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ママは女子高生♪  作者: 苺みるく


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ちょっと昔の出来事⑥ 14歳(挿絵有り) 

「ただいま〜〜!」


玄関の扉を開けて、そう挨拶をする。

開けた瞬間に分かる、我が家の香り。

ほんの少し、9日間留守にしただけなのに凄く懐かしい気分にさせてくれる。

でもそんな感傷に浸る暇もなく、直ぐに家の中からドタバタと音がして······。


「お姉ちゃーーん!おかえりーー!!」


「こら、葵!家の中で走るんじゃない! おぉ···このは、お帰り。」


「うん。ただいま!お父さん。葵。」


玄関を開けて真っ先にやって来たのが妹の葵だった。

そんな葵に怒りつつ、続いてやって来たのがお父さん。

でも、そんなには怒ってないみたい。

どちらかと言うと、「しょうがないなー」的な呆れ感も入ってるみたい。


それもその筈で、自分で言うのもなんだけど葵はお姉ちゃん子みたいな感じだったんだよね。

家に居る時はよく側に来てくっついてたし、お風呂もほぼ毎日よく一緒に入ってた。

多分お母さんと入るよりは、私と入る回数の方が多いんじゃないかな?ってくらいに。

それが急に私が入院しちゃって、しかもそれが週末だったもんだからその後の面会も時間的に出来ず、寂しくしてたとお母さんから聞いてたからね。


そんな日が暫く続いて、今日私が帰ってくると聞いてソワソワしてたんだと思う。

たぶん、葵に尻尾があったらぶんぶん振ってそうな感じだよ(笑)


挿絵(By みてみん)


「で、お姉ちゃん。その子が雪ちゃんなの?」


葵が私が病院に行く時にはいなかった、腕の中にいる雪ちゃんを見てそう聞いてきた。


「そうだよ。ほら、可愛いでしょ?」


上手く角度を変えて、お父さんと葵に見えるようにしてあげます。

目を開けてはいるけど、特にグズることもなく不思議そうに見てる感じがする。

聞いた話によるとこの頃の新生児は、視界としてはぼやっとしか見えてないらしいんだよね。

だから何で親を認識してるのか不思議。

声をなのか、匂いなのか、はたまたぼやっとした視界でも顔の違いが分かるのか······。



「うわぁー······。ちっちゃいねー。でも可愛いよ〜♪」


「ずっと写真だったけど、やっとお顔を拝めたなぁ······。このは、頑張ったな。お疲れ様。」


「うん。ありがとう。」


お父さんが労ってくれたの。

そんなお父さんも仕事で結局病院には来れなかったから、今が直接の初対面なんだよね。

写真では何度か送ってはいたけどさ。



「こらこら、二人共。いつまでも玄関で見てないで手伝ってよ。葵、これリビングに持っていって。あなたはこれを和室ね?」


「はーい。」

「了解。」


お母さんが車から荷物を下ろしてきて、指示を飛ばしてます。

ついつい玄関先で話し込んじゃったから、いけないんだけどね。




  ーーーーーーーーーー



「改めておかえり、このは。」


「お帰り〜♪お姉ちゃん。」


「ありがとう。ただいまです。そして、こちらが新しい家族の雪ちゃんです。よろしくお願いします。」


そう言い、腕の中の雪ちゃんを家族に紹介します。

相変わらず静かではあるけれど、グズらないので助かってはいます。




そう。

今日は私が雪ちゃんを産んで、病院から退院してきた所なんです。

陣痛が始まって病院に行った翌日に産んで、それから数日の入院を経て今日という日を迎えたの。

通常はもっと早くに退院を出来るらしいのだけど、私の場合は事情が特殊だったので先生が念には念を入れてくれて少し長引いた。

低年齢の通常分娩、事件性の問題その他諸々。

特にこの今回は、私の身体の事が心配だったみたいでね。


入院中、お母さんはちょくちょく来てくれたんだけど、お父さんと葵はさっきも言ったように仕事なり学校で時間的に来れず、今日が初対面なんです。


家族みんなして、私と雪ちゃんを囲ってニコニコ、わいわい。

お父さんと葵は言わずもがな。

お母さんだって何回かは見てるはずなのに、それでも凄く嬉しそうにしてるからね。

赤ちゃんの魅力って凄いねーって、改めて感じたよ。




「お父さん。抱っこしてみる?」


「お、おう······。やべぇ···緊張するな。」


隣でニコニコと「可愛いな〜」って言ってたお父さんに、雪ちゃんをそっと渡して抱っこさせてあげたんだ。

最初はぎこちなく恐る恐るといった感じで抱っこしてたけど、だんだんとその緊張もなくなってきて普通になって来たよね。

そんな様子を眺めながら、私もそうだったなってほんの1週間前を思い出した。


あの時は今よりはもっとしわくちゃで小さくて、触れたら折れちゃうんじゃないかって抱っこする度にドキドキしてたんだよね。

でも、授乳で抱っこをする旅になる段々と慣れていって、今では普通に抱っこを出来る様にもなったし。

勿論、慎重にするのは変わりはないけどね。



「おー······やっぱり可愛いなぁ〜。このはや葵の時を思い出すよ。」


「そう?」


「ああ。」


慣れてきたなって思ってたら、今度は私達の赤ん坊だった頃を思い出してたお父さん。

葵ベースで見ればまだそこまで昔でもないとは思うけど、それでも約9年くらい前になっちゃうのか······。

そのくらいだと記憶的にもやや薄れるかな?

私も葵の時は覚えてるけど、断片的にしか思い出せないし。



「お父さん、いいなー···。葵も抱っこしたい〜〜······。」


「大丈夫よ、葵。順番で抱っこ出来るから待ってなさい。」


「うん······。」


向こうは向こうで葵とお母さんがやり取りしてた。

雪ちゃんを抱っこしたい葵と、それをなだめてるお母さんという構図で。

お父さんが満足したら次に抱っこ出来るから、それまで待っててね。



「しかし···こうもこのはとそっくりで生まれるとは思わなかったけどな。」


「まぁ、そこは確かにそうだね。私の遺伝しかないから必然的にそうなるんだろうけど、それでもやっぱり驚くよね。」


産まれた時の事を思い出します。

見に覚えのない妊娠だったから当然事件性も疑われてさ。

赤ちゃんの性別自体は女の子だねって妊娠後期の検診時に教えてもらったけど、いざ産まれたら私そっくりの白髪で赤い目で私にそっくり!

妊娠中と生まれてすぐに計2回の遺伝子検査をして、私の遺伝しかないという有りえないことが判明してさ。

まぁ、それはそれで私としては凄く嬉しかったけどね。

だってさ、全く見に覚えのない事で好きでもない知らない人の遺伝が半分あるよりも、私100%の我が子のほうが嬉しいじゃん?

勿論そうでなくても私はこの子と生きるって決めたから、愛するのには違いはないけどね。

違いはないけど、でもやっぱり何だろ??

説明は難しい······。けど、あり得ない奇跡を起こして私に会いに来てくれた、この雪ちゃんにより愛しさを抱いたのは紛れもない事実。



「妊娠が分かった時は色々と思いもしたけど、こう産まれてみるとあの時ああ判断したのは良かったと思うよ。」


「そうね···それは私も同感よ。それに、不思議と孫は子と違った可愛さがあるわねぇ〜······。」


「やっぱりそうなの?そのセリフってお爺ちゃんやお婆ちゃんからよく聞いたけど??」


確かによく聞くセリフだよなぁーとは思う。

私としては雪ちゃんもとっても可愛い愛おしく思うけど、これよりも孫は可愛いって??


「うーん···なんだろう?まだ上手く説明出来ないんだけど、兎に角そんな風に感じるのよ?あ、別にこのはや葵が可愛くないとかそういうのじゃないからね?」


「うん、分かってるよ。」


大事にされてるのは、今回の騒動を期によく分ったからね。

悩んでた私を親身になって支えてくれて、励ましてくれてここまでこれた。


「それにしても····うふふふ······。」


フフフフと、いきなり笑い出したお母さん。


「どうしたの?いきなり笑いだして?面白いことでもあった??」


「いや······。さっき孫は可愛いとかって言ったけど、よくよく考えるとこのはは14歳で葵も10歳そこら。中学生と小学生の子供で私達も絶賛子育て中。その状況で孫が生まれました!孫の世話をします!とかって、どんな光景なのよ?って考えたら可笑しくって······。」


「あー······確かにな〜。初孫に浮かれてて忘れてたけど、俺たちも子育て中なんだよなぁ。」


おかしな光景だなって言いながら、でもこれもこれでいいじゃないかと笑い合いながら和む私達。

雪ちゃんという家族が1人増えたたけで、家の中がこうも変わるものなんだなって思っちゃった。

それと同時に、歓迎されてるのも嬉しくてね。

産んで良かったって心から思うよ。



「ねぇねぇ、おとーさん。私も抱っこしたい〜!!まだー??」


葵が抱っこさせろと、お父さんの服を引っ張りながら催促してる。

そんな葵の様子にしょうがないな〜っていいつつ、交代するみたいです。


「待って葵。まず腕はこうするのよ?」


お母さんが受け取る前に葵に抱っこの腕の形を作らせて、そこにお父さんが乗せるみたい。


「いい?受け取ったらなるべく動かさないようにね?まだ首が座ってない··えーと、首の骨が柔らかくて赤ちゃんは自分で支えられないから、しっかりと支えるのよ。」


「うん···分った。······うわっ!軽い!それに小さいね···。でも可愛いね♪」


葵の抱っこにハラハラしながら見守る私達。

幸い雪ちゃんもまだグスってないから安心ではあるけれど。

そんな様子を見つめながら、ふと気になったことを聞いてみます。


「ねぇ?お父さんお母さん。お爺ちゃん達にはもうお知らせしたの??」


「ああ、それか······。」


「まだしてないわね。」


「えぇ?! まだしてないの??」


意外だったので驚いた。

てっきりもう報告したのかと思ってたから。

それにこの感じのお父さん達なら、喜々として伝えてると思ってたんだけどなー?

今年のお正月は、妊娠に気づく前だったから普通に会いに行った。

その後妊娠が発覚したので、GWは適当に理由をつけて行かなかったし、妊娠をしたという連絡もしてない。

その時は事件性も視野にいれてたから、変に心配をかけないようにって配慮してたんだけどね。

だけど、今はもういいと思うんだけどな······。

その可能性も消えたんだし。



「一応理由はあってね。雪ちゃんの体調を考えてかな。まだ新生児で免疫も弱いし、どこからか風邪でも貰っただけで何がどうなるか分からないし、怖いからね。」


「ああ、なるほど〜。」


「まだ当面の間は人にはなるべく会わないほうが良いと思うの。私の方はまだ遠いから来ないかもしれないけど、お父さんの方は同じ県内だから連絡したら間違いなく来るわよ?とは言っても、私の両親も来そうな感じはするけどね。」


「確かにうちの親はまず会いにくるな。それで何か病気でも貰うと確かに厄介だな。まぁそれに、あと2ヶ月もすればお盆だし、向こうに会いに行くんだからそこで紹介すればいいだろう?その頃なら雪もある程度しっかりするだろうし、このはの体調も元に戻るだろうからな。」


「お父さんとお母さんがそれでいいなら、私は構わないよ。」


私としてはお知らせしてもいいかな?とは思ってたけど、2人が私と雪ちゃんの心配をした上でそう判断したのだから、私はそれに任せようかなと思う。

お母さんの言うように、新生児でも乳幼児でも熱を出したりだとかすると怖いもんね。

たからもう少し、身体がしっかりするまで我慢かな。

後はまぁ······学校絡みの事もあるからね。



「オギャーオギャーオギャー······」


「ああ〜〜!! お姉ちゃーん、雪ちゃんが泣いちゃったよ〜······。」


葵があわあわしながら、私に報告してくる。

大丈夫だよ。ちゃんと聞こえてるからね。

葵の隣に行って、雪ちゃんを返してもらってからあやしてみる。


「雪ちゃ〜ん、どうしたのかな〜?」


少しリズムを入れて抱っこしてみてるけど、泣き止む気配はなく。

オムツも臭わないから、トイレ絡みでもない···かな?

と、なると······。


挿絵(By みてみん)



「ミルクの時間かな。お母さん、ちょっとミルクあげてくるね。」


「和室に全部用意して置いてあるけど、1人で大丈夫?」


「多分大丈夫だと思うよ。病院でも1人であげてたんだからさ。それに、なんかあったら声を出すから。」


「わかったわ。気を付けて、ゆっくりでいいからね?」


「うん。」



私は泣く雪ちゃんを連れて、廊下を挟んだ隣の和室へ向かいます。

これから当分の間、私は2階の自室ではなくこちらの部屋で過ごします。

こっちの方がキッチンもお風呂場も近いから何かと便利よ、とお母さんの助言に従ってね。




今日から新しく加わった雪ちゃん。

今までも賑やかだったけど、また一段と賑やかな家族になりそうです。



「おねーちゃん。私も行ってもいい?」


「ん?葵も?······いいよ。おいで?」


「やったー♪」



雪ちゃんに加えて葵も······。

ほんと、私の周りは賑やかだ。

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