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三八二年 動の三十九日

 昼食後、今日は珍しくヴェインも店に残っていた。

 今晩泊まるのだろう若いギルド員たちも店を出て、客はゼルとヴェインだけになる。

「お茶、いかがですか?」

 ヴェインに尋ねると、いつもの調子でもう少しあとでと言われる。だいぶ聞き取るのにも慣れたククルは、わかりましたと微笑んだ。

 昼食の片付けも済み、テオが一旦宿に戻る。仕込みをしながらゼルと話していたククルは、何となく視線を感じてヴェインを見た。

「お茶、淹れますか?」

「……お願いします」

 ぼそりと返された言葉に頷いて、ククルはヴェインのお茶を淹れる。

「スコーン、いくつにします?」

「……ふたつで」

 ゼルには既に出してある小振りのスコーンに、ジャムとバターを添えて出す。

 四日目ともなると、ゼルの様子は少しわかってきたのだが、ヴェインは前髪で表情が見えないので読みにくい。その上こちらが気付く前に動くので、様子を見落とすことも多いのだ。

 それでも滞ることなくやれているのは、おそらくヴェインのほうが自分たちに合わせて動いてくれているからだろう。

 店にいる間くらい気を遣わなくても済むようにできればいいのだが。

 申し訳なさを感じながら、ククルは仕込み作業を再開した。



 夕食時。いつもはゼルのあとに『同じもので』と頼むヴェインが、珍しく先に注文した。

 ヴェインのほうも気にしていてよかったと内心思いながら、ゼルの注文も聞いてカウンターに戻る。

 少しは慣れてくれたのだろうかと思いながら、調理の合間にちらりと見ると。

(…あれ?)

 相変わらず前髪に隠れて表情は見えないのだが。

 うつむき気味の横顔、少し口角が上がったように見えた。

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