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三八二年 実の三十六日
朝、ククルは店の前に出てきていた。
実の三十六日。
イルヴィナまでは遥かに遠いが、せめてここから祈るつもりだった。
「ククル!」
丘の上から空を見ていると、直接家から来たらしい、テオとレムが駆けてきた。
「来てると思った」
そう言って笑い、テオも同じように空を見上げる。
「ジェットたち、今向かってるのかな」
独り言なのだろう、レムは返事を待つでもなく。
「今日こそいい日になるといいね」
続けられた言葉に頷いて、ククルは目を閉じた。
ジェットを守ってくれた人々への感謝を。
そこで眠る人々への祈りを。
これからのジェットも無事であるようにとの願いを。
ここライナスから。
イルヴィナへ向けて。




