ある日の授業④-1 高2(挿絵有り)
キーンコーンカーンコーン······♪
教室のスピーカーから授業の終了時間をお知らせするチャイム音がしました。
大半の人にとっては長いと感じる50分授業。
好き教科だと早く感じるかもだけど、苦手だっり嫌いだったりする教科だと長く感じるらしいよね。
私としては色んな意味で集中してるから、そんなに長くは感じないのだけど。
まぁでも、そんな授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると、クラスの中が少しざわついてきて来るのを感じる。
実際に声を出すとか音を出すとかそういうのじゃないんだけど、なんていうのだろう?雰囲気的にざわつくって言うのかな?
早く授業を終わらせてくれ〜的な視線というか雰囲気を、みんなが出してるのを背中越しに感じるんだよね。
そんな雰囲気を察したのか、授業を受け持ってた先生も終わりにしてくれたんだ。
「よし、じゃあ今日はここまで。近々小テストをやるからキチンと復習しとくようになー。」
「「「「えぇーーー?!」」」」
「聞いてないっすよ!?せんせー!」
「そりゃー、今日まで言ってなかったからな。でも今言ったからちゃんとやっとけよ〜〜。」
そう言って職員室へ戻って行く先生。
まぁ、いきなり言われたから文句も言いたくなるのは分かるんだけど、こればかりは仕方ないよね。
私達のコースは進学系だから、今後は受験に向けて模試とかそういうのも定期的にやったりもするんだろうしね。
だからやっぱり常日頃の復習は大事だよ?
みんなにもそこはよく伝えてはいるんだけどね······。
「このはちゃん。準備出来た?」
隣りの席の茜ちゃんに確認がてら、そう聞かれた。
「うん、準備おっけいだよ。みんなも大丈夫?」
「大丈夫ー。」
「こっちもOKだよ。」
「行こー!」
みんなも準備が出来てるとのことで、急いで出発です。
何を急いでるのかというと、実は私達のクラスの次の授業は体育なんです。
男の子達が体操着に着替えるのはそのまま教室なんだけど、私達は当然更衣室。
で、行くにも時間がかかるし、着替えるのも時間が掛かるから大変なんだよ。
ましてや2年生になった今は、5階の1番遠い場所の教室だから尚更ね。
だから先程の授業で男の子達が何か言ってるのをよそ目に、ササッと教科書類をしまって、後ろのロッカーから体操着の入ったバックを持ってきて準備をしてたんだ。
「急げ急げ〜〜!」
そんな声と共に階段を早歩きで降ります。
決して走ってはいけないよ?怒られちゃうからね。
しかも不幸なことに更衣室は第1体育館の側なんだよね。
それでそのまま体育館で授業ならいいんだけど、あいにくと天気も良く校庭のグラウンドで授業なんだよ。
つまり更衣室まで行って着替えて、今度は昇降口から運動靴に履き替えてグラウンドに行く。
う〜〜ん······大変だね。
これを毎年の2年生は経験するということだね。
行きも大変だけど戻りも同じく大変で······。まあ、戻りは少し早めに授業を切り上げてくれれば時間的余裕は生まれるのだけどね。
そこはまぁ、先生に期待かな?
体育教諭は男子は男性の、女子には女性の教諭が担当してて、基本教科と違って学年で担当が違うとかはあまりないみたい。
それに同性の先生だから、2年生の女子の大変さも分かってると思いたいんだよね。
毎年の事だからさ。
階段をトントントン♪ タタタタッ? 景気良く音を立てながら駆け下りる。あくまで速歩きペースで。
そして3階付近に来た時にそれは起きた。
「あ!お姉様だー!」
「えっ!? どこどこ??」
「鈴宮お姉様〜〜!こんにちはー!」
「キャー♪鈴宮せんぱーーい♡」
「はーい♪ ありがとねー。今忙しいからまた後でね!」
なんか黄色い声援が階段付近にいた、1年生の女の子集団から送られてきた。
それに軽く応えてあげつつ、3階を後にします。
「このはちゃん、人気者だねー。やっぱりあの件から??」
「たぶん、そう······だね。あの子達の件からお姉様とか浸透したよね。普通に先輩って呼んでくれる子もいるけどさ。」
茜ちゃんの問いにそう答える私。
あの子達の件とは1学期が始まって暫くした頃にうちのクラスにやって来た、新井さんを始めとした1年生の女の子3人組の事。
あの時に『お姉様って呼んでもいいですか?』と聞かれて了承をしたんだよね。
それからまた暫くした頃に1年生の女の子達からすれ違う度に、『お姉様』って呼ばれるような事が増えた。
おそらくたけど、あの子達に許可をあげたことが広まっていっての結果なんだろうと思うのだけど······。
それに私に憧れてる子が沢山いるとも言ってたから、それも影響してるのかもしれない。
「いいね〜このはちゃん。私なんて声かけてくれるの部活の子だけだよ?」
「それを言ったら私達だってそうだよ?」
「「だよね〜〜。」」
部活や同好会に入ってる子には、それなりの事情があるみたいです。
まぁ、特に世話になってる先輩に会ったら挨拶をしなくちゃってのはあるんだろうから、それはそれで大変だよなって思うけど。
「でも、私は幸せかな?」
「「「そうなの??」」」
「「何が??」」
「幸せかな?」って言ったのは茜ちゃん。
それに対して皆がそれぞれに反応して応えた。
私も気になるなー。1つは分ってるつもりだけど、なんて答えるのか······?
「このはちゃんに憧れてこの高校に来るくらい本気の子もいる、人気者のこのはちゃんだよ。でも、あの子達はどんなに頑張ってもこのはちゃんの後輩であり、このはちゃんは先輩。で、このはちゃんは部活に入ってないからあまり触れ合える機会も少ない。それに比べて私達は同級生にしてクラスメイト。しかも2年連続! 同級生はあと8クラスあるけど、それでも触れ合える機会はの少ないし、下手すると殆どないからね。そういうのを考えると私達は凄くラッキーなんだよ!! だからそれだけでも凄く幸せな事なんだなって思うんだよね。」
「確かにそうだねー。」
「「「うんうん」」」
「他のクラスも触れ合いは殆どないもんね。」
「うちだって、同じ部活の子から鈴宮さんと同じクラスでいいなーって言われた事はあるよ。」
「あー···それ、私もあるよー。」
「うちも!」
「私もあるある!!」
茜ちゃんの熱の入った語り。
それに吊られてみんなも盛り上がる。
確かに私は他のクラスの子と関わることがほぼないに等しいからね。
休み時間もトイレを除けばあまり教室から出ないで完結してるし、部も入ってないから。
そういった意味では同級生といえど、クラスメイトくらいしか関わりがないとも言える。
「それにさ。こういう事も出来るじゃん!」
そう言いつつ、私の空いてた片腕を抱きしめてくる茜ちゃん。
「「「「「あーーー!!?」」」」」
その行動に見事に反応するみんなでした。
3学期の時はこんな光景があったけど、新学期になって落ち着いたからもう終わったのかな?と感じてはいたんだけど、勘違いたったらしいね。
まだみんなの中ではやりたかったらしい······。
「このはちゃんは抱きしめもしてくれるし、とても優しくて温かくてお母さんみたく感じさせてくれるから、私凄い幸せだよ。いつもありがとうね。このはちゃん。」
腕を抱きしめながら、茜ちゃんが私を見て言ってくる。
以前にもこんな事を言われたなと、懐かしくもなりながら頭を撫でる。
バックを持ってるから、やりづらいけどね。
「おぉ······ここに天国が広がってるよ。」
「なに?この尊い雰囲気は??」
「茜って何か訳ありなの?」
色々と思うところはみんなあるんだろうけど、そこは個人情報だからね。
私からは言えないよ。
そんなやりとりをしつつ歩いて、目指す目的地、『更衣室』に着いた私達。
スイッチを入れて明かりを付け、扉を開けて中に入る。
まだ合同する組の子達は来てないみたいだね。
「さあ!テキパキと着替えて外に行くよー」
そんな志保ちゃんの掛け声とともに、適当なロッカーを開けて着替え始める私達。
私達が来て直ぐくらいに、もう相方のクラスの女の子達がやって来たので、その子達も入って更衣室は賑やかです。
ほら、この体育は2クラスもしくは3クラスで合同の授業だからね。
それでも狭いってことはなくて、まだまだ余裕はあるんだけどね。
ブレザーやベスト、シャツを脱いでハンガーに掛ける。
一応ロッカーの中にハンガーがあるけど、足りない場合とかには部屋の隅の箱の中にいっぱいあるから、そこから補充して使います。
まぁ、数個あれば事足りるんだけどね。
私は今はブレザーを着てきてないから、ベストとシャツを脱げば終わり。
衣替えは6月だけど、今はそれもあまり意味をなさないからね。
G.W前から暑い時は暑いし、意外とブレザーは動きにくくてちょっと苦手。
だから比較的早くにベストにしてきちゃうんだけど、先生からも特に言われないから大丈夫っぽいです。
ささっと脱いで着替える。時間も押してるからね。
それにしても、いつもの事だけどみんなの視線が来るんだよね。
そんなに見たいものなのかな?同性なのにさ?
「なーに?みんな??」
うちの女の子も見てるけど、一緒になるクラスの子も見てる。
今年は4組のクラスと合同なんだけどね。
まぁこちらのクラスの子とは関わり合いがほぼないから、気になるのは分からなくもないんだけど······。
「いや〜〜、このはちゃん相変わらずいいスタイルだなーって毎度の事ながら感心しちゃうんだよ。」
「そうそう。何回見てても見飽きないよね。」
「「「ねー♪」」」
「ねー♪って言っても、みんなの方が若いんだから肌も良いはずだよ?それに女の子同士なんだから、私の身体を見たって何もないと思うんだけどなぁ······。」
「それを言われるとそうなんだけどさー······。このはちゃん、魅力的なんだよ。だからつい、魅入っちゃうっていうか気になっちゃって······上手く説明でなくてゴメン。」
「ううん。いいよ、謝らなくて。気にはなるけど別に嫌って訳じゃないからね。ただ毎回見ててよく飽きないなーって思ってただけだからさ。」
そう。
別に嫌じゃないんだよ。
ただ毎回見てるからよく不思議に思ってるだけ。
見飽きないのかな?とか、そんなに見たいのかな?って。
「見飽きるなんてそんな事ないよ!寧ろずっと見ていたいくらいだもの!」
おお······。
言い切ったよ。凄いねー。
「ねぇ、あんた。それ男子が言いそうなセリフだよ?分ってる??」
冷静な突っ込みが入ったね。
それに対して「うぐっ!」ってうめき声がして、ダメージが入った模様。
「そ、それは······それは、あんたもいっしょでしょ!?」
おおっと!必死の反撃だ。
私もみんなもそんなやり取りを、面白ろ可笑しく見守ってるんだ。
「え?それはそうだよ。当たり前じゃん。だってこのはちゃんだよ? 今の学生時代が終わればそうそう会うことも見ることも出来なくなるんだから、それは見ちゃうに決まってるじゃない。そしてそれはみんなも同じ様に思ってる筈だよ? だけどね、そう思ってても言わないのが友達ってもんじゃない? 親しき中にも礼儀ありって言うし、口に出したら残念女子になっちゃうじゃない??」
「うぐ······」
カンカンカンカーーン!
どうやら勝敗は決した模様です。
反撃はしたものの、返り討ちにあって見事なまでにやられましたね。
と、実況でも入れるならこんな感じになるのかな?
まぁでも、可哀想だからフォローはしてあげないとね。
「ほらほら、時間もないから早く着替えるよ?私は気にしてないからね?」
「このはちゃ〜〜ん······」
「もう······しょうがないんだから·····。」
まだダメージを受けてる彼女を慰めつつ、耳元に口を持っていって一言ボソッと呟く。
「今年、林間学校があるでしょ?? 着替えなんかより、私と一緒にお風呂に入れるよ?それに裸も見れるかもしれないね??」
「ブブッ!!」
「「「「キャーーー!!!」」」」
···
·······
··········。
元気付け8割。イタズラ心に2割。
そんな感じてボソッと言ってみたんたけど、2割の方が刺激が強かったらしい······。
身体も心も女の子なのに、私に対しての反応が男の子みたいで面白いよねって思ってしまうのは私だけなんだろうか?
ほんと、うちの子達は楽しいよね。
毎回の事ながらそう思わずにはいられない、そんな更衣室での出来事だった。




