸せなそうな顔をしてる。
こんなに緩んだ表情をしちゃって、ホントにこの子は······。
そういえば······と思って、さっきちょっと不思議に思った事を聞いてみることにしたんだ。
「茜ちゃん。さっき更衣室で今日はいつもと違って随分とグイグイ来たけど、あれどうかしたの??」
「え!? あれ? あれは···えーと······。」
顔を赤くしてしどろもどろになってる。
一体どうしちゃったんだか······。
「いや、言い難いなら別にいいよ?話したくない事だってあるんだからさ。」
「ううん。大丈夫。このはちゃんには内緒にしたくないから······。それと、その······話ししても私を嫌いにならないでね?お願い······。」
余程、話し難い事みたい。
最後なんて消え去りそうになる様な小さな声で『嫌いにならないでね』って言ってくるんだもん。
「大丈夫だよ。今更嫌いにならないから。支えるって約束したでしょ?」
「うん。じゃあ、その······恥ずかしいから耳貸してくれる?」
そうお願いされたので歩くのをストップして屈んで、茜ちゃんが耳元で話しやすくなるようにしてあげました。
それだけの身長差があるからね。
「えっとね、実は今日明日辺り·········」
···
······
·········
「あ〜〜、恥ずかしいっ!!」
今まで以上に顔を真っ赤にして、手で顔を隠してる茜ちゃん。
それは確かに誰かに話す内容じゃないし、寧ろ秘密にする事だよね。そしてその内容もいくら同性で仲の良い私だからって、話すことでもないし。
でも、そうまでして私に話してくれた茜ちゃん。
本当に健気で可愛いな♡
ますます好きになりそうだし、支えたくなっちゃうね。
でも······ゴメンね。茜ちゃん。
女性にもそういう感覚的なものがあるのは、知識として知ってはいる。
でも私にはその感覚が何故か欠如してるから、辛さとかが分からないんだよね。
でも、大丈夫だよ。
嫌いになんて、ならないからね。
頭をまたポンポンとしながら、教室へ再び歩き始めます。
「大丈夫?って、こればかりは私は何もしてあげられないけどさ、だからって変に意識とか遠慮とかしなくていいからね?寧ろいつも通り来てくれた方が私は嬉しいから。そして今、遠慮されると私が困るからさ。」
「うん······ありがとう、このはちゃん。」
私の学校生活。
入学した時に思い描いてたのとは360度まるっきし違う光景になったけど、これはこれでとても楽しくて幸せな毎日。
みんなと触れ合える楽しさ。
その学校生活の中心は茜ちゃんなんだよね。
1番は勿論雪ちゃん。それは絶対に変わらないし変わることもない。
だけどそこに、『茜ちゃん』と言う存在が出来るとは夢にも思わなかったよ。
雪ちゃんにしろ、茜ちゃんにしろ、人の縁というものは不思議で分からないものだね。
そう感じる私でした。




