1.英雄は考える(バール編)
一年中、雪が降り続ける都市。
その都市の外側は、高ランクの魔獣が蔓延っている。
倒しても倒しても湧き出てくる。
春を待ち望んでいると滅びる、そのような都市『バール』。
『バール』が滅べば、他の都市が永遠の雪国となる。と誰かが噂する。
その都市にも誰かしら住んでいる。
獣人、ドワーフ、、、そして人間。
元々住んでいる獣人。
まだ誰も見ぬ鉱山を求めて来たドワーフ。
怖いもの知らずな人間。
この三種族が中心となって、都市が成り立っている。
その中で『英雄』と呼ばれている者がいる。
三種族のクオーター『ハルウェル=ギルバート』
母親は人間とエルフ、父親は人間とドワーフのハーフ。
少し前までは他種族との子どもは忌子として扱われていたが、この時代ではどのハーフも珍しくはない。
クオーターも多少ながらいる。
差別されることもなく共に暮らしている。
その英雄が所属するギルド『ルーデン』は、冒険者ギルドと鍛治ギルドを兼務している。
「ハルウェル、悪いが上には逆らえない」
「断る、他の奴に頼んでも問題ない」
「出払ってる」
「そいつ等がそっちに行けばいい。あ、コウマたちがいるじゃないか!」
ハルウェルが思い出したように言う。
「恒例のバール山脈に行っている。最低でも2週間は帰ってこない」
「何故、この俺に行かせなかった?」
「それはお前が断り続けてるからだ……恒例のクエストだ。来年からお前が行くか?」
「……行かない」
「行かないならこの依頼に行け。選択肢はどちらかだ」
「……わかった」
彼はいまやこの都市の『英雄』として活躍をしていたが、この生活が嫌になっていた。
『英雄』になりたくて、なったわけではない。
魔物に両親を殺され、それを形に魔物を倒し続けていた。
気づけばギルドのランクがSSSランクとなり、『英雄』と呼ばれるようになった。
この世界では、どの国、都市にもギルドがあり、冒険者ギルドや鍛冶ギルド、商業ギルド、魔術ギルド、商船ギルド、空挺ギルドなどその都市ごとの特色活かしたギルドで賑わっている。
魔物が蔓延っている場所やダンジョン生成が多い場所では冒険者ギルドが、その周囲の都市には鍛冶ギルドや商業ギルドが、また海沿いでは商船ギルドや商業ギルドの漁業組合、大都市や山脈の麓には空挺ギルドが多くなる。
ギルドランクは、下から順にE、D、C、B、A、S、SS、そしてSSSとなっている。
現在、世界にSSSランクは6人、SSランクは15人おり、SSSランクやSSランクがいるギルドは一種のステータスである。
そのSSSランクのハルウェルは疲れていた。
SSSランクに来る依頼は高難易度ばかりであり、ひっきりなしに依頼がくる。
高レベルの魔物が蔓延っているこの都市では尚更で、SSSランクに依頼をする方が確実に達成するからである。
もちろん、SSSより下が駄目というわけではないが、確実性と効率性を考えれば、誰もがSSSランクに依頼をする。
ひっきりなしにくる依頼に悩まされていたハルウェルは、どうにかして休みたかった。
休もうとして画策を練っていたが、悉く失敗に終わっていた。
両親が殺されたハルウェルは、助かる命が助からないのが嫌で、依頼を断ることができなかったのが実状である。
昔は魔物が憎く、見境なく殺し続けていたが、今は自然の摂理が乱れないように依頼された魔物以外はなるべく討伐しないようにしている。
この地は、それぞれの生活区域が明確になっており、区域を侵さなければ問題なく暮らしていくことが可能である。
すこしでも侵せば殺され、お互いが『討伐対象』に成り代わる。
そのため、生物の侵入を拒むようにバール山脈がそびえ立っている。
恒例のクエストは、山脈の中でも危険区域の魔門と呼ばれる巨大な門がある場所に異常がないかの確認である。
いつ誰が何のために建てたかは不明、ただこちら側と向こう側に繋がっていることは、辛うじて文献に載っており、それ以外は不明だがバールに都市ができて、はや数百年経っているが、開いたことは一度もない。
ハルウェルはその依頼を受けることはないだろう。
複数パーティーで事足りるのもあるが、ハルウェルの中にある何かがそこに行くことを拒む。
それは恐怖からくるものではなく、そこにいる何かに吸い込まれそうな感覚に陥る。
「……わかった。そのダンジョンに行くことにする」
「了解だ。今から手続きをする」
「手続きができたら連絡をくれ」
「逃げるなよ」
「自分が決めたことだ。必ずやり遂げる」
「ふっ、任せたぞ」




