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【書籍化】骨骸の剣聖が死を遂げる~呪われ聖者の学院無双~(web版)【コミカライズ決定】  作者: 御鷹穂積
第四章

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37◇守護竜と剣聖

 



 形骸種(キュリオン)に備わる三つの能力。


 ――『魔女の福音』。呪いを幸福と感じるような精神操作と、感染能力。


 俺は既に形骸種(キュリオン)なので、これを脅威に思う必要はない。


 ――『形骸の恩寵』。骨だけの身となった者を、不死に近づける能力。骨限定の再生能力だ。


 これはやや厄介。これまでの攻撃でもやつの体に罅(ひび)を入れることはできたのだが、この短時間で既に再生している。


 ――『神心の具現』。一部の形骸種(キュリオン)だけが覚醒する特殊能力。


 守護竜の吐く毒炎の主な効力は、炎に福音を乗せること。

 俺に対してはただの火炎でしかない。


 つまり俺にとって、『毒炎の守護竜』の厄介な点は、再生能力や巨体ということになる。


 俺は自分の剣を見た。

 人を殺すのには充分だが、竜の首を断つのにはやや心もとない。


「これじゃ足りないか」


 邪魔なので放り捨てる。

 昔から、武器に愛着はなかった。


 そのまま頭の後ろ、頚椎に手を掛ける。


「――『骨剣(こっけん)錬成』」


 己の体を鞘に見立て、目に見えぬ剣を抜き放つイメージ。


 このイメージが正確であるほど、頑丈な剣が生まれる。


 握ると柄の感触。引き抜いていくと剣の重量。


 今、俺の体から新たなる武装が生じている。


「これなら使えそうだ」


 俺が手にしたのは、オージアスが持っているような大剣だ。

 ただし、全てが俺の骨から作られている。


 形骸種(キュリオン)としての俺に、発現した能力は。

 聖騎士としての俺に、無限に武器を与えるものだった。


 炎は効かないと見て、守護竜が右前脚を横薙ぎに振るう。

 岩石であろうと刻めそうな攻撃。


 俺はそれを回避することなく、大剣で迎え撃った。


 瞬間。

 鋭い爪の全てが、俺の大剣との接触面にて断ち切られ、バラバラに吹き飛ぶ。

 そのまま空を掻くやつの右前脚は放置し、俺は左前脚に向かって駆け出す。


 そしてこちらは、人間でいうところの手首に相当する箇所を断裁。

 スッパリ斬るというよりは、巨木をへし折るような一撃だ。


 竜が体勢を崩し、再び頭部が地につく。

 そこを見逃さず、俺は竜の首を断つべく剣を振り上げるが――。


 やつは前脚の再生が間に合わないと見るや、残る後脚のみで大地を蹴って前進したのだ。

 俺の狙いを理解した上での回避……というだけではない。


 回避と同時に、反撃の手も用意していたようだ。


 突然の衝撃。

 俺の体が馬車にでも轢かれたように吹き飛び、石組みの家の壁に叩きつけられる。


「あー……そう簡単には行かないか」


 尻尾を振って、俺を弾いたのだ。


 後悔も感心もしている場合ではない。

 俺はすぐさま起き上がって道へ飛び出す。


 直後に竜が頭から家に突っ込み、家屋を瓦礫の山に変えた。


「よそさまの家だからって、好き放題だな」


 自分の質量がいかに脅威かを理解しているようだ。

 他のやつらには効いた炎が効かないので、手段を変えてきているのだろう。


 見れば、やつの両前脚の骨は既に再生を終えている。


 首を振るようにして瓦礫から頭を引き抜く守護竜。


「……時間があれば、この剣だけで攻略してもいいんだが」


 パルちゃんたちも、あるいは他の救援も、その内駆けつけてくるだろう。

 誰かの邪魔が入る前に決着をつけたかった。


「来な」


 竜は警戒するように唸っていたが、やがて正面衝突を選択。


 数瞬ののち。

 俺の剣とやつの体は、確かに激突した。


 だが、俺の大剣と、ではない。


「――――ッ!!」


 地面から巨大な剣が突き出てきて、やつの体を押し上げたのだ。


 当然、『骨剣錬成』の能力によるものだ。

 俺は足裏から能力を発動し、地中に向かって骨を伸ばし、竜の突進に合わせて巨剣を生成したのだ。


 能力はイメージで操る。

 想像力を養うのに、三百年は長すぎるくらいだった。


 今の俺は、手に持つ武器だけでなく、武器の形状をしたあらゆるものを、あらゆるサイズで生み出すことが可能。


 ただ、多用は禁物。

 不死者になって体力切れとは無縁になった筈なのに、能力を連続使用すると不気味な疲労感に襲われるのだ。能力の規模を大きくした場合も同じ。


 この疲労感が極限に達してしまったらどうなるかは、さすがに試す気になれない。


「悪いな、勝ち方にこだわりはないんだ」


 倒すべき敵を倒すのが、聖騎士に求められるものなのだから。


 巨剣に貫かれ、中空で体の裏側を晒すことになった守護竜を視界に捉える。


 やつが対応するよりも先に俺は跳躍し、その首に大剣を振るった。


 斬撃は目標過(あやま)たず、竜の首を両断。


 呆気なくも思える決着だが、人類が同じことをするのは難しいだろう。


 そもそもほとんどの者が毒炎で転化してしまうし、転化した仲間は生きた者に襲いかかる。


 それらをどうにかした上で、更に竜を固定し、人外の攻撃力で首を断たねばならないのだ。


 この守護竜が触れなければ無害という情報と合わせると、無闇に挑む者がいなかったのも頷ける話。


 俺にしたって、肉の鎧を捨てて戦うことを選ぶ程度に、こいつを強敵と認めているのだ。


 巨大な頭部が大地に落下し、大きな音を鳴らす。

 俺が骨の巨剣を消すと、胴体も落下。


 跳躍した俺は、難なく着地した。


 勝利を収めた筈なのだが、違和感。

 首を断った大剣が、紫色を帯びていた。


 それだけではない。

 次の瞬間、俺の意識が――。


 ◇


 目の前に、安心させるような笑みを浮かべる男が立っている。


『すまない……お前の母親は魔獣化してしまって、倒す他なかったんだ』


 俺は純白の服を着たその人間を見上げていた。

 巣で母を待っていたのに、やってきたのは謎の人間。


 胸の内に不安が広がる。


 思わず男の腕に噛み付いたが、男は一瞬苦しげな顔をしただけで笑みを絶やさず、もう片方の手で俺の頭をなでた。


『大丈夫……大丈夫だ』


 俺は――いや、違う。


 これは俺の記憶ではない。


『みんなは、竜は人に懐かないとか言うんだが……俺はお前の命に責任をとりたい』


 あぁ、そうか。


 これは、『毒炎の守護竜』の、生前の記憶か。


 しかし、今まで形骸種(キュリオン)を殺して相手の記憶が見えたことなどないのに、どういうことなのか。


 十二形骸だけが特別?

 あるいは、十二形骸が十二形骸を殺すことが、特別なのか。


 魔女の呪いについて、まだ分かっていない点があるということか。


 そして、なにより。

 どうやらこの記憶、自力で抜け出すことは出来ないようだ。


 ……しばらく付き合うしかない、のか。




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◇書籍版①は10月10発売予定!!!◇


◇骨骸の剣聖が死を遂げる◇
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◇↓御鷹穂積・他作品↓◇


◇最近入った白魔導士がパーティークラッシャーで、俺の異世界冒険者生活が崩壊の危機な件について(コミックオリジナル)◇
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◇ダンジョン攻略がエンタメ化した世界の話(書籍化&コミカライズ)◇
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◇ダンジョンに潜るのに免許が必要な世界の話(書籍化&コミカライズ)◇
大罪ダンジョン教習所の反面教師
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◇殺された妹の復讐を果たして自殺した少年が異世界で妹と再会する話(書籍化&コミカライズ)◇
復讐完遂者の人生二周目異世界譚
― 新着の感想 ―
[良い点] 能力を酷使すると自我に対する干渉が強くなるタイプかな? ロックマン形式で十二形骸同士で戦うと勝った相手を取り込めるとしたら、それが呪いの本質になりそう…。
[一言] 蠱毒形式であったか… なら、主人公が他十一体を殺す流れも、魔女の望み通りな可能性が高いな
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