ジェット・エルフィン/英雄の同期
事務長室、いつものようにギャレットさんとウィルとダンと。こうして話すのも何度目になるかな。
ハント・ベレストのことを調べ始めて数日。
留守の奴もいて、同期全員に話を聞くまでしばらくかかった。辞めた奴も多いから、俺を除いて五人しかいないんだけどな。
ハント・ベレストはギルドに一年しかいなかった上に、そう目立つ奴でもなかったようで。ほとんどの奴がうっすらとしか覚えてなかった。
始まりの日の式典の直後、ギルドを辞めたらしい。思い詰めたような顔で式典を見ていたとニースが言っていた。
調べてすぐにわかったことだが、所属していたパーティーはイルヴィナの討伐の先発隊だった。もちろん新人だった奴は同行を許可されず、死ぬことはなかったのだが。
その恐怖か、新しいパーティーに馴染めなかったのか。辞めた理由はわからずじまいだ。
「警邏隊に入った時期は確認できていませんが、ルバーナの支部隊長から本部の副隊長になったのは三年程前ですね」
これしかわかっていませんとウィルが言う。
ルバーナは中央の南西、ゴードンと同じくらいの規模の中継街だ。そこの隊長から本部入りなら結構やり手ってことだろう。
ギルドと繋がりのある警邏隊。ようやく見つけたそれがまさかこんな大物とは。
「本部の副隊長なので公になっている情報もありますが、逆に伏せられていることは調べ辛く……」
「あとはこちらで引き受けることにした。続く報告はしばらく時間をもらえるかな」
ギャレットさんがそう継いだ。
「どうした?」
帰りながら、ダンがそう聞いてきた。どうやらよっぽど考え込んでる顔してたらしい。
「いや。覚えてないもんだなって思って」
一年はいたというのに、俺はハント・ベレストのことを名前に聞き覚えがある程度しか覚えてなかった。ほかの同期も似たり寄ったりで、話を聞いても未だ顔すらはっきり思い出せないままだ。
そう言うと、ダンはひとり納得したように息をついた。
「それはジェットと同期だからだろう?」
俺?
「どうしても新人離れしていたジェットに目が行くからな。ほかの奴の印象が薄くても仕方ない」
見返す俺に呆れたように続けるダン。
俺自身は思ったこともなかったけど。確かにそういうもんなのかもしれないな。
これ以上考えても仕方ないから、そこで話を打ち切って。
次に報告を受けるのは多分訓練後。
北西の調査も中断したし、しばらくはここかライナスにいられそうだ。
クゥ、元気にしてるかな。




