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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ある日の井上先生

私は井上晴美。ここ桜ヶ丘高校の数学の教師です。

教師になってまだ10年にも満たない若輩ではあるものの、個人的には充実した毎日を送れていると私は思っている。

忙しい事も大変な事もあるけれど、毎日が新鮮で昨年度は担当してた3年生を無事送り出せたのが嬉しかった。

こういう場面を見ると、教師という職をやって良かったなーとしみじみと実感する。


そして今、私は教員人生で1番の緊張をしていると言っても過言ではない場面に遭遇している。

それはこの扉の中の教室に居る、ある生徒の存在で······。

職員室から渡り廊下を通り階段を上がり、廊下を歩き目的地の教室へ到達する。

その教室の入口、扉の上にあるプレートを見る。


『2−3』


そう書かれたプレート。

私が今年度から新たに担当するクラス······なんだけど、何でこうなったんだろう??

そしてこのクラスに在籍している『鈴宮このは』さんが、私が緊張している原因です。




私は前年度まで3年生を担当していました。

その3年生が卒業したので普通ならば今度は新1年生を担当する流れなのですが、なんの因果が私が新2年生の1組〜5組、つまり進学コースのクラスを担当する事になってしまったんですよね。


原因はなんとなく分かってる。

鈴宮さんの自習の時の出来事や成績の事を知り、興味本位でどこまで出来るのかと今年のセンター問題をやってもらった事が切っ掛けだと思う。

結果は語るまでもなく満点で、彼女曰くテストは楽しかったらしい。

それに急にお願いしてやってもらったのに、「ありがとうござきます」なんてお礼まで言われてしまったから。


凄い子だよね、ほんとに。

教員の間でも話は広まり結構な頻度で話題になるし、英語も出来るって事で今度は今年度から受ける英検をランクを上げて受けて貰うとかって言う話も聞いた。

そんな出来る子が、なんでうちの高校に来たのかが不思議でならない。


うちの高校だって悪くはないよ?

部活は人気だし活気もある。進学率だって大学、専門学校含めてかなりいい数値をだしてるからね。

だけど上には上の学校がある。

これだけ出来るのならもっと上の高校へも余裕で狙えたと思うし、成績だって相当な物を残せたと思うのに······。

不思議な鈴宮さんだよね。



そんな出来事があって、1年生の時点で高校で教わる数学の内容を完全に理解してしまってる事が判明した鈴宮さん。

そんな鈴宮さんに何を教えろと言うのか······。気が重い。

まぁ、鈴宮さんが出来ても他の生徒はまだ分からないから、その子達をメインに普通通りに授業をしていけばいいのだけどね。 


そして、きっと。

後々に鈴宮さんがクラスメイトに、分からない所を教えるという光景が出来るのだろうけど······。





「よし!行きますか。」


気合を入れて、今年初めての2年3組に足を踏み入れます。


ガラガラガラ······カツカツカツ···


黒板の前にある教卓の所まで行く。

扉を開けるまでは廊下からでも聞こえた声、それなりに賑やかだったクラス。

でも今はし〜〜んと、静まり返ってる。

もう教師になって数年。この新年度初の教室に入る場面は、毎年やってても慣れないね。

あ、ちなみに2桁にはまだいってないよ?それを言ったら歳がバレるからね。



教卓に荷物を置き、教室内を一旦見回してから挨拶を始めます。


「2年3組のみなさん、初めまして。今年1年、みなさんの数学を担当する事になりました、『井上晴美』と言います。どうぞよろしくお願いします。」


挿絵(By みてみん)


まずは自己紹介。

前年度から引き継ぎなら別にしなくても問題はないけれど、今年は初顔合わせだからね。

無難に挨拶をすると、パチパチパチと拍手を頂いた。


「やったー!女性の先生だーー!」


「おっさん先生じゃなくなったぜ!ラッキー♪」


「やる気出るなー!」


なんて男子特有の発言もあったりでちょっぴり嬉しい♪

まぁ私はこの学校の中でも、まだ若手の部類に入るからね。

でもよーく観てみると、このクラスは意外と反応が薄いことに気がついた。


他のクラス、とはいってもまだ1組と4組しか行ってはないけど、そちらのクラスはもっと反応があって喜んでもらえたんだよね。

この学年の1組〜5組は去年までは50代の男性教諭が担当してたから、私が仮に生徒だったとしても若い女性教諭となれば嬉しくはなると思う。


故に先程の反応の違いが気になる······。

反応を示して喜んでくれたのは男子生徒。

思春期真っ盛りの男の子だから分からなくもないけど、それでも僅か。女の子に至っては拍手はあれど、反応はほぼ無し。


······やはり鈴宮さんの存在が大きいのか、このクラスは···。

まぁ、あれだけの美しい子が居て尚且つ勉強も教えてくれるとなれば、私が来た所で反応が鈍いのもそうなるのかな···?

そんなこのクラスの中心とも言える鈴宮さんも、私の方をじっと見て拍手をしてくれてる。



「では、早速授業に入りたいと思います。教科書の3ページを開いて下さい。」


気持ちを切り替えて授業に入ることにした。





  ーーーーーーーーーー




―数日後―


前回の復習として生徒には数問ほど問題を解いてもらっている。

その間に私は黒板に次の工程の準備としてあれこれ書いています。

書きながらチラチラとみんなの方を確認をすると、まだ解いてる子もいれば終わった子もいて。

そして例の鈴宮さんは流石に終わってる模様。

相変わらずお早い事で······。


で、何をしてるのかと思うと、私のことをじ〜〜っと観てる。

何だろう?どこか変なところ、間違ってた箇所とかあっただろうか??

······いや、ないよね?うん、ない。

何度見返しても間違いはないので、大丈夫なはず······。


もう理解しちゃってる子がいて、その子に見られながら授業をするという初めての経験に、私は常に緊張しながら授業を進めていくのだった。


こんな事なら好奇心であんな事をしなければ良かったなー、なんて思いながら······。






―それから更に数日後―




何なんだろうか?

私、何かしたかしら?······いや、好奇心に駆られてテストをして貰った事はあるけれど。

だけど、それだけだよ??

それ以上の何かをやってもらった事はないし、恨みを買うような事もしてないよ?



このクラスというか、2年生の進学コースの数学の授業を受け持ってから1ヶ月少々で気付いた事。

この3組の生徒は他のクラスと比較して理解度が高い。

行っている内容及びスピードは他のクラスと同等なのに。

これは恐らくというか間違いなく、鈴宮さんのおかげなのだろうと私は結論づけた。

彼女がお昼休みに行っているという、勉強会。

そのお陰で皆の実力が上がっていて、その結果が今出ている。

故に理解も概ねしているし、極端に分からない出来ないっていう生徒もいない。

教えてる側としては理想である。



まぁ、それはいいんだ。

それ自体は昨年度の3学期の学年末テストの結果を勅使河原先生から聞いた時点である程度分かっていたし、その事を理解した上で授業をしているからね。


問題はこれではなく、鈴宮さんだ。

別に鈴宮さんの授業態度が悪いとかそういうのではないよ。

以前に高橋先生から聞いた事があったけど、まさしくその通りの授業態度。

背筋をよく伸ばし授業を受けているその姿。

キリッとして美しく見本以上の態度で、他の先生方も太鼓判を押すのがイヤというほど分かると言うものです。


で、何が問題かというと授業態度とかそういうのではなく、目線。そう()()なんです。

別に生徒が黒板を写すから前を見るのは当たり前。

だけども彼女はちょっと違う。上手く説明できないけど······。


問題をやってもらい、その間に次の準備をする私をササッと解いて観てる鈴宮さん。

特にノートに書くこともないのに、話してる私のことをじーーっと見つめては時たま何やらメモってる鈴宮さん。

自意識過剰なのかもしれないけど、私の一挙一動を常に観察されてる、そんな感じがする······。


挿絵(By みてみん)


でもこれが、ずっと続いてるんだよー······。

このクラスの授業をするようになってからさ。

最初は気のせいだと思ってた。

でもやっぱり見つめて来るから、何か間違えてるのとか気にする様になったけど、それも特になくてさ。

そして、何が何なのか分からなくなった······。





―お昼休み―



「高橋せんせー!助けてくださーい······。」


「どうかしたんですか?井上先生??」


その日のお昼休み。私は高橋先生に泣きついた。

とは言っても実際に泣いてるわけではなく、どちらかといと助言とか相談に乗ってほしくて縋り付いたって感じなんだけどね。



「高橋先生のクラスの鈴宮さんなんですけど〜······。」


「鈴宮?彼女が何か??」


不思議そうな顔をする高橋先生。

そりゃ、そうだよね。

問題とかを起こすような生徒じゃないって、1番理解してる先生だもん。

だから当然の反応だと思う。


「実は数学の授業で······。」


私は高橋先生に説明をします。

前提として授業態度とかは問題ない事を話して。


そして今回の相談事。

とにかくずっと鈴宮さんに見られている、いや、観察されてる感じ??

黒板に書いてる時も話してる最中も。

特にノートに書くこともない場面でも何やらメモりながら、私の一挙一動を見逃すまいと見つめてて······。

聞くにも聞けず、居心地も悪く、少し言い方を悪く言うと気味が悪い。

そんな出来事が今現在までずーーっと続いてると、高橋先生にお話しします。



「なるほどなー······。」


そう呟きながら何やら考える高橋先生。

さあ!

1番近くで1番長く彼女を見てきた先生は、何と答えを出してくれるのかな?


「高橋先生の授業でもそうなんですか?」


回答が出る前に気になってた事を、聞いてみた。

わたしの授業が特別なのか?

それとも他の教科でも似たようなものなのか?


「う〜〜ん······。実際のところ、非常によく話は聞いてるよ。勿論、授業態度も満点だけどな。だけど、井上先生みたいに感じたことは俺はないかな?まぁ、これは個人の感性の違いではないかと俺は思いますが·····。」


「そう···ですか······。」


「えぇ。まぁ、私は彼女の担任を1年間してましたからね。その期間を通じて彼女の人となりをそれなりに理解したつもりではいるので、その影響も大きいとは思いますがね。」


それもそうかと納得する。

私は彼女の事を勉強が非常に出来る、授業態度が良い、クラスメイトに教えている。このくらいの事しか知らないから。

それ以外の面を知ってる高橋先生から見れば、それはまた違う感想を抱くってものだよねと納得はした。

そして話を聞くなら高橋先生ではなく、他の教科を担当してる先生だということも。


「でも、このままでいて井上先生の負担にもなるのはいけないと思うので、私の方から鈴宮に聞いてみますよ。幸い近々面談もあることだし、丁度よいと思いますからね。だから話を聞き次第、井上先生に結果をお伝えしますよ。」


「あ、はい。よろしくお願いします。」


高橋先生に頭を下げて、お礼を伝えて席に戻る。

さすが高橋先生だなーって思うね。

ベテラン先生ではあるけれど、それでもやっぱり違うと思う。

人気もある訳だと1人納得する私。 



そしてこれで独身だったら、ほっとかなかったのになーと思う。

でも残念。既婚者なんだよなぁ······。

あーぁ······結婚したいなー。

子供も欲しいなー。

もうそろそろ何とかしないと結婚そのもの···いや、子供を授かる事すら難しくなってくる。

それに親からも「まだいい人はいないの?」なんて、言われたりもするし······。

そうそういい人、いないんだよー!と、言いたくなるけどさ。



そういえば鈴宮さんは前に、子供が···娘がいる様な事をかくれんぼのテレビ放送で言ってたなぁと思い出した。

高校生という若さであの容姿で子供がいるって···。

そんな子供が出来るような事をする子には全く見えないのに、人って見た目じゃ分からない物だなとつくづく思う。

そして羨ましいなとも······。





鈴宮さんの事で不安がってた私は、また違う別のところで彼女を羨ましく思うのだった······。

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