三八二年 動の四十七日
昼頃、ギルド本部から役人が来た。ククルとゼクスにギャレットからの手紙を渡し、今から六人の身柄を中央へ移すという。
自分は何もされていないからと訴えるククルに、六人は全員かぶりを振った。
「結果はどうあれ、やったことの責任は取らないと」
「でも…」
心配そうなククルに、この七日間ですっかり顔付きが変わった少年たちが、各々問題ないと返す。
己の罪を認め、受け入れる少年たちに、ククルはそれ以上何も言えなかった。
心配そうに自分たちを見るその様子に、少年たちは顔を見合わせ頷き合う。
ゼクスたちに指導の礼、アレックたちに宿泊と配慮の礼を述べ、ククルとテオを見る。
「食事、本当に美味しかった。…ギルド辞めずに済んだら、また来てもいいかな?」
穏やかな表情でそう言ったディアレス、そしてうしろで頷く五人を見て。
ククルとテオは顔を見合わせ、満面の笑みで頷いた。
「もちろん、いつでもお待ちしてますね」
六人を見送り、さて、とゼクスが呟く。
「ククルちゃん。儂らも帰るよ」
「えっ?」
あまりに唐突な言葉に、ククルは思わず声を上げる。
「今日、ですか?」
「ああ。せっかくなんで一緒に馬車に乗せてもらうことにした」
馬車よりは単騎のほうが早い。少し遅れて出ても、ミルドレッドに着くまでに六人の乗る馬車に追いつけるだろう。
「乗り合いよりは快適だろうしな」
「乗り換えもなし、中央一直線なのもいい」
口々にそう言うが、おそらくは。
ふっと、ククルが微笑む。
「…私は何もされていません。そう伝えてもらえますか?」
あの六人を心配して、ついていくつもりなのだろう。
ゼクスは答えず、町を見やる。
「いい町だな」
「そう思ってもらえたなら嬉しいです。よければまた来てくださいね」
「そうさせてもらうよ」
荷を詰めるか、と宿に向かう三人。一番うしろについていたロイヴェインが、ククルの前で立ち止まった。
「ヴェインさん。色々とありがとうございました」
うつむく髪の隙間から翡翠の瞳が覗いている。身長差があるので、ククルからすれば見上げるかたちだ。
そのままぼそりと呟かれるが、ロイとしての声に慣れたせいか、いつも以上に聞き取りにくい。
首を傾げて一歩近付いた直後、顔が近付き、額に触れた。
「また来るよ」
小さな呟きと共に、前髪の奥の瞳が細められる。
そうして何事もなかったかのように、ロイヴェインはゼクスたちのあとについていった。
額にキスをされのだと、ククルが気付いたのはそれからで。
慌てて辺りを見回すが、アレックたちもテオも宿へ戻っている。尤もロイヴェインが人に見咎められるような失態をするわけがないのだろうが。
くるりと振り返り、小さく手を振るロイヴェイン。
熱を持つ頬と気恥ずかしさに、ククルは棒立ちで見送るだけだった。
「本当にありがとうございました」
町を発つゼクスたちに、ククルはそう頭を下げる。
「エト兄さんの恩人にお会いできて嬉しかったです」
ジェットの話に三人の名は出てこなかった。それでも英雄になるしかなかったジェットを支えたのは、間違いなくこの人たちだという確信があった。
三人は笑って見返すばかりで応えてはくれなかったのだが。
「ではまた」
「はい。お待ちしてます」
そう返し、ククルも笑った。
いつも読んでいただいてありがとうございます!
数回ジェット関連の閑話が続きます。
恋愛成分は本編に戻ってから、よければもう少しお待ちくださいね。




