三八二年 動の五日
「じゃあクゥ、またな」
「エト兄さんも気を付けて」
旅立つジェットをいつものように見送る。
ダリューンは頭を撫で、ナリスはにこやかに礼を言う。そしてリックは。
「色々ありがとう、ククル」
そう言って右手を差し出す。
自分のほうが年下だから呼び捨てでいいと言われ、ではお互いに、ということになった。
「いいえ、私こそ」
握手を交わし、笑い合う。
「テオも」
「ああ」
軽く拳をぶつけ合うテオとリック。男同士だからか、わだかまりさえとければ仲良くなるのは早かった。
最初の頃には考えられない程無邪気な笑みを見せて、そういえば、とリックが呟く。
「聞きたかったんだけど、ふたりってできてんの?」
「なっっ」
テオが声を上げ、ククルは無言で固まった。
「仲いいしさ。あれ、でもジェットにやらんぞって言われてたってことは、もしかして反対されてる?」
「リック!!」
うろたえるふたりをニヤニヤしながら見ていたところでの被弾に、ジェットが慌ててリックの襟首を掴んだ。
「行くぞっ! ほらっ!」
焦った様子でそのままズルズルとリックを引きずっていく。
ぽん、とふたりの頭に片手ずつ乗せてから、ダリューンが踵を返す。
笑い転げながら手を振って、ナリスがそれに続く。
うしろ向きに引きずられながら、リックが大きく手を振った。
「またなー!」
テオと顔を見合わせてから、ククルも手を振った。
「お待ちしてます!」




